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映画関係者必読のメールマガジン。プロデューサー、監督、評論家、映画館支配人など、さまざまな立場からこれからのドキュメンタリー映画を熱く語ります。
- 最新号:2008-08-01
- 発行周期:月/2回
- 読んでる人:1912人
- 創刊日:2003-09-01
- Score!:82点
- コメント数 : 2
- メルマガID:98339
- バックナンバー:全て公開
- 発行者サイト:あり
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ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo 98号 2008.3.15
発行日: 2008/3/15∽∽∽∽∽∽ HEADLINE ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
†01 ■ドキュメンタリー映画のかたち
コミュニティシネマの日々(4−最終回)
コミュニティシネマのこれから 岩崎 ゆう子
†02 ■自作を語る
『船、山にのぼる』 本田 孝義
†03 ■ワールドワイドNOW ≪北京発≫
日中ドキュメンタリー映画史〜中国での小川紳介の影響〜
前田 佳孝
†04 ■列島通信 ≪名古屋発≫
「廣田緑:交換プロジェクト07」展における、タヒミックのドキュメント
映像 越後谷 卓司
†05 ■neoneo坐3月後半の上映プログラム
†06 ■広場
■新・クチコミ200字評!(70)
『ミラクルボディー 第1回 アサファ・パウエル 史上最速の男』
『小田実 遺す言葉』 『生きていてよかった』
『ノンフィクション劇場 市民戦争』 (以上の評、清水 浩之)
■告知:ANDファンド募集開始
■上映:『映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事』と
土本作品の上映( 3/18〜21、名古屋シネマテーク)
■上映:第2回 天神庵ドキュメンタリーまつり
〜ドキュメンタリーから見えるニッポン〜
(3/28〜30 千葉県松戸市、天神庵)
■上映:優れたドキュメンタリー映画を観る会
〜遙かなる記録者への道〜いのちの文化を求めて
(4/19〜4/26 東京・下高井戸シネマにて14作品上映)
■募集:「自作を語る」などの原稿募集!
■上映の告知の有料化とカンパのお願い 伏屋 博雄
†07 ■編集後記 伏屋 博雄
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┃01┃□日本のドキュメンタリー映画のかたち
┃ ┃■コミュニティシネマの日々(4−最終回)
┃ ┃■岩崎 ゆう子
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●コミュニティシネマのこれから
それほど、大きな町ではない。その町の商店街には小さいけれどいい本が見つけら
れる本屋さんがあって、その近くには映画館がある。ちょっと大きな公立図書館が
あって、その中には毎日(あるいは毎週末)映画を上映するシネマテークが併設さ
れている。そういう町があったら住みたいと思う。大体、そういう商店街にはいい
喫茶店とか、おいしい蕎麦屋とか、おしゃれではないけれどちゃんとしたレストラ
ンもあるだろうし、和菓子屋さんなどもあったりする。公共交通機関も機能してい
て、少しぐらい不便でも車がなくても生活ができる。街中から少し離れた公園には、
地元の作家のなかなかいいコレクションを揃えていると評判の美術館とか博物館も
あるかもしれない。
映画館の朝の回には近所のお年寄りや、子どもを保育園に送った後の若い母親がく
る。午後の回には期末試験が終わって一人で映画を見にきた高校生がいたりする。
夕方と夜の回には仕事を終えた人たちがくるだろう。昔、映写技師をやっていたお
じいさんが、映画館の若いスタッフと話をしていたりするかもしれない。シネマテ
ークでは、土曜日に「こども映画館」をやっていて、家族と一緒に子どもたちがや
ってくる。映画が終わったら、隣の図書館の会議室でおやつを食べながら、シネマ
テークのスタッフの人たちと映画の話をしたり、帰りに本を借りたりもできる。春
休みや夏休みには、「こども映画教室」もやっていて、パラパラまんがやアニメー
ションの創作体験もできる。
なんだかテレビのホームドラマのような、こんなことを書くとちょっとばかみたい
な、恥ずかしい気がするが、コミュニティシネマのことを考えるというのは、例え
