映画関係者必読のメールマガジン。プロデューサー、監督、評論家、映画館支配人など、さまざまな立場からこれからのドキュメンタリー映画を熱く語ります。
- 最新号:2008-10-01
- 発行周期:月/2回
- 読んでる人:1780人
- 創刊日:2003-09-01
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ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo 104号 2008.6.16
発行日: 2008/6/16
∽∽∽∽∽∽ HEADLINE ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
†01 ■ドキュメンタリー映画のかたち
2年目を迎えた神戸映画資料館(3−最終回)
蘇った「アジアはひとつ」 安井 喜雄
†02 ■自作を語る
『バックドロップ・クルディスタン』 野本 大
†03 ■ワールドワイドNOW ≪北京発≫
北京ドキュメンタリー映画交流週レポート 前田 佳孝
†04 ■列島通信 ≪大分発≫
佐賀に映画館をつくる話(2)
映画の心 田井 肇
†05 ■neoneo坐6月後半の上映プログラム
†06 ■広場
■新・クチコミ200字評!(76))
『この人が語る私の愛する写真家 辺見庸
私とマリオ・ジャコメッリ』
『月に降りたロボット〜ソビエト秘密計画(Tank on the Moon)』
『ミリキタニの猫』 (以上の評、脇阪 亮)
『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』
『宅建ダイナマイト受験ラジオ 第34回 横浜・黄金伝説』
(以上の評、清水 浩之)
■投稿:親子でGO!『半身反義』・極私的ロッテルダム訪問記
竹藤 佳世
■告知:土本典昭の待望の新著、まもなく発刊!
「ドキュメンタリーの海へ―記録映画作家・土本典昭との対話」、
■上映:ひろしま屋根屋のロードムービー『藝州かやぶき紀行』
ポレポレ東中野にて、6月27日(金)まで上映
■上映:『コミュニストはSEXがお上手?』
渋谷・ユーロスペース 6/21〜
■上映:京都シネマ「特集:土本典昭の世界」7/5〜11
『映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事』
『不知火海』『水俣一揆』『水俣〜患者さんとその世界〜』
■募集:「自作を語る」などの原稿募集!
■上映の告知の有料化とカンパのお願い
†07 ■編集後記 伏屋 博雄
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┃01┃□日本のドキュメンタリー映画のかたち
┃ ┃■2年目を迎えた神戸映画資料館(3−最終回)
┃ ┃■安井 喜雄
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●蘇った「アジアはひとつ」
『映画の都 ふたたび』の飯塚俊男監督を囲んでの交流会がシネ・ヌーヴォの呼び
かけで行われたので参加した。このほど中国で開催された小川紳介作品上映に参加
された感想や『映画の都』製作時の思い出、『映画の都 ふたたび』に関連して今
後の山形の課題などの話で盛り上がった。1989年の『映画の都』撮影当時、アジア
には16ミリを使う日本のようなドキュメンタリーは皆無に近かったが、近年のDVカ
メラの普及で急激にドキュメンタリーが増加し中国での関心も高まってきた。観客
の反応は昔の作品として捉えるのではなく、現在の問題として捉えているのが面白
かったとか。「上映への検閲はないのか?」との質問に、劇場での興行以外の上映
には検閲がなく自由であるが、逆に興行できないので入場料収入が見込めず、ドキ
ュメンタリーの作家は国内での資金回収ではなく、海外の映画祭などに出品して評
価を得ることを目指しているとの話だった。小川作品はすべて16ミリ・フィルムな
ので本来はフィルム上映すべきと思うのだが、今回はビデオ上映だったと聞いたの
で原因を聞いてみたら、字幕を付けやすいからではないかとのことだった。他にも
フィルム搬送の問題や映写機確保の問題などが考えられるが、気になるところでは
ある。
フィルム作品はフィルムで上映するのが基本であると思っているので、神戸映画資
料館でも人件費のかかるフィルム上映よりビデオで上映したらどうかとの意見が多
いので困っている。私は猛反対しているが、一般的にはフィルム上映が減少する傾
向にあるのでどうしたものか。みんなで「ビデオ上映反対!」の声を上げないと、
そのうちフィルム上映がなくなってしまわないか心配である。その中にあってフィ
ルム上映にこだわっているフィルムセンターの活動に注目したい。この4〜5月に上
映された「発掘された映画たち2008」のプログラムに含まれていた『アジアはひと
つ』が、これまで見ることができなかった幻のフィルムの復元だったからである。
1973年のNDU作品『アジアはひとつ』は、私が担当した山形国際ドキュメンタリー映
画祭2007のプログラム「日本に生きるということ──境界からの視線」のためにネ
ガを発掘してネガ・テレシネしたビデオを上映したことがある。本来はフィルムで
上映したかったが、ニュープリント作成の予算がなかったから致し方なしの選択だ
った。その断腸の思いをフィルムセンターが叶えてくれた。これまで「発掘された
映画たち」で取り上げられた映画は、昔の可燃性フィルムの不燃化作業で得られた
プリントの上映が主だったので、70年代の劣化したネガ素材からの復元フィルムの
上映には私も驚いた。
初上映当時は磁気録音プリントでの上映だったが、そのプリントは現存せず、発見
された素材は劣化した16ミリ画ネガと劣化したシネテープだった。画ネガは缶に密
閉して保存するのが普通だが、なぜかリールに巻いてあった。多分、ネガを映写機
にかけて上映したのだろう。埃やキズも多かった。音声は幸運にもシネテープが残
っていたもののカーリングしてワカメ状になっており、シネコーダーで再生すると
音声がふらついてしまう。復元作業は大阪の現像所イマジカウェストで行うことに
なり、ネガとシネテープを搬入しチェックをした結果、全4巻の内3巻目がプリン
ターにかからないほど収縮しているのが分かった。致し方ないので35ミリにブロー
アップしたマスターポジを作成し、そこから再び16ミリのデュープネガを作りプリ
ントしたが金がかかった。
