映画関係者必読のメールマガジン。プロデューサー、監督、評論家、映画館支配人など、さまざまな立場からこれからのドキュメンタリー映画を熱く語ります。
- 最新号:2008-10-01
- 発行周期:月/2回
- 読んでる人:1782人
- 創刊日:2003-09-01
- Score!:82点
- コメント数 : 2
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ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo 102号 2008.5.15
発行日: 2008/5/15∽∽∽∽∽∽ HEADLINE ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
†01 ■ドキュメンタリー映画のかたち
2年目を迎えた神戸映画資料館 安井 喜雄
†02 ■列島通信 ≪東京発≫
まだ見ぬ『コロッサル・ユース』 濱 治佳
†03 ■広場
■新・クチコミ200字評!(74)
『津軽の地蔵(ジンジョ)さま』『茨の同盟』『色彩の記憶』
『緑の海平線〜台湾少年工の物語』『中村三郎上等兵』
(以上の評、清水 浩之)
■投稿:バックドロップ野本・ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭に
参戦
上映—不安とトキメキ 野本 大
■上映:大阪・シネ・ヌーヴォX(5/17〜30、2週間)
『映画は生きものの記録である』&土本作品
■上映:「人間を撮る ドキュメンタリーがうまれる瞬間(とき)」
出版記念
『延安の娘』『蟻の兵隊』アンコール上映
5/24〜5/30一週間限定! ポレポレ東中野
■募集:「自作を語る」などの原稿募集!
■上映の告知の有料化とカンパのお願い 伏屋 博雄
†04 ■編集後記 伏屋 博雄
★バックナンバー閲覧はこちらまで
まぐまぐ配信 http://blog.mag2.com/m/log/0000116642/
melma!配信 http://www.melma.com/backnumber_98339/
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┃01┃□日本のドキュメンタリー映画のかたち
┃ ┃■2年目を迎えた神戸映画資料館(1)
┃ ┃■安井 喜雄
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●工夫を凝らす
昨年の3月に新長田の再開発ビル(アスタくにづか1番館)内にオープンした「神戸
映画資料館」が、いよいよ2年目の活動に入っている。資料館創設のきっかけは、韓
国映画などの輸入配給で知られる神戸の「アジア映画社」社長の朴炳陽さんが、新
長田で活動するNPO法人・神戸定住外国人支援センターの金宣吉さんを紹介してくだ
さったことから始まった。金さんは新長田を拠点に震災後の都市活性化を模索中で、
神戸市の都市計画担当者や再開発ビルを管理する新長田まちづくり株式会社とのコ
ネクションを生かし、映画が街の活性化に資する役割を説いて、毎月のように会議
を重ね実現に向け活動してきた。当初から公的資金の導入を目指していたが、なか
なか何処も財政難。暗中模索が続く中、運良く兵庫県の地域活性化のための3年間の
補助金が確保できたことからトントン拍子に資料館オープンへと動き出した。
この資料館は私たちが大阪でこれまでに収集したフィルム、宣材、書籍、雑誌、撮
影・編集・録音・映写機材などの資料を一同に集め整理し、みんなが利用しやすい
施設づくりを目指している。倉庫スペースとは別に38席の小さい上映スペースとカ
フェ・スペースがあり、気軽に立ち寄ってお茶を飲んだり映画を見たりできるよう
に設計されている。資金的な問題から映写機材は新たな導入を避け、すでに収集し
たものを再利用した。その昔、池袋のスタジオ200に設置されていた新響製の据付映
写機を改造した。サイレント映写用にモーターを交換しインバータで回転数を制御
できるようにし、通常の2枚羽根シャッターを3枚に変更してフリッカーを軽減した。
音声もダイシアン・トラック(従来の音声トラックの色は黒だが、最近の映画に多
く使用される青(シアン)のトラック。環境破壊の一因である銀の使用抑制のため
に考案された)が多くなっているので、大野技研製のレーザー・スリット(注:赤
色レーザー光源を組み込んだスリットレンズのこと。音声を読みとるスリットレン