ば、このような町やコミュニティのあり方を考えるということなのではないかと思
う。いま存在しているひとつひとつの映画館やシネマテークは、実際、このような
あり方の何パーセントかを実現している。
私たちは、映画のこと、コミュニティシネマのことを日々考えているが、コミュニ
ティシネマというのは、映画だけ、コミュニティシネマだけでは実現させることが
できないことなのだと思う。ある町の、あるコミュニティの、ある国の人たちが、
思い描く、ありたいと願う、その町や国の生活のあり方、その中にコミュニティシ
ネマがあることによって、コミュニティシネマが実現するのだと思う。映画がなけ
ればはじまらない、けれど、映画だけ、コンテンツとしての映画だけではなく、そ
れが上映される環境、映画館やシネマテークという場所、それが存在する町にも強
いこだわりと愛着を感じ、考えることが、コミュニティシネマを考えることなのだ
と思う。
最近、コミュニティシネマ関係者の多くが子どもに関心を寄せている。関係者の高
齢化が進んでいるせいかもしれない。
巨大な駐車場の中にある、大型ショッピングセンターの中の、何スクリーンもある
映画館ではなくて、昔からの商店街や繁華街、小さな本屋さんやお菓子屋さんやレ
コード屋さんがあるような街の中にある映画館、小さい頃から馴染んでいる図書館
や美術館のそばにあるシネマテークで映画を見てほしい。電車やバスに乗って、歩
いて行けるところで映画を見てほしい。子どもたちが中学生や高校生になって、も
う、誰かに教えられるのではなく、自分自身が好きだと思えるものを、自分で選ん
で見てみたいと思ったときに、自分ひとりで行くことができる身近な場所に、映画
館やシネマテークが存在していてほしいと思うのだ。中学生、高校生の中のほんの
一握りの人たちでいい、そこで、本当に自分が好きだと思えるもの、いままで知ら
なかった、けれど出会いたかった映画に出会ったと感じてくれればいいと思う。
こんなふうに書くと、なんだか情緒的でセンチメンタル、懐古趣味的だと思われる
だろう。確かにそれはあるかもしれないが、そういうことばかりではない。年間
800本を越える映画が公開される異常な映画大国日本。けれど、このうちの30本ほ
どの映画が興行収入の70%を占めているという極端な寡占状態が起こっている。テ
レビでもこの30本のことばかりが取り上げられ、映画が好きだというほとんどの人
たちが、この30本の映画しか見ていない。しかも、その大半の人たちは全国的に画
一化されたシネマコンプレックスという環境の中で、この30本を見ているというこ
とになる。これは、ちょっといやな状況ではないだろうか。多くの人たちは、そう
いう状況を求めてきたのだろうか。
やはり、町の中には、そうではないものを見つけることができる場所が必要だと思
う。そこで誰かと話し合うわけではなくても居心地のよい場所、そういう場所があ
ることが、ある町を、あるコミュニティを豊かなものにし、人々が生きやすい場所
にすることになると思う。いまは、同じ映画が見られるのなら、シネマコンプレッ
クスでもミニシアターでもどちらでもかまわない、そういう時代なのかもしれない。
特別な場所であることが求められない、むしろ忌避される時代なのかもしれない。
けれど、このような状態がいつまでも続くはずはない(と思う)。
そんなことを考えながら、これからも“コミュニティシネマ”を続けていきたいと
思う。
■岩崎 ゆう子(いわさき・ゆうこ)
コミュニティシネマ支援センター事務局長/財団法人国際文化交流推進協会(エー
ス・ジャパン)映画事業課長。年度末の忙しさの中で、「ワイズマン映画祭2008」
を主催しながら、ほとんど作品を見直すことができず、本当に残念でした。4月19
日からは「カール・ドライヤー監督特集 日本最終上映」を開催します。
http://www.athenee.net/culturalcenter/schedule/program/dreyer/dreyer.html
いつも宣伝ばかりで恐縮ですが、こちらも多くの皆様のご来場をお待ちしておりま
す。
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┃02┃□自作を語る
┃ ┃■『船、山にのぼる』
┃ ┃■本田 孝義
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ドキュメンタリー映画の製作は、魅力的な人や事柄に出会うことから生まれること
が多い。そうした出会いは偶然であるかもしれないが、後々考えてみれば、必然だ
ったのかもしれないとも思える。