次に、この映画はモノクロとカラーが混在するのでモノクロ部分の色再現が大きな
問題となった。製作当時の初号プリントはモノクロ・ネガ部分をインクブルーに指
定して焼いたが、現像処方が当時と変わっており無理であることが分かった。フィ
ルムセンターにNDUの井上修と現像所の担当が出向き、テスト焼きプリントを試写し
て相談し、セピア調に仕上げることになった。シネテープにも磁気が剥離して音声
の使用ができないところがあった。その部分は、発見された直後に私が保有する旧
式のシネコーダーにより録音したDVカムから補填することで解決した。わずか3年ほ
どの間に磁気剥離が起こったらしく、フィルム保全の難しさを実感した次第である。
これほどフィルム上映にこだわってみんな努力しているのに、簡単にビデオ上映を
言う人を私は軽蔑する。
長年このネガを保有し今回の復元に尽力した井上修による『出草之歌 台湾原住民
の吶喊 背山一戦』が先般、ゆふいん文化・記録映画祭で上映され本人も参加した。
用意した販売物も完売となり、予想以上の反響に私も驚いた。井上修からのメール
には「何よりも最も大きな要素はこの映画祭に関わっている関係者の方々--映画祭
のキャッチコピー《まっすぐな感動》が単に言葉のレベルではなく実際にそれを実
践なされていることを目の当たりにして本当にびっくりしました--そしておいでい
ただいた観客の方々の質の高さだと思います。」とあって私も行ってみたくなった。
この『出草之歌』ですが、7月には「飛魚雲豹音楽工団」音楽CDとともにDVDが完成
し販売されるそうです。ぜひ買ってくださいね。
■安井 喜雄(やすい・よしお)
1948年神戸生まれ。1967 年から自主上映に関わり、1974年に「プラネット映画資料
図書館」を友人とともに設立し映画資料の収集と上映を行う。小川紳介監督の依頼
で1989年の第1回山形国際ドキュメンタリー映画祭から日本のドキュメンタリーを回
顧するプログラムを担当。その後も「亀井文夫特集」「日本に生きるということ」
などの特集を担当。彭小蓮・小川紳介の『満山紅柿』、井上修の『出草之歌』、朴
壽南の『命果報(ぬちかふう)』(制作中)などに関わっている。
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┃02┃□自作を語る
┃ ┃■『バックドロップ・クルディスタン』
┃ ┃■野本 大
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●トルコへ旅立つ
日本映画学校の学生だった僕は、この『バックドロップ・クルディスタン』の企画
を卒業制作として提出した。企画がまだ未熟だったせいもあり、あえなく落選をし
てしまった。「難民」「クルド人」というあまりにも遠く離れた存在。僕には背負
いきれないとも判断されたのだろう。しかし、対象であるカザンキラン一家7人への
気持ちは高まっていく一方。国連前大学前で座り込みのデモを決意した家族から、
僕は目を背けることができなかった。カメラも三脚もマイクもない状態で学校を中
退をした。
ただそれは、「かわいそう」だからではない。「助けたい」わけだからでもない。
「難民」だからでもない。全くなかったかと言ったら嘘になるが、それは僕を突き
動かす決定的な理由ではない。僕は、この家族と一緒にいることで、自分の心の隙
間や足りない部分が満たされていく(気づかされていく)ような気持ちにさせられ
た。簡単に人間関係を切り捨て、逃げ、拒み、全力を持って自分を繕ってきた僕に
は、この家族7人の持つ人間力が羨ましかった。
撮影当初、この家族の本質的な部分を知らない状態ではあったが、難民という立場
の中で、それぞれが意見を主張し、そして、難民として庇護を求めると同時に「存
在の主張」を続ける姿が、アイデンティティなんて考えたことない僕にグサッと突
き刺さってくる。
この家族がこの状況とどう戦うのか、そしてどこに行き着くのか、どんな場所(土
地)に辿り着くのか、それを見たかった。何が「かわいそう」かもわからない。彼
らの主張から「何」を聞けばいいのかわからない。とにかく僕は、できるだけ近く
にいようと決めた。それしかできなかったと言った方が正しいかもしれないが…
ただ、寄り添えば寄り添う程見えてくる自分の愚かさや無知さ。この家族の根源に
近づこうとしない自分。自分にも家族にも、表面的なところでしか向きあえていな
い。また、繰り返すのか…と何度も苛立った。
父と長男は入国管理局に収容され、強制送還された。あっという間だった。「悲し
い」そんな感情は全く抱いていない。まだ、何も気付いていない自分に気付くこと
で、精一杯だった。
僕は、トルコに旅立った。「知る」というアクションをしなければ、僕はずっと傍
観者のままであると思ったから。でも、知るというのは怖い。知った途端に、知っ
たものより多くの疑問が湧き出てくる。僕が想像している程、トルコ人とクルド人
を簡単な対立構造に置き換えれるわけでもなく、日本にいた時に抱いていた「 難
民」というイメージは簡単に壊されていく。白か黒か、はたまたグレーか、明確に
区別することなんできない。民族、国家、そして個々それぞれのヒストリーや主張
が複雑に絡み合う。
また、それとは別に、家族が言い続けていた主張の一部が、現実として目の前に現
われたときもあった。日本にいたのではけして見ることのできない抑圧の現実。そ
こで初めて僕は、家族が守ろうとしているもの、日本で「何」を主張していたのか
ということ、ようやく僅かではあるが、理解できるのである。
家族は最後に「クルディスタン」ではない場所に辿り着く。が、そこに生きる家族
がアイデンティティを守り続け、それがやがて集団となり、共同体を形成していく
ことで、「クルディスタン」になる。クルディスタンとは、「土地」であり「人」
である。
僕はいつもこう思う。家族が「難民」かどうかの是非を問うことは二の次である。
大事なことは、「他者」や「外の問題」に対し、どこまで想像力を持てるか。また、
その想像力を膨らます為には、否応なしに「関係」しないといけないということ。
「難民を受け入れよう」なんて上っ面で考えるより、まず、目の前の1人の人物と関
係するべきだ。1個人の中に、社会があり、世界がある。「日本人」と「クルド人」、
強引にでも関係すれば、その時点で遠い存在ではなくなるはずだ。
■野本 大(のもと・まさる)
1983年生まれ。現在、自主配給・宣伝での劇場公開に向け必死!!!
『バックドロップ・クルディスタン』は7月5日〜ポレポレ東中野にて公開です!