ズに照射する従来の光源はタングステン・タイプのエキサイタ・ランプだったが、
最近のほとんどの35ミリ映写機はレーザー光源を使用している)に変更してドル
ビーSR映写も可能にした。状態の悪い昔のフィルムから最近のフィルムまで何でも
上映できるように、自動切り替えやノン・リワインド(注:映画館は数巻に分かれ
ているフィルムを1本に繋いで映写するところが多い。大きな円盤に1本化したフィ
ルムを乗せ、回転しながらフィルムを送り出すと映画が終わってから巻き返ししな
くても頭が出るように設計された装置)などの新兵器は使用せず昔からの手動切り
替え式とした。
ということは、操作する人間が映写機に張り付いていなければならないということ
になり、フィルムを扱える人材の確保が課題となっている。上映するフィルムも古
いのが多いので特に16ミリはフィルム収縮によりパーフォレーション(注:フィル
ムを1コマづつ送り出す目的で画面の横に空けられた四角い穴。35ミリは1コマに4
パーフォレーション、16ミリは1コマに1パーフォレーション)のピッチが縮小して
いたり、テープスプライス跡が夏冬の気温変化による収縮で間隔が空いてピッチが
広がってしまっていたりして上映中に画面が流れる場合があるので、上映前にパー
フォレーションの補修やスプライス箇所(注:接合箇所のこと。従来は有機溶剤ア
セトンを主原料にしたフィルムセメントで接合していたが、テープ・スプライサー
が発明されてからはスプライシング・テープで接合することが多くなった)の点検
など、実に面倒な作業をしなければならない。私ができるだけ上映するようにして
いるが、千葉県成田の歴史伝承委員会で旧・小川プロ作品のフィルム点検作業を行
っている映像作家の崟利子さんに応援をお願いしている。
映画評論家・山根貞男氏を迎えての連続講座「加藤泰の世界」や、高砂市在住の弁
士さんを迎えての「井上陽一の活弁映画シリーズ」、neoneo読者にはお馴染みのド
キュメンタリー作家の業績を振り返る「小川紳介監督全作品上映」、韓国映画の旧
作を集めた「韓国映画特集」など、これまで市内の映画館では見ることができない
作品を中心に上映してきた。今はシネコン全盛の時代となり、震災で大打撃を受け
た新長田には映画館は存在しないが、その昔は映画館がたくさんあったらしい。こ
の地に小規模ながら映画を上映する施設ができたことで、昔を懐かしむ地元の方々
にたいへん喜ばれている。また、旧作を見直すことができ、資料調べもできるので
遠方からの映画ファンが訪れることが多くなってきた。
ただ、解決すべき課題は山積している。倉庫の移転費と映写室やカフェスペースな
どの建設費、開館後の運営費用などでこれまでの補助金は消え、将来の資金展望が
まったく立っていない。困った。みなさんのご支援をお願いいたします。
市民サポーター:年間5,000円(1口)
企業(団体)サポーター:年間50,000円(1口)
郵便振替口座:00940-9-298784
加入者名:神戸映画資料館画を支える会
問い合わせ:神戸映画資料館 tel/fax 078-754-8039
http://www.kobe-eiga.net/
■安井 喜雄(やすい・よしお)
1948年神戸生まれ。1967 年から自主上映に関わり、1974年に「プラネット映画資料
図書館」を友人とともに設立し映画資料の収集と上映を行う。小川紳介監督の依頼
で1989年の第1回山形国際ドキュメンタリー映画祭から日本のドキュメンタリーを回
顧するプログラムを担当。その後も「亀井文夫特集」「日本に生きるということ」
などの特集を担当。彭小蓮・小川紳介の『満山紅柿』、井上修の『出草之歌』、朴
壽南の『命果報(ぬちかふう)』(制作中)などに関わっている。
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┃02┃□列島通信 ≪東京発≫
┃ ┃■まだ見ぬ『コロッサル・ユース』
┃ ┃■濱治 佳
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来る5月24日にシアター・イメージフォーラムにてペドロ・コスタ監督の『コロッサ
ル・ユース』(2006)がいよいよ公開される。(その後、大阪、名古屋、広島、新
潟、札幌にて順次公開予定)最近は、その配給にまつわるシゴトの比重が大きいの
で、思い切ってこの場をお借りして『コロッサル・ユース』について触れたい。
周知のように、ポルトガル映画祭2000にて『骨』(1997)が初上映され、日本の地