今作『船、山にのぼる』は、端的に言ってしまえばPHスタジオというアートユニッ
トが、広島県灰塚という、ダムに沈む村で行っていたアートプロジェクトを描いた
作品だ。時々、「どうしてこの映画を作ったのですか」と聞かれるのだが、一足飛
びにこの映画にたどり着いたわけではなく、私自身の奇妙な軌跡の後にこの映画を
作ることになった、という思いが強い。
私のプロフィールを見ていただければ分かるかと思うのだが、「長編ドキュメンタ
リー映画の製作と並行して多数の現代美術展で映像作品を発表」とある。どういう
わけだか、1996年以後、いくつもの美術展から出品要請のお誘いがあり、来るもの
拒まずの姿勢で作品を作ってきたら、気がついてみればこういう履歴になっていた、
というわけだ。そして、今回の作品はこうした履歴が交差したところで生まれたと
いう思いがひときわ強いのである。
PHスタジオの方々との出会いは、ちょうど10年前にさかのぼる。大阪の街中で開催
された現代美術展において、私もPHスタジオも同じく出品者として参加していた。
さらに、私の前作『ニュータウン物語』は、ラストシーンとして“ニュータウン
アートタウン展”という美術展を開催する様子が描かれている。この美術展にPHス
タジオにも参加してもらっている。
映画『船、山にのぼる』の出発点はこうだ。前作『ニュータウン物語』が2003年春
に完成し、地元での上映の後にいち早く岡山映画祭のプレ企画として6月に岡山市
で上映していただいた。初上映やトークショーの緊張で疲れきっていた私は、上映
翌日、実家で休んでいた。そこへ、PHスタジオの池田修さんから私の携帯に1本の
電話がかかってきた。「今、広島県灰塚にいるんだけど、これから来てくれないか
なあ」、と。正直に言えば、疲れていたので面倒だなあ、と思ったのだが、あれよ
あれよという間に行くことになり、岡山の知人のアーティストに連れ去られるよう
に車に乗せられていた。もし、あの時に断っていれば、映画『船、山にのぼる』は
出来ていなかったかもしれない。
結局この時は、広島市現代美術館での展示映像の製作を頼まれ、短い製作期間だっ
たがなんとかその役ははたせた、と思う。そして、展示映像の製作中にPHスタジオ
の方々から「ゆくゆくは映画にしたいんだけどなあ」という、どこまで本気か分か
らない話を聞くのである。
私自身はそれほど真剣に受け止めていなかったのだが、2004年、『ニュータウン物
語』の上映が一段落する頃、再び船のことが気になり始めた。そして、もう一つ、
私自身の内的な動機が頭をもたげ始めていたのだ。
先ほど『ニュータウン物語』のラストシーンのことを書いた。あのラストシーンに
関して、賛否両論あったのは事実だ。(蛇足になるが、いつ美術展をやることを考
えたか、と尋ねられることが多いのだが、撮影開始時点ですでに企画していたので
ある。)映画としては取ってつけたようであるし、私自身が美術展に関してはプロ
デューサーという立場であったから、撮りきれなかった部分があることは否めない。
PHスタジオが広島県灰塚で進めていた「船をつくる話」というアートプロジェクト
は2004年の時点ですでに10年という月日が経っていた。プロジェクトとしてはもう
終幕が近づいている。しかしながら、アートとコミュニティの関係を考える上でこ
れほどの題材はまずお目にかかれない。前作でやりきれなかったことがここでは見
えてくるかもしれない、とも思ったのだ。いつしか私はこのプロジェクトを映画に
したいと強く思い始めていた。
そこからの紆余曲折も多々あるがあまりにも長くなってしまうので割愛する。ただ
個人的なエピソードを書き記しておくことをお許しいただきたい。
2006年12月、これから『船、山にのぼる』の編集の最後の詰めと音声などの仕上げ
に向かわなければいけない頃、『ニュータウン物語』にも登場していた父が入院し
た。一人身であったこともあって、私は岡山に帰ったのだが、医師から聞かされた
のは最悪の状態だった。それから約3週間後、年が明けて1月4日、父は亡くなった。
『船、山にのぼる』は文化庁の助成を受けられることが内定していたが、2007年
3月末までに完成しなければ助成は無効となる。多くの方に助けられながら、必死
の作業が続き、締め切りの2日前に映画は完成した。
あまりにもドタバタした最後の追い込みであったから、完成後もいったいこれがど
ういう映画なのか自分でもよく分からなかった。幸い、2007年秋頃から多くの人に
見ていただく機会も増え、感想を聞く中でやっとどういう映画なのかが分かってき
た、というのが嘘偽らざる心境なのである。
☆『船、山にのぼる』(2007年/88分/DV)※16mm版あり