HP http://www.back-drop-kurdistan.com/
mixiコミュ http://mixi.jp/view_community.pl?id=3000993
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┃03┃□ワールドワイドNOW ≪北京発≫
┃ ┃■北京ドキュメンタリー映画交流週レポート
┃ ┃■前田 佳孝
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今年で5回目となる「北京ドキュメンタリー映画交流週」が5月25日から31日まで北
京宋庄で行われた。前回と違う点は、国内コンペティションに加えて「小川紳介レ
トロスペクティブ」(注)が設けられたこと。中国国内では初めてのまとまった形
での小川紳介の回顧上映で、呉文光が病床の小川紳介から受け取った小川作品のビ
デオテープを北京に持ち帰ってから約20年、いよいよ正式な形で小川作品を北京で
上映できるのかとおもうと感慨深い。
僕は今回の交流週にはボランティアスタッフとして参加していたのだが、字幕制作
作業は尋常ならぬ仕事量であった。僕のほかにも、今回コンペ審査員を務めるフォ
ン・イェン(馮艶)、作品を出品している季丹、通訳を担当していたスタッフまで
もが字幕付け作業に総動員された。昼から働き通しのフォン・イェンが空いた時間
に寝袋で仮眠をとって、少しもしないうちにまたふらふらと起きだしてパソコンに
向かいカタカタと作業をしているところなど見ていると泣けてくる。日本から映画
批評家、小川プロスタッフなどゲストを呼んでのティーチインも行われたのだが結
局僕は一回も見に行くことが出来なかった。
交流週の後半、前回牧野村でも素晴らしい話を聞かせてくださった飯塚さんを日本
に見送るときに、また面白い話を聞かせてもらった。僕は『圧殺の森』と『現認報
告書』の日本語聞き起こし作業に係わっていたのだが、当時の学生運動している人
たちの言葉使いがとてもユニークで、意味は分かるのだが、ロジックがおかしくて
聞き起こし作業には大分手間取ったと話をふったら、小川さんも似たようなところ
があって、あるインタビューで「西欧のドキュメンタリーが花だとしたら、アジア
のドキュメンタリーは足腰だ」と答え、英語翻訳者を困らせたそうだ。飯塚さんは
「アジアは茎や根っこのことじゃないですか」とアドバイスをすると、どうもそれ
だと小川紳介の言葉のユーモア本来の意味を表していないようで、それも違うとい
うことになってしまう(笑)。飯塚さんがトークした内容が素晴らしかったと節々
で聞くので、それを逃してしまったことが悔やまれる。
もうひとつ前回と違う点は、今回の交流週では毎回会場に使われる宋庄美術館に加
えて、美術館から湖を跨いですぐのところに新設された現像工作室のスタジオが上
映会場として設けられた。外装はまだ完全に完成していないのだが、交流週の為に
建設予算を全て映画館に向けて突貫工事で完成させたという代物である。上映環境
は予想以上に良くて、北京のどの映画館よりもいいといっても過言ではないとおも
う。どこか渋谷のシネマヴェーラに似ているといえば日本の映画ファンには想像が
つきやすいだろうか?二階建ての建物で、二階の内装は今の段階ではまだ完成して
おらず、一階は丸々広いスペースがカフェになっている。
カフェでは小川プロの写真展も行われた。映画館は地下室に位置していて、表玄関
から螺旋階段を下りて映画館に入っていくわけだが、どこか秘密基地(映画テロリ
スト養成所といってもいい)を思わせるつくりで、デザインした王我のセンスのよ
さを垣間見られる。現像工作室には並んで王我のスタジオも完成を控えており、そ
こにももうひとつ映画館が建設される予定だと聞いている。朱日坤が今のような上
映環境を整えるまでにも長い道のりがあって、初めてインディペンデント映画の上
映活動に携わった頃は本屋にプロジェクターとスクリーンを用意してジャ・ジャン
クーの『プラットフォーム』など中国の第六世代作家の作品を上映していたという。
少し話しはずれるが先日電影学院でジャ・ジャンクーの新作『二十四城記』の試写
があり、作品を見たのだが、『小山の帰郷』の時のような生き生きとしたショット
は全くなく、オリエンタリズムに染まったクリシェに彩られた最悪の作品であった。
第六世代の初期の作品は中国映画界、電影学院の良心ともいえる一時期の僕の目標
でもあったが、それぞれ王小師、路学長、ジャ・ジャンクーの堕落ぶりを見ている
と、朱日坤が彼らの作品の上映に携わらなくなったことの理由が分かるような気が
する。写実主義の第五世代は作品のテーマの背後に隠された政治的な問題を回避し
てきたし、現実をそのまま見つめてきたはずの現実主義の第六世代作家はやがてオ
リエンタリズムに傾いてしまう。
今中国で見るべき作品はインディペンデント映画だと僕は断言するが、映画批評に
於いても昔トリフォーが書いた『フランス映画に於けるある種の傾向』のような名
指しの批判が必要な時期にあるのだと僕はおもう(日本、中国に係わらず)。
Lixianting映画基金の栗憲庭、朱日坤も自らが無償の義務だと公言するようにその
仕事には本当に頭が下がる。今年で第五回目となるが朱日坤の地道な活動なくして
今日の中国ドキュメンタリーの下地はなかったかもしれない。新たに出来た映画館
だが以前北京で行われてきたようなバーでの上映から、新たな局面に向かうための
新たな一歩を踏み出したと言えるだろう。実際に今回の交流週でも多くの作家が現
像工作室の映画館での自作の上映を希望していたし、このような上映環境は独立作
家への十分な気遣いである。
国内作品のコンペであるが、期間中前半の数日は字幕付け作業で忙しく、会場に顔
を出せなかったものの以前見たものとあわせて、全部で7本の作品(コンペは全10作
品)を見ることが出来た。どれもレベルが高く、世界的に見ても今、中国ドキュメ
ンタリーが一番優れていることを証明していたとおもう。今回のコンペの審査委員
は映画批評家の阿部・マーク・ノーマス、ニヨン映画祭主催者ジャン・ペレ、『稟
愛』の監督フォン・イェンの三人。受賞結果は黄牛田電影のメンバーでもある、趙
大勇の新作『廃城(Ghost Town)』、東京フィルメックスでも『最後の木こりたち』
が上映されたユ・グァンイーの新作『小李子(Survival Song)』の二作品に大賞が与
えられた。三人の審査員は議論の余地なく、すぐに全会一致でこの二作品の受賞を
決めたという。僕があれこれ言うよりも、審査委員の言葉を見ていただければその
作品の素晴らしさが伝わるとおもう。リンクを張っておくので一読して欲しい(必
見)。 http://www.fanhall.com/show.aspx?id=14514&cid=40
今後日本でも上映される機会はあるだろうからそのときには駆けつけるように!