を踏んだコスタ作品は、続いて『ヴァンダの部屋』(2000)が山形国際ドキュメン
タリー映画祭2001で上映、2004年に全国劇場公開された。アテネフランセ文化セン
ターでの「ペドロ・コスタ監督特集」(2004、2008)やせんだいメディアテークで
の「ペドロ・コスタ 世界へのまなざし」(2005)といったレトロスペクティヴに
後押しされ、今やその名前と作品がじわじわと全国的に浸透してきている作家と言
えるだろう。
『コロッサル・ユース』も、ペドロ・コスタ監督は『骨』以来、映画作りの場とし
て生息しているリスボン郊外のフォンタイーニャス街の住民たちとの映画制作を試
みている。そして本作は、既に失ったものを抱え、かつてあったものをわずかに感
じながら生きるわたしたちの現代の世界を描ききる。
住民のひとりで主人公ヴェントゥーラと、ヴェントゥーラの「妻」、そして「子ど
もたち」。「子どもたち」には、前作『ヴァンダの部屋』の主人公ヴァンダもいる。
彼、彼女たちの現在の居場所をヴェントゥーラは訪ね歩き、いつしか時空を横断し
ながら映画は進んでいく。
ヴェントゥーラは何度も「妻」への手紙を諳んじ、また文盲の若者に覚えさせよう
とする。そして、ヴェントゥーラは彼の「曲」である革命歌をかける。それは、ま
るで口述伝承のように詩的な歴史の継承行為のようだ。そこに、ヴェントゥーラた
ちが呼吸した建物の残像が写し込まれる。そうしたひとつひとつの行為、ひとつひ
とつの建物、音、時間が、かつて確かにあったもの、今あるもの、そして何よりも
美しいものとして、映し出される。やがて、『コロッサル・ユース』は、ヴェント
ゥーラの恐ろしく抑制された「演技」や佇まいから、映画を作るというプロセスを
内包しつつ、映画に流れる複数の時間と共に、作品を見るわたしたちをもまなざす
ような境地へ誘い込む。それは、『コロッサル・ユース』が、また『コロッサル・
ユース』を見るものが探索し続ける、何にも替えられない155分なのだ。
この原稿が発行される5月15日は、沖縄返還から36年を迎える日にあたる。先日、山
形映画祭2003沖縄特集でも紹介させて頂いたジャーリスト森口豁さんが演出をてが
けたTVドキュメンタリー『戦後40年・若きオキナワたちの軌跡』(1985年放映)を
見る機会に恵まれた。東京・狛江市にある沖縄県学生寮「南燈寮」が、沖縄返還か
ら10年の歳月を経て、解体され、新築されようとしているその時にカメラを据えた、
本作は戦後まもなく米軍支配下の沖縄を逃れ、南燈寮に身を寄せて学んだ沖縄の
「若き魂たち」は、戦後の40年をどのように生き、いまという時代をどのようにみ
つめているのかを追う。作品の内容に深くは立ち入らないが、ここに『コロッサ
ル・ユース』に表出する「若さ」と白い壁、鍵の付いたドアを発見し、ヴェント
ゥーラの魂を宿らせながら、放映から20年経ち5月15日を迎えることを考えるのだっ
た。
ペドロ・コスタ自身も言うように、この映画の基盤にあるフォンタイーニャスとい
う貧民街の破壊と住人たちの移住計画といった政治的暴力は、リスボンだけでなく、
世界中どこにでも起こっていることだ。もちろん、本作をリスボンで見るのと東京
で見ることの意味は違うが、そうした既存の署名性から自由な、より根源的なもの
を『コロッサル・ユース』は提示する。それは、見るものによって受け取るものが
異なるだろうが、軸にあるのは、映画を作るということ、映画を見るということ、
映画でできるということ、の深意だ。だからこそ、『コロッサル・ユース』は何度
も繰り返し見られなければならないだろう。そして、そのことは、見るものを豊か
にしていき、来るべき「映画」を想像していく微光の一筋となる。
■濱治 佳(はま・はるか)
山形映画祭の方では、秋に恒例の「ドキュメンタリー・ドリーム・ショー:ヤマガ
タin東京2008」を開催予定です!また、ひと味ふた味違うプログラムをお楽しみに。
山形映画祭2007上映作品、『秉愛(ビンアイ)』(劇場未定)や『バックドロッ
プ・クルディスタン』(ポレポレ東中野にて7月)『コミュニストはSEXがお上
手?』(ユーロスペースにて6月)の公開も決まりましたので、そちらもご注視のほ
どを!
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┃03┃□広場
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■新・クチコミ200字評!(74)
■清水浩之(第11回 ゆふいん文化・記録映画祭 5/30〜6/1開催!