製作:ビジュアル・トラックス、戸山創作所 支援:文化庁 配給:戸山創作所
(03-5338-9490)
監督・編集:本田孝義 撮影:本田孝義、林憲志、濱子正 音響構成:米山靖
音楽:風の楽団 プロデューサー:伏屋博雄
公式ホームページ: http://www.fune-yama.com/
☆公開情報:
●4月5日(土)〜25日(金)東京 ユーロスペースにてレイトショー(連日21:00
〜)(ただし、12日(土)、13日(日)、19日(土)、20日(日)のみ、モーニン
グショーあり。9:45〜)
※上映期間中のイベントは上記ホームページにて。
●4月26日(土)〜5月17日(金)大阪 シネ・ヌーヴォにて(1週目モーニング
ショー、2・3週目レイトショー、時間未定)
■本田 孝義(ほんだ・たかよし)
1968年岡山県生まれ。法政大学卒。大学在学中から、自主映画の制作・上映を始め
る。卒業後、テレビの仕事をしばらくした後、再び自主制作を開始。現在まで、
4本の長編ドキュメンタリー映画を制作するのと並行して、多数の現代美術展で映
像作品を発表している。
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┃03┃□ワールドワイドNOW ≪北京発≫
┃ ┃■「日中ドキュメンタリー映画史」〜中国での小川紳介の影響〜
┃ ┃■前田 佳孝
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中国ドキュメンタリー映画への小川紳介の影響は大きい。
中国新ドキュメンタリーの先駆者、呉文光は彼の処女作『流浪北京』を携え小川紳
介に会いに行き、非常に感銘を受けたという。病床の小川紳介から直接小川プロ作
品のビデオテープを渡された呉文光は、それを大事に北京に持ち帰り仲間内で連日
連夜研究し、討論し、新たにドキュメンタリー映画を志す仲間に広めていった。今
では北京の郊外に自分で『草場地工作室』というスタジオを持ち、その当時のビデ
オテープは大事にアーカイブとして保管されていて、誰でも鑑賞できるようになっ
ている。僕が初めて呉文光のスタジオを訪れたとき、長テーブルに並べられた沢山
の本の中に日本語の書籍もあり、その中にシナリオ『日本国古屋敷村』を発見した。
表紙には「呉文光さん 友情を」という小川紳介のサインが書かれていて、両者の
交流が思い浮かび、目頭が熱くなった。そのスタジオでは年に何度かドキュメンタ
リー映画製作の講座が設けられ、今でも変わらず小川紳介について熱く語られてい
る。呉文光は最近では、『草場地工作室』が主催になって、「村民影像企画」とい
うプロジェクトでそれぞれの村の農民に各自家庭用のDVを持たせてドキュメンタ
リー映画を撮らせるといった活動を行っている。僕はまだ作品は見ていないのだが、
思うに呉文光としての「住んで撮る」小川紳介の精神への返答なのだろう。
小川紳介の精神は他にも様々な形で受け継がれている。僕が北京電影学院に入学す
る前、友人から「小川紳介の書籍を翻訳した人がいて、それが中国のドキュメンタ
リーに多大な影響を及ぼしているようだ」と仄聞していた。05年に雲南映像フォー
ラムに参加した僕は、そこで馮艶の『稟愛』を観て、そして監督である彼女に出会
った。これは僕にとって忘れられない記憶となった。作品の隅々から小川作品のよ
うな生活に密着したずっしりした人間の魅力があふれている!僕は彼女に「小川紳
介の後継者が中国にいた!」というようなことを伝えたら、馮艶は流暢な日本語で
「小川紳介映画の書籍は私が翻訳した」というのだから吃驚してしまった。同時に、
小川紳介の影響が如何に大きいかを身を持って実感したのである。
後日知ることになるのだが、93年の山形映画祭は友人に誘われ興味半分で初参加し
た馮艶であったが、初めて見る小川紳介の作品に衝撃を受けたという。「映画作家
小川紳介をもっと詳しく知りたい」。彼女は発行されたばかりの『映画を穫る』
(小川紳介著、山根貞男編、筑摩書房)を購入し、連日読み続けた。映画祭が終わ
る時には翻訳して中国に普及させたいと決意したという。2007年の山形映画祭「ア
ジア千波万波」で『稟愛』が上映され、小川紳介賞を受賞する快挙を得た馮艶には、
このような前史があったのである。
馮艶が翻訳した『映画を穫る』に直接の影響を受けたあるドキュメンタリストのエ
ピソードを紹介したい。それは2005年に『水没の前に』で山形映画祭グランプリを
受賞した李一凡である。『水没の前に』撮影当時、李一凡は『映画を穫る』を肌身
離さず持ち歩き、撮影中、いくどとなく困難にぶつかっては、その度ごとに本を繙