その他にも特別プログラムで上映された衆峰(Zhong Feng)の『Dr. Ma’s Country
Clinic』をオススメしたい。215分という長さながら、微塵も長くは感じないし、
見終わったあとに必要な長さであることが分かる。作品タイトルにもあるように、
甘粛省の田舎で一人小さな漢方診療所を営む馬先生とそのもとに集まる人々のエピ
ソードをまとめた作品で、村の憩いの場でもある診療所には人々の生活が浮かび上
がってくる。淡々と診療所室内で起こる出来事を記録していくスタイルはとてもス
トイックで、最後の山頂での葬式シーンでの対比がまた素晴らしい(五月に降る雪
の風景ショット!)。
授賞式が終わってからなぜか飛行機に乗っているはずの飯塚さんに会う。話を聞く
と出発ロビーを間違えしまったらしく、飛行機に乗り遅れて引き返してきたとのこ
と。僕も季丹もちょうどいいから最終日だし、みんなで飲んでいきましょうと場違
いな言葉をかけてしまうが、毎回交流週にはこんな打ち解けた雰囲気がある。日が
暮れる前に現像工作室の中庭で記念集合写真を撮ってからみんなでぞろぞろと打ち
上げ会場に向かう。お代は受賞した、大勇とユ・グァンイーもちで、店を貸切にし
て延べ15メートルはあるだろうか、テーブルを縦に並べそこにずらずら座って打ち
上げの開始。そうこうしないうちにあっちからこっちから歌声が聞こえてくる。こ
ういうときは必ず歌うユ・グァンイーであるが、何度聞いてもその歌声は素晴らし
い。季丹も雲南の民謡を歌いだすが、その頃には大分出来上がってしまっていて、
なんだか狼の叫び声のようにしか聞こえないのだが、それもそれでまた味がある。
飯塚さんも小川紳介に歌わされたという民謡を披露してくれた。こうして夜は更け
ていき、ここで交わされた交流の数々は今後も様々な場所に越境していく。
(注)「小川紳介レトロスペクティブ」で上映された作品は、下記の通りです。
●小川紳介作品(8本):
『青年の海 四人の通信教育生たち』
『圧殺の森 高崎経済大学闘争の記録』
『現認報告書 羽田闘争の記録』
『日本解放戦線 三里塚の夏』
『三里塚・第二砦の人々』
『三里塚・辺田部落』
『ニッポン国古屋敷村』
『1000年刻みの日時計 牧野村物語』
●関連作品(4本):
『映画作りとむらへの道』
『草取り草子』
『Devotion-小川紳介と生きた人々』
『帰郷−小川紳介と過ごした日々―』
■前田 佳孝(まえだ・よしたか)
11月初旬にポレポレ東中野にてヤマガタ・ドリーム・ショーで『黄牛田電影プログ
ラム』を企画しています。日本未公開作品四本を含む全6作品のプログラムで、期間
中はゲストを呼んでの講義などを予定しています。ボランティアで企画に協力して
いただける方を探しています。
連絡先は cinema1117@yahoo.co.jp 前田まで。
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┃04┃□列島通信 ≪大分発≫
┃ ┃■佐賀に映画館をつくる話(2)
┃ ┃■田井 肇
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●映画の心
前回(2007年11月1日号)、ほんのさわりをご紹介した佐賀の映画館「シアター・シ
エマ」の「その後」。紆余曲折を経て、映画館は、晴れて昨年の12月15日にオープ
ンしたのだが、実はその時すでに僕はまったく手を引いていた。オープン前、映画
館をやることになった若者たちと話し合いを重ねるうちに、彼らがやろうとしてい
ることが理解できなくなってしまったのだ。
佐賀のような地方都市でアート系映画館をやるのは大変だからと、彼らが考えたの
が、カフェを併設し、DJブースを作り、音楽イベントや絵本の読み聞かせイベント
をやるということだった。だが、それらが映画を人に見てもらうための「手段」で
はなく、「目的」だったことが次第に明らかになって来る。彼らは、「従来の映画
の見方ではない新しい映画の見方を提案したい」としきりに熱弁をふるっていた。
だがそれは、ある映画をちがった角度から見てみるというようなものではなく、映
画(投射されたフィルム)を、寝転がって見るとか、酒を飲みながら見る、わいわ
いしゃべくって見る、ハンバーガーをほおばりながら見る、そういう意味での「見
方」の提案、つまり「新しい接し方の提案」にすぎなかったのだ。
決められた時間に決められた座席に座ってマナーを守って映画を見る、それが映画
館である。だが、それらを受け入れることではじめて、心の中において好き勝手に
見る「自由」が手に入る。その「自由」を手に入れたくて人は映画を見るのだ。決
して寝転がって見られる「自由」なんかではなく。
アート系映画の興行はたしかに難しい。だが、それはその映画がつまらないからで
はない。ところがどうやら、彼らはアート系映画(あるいは映画)を、「ただそれ
だけ」ではつまらないと考えているようなのだ。だから、カフェを開き、コンサー
トやら何やらを開いて「僕らの映画館は『映画だけ』の場所じゃない」と胸を張る。
「映画だけ」の場所は、さもつまらないかのように。映画ファンや、あるいは映画
そのものを、こんなバカにした話はない。この映画館は、映画を見に行っても、彼
らご自慢のカフェや、絵本やら食器やら雑貨やらの「映画とは関係ないもの」の陳
列の中を通ってしか劇場内に行けないし、映画を見終わってもそこを通ってしか帰
れないという構造になっている。それは、「映画とは関係ないもの」にも出会える
「自由」な場なのか、それとも映画を見たい人にとっての「不自由」な場なのか。
DJブースまでを設置しながら(ここでも流しているのは映画と無関係の音楽だ)、
肝心の映画館の映写レンズも音響もかつて使われていたもののままで、画面はくす
み、アナログの音にはノイズが入っている。映画をよりよく届けようなんて、これ
っぽちも考えられていない。
それでもって、そこにかける何かいい映画(商売になる映画)はないでしょうか、
と相談されて、僕はいったいどう答えればよいというのだ。そんな(彼ら流の言い
方をすれば)「空間」への僕の感想は、いわば「ノーカントリー・フォー・オール
ドメン」(もはや俺たち古い人間にはわけのわかんない世の中になっちまった)だ。
映画館は、「映画(だけ)を見るための場所」という、僕のような映画原理主義者
は、もはや時代遅れの骨董品なのか。映画館でスポーツイベントを見て、映画館で
コンサートを見る。デジタル・プロジェクターの導入によって、いま、シネコンも
また「『映画だけ』の場所」ではなくなろうとしている。やがて、この「シア
ター・シエマ」のように、シネコンにおいても、映画のチケットをポップコーン売
り場で買うなんてことになってゆくのかもしれない。ロビー全体で行われているイ
ベントの脇を「ちょっとすみません。映画を見たいのですが」と身をかがめて上映
室に行かねばならないようなことに。『映画だけ』は、そんなにつまらないのか。
それでは成り立ってゆけないのか。純粋に「映画」を見せてほしい、ただそれだけ
を映画館に望むことはもはや贅沢なことなのか。「映画」に絶望した人たちによっ
て映画館が運営されているこの現実に、映画ファンは「それでも見られればいいじ
ゃないか」と甘んじるしかないのだろうか。
■田井 肇(たい・はじめ)