http://movie.geocities.jp/nocyufuin/home.html)
オススメの作品を200字以内の短評で紹介してください!映画・ビデオ・テレビなど
皆さんがノンフィクションだと思う作品だったらなんでも可!もちろん「オススメ
しない映画とその理由!」もOKです。
本文とは別に「あなたのお名前(ペンネーム可)/掲載確認のご連絡先(メールアドレ
スor電話)/題名/制作年/監督/見た場所(よろしければあなたのプロフィールや
近況も)を付記してお送りください。
清水浩之 E-mail:shimizu4310@bridge.ocn.ne.jp /ファクス:03-3703-0839
この度は「ゆふいん文化・記録映画祭 第一回 松川賞」に多数のご応募をいただき、
誠にありがとうございました。応募総数は64作品。一次選考を通過した26作品の中か
ら、最終選考により5作品が松川賞入選作として選ばれました。6月1日(日)の上映
後、大賞および観客賞を発表する予定です。今回は入選5作品をクチコミさせていた
だきます。
B-279『津軽の地蔵(ジンジョ)さま』
2007年/制作:大峠プロ/企画:国立歴史民俗博物館/監督:鈴木康敬
ゆふいん文化・記録映画祭「松川賞」入選作品
国立歴史民俗博物館による映像記録シリーズ最新作。五所川原・喜良市集落の女性
たちが共同でお地蔵さまを守っていく姿から、地蔵信仰を支えてきた村の歴史を見
つめる一編。お母さんたちが唱える♪なーむあーみだーぶ、なーむあーみだーぶ…
という不思議な旋律に、津軽のスピリチュアル・ワールドが味わえます。今や稀少
な「16mm文化映画」ならではの、必要なカットを必要な長さのフィルムでキッチリ
と切り取る構成が心地良い30分!(清水浩之)
B-280『茨の同盟』
2006年/制作:早稲田大学川口芸術学校/監督:吉田和史
ゆふいん文化・記録映画祭「松川賞」入選作品
ワイドショーの常連・ゴージャス松野氏が地元福島でのプロレス興行に奔走する姿
を、モノクロ画面の「B級劇画」タッチで描く異色作。松野氏の見事なダメ男っぷ
りに唖然としつつ、彼を支える演歌歌手・田代純子さんのバイタリティに引き込ま
れ、遂には二人を応援してしまう福島版『バッファロー66』(笑)。バカにしつつ無
視はしない地元の人間関係も含め「人生捨てたもんじゃないな」という気までして
くる、観客も元気になれる映画。(清水浩之)
B-281『色彩の記憶』
2007年/制作:ケイビープランニング+ポルケ/監督:御法川修
ゆふいん文化・記録映画祭「松川賞」入選作品
白磁で知られる有田窯の陶工・馬場真右エ門があえて挑む、鮮やかな紅色の「辰砂
(しんしゃ)」…門外漢としてはやや敬遠したくもなるテーマですが、作り手自身が
「門外漢なりの視点」で目を凝らし、耳を澄まして陶工の世界を観察した結果、
瑞々しいニュータイプの文化映画が誕生!「手元」にこだわった撮影、ナレーショ
ンを排し、無声映画のように切れ味鋭いタイトル文字、ハッとするインサートカッ
トで観客を「のせる」演出に拍手。(清水浩之)
B-282『緑の海平線〜台湾少年工の物語』
2006年/台湾+日本/製作:藤田修平ほか/監督:郭亮吟
ゆふいん文化・記録映画祭「松川賞」入選作品
第二次大戦中、神奈川県大和の海軍工廠に徴集された8000人の台湾人少年達の「忘
れられた歴史」を、残された資料と数十人の証言から掘り起こした労作。戦後「放
置」された彼らが日本の闇市で、国民党が逃げ込んだ台湾で、そして新中国で数奇
な運命を歩む姿を、神奈川育ちの某都知事にもぜひご覧いただきたいところ。証言
と資料映像の組み合わせが抜群に上手く、昨今のドキュメンタリーとしてはスロー
な語り口もかえって効果的です。(清水浩之)
B-283『中村三郎上等兵』
2008年/監督:中村のり子(イメージフォーラム映像研究所 卒業制作)
ゆふいん文化・記録映画祭「松川賞」入選作品
今は亡きおじいちゃん・中村三郎氏の兵隊時代を、家族や戦友たちの記憶から辿る
「孫世代の戦争体験記」。冒頭で「私」という視点をフィックスしておいて、後は
山あり谷ありオチあり(笑)の展開で、生前をよく知るはずの祖父の「知られざる部
分」を紐解いていく巧みな構成に引き込まれます。満州の軍人としてもシベリアの
捕虜としても優秀だった(!)人物像から、兵隊生活もまたひとつの「青春」である
ことを発見するのが面白いです。(清水浩之)