き、小川の言葉に励ましを受けながら、苦境を切り抜けることが出来たという。
2007年11月に北京宋庄美術館で行われた第二回北京独立電影論壇にて李一凡とお話
しする機会があって、上記のことについてお訊きしたのだが、「大変恥ずかしなが
ら、小川紳介の作品はまだ一本も見ていない」との意外な返答を受けた。つまり、
小川作品は観ていなかったにも拘わらず、著書を通して励ましを得ていたのだ。こ
の映画祭で上映された李一凡の新作『Village Archive』も「住んで撮る」方法論
が実践された傑作で、重慶の村の約一年間の行事、村民の生活を丁寧に記録したそ
の映像からは、小川紳介を思わせるユーモアに満ちていて、村人ひとりひとりの生
き生きとした表情が忘れがたい。最後に映し出される李一凡の当地での隣人であり、
友人である村人達を正面から捉えた写真の数々は『1000年刻みの日時計 牧野村物
語』のラストシーンを想起させる。小川作品を見る機会はないが、それを想像し、
膨らませ、自らの創作に生かしているというのはとても感動的なエピソードである。
中国国内で流通した『映画を穫る』は多くの中国のドキュメンタリストのバイブル
となり、その撮影の方法論は受け継がれていっている。この本はもともと台湾で翻
訳出版された書籍で、国内では長らく間絶版となっていたが、最近になって新装出
版された。今後もますます多くのドキュメンタリストを虜にしていくことであろう。
ところで、中国では海賊版DVDが出ないと海外のドキュメンタリー映画に接するこ
とが難しい、また国内の映画上映の流通形態も国家メディア電影総局に制限されて
いるので、上映作品の多様性とは程遠い。国営フィルムアーカイブもあるにはある
のだが、仕事が怠慢で文化として国内外の映画を普及させいこうというような態度
は見受けられない。今、中国独立映画の推進者、朱日坤が北京での小川紳介レトロ
スペクティブを計画している。実現すれば中国での初めてのまとまった形での小川
作品の上映になるのでその意義は非常に大きい。僕も何かの形で協力したいと思う。
余談だが去年の山形映画祭には僕も含めて小川紳介を尊敬する中国ドキュメンタリ
ー勢が飯塚俊男さん(元小川プロスタッフ)と渡辺智史さんの引率で小川紳介所縁
の地、牧野村と古屋敷村を訪れた。小川作品の登場人物でもある村人から手厚いお
もてなしを受け、ロケ地を巡り、思い出を聞いた。※1中国ドキュメンタリー界へ
の贈り物として頂いた、非常に貴重な『1000年刻みの日時計 牧野村物語』の不採
用バージョンのポスターは、今では額に入れられ、北京での小川紳介レトロスペク
ティブの折には映画祭を飾るだろう。牧野村で感銘したことはここでは十分に語り
つくせない。また別の機会に書いてみたいと思う。
最後に呉文光がどのように小川作品に接したかを述べてみたい。今年の二月に僕が
日本に帰郷した折、機会があって本誌の編集者であり長年の小川プロの製作者であ
った伏屋氏にいろいろとお話を聞いた。その時頂いた『小川紳介映画の彼方へ』
(武蔵大学刊)に収められている伏屋博雄氏の「アジアにドキュメンタリーの友を
求めて」という文章の中で小川紳介のアジアドキュメンタリー映画への影響にふれ
られた個所があり、僕の知らなかった感動的な呉文光と小川映画との接触の記述が
あったので引用したいとおもう。
―――この頃(『流浪北京』撮影当時)、彼(呉文光)は、ウーリッヒ・グレゴー
ルの著書「世界映画史」を読み、僅かではあったが、小川紳介についての情報を得
ていた。(奇遇だが、グレゴールは、「ニッポン国 古屋敷村」をベルリン映画祭
ヤングフォーラム部門のディレクターとして招待した人である。)さらに彼の自宅
を訪問した刈間文俊(当時、東大助教授)から詳しく三里塚作品の内容を聞き、
「日本には時間をかけ、納得するまで粘るインディペンデント監督がいる」ことに
意を強くし、小川紳介に並々ならぬ関心を抱き始めていた。しかし、当時の中国に
あって小川紳介に逢うことなど、夢物語に過ぎなかった。―
呉文光が完成した『流浪北京』を友人や批評家に見せたとき周りからはショットが
長い、リズムが悪い、などと批判を受けたが、彼はまだ見ぬ自分が思う小川紳介の
精神に則り編集を変えなかったという。「アジアにドキュメンタリーの友を求めて
」の副題には−小川紳介の触角−という名がつけられている。その触角が越境して
今も脈々と映画史、そしてこれからの中国ドキュメンタリー映画に触手を伸ばし生
き続けている。小川紳介は生き続ける。
(注1)手配してくださった藤岡朝子さん、山形映画祭の皆様、忙しい中時間を割
いて引率してくださった飯塚俊男さん、渡辺智史さん、おいしい料理にお酒、小川