1956年岐阜市生まれ。大分に移り住み、1976年、「第1回湯布院映画祭」の立ち上げ
に加わる。以後13回目まで中心メンバーとして活動する一方、地方で上映機会のな
い映画の数多くを自主上映する。1989年、当時閉館の瀬戸際にあった映画館「シネ
マ5」の運営を引き継ぎ、アート系専門の映画館として、その経営を軌道に乗せ、現
在に至る。
シネマ5:大分市府内町2-4-8 TEL 097-536-4512 FAX 097-536-4536
http://www.cinema5.gr.jp
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┃05┃□neoneo坐6月後半の上映プログラム
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会場はいずれも神田・小川町のスペースneo(都営新宿線小川町駅B5出口より徒歩1
分JR御茶ノ水駅聖橋口より徒歩5分)です。詳細と地図はneoneo坐のHPをご覧下さい。
http://www.neoneoza.com/
■「知られざる短篇映画を見てみる」上映会
「短篇調査団」
Shortfilm Researchers
毎月第2・第4水曜/20:00〜21:40 終映予定
16mm上映 鑑賞無料・上映カンパ歓迎
追加情報はblog版短篇調査団へ
(69) 法律の巻...2008年6月25日(水)20:00〜
四角い仁鶴が丸く収める? 4本立(94分)
『うちの権利ととなりの権利』
1966年/25分/白黒
制作:東映教育映画部/プロデューサー:田中森治/監督:瀬藤祝/
脚本:服部正美・饗場徳衛/撮影:福井久彦
■ 山田家と鈴木家のトラブルの原因は何であったか。日常生活に起こる隣人関係を
とりあげ、安定した隣人関係を保つために必要な法律の精神を訴える。
『契約と消費者』
1987年/20分/カラー
制作:東映教育映画部/プロデューサー:金指功/脚本・監督:高桑信/
撮影:佐々木真二
■ 中学生を対象に、契約を守らなかった場合の損害賠償、未成年者の契約、口約束
と契約書などの例を見ながら契約とは何かを教える。また、訪問販売などの悪徳商
法について考える。
『はんこ心得帖』
1969年/20分/カラー
制作:戸田プロ/脚本・監督:戸田金作/撮影:安本淳ほか
■ 現在「はんこ」については基本法も所轄官庁もなく、学校や社会でも「はんこ」
に関する正式な教育を行っていない。そのため三文判一つで一生泣き続けている人
も多い。こうした悲劇から一人でも守ろうとするのがこの映画の目的である。
『著作権法入門』
1987年/29分/カラー
制作:学研映画/プロデューサー:黒川巌/脚本・監督:臼井高瀬/撮影:野口明
■ 情報のメディアが多様化するにつれ、レコード、ビデオ、コンピュータ・プログ
ラムなどの著作権に関する問題がクローズアップされてきた。著作権法の基礎知識
を、さまざまな実例をもとに描き、その意義をわかりやすく説く。
【料金】鑑賞無料! カンパ歓迎!
【お問合せ】清水 E-mail: shimizu4310@bridge.ocn.ne.jp
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┃06┃□広場
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■新・クチコミ200字評!(76)
■清水浩之(短篇調査団・6/25は法律の巻! http://d.hatena.ne.jp/tancho/ )
オススメの作品を200字以内の短評で紹介してください!映画・ビデオ・テレビなど
皆さんがノンフィクションだと思う作品だったらなんでも可!もちろん「オススメ
しない映画とその理由!」もOKです。
本文とは別に「あなたのお名前(ペンネーム可)/掲載確認のご連絡先(メールアドレ
スor電話)/題名/制作年/監督/見た場所(よろしければあなたのプロフィールや
近況も)を付記してお送りください。
清水浩之 E-mail:shimizu4310@bridge.ocn.ne.jp /ファクス:03-3703-0839
A-070『この人が語る私の愛する写真家 辺見庸 私とマリオ・ジャコメッリ』
2008年/制作:NED+ZAKコーポレーション/
ディレクター:首藤圭子/撮影:中野英世・太田信明
放映:2008年5月25日・NHK教育「新日曜美術館」
http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2008/0525/index.html
辺見庸氏の語り口はぶっきらぼうだが、語られる言葉は抽象性が高く、いろいろな
ことを考えさせられる。それらの言葉を頭の中で味わっていたら、次々と言葉が流
れていってしまい、辺見氏が語ったすべての言葉を十分に味わえなかったのは残念
だった。
そんな中、カットされることを気にしつつ、辺見氏がテレビについて語るシーンで
はトーンが上がったように見えた。ディレクターもそう思ったのか、辺見氏が語る
それらの言葉に対しそれまでとは異なった画面を組み合わせていた。(脇阪 亮)
A-071『月に降りたロボット〜ソビエト秘密計画(Tank on the Moon)』
2007年/制作:フランス ZED+Corona Films/監督:ジャン・アファナシエフ
放映:2008年5月28日・NHK教育「地球ドラマチック」
http://www.nhk.or.jp/dramatic/backnumber/132.html
http://www.realscreen.com/screeningroom/20080402/tankonmoon.html
2月に同じ「地球ドラマチック」で放送されたアメリカのアポロ計画を描いた『月を
目指して〜アポロ計画を支えた勇気〜』も面白かったが、この番組はまるでそれと
対になるような、ソビエトの月探査計画「ルノホート計画」を描いた番組で、実に
興味津々だった。このルノホート計画で使われたロボット技術が、チェルノブイリ
の原発事故処理に際にも使われたという展開が、劇的だった。(脇阪 亮)
A-072『ミリキタニの猫』
2006年/アメリカ/監督:リンダ・ハッテンドーフ
見た場所:千里セルシーシアター http://www4.ocn.ne.jp/~selcy.t/
ジミー・ツトム・ミリキタニ氏が厳しく批判するアメリカだが、むしろその奥深さ
を感じさせられた。自らも含め、日本社会はここまで寛容ではなく、もっと陰湿で
冷酷なところがあるな、と反省させられた。これが、監督のねらいなのか?その意
味でこれは一種のアメリカ賛歌の映画である。監督自身を含めて、登場する人たち
は皆素敵な人たちばかりだが。
ジミー氏が夜遅く帰ってきた監督に説教するところなどは、父と娘っぽい。小津安
二郎監督の映画を思い出した。(脇阪 亮)
B-288『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』
2007年/制作:若松プロ+スコーレ/監督:若松孝二
見た場所:シネマ・ジャック&ベティ(横浜まで追っかけました…)
全国各地で上映中 http://wakamatsukoji.org/
「連合赤軍だって50年経ったら新撰組」(鈴木邦男さん)の言葉通り、10代・20代に