また、最終選考で惜しくも選外となった作品として『そこにこもる…』(小池篤
史・萩原佑太監督)『あなたの笑顔を覚えていたい』(福田和代ディレクター)
『写真をよろしく』(遠藤協監督)『人馬一体〜ミサイルテンリュウ砂地の頂へ』
(島野貴之監督)『多摩川暮らしの手帖』(内村茂太監督)『めぐる』(石井かほ
り監督)『歩く花』(谷本涼介監督)『日本のアウトサイダーアート』(代島治彦
監督)をご紹介させていただきます。皆様からたくさんの素晴らしい作品をお送り
いただきましたことを心より感謝します。次回以降もぜひご参加くださいますよう、
neoneo読者の皆様にお願い申し上げます。
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■投稿:バックドロップ野本・ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭に参戦
■野本 大
●上映—不安とトキメキ
4月19日〜25日に開催された「ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭」に『バックドロ
ップ・クルディスタン』が招待された。監督以外渡航費用が出ない為、大澤Pの愚
痴が連日続いていた。もうウンザリだった。劇場公開に向け多忙を極める中、僕は
監督という特権を利用して、逃げるようにスイスへ飛び立った。僕に とっては初め
ての海外映画祭だ。
事前に連絡のやり取りをしていたのにもかかわらず、先方がルーズなのか海外はそ
ういうものなのか、最後まで日本語通訳がいるのかわからず、その上ホテルまで自
力で行かざるをえなくなった。そして不慣れな飛行機。その他にも小さなことが気
になって仕方がない。「映画を観せる」という以外の心配事があまりにも大きすぎ
る。相当な神経質な性格で、映画の中の僕とギャップを感じる人がいてもおかしく
はない。既に、帰る日が待ち遠しい。
日本では山形国際ドキュメンタリー映画祭を始め、まだ数回しか上映はしていない
が、自分なりの手ごたえは感じていた。お客さんの声を実際聞くことができたし
「映画の狙い」を大きく外れることない反応を頂いていた。ただ「観せる」という
のは、震えがくるくらい緊張するもので何度やっても慣れることはない。しかも今
回は異国のスイス。「日本の若者(自分)」がどう観られるのか、僕の思考はまさ
にその一点だった。
日本から乗り継ぎも含めて15時間。ようやくスイスの首都・ジュネーブに到着した。
迎えはなく、ここから映画祭が開催されるニヨンまで一人でたどり着かなくてはな
らない。「ニヨン国際映画祭というぐらいだからニヨンという駅に行けばいいだろ
う」という予測で電車に乗る。時間は夜の22時半、外は真っ暗。心臓 がバクバクす
る! どうにかニヨン駅に到着し、指定されたホテルに向かう。「オレは日本からき
た監督の野本大だ!」という一方的な英語で喋りチェックイン。正直、僕は全然英
語が喋れないので全てに困る。
翌日はもう上映当日。通訳がいることを信じ、上映会場に早めに待機。しばらくし
て、1人の女性が近寄ってくる。「バックドロップの監督ですか?私が今日の通訳を
します」と英語で問いかけてくるのをみると、日本語喋れないじゃん!。「英語が
喋れないんですよ!」と何度も事前に言ったのに…。まずい、困った。国際映画祭
で、自分の名前しか言えない監督の挨拶はかつてないように思うし、それだけは避
けたい。だけど来てくれた通訳は日本語が喋れない。
頭を抱えていると、奇跡が起きた!山形映画祭に携わる藤岡さんと阿部さんが会場
に駆けつけてくれた。事情を話し、通訳をやっていただくことに。これでどうにか
1つ不安が解消された。
会場は200人収容できる大きさ。約7割くらい埋まっていた。おそらく、この会場で
1番若いのは自分であったであろう。年配の方が目立つ。どこを見渡しても誰一人と
して僕の知り合いもいなければ、僕のことを知っている人もいない。当たり前だが
「映画」を観にきたのだ。つまり、映画を通して対話が行われるのである。
上映開始、僕も観る。やはりお客さんの反応が気になってしまう。映画が始まって
15分くらいであろうか、僕の後ろでガサガサと音がする。序盤だというのに、お客
さんが会場を出ていってしまった。それからまた15分後、数人が出ていってしまっ
た。前方のスクリーンより、後方のお客さんが気になって仕方がない。「このペー
スで出ていかれたら、大変なことになる!」と、最悪の状況を想定し、頭の片隅で