紳介の貴重な思い出でを聞かせてくださいました村人の方々に深く御礼申し上げま
す。
■前田 佳孝(まえだ・よしたか)
1984年生まれ。王兵の『鉄西区』に影響されて中国へ留学を決意。現在、北京電影
学院、監督科に在学中。黄牛田電影に新たに李一凡が加入しました。同じく黄牛田
電影のメンバー趙大勇(ジャオ・ダーヨン)の新作『廃城(WASTE CITY)』が素晴
らしい傑作であった。去年の独立電影論壇のレポートを日本独立短編電影プログラ
ムでお越しくださった葛生賢さんが書いてくださいました。はてなブログ
「Contre Champ」で読めるので是非ご一読ください(2007-11-30〜12-07の項)。
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┃04┃□列島通信 ≪名古屋発≫
┃ ┃■「廣田緑:交換プロジェクト07」展における、タヒミックの
┃ ┃ ドキュメント映像
┃ ┃■越後谷 卓司
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フィリピンのインディペント映像作家の先駆者であるキドラット・タヒミック は、
親日家で日本も度々訪問していたことはよく知られている。「山形国際ドキュメン
タリー映画祭」の初期には、ほぼ毎回のように出品作家やゲストとして訪れ、映画
上映だけでなくパフォーマンスも披露し、映像だけに留まらないマルチ・アーティ
ストとしての顔も見せていたことが強い印象を残している。昨年、彼が「山形」の
インターナショナル・コンペティション部門の審査員を務め、久しぶりの登場した
ことは、映画祭が重ねてきた時間の流れと重みを感じさせる出来事だった。
タヒミックには“山形男”という異名もあるほどで、「山形」とは深い関わりがあ
るのだが、実は名古屋とも浅からぬ縁がある。さかのぼって見てゆくと、1994年に
『僕は怒れる黄色94 虹のアルバム』の名古屋シネマテークでの公開があり、これ
に先立つ形で、河合塾千種校で同作品のプレミア上映とパフォーマンスのイベント
が行われている。翌95年には、名古屋市美術館と科学館で行われていたテクノロジ
ー・アートの国際ビエンナーレ「アーテック'95」の公募部門に、ビデオ・イン
スタレーション作品『KILLING US SOFTLY・・・・・・』を出品した。愛知芸術文
化センターではオリジナル映像作品第5弾として『フィリピンふんどし 日本の
夏』(1996年)を制作したが、この企画が実現したのも、こうした関わりがあったこ
とを抜きに考えるのは難しい。
タヒミックは『フィリピンふんどし』以降まとまった長さの作品を発表していない、
という声も聞かれたが、短編作品を制作していた様で、アーティストとしての 活
動は持続的に続けられていた。その活動の一端に名古屋で触れる機会に恵まれたの
が、愛知県美術館・展示室6で開催されたテーマ展「廣田緑:交換プロジェクト
'07〜アジアの記憶〜」である(2007年11月13日〜2008年1月14日開催)。廣田緑は、
名古屋市生まれで、愛知県立芸術大学卒業後、数度のインドネシア留学をへて、現
在、同国のジョグジャカルタで活動しているアーティスト。「交換プロジェクト」
とは、彼女が制作したヒト型のオブジェを、第二次世界大戦に関わった東南アジア
の人々の所有物と交換するというもので、ここには当時、日本軍が行った行為に対
する贖罪や鎮魂といった意味合いを読み取ることも可能だろう。会場には、日本と
インドネシア、フィリピンの布で作られた小さな座布団の上に、このプロジェクト
によって交換された腕時計や櫛、シャープペンシル、CDといった日用品が載せられ、
床面に円形に設置されている。それぞれの品々は日頃から使い込まれていたという
感じで、そこからその持ち主であった人々の記憶の痕跡に触れて、追体験するよう
な感覚が観る者に立ち上がってくる。
タヒミックの映像は、この展示を補完する形で、フィリピンのギブガン村で行われ
た現地の人々との交換の様子を記録したものだ。しかし単にそこで起こった出来事
を撮るという以上に、このプロジェクトが土地の人々とコミュニケートする契機と
なって、廣田と出合う様々な人々が、どこか楽しむような雰囲気でモノを交換する
様が生き生きと映し出されている。タヒミックが、廣田のオブジェをとてもいいも
のと交換してくれるよ、と言いながら、牛の糞との交換を希望する者と引き合わせ
たりする場面に横溢するユーモアや、恐らく乳歯だと思うが、小さな女の子が自分
の歯を引き抜き笑顔で差し出す瞬間の、ドキリとさせるほどの思い切りの良さなど、