こそ見てほしい時代劇超大作。1960年6月15日(←今日!)から始まる「仁義なき安保
闘争」、戦争ごっこから処刑ごっこに突っ走る「神聖悲喜劇」榛名編を経て、“少
年兵”の視点で無謀な負け戦を描き切る「激動の昭和史・あさま決戦」へ…三倍泣
けます、泣かせます!本来なら東宝や東映がやるべき仕事をやりきった若松組に日
本アカデミー賞を勝手に進呈!(清水 浩之)
B-289『宅建ダイナマイト受験ラジオ 第34回 横浜・黄金伝説』
2008年/撮影・講義:大澤茂雄
http://t-dyna.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_1c6f.html
横浜・黄金町で一際目立つ「売春飲食店撲滅」の看板!その経緯と現状を的確にレ
ポートしているのが、宅建受験を指導する大澤先生のブログ。「地域・建築物の用
途制限」がテーマのミニ講義の筈が、好奇心満々の現場写真と軽妙なトークで完全
に「旧特飲街ツアー」に!ご本人の趣味がかなり作用して(笑)「結果的にドキュメ
ンタリーになった」個人動画配信時代ならではの面白さ。宅建受験しない皆さんに
も(別の意味で)勉強になります!(清水 浩之)
◇────────────────────────◆◇◆
■投稿:親子でGO!『半身反義』・極私的ロッテルダム訪問記
■竹藤 佳世
今年のロッテルダム国際映画祭に、自作『半身反義』が招待され、1月末から2月に
かけての1週間、オランダ・ロッテルダムを訪問した。初の長編作品での、初めての
海外映画祭参加である。
97号の水由章さんのレポートにもあったように、劇映画から8mm自主制作まで、数
多くの日本映画が出品されていたのだが、私は小学生の娘を同伴していたこともあ
り、なかなか他の映画の上映や状況を見ることができなかった。なので、これはあ
くまで、極私的なレポートであることをご了承願いたい。
●『半身反義』は「半信半疑」?!
せっかくやるからには、なるべく人に見てもらいたい。しかし、一体どうしたらい
いのか?何の策もないまま乗り込んでしまったのだが、とりあえず到着初日から、
思いつくまま、持参した英文チラシをあちこちに貼り、プレスセンターにも置いて
まわる。
さらに、旅の恥はかき捨てと、センターのカフェやバーにたまっている人々に突撃。
「日本人のフィルムーカーなんですけど…」と切り出し「はあ?」という表情にひ
るみつつチラシを差し出す。
そんなことをしている内に、偶然、「この映画のこと、知ってるよ」という男性に
出会った。「え、どうして?」と尋ねると「だって僕がプログラムしたんだもん」。
私の招待されたCinema Regainedのプログラマーだった。
そもそも、このCinema Regainedという部門は映画の歴史の中からの作品が多く、
『半身反義』のような新作は少ない。「なぜ、この映画を選んだのか?」と聞いて
みたが、プログラマーはいい調子に飲んでいたらしく、「そんなこと僕にもわから
ないなあ〜」と笑って、らちが明かない。
『半身反義』は、『東京オリンピック』(1965年・総監督 市川崑)や、『日本万国
博』(1971年・総監督 谷口千吉)の記録映画に携わった山岸達児さんという方を、
私がドキュメントした映画だ。
そこには、映画の歴史へのオマージュもある。しかし、知らない老人の、遠い日本
での病院や老人ホームでの生活が、どれほど外国人に伝わるのか?まさに「半信半
疑」だった。
●いざ上映
3回の上映に来てくれたお客さんの平均年齢は高かったと思う。ティーチインやQ&
Aで前にでたものの、私自身は緊張して、あまりお客さんの様子が目に入っていな
かったが、映画にも出演している娘に、今回記録カメラマンとして、ビデオを撮っ
てもらっていたところ、「涙ぐんでいた人がいたよ」などと、後で教えてくれた。
山岸さんは、脳梗塞から半身不随となり、奥さんにも先だたれて、老人福祉施設で
暮らしている。オランダを含むヨーロッパでも高齢化による問題というのがあり、
その点共感できた、という感想もあった。
Q&Aで印象に残っているのは、ある女性から、「人類の進歩と調和」という、日
本万博でのスローガンに対して、作品中で疑問を呈するような姿勢があることに、
「進歩を否定するのか?」という質問があったことだ。
これに対し、私は通訳が考えて答えてくれるのがもどかしく、日本語と英語まじり
で、「それは、何のために、誰のために、あるのか、ということが問題だ」と答え
た。
●映画祭という場
ロッテルダムはEUでも有数の商業の街であり、映画祭でもシネマートという、映
画の企画市場が有名で、映画祭参加者にも、そういったビジネスに結び付けるため
に個別に相談の場を設けてくれている。そこで話を訊いて、ようやく、たくさんの
プログラムの中で見てもらうには、事前にアプローチして、スケジュールの中に入
れておいてもらわないと、分刻みで移動していく人たちには足を運んでもらえない
のだということに気づく。
しかし、そういったマーケットでの商品としての映画というものと、自主制作や非
商業的な映画とが両方存在するのが、ロッテルダムの面白いところでもある。
また、上映会場以外のところでも、映画を見た人から、「ドキュメントと言ってる
が、あれは全部役者が演じたものなんじゃないかと議論したよ」と話しかけられた
り、2回見にきてくれた人、メールアドレスを交換して、あとで感想を寄せてくれた
人などを通して、人間が生きていく上で生まれてくる問題や、悩み、苦しみ、喜び
というのは、別に人種によって変る訳ではないのだと、改めて感じることができた
のも、映画祭に参加してよかったと思った点だった。
余談だが、この後取材でベルリン国際映画祭に行った時に、ロッテルダムのプログ
ラマーに再会し、「偶然だね!」というと、「いや、我々は同じ仕事を別の場所で
やっているだけだから必然だよ」と答えていた。
●親の心境
外国語が全くわからない娘を、外国人だらけの状況に連れていったのだが、意外に
物怖じすることなく、元気に飯を平らげ、チラシまきもせっせとし、まさに案ずる
より産むが易しというのを実感。
この夏から東京での劇場公開が始まるが、子供と同様、映画も見る人とともに勝手
に育っていってくれるのが一番である。どれだけ育ってくれるか、ふつつかな親と
しては、とにかくやれることを精一杯やって、見守っていくしかない。
★『半身反義』の上映等についての詳細は、下記をご覧ください。
HP: http://hanshinhangi.com/
mixiコミュ: http://mixi.jp/view_community.pl?id=2636484
■竹藤 佳世(たけふじ・かよ)
映像作家集団「パウダールーム」代表。『骨肉思考』でイメージフォーラムフェス
ティバル98大賞受賞。『垂乳女』『殯の森』(河瀬直美監督)スタッフ、『実録・
連合赤軍』(若松孝二監督)メイキング・ディレクター。6月28日からアップリンク
Xで始まる、過去作品の上映『竹藤佳世映像個展』と、7月5日より池袋シネマ・ロ
サにて『半身反義』の公開との双子を抱えて、とにかく疾走中。
◇────────────────────────◆◇◆
■告知:土本典昭の待望の新著
「ドキュメンタリーの海へ―記録映画作家・土本典昭との対話」、まもなく発刊!