言い訳を考え始めていた。スクリーンに映る下手くそなカメラーワークがとにかく
気に障る。これは、上映終了後に聞いた話だが、他の映画と比べても、けっして大
勢の人が出ていったわけではなく、どちらかというと少なかったようだ。この時は
そんなことを知るはずもなく、心情の乱れが続いた。
ただ、映画が終盤になり、何度も観ているはずなのに映画に集中し始める自分がい
た。「映画の中の僕は、この状況を想定していただろうか?」と考えると、胸が熱
くなってきた。制作中はとにかく「撮らなければ!」という気持ちと「絶対作品を
作ってやるんだ!」という怒りみたいなものが心の中にあった。
本編が終了し、エンドクレジットが流れると、少しずつ拍手が起きる。お客さんも
序盤で出ていってしまっただけで、大勢が残ってくれていたようだ。自分が作った
1本の映画が、こうやって国境を越えて上映できていることに感動した。そして壇上
に登った僕は感動のあまり喋ろうとした内容を全て忘れてしまった。 戸惑った僕は、
今感動している心境を正直に述べてみた。すると、会場の空気も少しかるくなり、
僕の緊張も解けていく。司会の女性の方から「どうして作られたのか?」「カザン
キラン家族とは非常に仲良く見えるが、実際はどのように人間関係を築いたの
か?」など、オーソドックスな質問が続く。
お客さんとの質疑応答に入ると、数人の方が手をあげてくれ、皆、質問は2つ3つ。
どちらかというと、「難民問題」という方に興味があったように感じた。それは、
スイスも難民や移民の問題を抱えているのも強く関係していると思うし、この映画
を観て「どうして?」という疑問が出るのはけして不思議ではない。日本より遥か
に難民の認定はしているものの、近年、スイスもその難民受け入れの基準を厳しく
している。全く関係がないとは言えないであろう。その他には、撮影許可の問題や、
日本での公開はどうなっているのか、などの質問が出た。けしてこのような質問が
でるのは不思議ではないが、何かが胸の中で痞える。
ただ、次の質問をされた時、胸に痞えているものがわかった。
「日本ではどのように観てもらえたのか、反応を教えてくれ」という質問。
どう観てもらいたいのか?ということは、もちろん何度も考えながら制作をした。
ただ、作り手の狙いが100%伝わるのは難しいことで、また、自分が考えている以外
のことをお客さんから学ぶこともある。僕は今、まさにその中にいる。どこに着目
してもらえるのかは、その観ている人の、国籍、世代、時代背景、性格 …要素を挙
げたらキリがない。つまり映画を観せるというのも1人1人と向き合う行為であり、
そこで「映画の可能性」を確かめることにもなる。そして、頂いた意見を、作り手
側がどのようなスタンスで受け止めるのかで、作り手自身が、制作した映画をより
知ることになる。
僕は、「観せる」ことと「作る」ことは非常に似ている部分があると思う。それは、
「予想外」をどこかで期待しているのである。それがドキュメンタリーであること
の魅力であると思うし、それに出会いたいとも思う。
会場を出ると1人の女の子が話しかけてきた。僕より2つ年上のようだ。「どこで映
画を勉強したのか?何歳なのか?」というちょっと内容とは違うけど、すごく食い
ついてくる。映画の製作過程を伝え、くだけた雰囲気で話を進めた。 僕が映画学校
を辞め、何故この家族を撮影しようと決めたのかを説明した時、この女の子の頬が
一瞬にして緩むのをみると、僕は彼女に「予想外」を与えたのかもしれない。
母校である映画学校の講師から「あれこれ喋るより、1本の映画を観せる方が自分を
理解してもらえる」と言われたのを、けして忘れたことはない。 おそらく、それを
信じて映画を作っている自分がいる。さほど年齢の変わらないこの女の子は、もし
かするとこの映画の目指す方向を汲み取ってくれたのかもしれない、そう感じられ
ただけでとても気持ちの良い気分になった。
その後もその子は街で僕を見かけると、どこで覚えたかわからない日本語と英語を
交え「あなたの映画、GOODね〜」と。そんなことを言われたら恋をしそうになる…
ただ現状は、浮かれたことは言っている暇はなく、日本に帰ると多忙な宣伝活動の
日々が待っていた‥
■野本 大(のもと・まさる)
1983年生まれ。現在、自主配給・宣伝での劇場公開に向け必死!!!
『バックドロップ・クルディスタン』は7月5日〜ポレポレ東中野にて公開です!