映像からは清々しい印象が伝わってくる。近年の美術では、このようにアーティス
トが他者と関わってゆくこと自体を、一つの作品として提示するものは少なくなく、
これらはプロジェクト系アートと呼ばれたりもするのだが、こうした作品において
映像が持つ役割の重要性をタヒミックのドキュメントは体現していたといえるだろ
う。
☆廣田緑さんのホームページに、美術館でのインスタレーションの様子がアッ
プされています。 http://www.midoriart.com/whats/index.htm
■越後谷 卓司(えちごや・たかし)
愛知県文化情報センター主任学芸員。昨年12月、愛知芸術文化センター開館15周年
を期に、本文でも触れた「オリジナル映像作品」の15年の歩みを振り返る特集を組
み、あわせて中日新聞夕刊にこれに関 連する連載を行った。
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┃05┃□neoneo坐3月後半の上映プログラム
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会場はいずれも神田・小川町のスペースneo(都営新宿線小川町駅B5出口より徒歩1
分JR御茶ノ水駅聖橋口より徒歩5分)です。詳細と地図はneoneo坐のHPをご覧下さい。
http://www.neoneoza.com/
■〈ゆふいん文化・記録映画祭「松川賞」創設記念企画〉
松川八洲雄劇場:3月14日(金)〜16(日)・20(祝)〜23(日)
http://www.neoneoza.com/program/matsukawa_theatre.html
【松川八洲雄 プロフィール】
1931年8月12日、東京生まれ。新理研映画社、日映科学映画製作所を経て、日本デ
ザインセンターで『一粒の麦』(1962)を手がけ、以後フリーに。美術映画、伝統文
化記録映画、PR映画、テレビドキュメンタリーなど多様なジャンルで創作活動を展
開。2006年10月11日逝去。
Aプログラム(計80分)
3月15日(土)17:00〜・3月20日(祝)13:00〜・3月22日(土)15:00〜
『熊野古道』 (2006年/15分/カラー/ビデオ)
『鳥獣戯画』 (1966年/24分/カラー/16mm)
『神々のふるさと 出雲神楽』 (2002年/41分/カラー/16mm
Bプログラム(計82分)
3月15日(土)13:00〜・3月16日(日)15:00〜・3月20日(祝)17:00〜
・3月22日(土)19:00〜
『土くれ』 (1972年/17分/カラー/16mm)
『仕事=重サ×距離』 (1971年/35分/カラー/16mm)
『鍛金 奥山峰石のわざ』 (1997年/30分/カラー/35mm(DVD版上映)
Cプログラム(計66分)
3月16日(日)13:00〜・3月21日(金)21:00〜・3月22日(土)17:00〜
・3月23日(日)15:00〜
『歌舞伎の魅力 舞台美術―参会名護屋―』 (1983年/34分/カラー/16mm)
『琵琶湖・長浜 曳山まつり』 (1985年/32分/カラー/16mm)
『ある建築空間〜帝人中央研究所』(1964年/20分)(参考上映、鑑賞無料)
Dプログラム(計86分)
3月16日(日)19:00〜・3月20日(祝)15:00〜・3月22日(土)13:00〜
・3月23日(日)17:00〜
『花の迷宮 小原豊雲の世界』 (1986年/31分/カラー/16mm(DVD版上映)
『花 いける』 (1990年/55分/カラー/16mm(DVD版上映)
Eプログラム(計93分)
3月15日(土)15:00〜・3月16日(日)17:00〜・3月20日(祝)19:00〜
・3月23日(土)13:00〜
『マイブルーヘブン 吉野作造 デモクラシーへの問い』(学問と情熱 第25巻)
(2002年/44分/カラー/ビデオ)
『中江兆民 一粒の民主の種子を』(学問と情熱 第29巻)
(2003年/49分/カラー/ビデオ)
Gプログラム 参考上映2(計100分)
3月21日(金)19:00〜 ※鑑賞無料
『ヒロシマ原爆の記録』 (1970年/30分/パートカラー/16mm)
『壁画よみがえる』 (1969年/40分/カラー/16mm)
『円空』 (1977年/30分/カラー/16mm)
【会費】1回券…800円、2回券…1,600円、3回券…2,400円、4回券…3,000円、
5回券…3,500円、中学生以下は半額
【交流会】(お飲物とお食事付)お一人様 2,000円
【上映お問合せ】TEL:080-5468-3251(清水)