1960年代から小川紳介とともに、戦後のドキュメンタリー映画を牽引してきた土本
典昭。自らの半生を皮切りに、『ある機関助士』『ドキュメント路上』『パルチザ
ン前史』『水俣―患者さんとその世界』『水俣一揆』『不知火海』などの自作につ
いて、縦横無尽に語りつくす。
聞き手は、石坂健治を始めとする『映画は生きものの記録である 土本典昭の仕
事』のスタッフである。本書は土本典昭の魂の告白であり、ある映画作家の戦後史
でもある。
土本典昭−1928(昭和3)年、岐阜県土岐市生まれ。祖母の闘病生活もあり極貧の中
で育つ。下級官僚の父親の転勤に従い、小学生のとき東京・麹町に転居。軍国少年
として成長し、やがて終戦をむかえる。翌年早稲田大学に入学し、ほどなくして日
本共産党に入党。その後コミンフォルム批判により党は所感派(主流派)と国際派
に分裂するが、土本は国際派に属す。都下小河内ダムへ山村工作隊員として活動す
るも逮捕され、刑をうける。その後、離党。この頃、羽仁進の作品『教室の子ども
たち』『絵を描く子どもたち』に衝撃を受け、映画の醍醐味を知る。1956年、岩波
映画製作所に入社するも翌年退社。以後フリーとして、一貫してドキュメンタリー
の道を駆け続ける。1961年、「青の会」を結成し、黒木和雄、小川紳介、大津幸四
郎、岩佐寿弥たちと合評会や映画研究を開始。ライフワークとなる水俣作品を軸に、
ドキュメンタリー映画の制作に打ち込むことになる。
★土本典昭・石坂健治著
「ドキュメンタリーの海へ―記録映画作家・土本典昭との対話」
A5判上製376ページ、写真多数、装丁:鈴木一誌
定価3600円+税、7月20日発行予定
◇────────────────────────◆◇◆
■上映:ひろしま屋根屋のロードムービー『藝州かやぶき紀行』
ポレポレ東中野にて、6月27日(金)まで上映
『藝州かやぶき紀行』【撮影・構成・語り】 青原さとし
(ドキュメンタリー/2007年/カラー/DV/90分)
予告編 http://jp.youtube.com/watch?v=lrrxyr3Hmro
公式サイト http://dotoku.net
【製作】(株)新日放・Imagine
【配給】『藝州かやぶき紀行』上映実行委員会
【内容】広島在住のドキュメンタリー監督、青原さとしが、故郷・広島で二年かけ
て仕上げた渾身のドキュメンタリー映画。
かつては広島市内の都市周辺ですら軒をつらね、明治時代後期から昭和30年代まで
に、広島の茅葺き職人が、関西、山口県、北九州などに大量に出稼ぎにいき「芸州
屋根屋」という名を広め隆盛を極めたといわれている。
しかし近年、非情なまでの時代の流れによって、いまや風前の灯火となった。
映画では東広島市志和堀唯一の茅葺き職人・石井元春さんが行う茅刈り、茅ヘギ、
茅葺き、ハサミ入れなど屋根葺き替え作業の全工程を主軸に、広島県内各地、関西、
山口県、北九州方面まで足をひろげ、職人や生活者をたずね、ときには重く、とき
にはユーモラスに、その実像に迫っていく。
忘れられてゆく茅葺き民家、その未来への願いとは!
■ポレポレ東中野 6月27日(金)まで絶賛上映中!
上映時間:10:20より1回上映
入場料金:一般1,500円 大学・専門1,300円 中高シニア1,000円
★青原さとし最終連続トーク!6月23日(月)〜27日(金)10:20上映終了後
ポレポレ東中野 http://www.mmjp.or.jp/pole2/
■他、今後の予定
6月22日(日)京都美山町
<『藝州かやぶき紀行』プレミア先行上映&バスツアー>
http://www.rcsmovie.co.jp/minami/2008/kaya/tour.html
〜バスをチャーターし京都市内のお客さんも募る。
茅葺きの里・美山町にて茅葺き若手職人による説明会アリ
7月7日(月)京都みなみ会館 関西先行ロードショー
以後 広島 横川シネマ他順次公開予定!
◇────────────────────────◆◇◆
■上映:『コミュニストはSEXがお上手?』公開のお知らせ
山形国際ドキュメンタリー映画祭2008のドイツ特集で上映され、満員札止めになっ
た話題のドキュメンタリーが、遂に一般公開されます!
★かつて鉄のカーテンで仕切られていた東西ドイツ。共産主義と自由主義?大きく隔
たっていたその生活は、ベッドの中にも及んでいた。
★東ドイツの女性たちは早くからセックスに目覚め、オルガスム経験者は西ドイツ
の女性たちを凌いでいる。さらに東ドイツの男たちのペニスは、西ドイツ男性のそ
れよりも長い?!?