HP http://www.back-drop-kurdistan.com/
mixiコミュ http://mixi.jp/view_community.pl?id=3000993
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■上映:大阪・シネ・ヌーヴォX『映画は生きものの記録である』&土本作品
日程:2008年5月17日(土)→30日(金)2週間
会場:シネ・ヌーヴォX(大阪・九条) 地下鉄中央線「九条駅」6番出口徒歩3分
(シネ・ヌーヴォ2F) tel.06・6582・1416
http://www.cinenouveau.com/
タイムテーブル〈各回入替制〉
●5/17(土)
11:00『映画は生きものの記録である』
13:00『ある機関助士』+『ドキュメント路上』 15:00『パルチザン前史』
17:30『映画は生きものの記録である』
19:30『みなまた日記−甦える魂を訪ねて−』
●18(日)
11:00『映画は生きものの記録である』 13:00『水俣−患者さんとその世界−』
16:20『水俣一揆−一生を問う人びと−』
18:30『映画は生きものの記録である』 20:30『よみがえれカレーズ』
●19(月)
11:00『映画は生きものの記録である』 13:00『よみがえれカレーズ』
15:30『ドキュメント路上』+特別上映 17:30『映画は生きものの記録である』
19:30『パルチザン前史』
●20(火)
11:00『映画は生きものの記録である』 13:00『パルチザン前史』
15:30『よみがえれカレーズ』 18:00『映画は生きものの記録である』
20:00『ある機関助士』+『ドキュメント路上』
●21(水)
11:00『映画は生きものの記録である』
13:00『みなまた日記−甦える魂を訪ねて−』 15:10『パルチザン前史』
17:40『映画は生きものの記録である』
19:40『水俣一揆−一生を問う人びと−』
●22(木)
11:00『映画は生きものの記録である』 13:00『水俣−患者さんとその世界−』
16:20『みなまた日記−甦える魂を訪ねて−』
18:30『映画は生きものの記録である』 20:30『水俣の図・物語』
●23(金)
11:00『映画は生きものの記録である』
13:00『水俣一揆−一生を問う人びと−』 15:15『水俣の図・物語』
17:30『映画は生きものの記録である』 19:30『水俣−患者さんとその世界−』
●24(土)
11:00『映画は生きものの記録である』
13:00『医学としての水俣病 第一部 資料・証言篇』
14:50『医学としての水俣病 第二部 病理・病像篇』
17:00『医学としての水俣病 第三部 臨床・疫学篇』
19:00『映画は生きものの記録である』
●25(日)
11:00『映画は生きものの記録である』 13:00『水俣−患者さんとその世界−』
16:15『不知火海』 19:10『水俣の図・物語』
●26(月)
11:00『映画は生きものの記録である』 13:00『医学としての水俣病
●第一部 資料・証言篇』 14:50『水俣の図・物語』
17:10『映画は生きものの記録である』 19:10『パルチザン前史』
●27(火)
11:00『映画は生きものの記録である』
13:00『医学としての水俣病 第二部 病理・病像篇』 15:10『不知火海』
18:10『映画は生きものの記録である』 20:10『よみがえれカレーズ』
●28(水)
11:00『映画は生きものの記録である』
13:00『医学としての水俣病 第三部 臨床・疫学篇』
15:00『ある機関助士』+『ドキュメント路上』
17:00『映画は生きものの記録である』 19:00『不知火海』
●29(木)
11:00『映画は生きものの記録である』
13:00『医学としての水俣病 第一部 資料・証言篇』
14:50『医学としての水俣病 第二部 病理・病像篇』
17:00『医学としての水俣病 第三部 臨床・疫学篇』
19:00『映画は生きものの記録である』
●30(金)
11:00『映画は生きものの記録である』 13:00『不知火海』
16:00『水俣−患者さんとその世界−』 19:20『映画は生きものの記録である』
料金:『映画は生きものの記録である』
一般1700円、学生1400円、高以下・シニア・会員1000円 (前売1400円)
※「土本典昭の世界」当日3回券ご使用の場合、+500円いただきます。
「土本典昭の世界」(当日のみ)一般1200円、学生・シニア・会員1000円
当日3回券3000円、会員3回券2400円
■「人間を撮る ドキュメンタリーがうまれる瞬間(とき)」出版記念
『延安の娘』『蟻の兵隊』アンコール上映
2008年5月24日(土)〜5月30日(金) 一週間限定アンコール!
料金:一般1500円/学生1300円/中・高・シニア1000円
10:40〜 延安の娘
13:10〜 蟻の兵隊
15:20〜 延安の娘(※5/24,25は休映)
17:50〜 蟻の兵隊
20:00〜 延安の娘
※5/24(土)13:10の回『蟻の兵隊』上映後
池谷薫監督トークショー&特別上映「黄土の民はいま〜NHKスペシャルより」
※5/25(日)13:10の回『蟻の兵隊』上映後
池谷薫監督トークショー&特別上映「西方に黄金夢あり〜NHKスペシャルより」
『延安の娘』予告編 → http://jp.youtube.com/watch?v=1_KET6PTeNg
『蟻の兵隊』予告編 → http://jp.youtube.com/watch?v=4HYU8yb6d4I
会場:ポレポレ東中野 http://www.mmjp.or.jp/pole2/
東京都中野区東中野4−4−1 ポレポレ坐ビル地下
03-3371-0088
◇────────────────────────◆◇◆
■募集:「自作を語る」などの投稿歓迎!