★ベルリンの壁の崩壊後、社会学者たちの調査で衝撃の事実が次々と判明。一体何
故、こんな結果になってしまったのか?西ドイツは、街中にセックスがあふれ、男
たちはその恩恵に預かっていたのではなかったか??当時のニュース映像やアニメを
駆使して、東西ドイツのセックス対決が綴られる、驚異の「科学」ドキュメンタ
リー!
★2008年6月21日〜 渋谷・ユーロスペースにてレイトロードショー、
以下全国順次公開
◆ 『コミュニストはSEXがお上手?』ホームページ:
http://www.pan-dora.co.jp/
◇────────────────────────◆◇◆
■上映:京都シネマ「特集:土本典昭の世界」
2008年7月5日〜11日
http://www.kyotocinema.jp/index2.html
●7月5日(土)12:40〜『映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事』
●7月6日(日)〜7日(月)
12:40〜『映画は生きものの記録である』
14:35〜『不知火海』
17:30〜『水俣一揆』
●7月8日(火)〜9日(水)
12:40〜『映画は生きものの記録である』
14:35〜『不知火海』
17:30〜『水俣〜患者さんとその世界〜』
●7月10日(木)
12:40〜『映画は生きものの記録である』
14:35〜『不知火海』
17;30〜『水俣一揆』
●7月11日(金)
12:40〜『映画は生きものの記録である』
14:35〜『不知火海』
17:30〜『水俣〜患者さんとその世界〜』
当日・一般:1200円
大学以下・シニア:1000円
リピーター割引あり(4作品共通。半券持参で1000円)
京都シネマ:京都市下京区烏丸通四条下ル西側 COCON烏丸3F
TEL075-353-4723 kyotocinema@kisaragisha.co.jp
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■募集:「自作を語る」などの投稿、歓迎!
「自作を語る」欄は、監督自らが作品について語るコーナーです。制作した動機や
撮影のポイント、編集で心がけたこと等を内容に盛り込んで頂きたいと思っていま
す。その他の投稿も歓迎します。「自作を語る」は1600字程度。監督のプロフィー
ル(150字)、作品のデータ、上映スケジュール、HP等をお知らせください。
原稿締め切り:配信日(1日&15日)の3日前までに、下記に送信ください。
E-mail: visualtrax@jcom.home.ne.jp 伏屋まで
◇────────────────────────◆◇◆
■上映の告知の有料化とカンパのお願い
■伏屋 博雄(本誌編集長)
neoneoの購読は無料ですが、経費を(その大部分は稿料ですが)賄うため、上映等の
告知は有料にしています。なお皆様にカンパもお願いしていますので、ぜひご協力
ください。
(1)上映等の告知の有料化 40字×30行(行数の空きも計算)以内につき、2,000円
です。それ以上の行数の場合は加算します。
(2)カンパのお願い 一口2,000円。何口でも。
送金方法:郵便振込み:00160-8-666528 neoneoの会、又は、
みずほ銀行池袋支店、普通口座、2419782 (有)ネットワークフィルムズ
(銀行振込の場合は、その由を visualtrax@jcom.home.ne.jp 伏屋宛にお知らせく
ださい。)
以上、neoneoの継続ため、よろしくお願い致します。
┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃06┃■編集後記 伏屋 博雄(ふせや・ひろお)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●『バックドロップ・クルディスタン』の野本大監督がクルド一家をコトコン追及
しようとする作家魂を綴っている。難民申請を拒否されトルコに強制送還されてし
まった家族がいたことはメディアで大々的に喧伝されたから、ご記憶の読者も多い
と思う。野本さんはその親子を追って、ついにはトルコに旅立つ。人道的立場から
ではない、何かに突き動かされて…それは何か? 眼前には「民族、国家、そして
個々それぞれのヒストリーや主張が複雑に絡み合」っていた。野本さんはこう呟く
のだ―「知るというのは怖い。知った途端に、知ったものより多くの疑問が湧き出
てくる。」
●日本ではすでに絶版になっている小川紳介の「映画を穫る」が中国で発行され、
好評に気をよくした出版社は、今度は土本監督の本を出版しようと目論んでいると
いう。実際、「映画を穫る」は中国の若者にドキュメンタリーへの関心を持たせ、
鼓舞する書であるようだ。また、『満山紅柿』のポン・シャオリン(彭小蓮)が小
川紳介との交流を記録した本、「理想主義的困惑」も話題になっていると聞く。
こうした背景もあるのか、「北京ドキュメンタリー映画交流週」が先月末に行われ、
特集「小川紳介レトロスペクティブ」が設けられ、小川作品8本と関連作品4本が上
映された。このことはかって小川プロのスタッフだった私にとって待望の企画であ
ると同時に、中国での評価の如何が大きな関心事でもあった。
そもそも「小川紳介レトロスペクティブ」開催は、日中の関係者とボランティアの、
献身と奮闘を抜きにしては実現しなかったのだ。中国語への翻訳、カタログの作成
など、私がわずかながらに聞き知っていることだけでも大変さを感じていたのだが、
ボランティアで駆けずり回った前田佳孝さんのレポートは、こうした一端を紹介し
ながら、中国ドキュメンタリーのエネルギー、水準を活写している。そして至福の
宴が終わり、日中双方が弾ける様子に、思わずニンマリしてしまったのである。
ところで文中、前田さんは注目すべき発言をしている。「第五世代」と「第六世
代」の現状に言及し、前者は「政治的な問題を回避し」ており、後者は「オリエン
タリズムに傾いて」いるとして、痛烈に批判しているのである。ことにジャ・ジャ
ンクーの新作『二十四城記』に対しての容赦のない批判はショックだ。結論として、
前田さんは「今中国で見るべき作品はインディペンデント映画だ」と断言する。中
国映画の動向は見逃せない。
●『半身反義』の竹藤佳世監督からロッテルダム映画祭の投稿があった。小学生の
娘さんを同伴しての参加である。見知らぬ土地で、ひとりでも多くの人に見てもら
いたいとの願いをバネに、チラシを配り、声をかける。その孤軍奮闘ぶりは爽快だ。
プログラマーとのやり取りも、どこかちぐはぐで可笑しい。『半身反義』は近日公
開されるが、本誌には他の作品の上映情報も掲載されている。じっくり読んで、映
画館へ行こう。
●「ドキュメンタリー映画のかたち」欄に3回連載してくださった安井喜雄さん、あ
りがとうございました。今後も貴重なフィルムの保全、映画製作、プロデュース等、
多方面のご活躍を期待します。
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