「自作を語る」欄は、監督自らが作品について語るコーナーです。制作した動機や
撮影のポイント、編集で心がけたこと等を内容に盛り込んで頂きたいと思っていま
す。その他の投稿も歓迎します。「自作を語る」は1600字程度。監督のプロフィー
ル(150字)、作品のデータ、上映スケジュール、HP等をお知らせください。
原稿締め切り:配信日(1日&15日)の3日前までに、下記に送信ください。
E-mail: visualtrax@jcom.home.ne.jp 伏屋まで
◇────────────────────────◆◇◆
■上映の告知の有料化とカンパのお願い
■伏屋 博雄(本誌編集長)
neoneoの購読は無料ですが、経費を(その大部分は稿料ですが)賄うため、上映等の
告知は有料にしています。なお皆様にカンパもお願いしていますので、ぜひご協力
ください。
(1)上映等の告知の有料化 40字×30行(行数の空きも計算)以内につき、2,000円
です。それ以上の行数の場合は加算します。
(2)カンパのお願い 一口2,000円。何口でも。
送金方法:郵便振込み:00160-8-666528 neoneoの会、又は、
みずほ銀行池袋支店、普通口座、2419782 (有)ネットワークフィルムズ
(銀行振込の場合は、その由を visualtrax@jcom.home.ne.jp 伏屋宛にお知らせく
ださい。)
以上、neoneoの継続ため、よろしくお願い致します。
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┃04┃■編集後記 伏屋 博雄(ふせや・ひろお)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●私が初めてプラネット映画資料図書館を訪ねたのは、ずいぶん昔になる。当時は
大阪北区堂山町にあった。倉庫として使うフロアーは足の踏み場もないほどぎっし
りと、フィルムや映画本が山積みされていた。奥の方に進むには、からだを斜めに
しなければたどり着けなかった。あまりの量に、代表の安井喜雄さんに、「どのく
らいあるんですか?」と訊くと、「さぁ?」との返答に二度びっくり。整理が追い
つかないようで、暫らく、映画アーカイブの山を茫然と眺めていた。その後、事務
所は同じ北区の万歳町に移転したのだが、あの資料群はどうなったのか、他人(ひ
と)ごとながら気になっていた。それはさながら、日本映画に傾注した者の膨大な
熱意と努力、偉大な人間知の蓄積だ!その収集にあたって、安井さんは長年、孤軍
奮闘してきた。
昨春、プラネットは神戸に格好の場所を確保し、神戸映画資料館を設立した。安井
さんたちはここにフィルム5,000本、映画書籍10,000冊、その他映画ポスターやス
チール写真、パンフレット、チラシを収蔵・利用できるようにし、上映スペースや
カフェスペースも備えて、利便性を高くした。流れは順風満帆と言いたいところだ
が、プラネットは相変わらず、資金難に直面しているようだ。安井さんには、今回
から3回の予定で、その後の顛末や今後の方向などを披露していただこうと思う。
フィルム用語は、デジタルの時代にあって理解できるように、少し長めの注をつけ
てもらった。
●6月1日から開催される「ゆふいん文化・記録映画祭」では今年から松川賞の第一
回目の入賞作品が上映される。60分以内という規定で64本の応募があり、最終選考
を経て5作品が入賞作品として選考された。本誌でその見どころを清水浩之さんが紹
介している。いずれも観たい作品ばかり。本映画祭は山形映画祭と同様、ドキュメ
ンタリー映画に特化した映画祭で、今後ますますドキュメンタリーに大きな刺激を
与えることを予感させる。
●『バックドロップ・クルディスタン』の野本大監督から投稿があった。ニヨン国
際ドキュメンタリー映画祭のレポートである。野本監督にとっては初めての海外映
画祭。そのトキメキと不安が混在する出立。そしてニヨンでは最大の不安が的中。
交渉していたにも拘わらず日本語の通訳がいない!さてどうなったか?その顛末を
交えて不安におののくレポートは率直だ。つい、笑いを吹き出しながら読んだ。
好感が持てた。
●「パリ発」の高橋晶子さんの原稿は、今回は見合せます。「パソコンの調子が悪
く、さらに、アパートの建物で電気の問題も発生し、インターネット接続自体がな
くなり今インターネット・カフェに来てい」るものの、締め切りに間に合わない、
とのことです。ご了承ください。
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