■「知られざる短篇映画を見てみる」上映会
「短篇調査団」Shortfilm Researchers
春!旅立ちの4本立て(計90分)
(64) 引越の巻...2008年3月26日 (水) 20:00〜
『ニューヨーク転勤命令 ―日通の海外引越―』
1981年/23分/カラー
制作:東京シネ・ビデオ/企画:日本通運/
プロデューサー:横川元彦・小管正典/脚本・監督:福原進/
脚本:大西竹二郎/撮影:川尾俊昭
■海外に転勤するとき、引越荷物の梱包から発送・現地到着・受取・税金のチェッ
クなど、煩わしいことが多い。こうした手続きの一切をやってくれるのが「日通の
海外引越」のシステム。先着した江川氏と、後から行く夫人との往復書簡の形で具
体的に引越の過程を描く。
『東京に就職して三週間』
1960年頃/10分/白黒
制作:東京都映画協会/企画:東京都広報室
■希望を抱いて毎年上京する集団就職の子供たちについて取材。
『太陽は明日もまた』
1963年/30分/白黒
制作:日活/企画:大蔵省銀行局
■田舎の中学校を卒業して東京の食堂、自動車工場、美容院などに就職した若者た
ちが、都会生活の中で友情に結ばれながら強く正しく生き抜いていく。
『旅立ちの青春 ―九電技術研修生の記録―』
1983年/27分/カラー
制作:電通映画社/企画:九州電力/
監督:長井博/脚本:永倉君平/撮影:長野克敏
■毎年4月、九州電力技術研修所には高校を卒業したばかりの技術部門新入社員が
大勢はいってくる。彼らはここで、配電、送電、通信、火力、発変電の五つの部門
にわかれ、およそ九ケ月間にわたって研修を受け、電力マンとしての使命感を抱き、
それぞれの任地へ向って巣立っていく。
■『船、山にのぼる』公開記念 本田孝義 2days@Space NEO
3月27日(木)・29日(土)
3月27日(木) 20:00〜 本田孝義ビジュアルセッション
<コミュニティ、アート、ドキュメンタリー>
『平野幻想』1997 『Tokyo-Osakaミクスチャー』1998 『沖縄ソウル』2004 他
料金:1000円(1ドリンク付)
3月29日(土) 15:00〜 『科学者として』1999/84分『続・科学者として』2006/3分
17:00〜 『ニュータウン物語』2003/103分 19:00〜 交流会
各プログラム1000円・交流会1000円(1ドリンク付)
(両日とも『船、山にのぼる』前売り券をお持ちの方は800円)
場所:Space NEO( http://www.neoneoza.com/ )
問い合わせ:戸山創作所(03−5338−9490)
┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃06┃□広場
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■新・クチコミ200字評!(70)
■清水浩之(3/23までneoneo坐で松川八洲雄監督特集を開催中)
オススメの作品を200字以内の短評で紹介してください!映画・ビデオ・テレビな
ど皆さんがノンフィクションだと思う作品だったらなんでも可!もちろん「オスス
メしない映画とその理由!」もOKです。
本文とは別に「あなたのお名前(ペンネーム可)/掲載確認のご連絡先(メールアド
レスor電話)/題名/制作年/監督/見た場所(よろしければあなたのプロフィール
や近況も)を付記してお送りください。
清水浩之 E-mail:shimizu4310@bridge.ocn.ne.jp /ファクス:03-3703-0839
B-262『ミラクルボディー 第1回 アサファ・パウエル 史上最速の男』
2008年/制作:NHK情報ネットワーク/ディレクター:小泉世里子
放映:2008年3月9日「NHKスペシャル」 http://www.nhk.or.jp/special/
33倍ハイスピードカメラをはじめとする最新機器でトッププレーヤーの身体を「解
剖」するシリーズ…要するにオリンピック中継の前宣伝です!『美の祭典』の頃か
らオリンピックの歴史は映像技術革新の歴史、ただただ見とれてしまう美しさは地
デジ販促の救世主(になるといいですね→業者の皆様)。CTスキャンで“輪切り”
にされたパウエル選手、彼の胴の中に詰め込まれた極太の大腰筋が…なぜか美味し
そうで目のやり場に困りました(笑)(清水浩之)
B-263『小田実 遺す言葉』
2007年/制作:テレビマンユニオン/ディレクター:大原れいこ
放映:2008年3月9日・NHK教育「ETV特集」 http://www.nhk.or.jp/etv21c/
「オダマコト」が何をした人か答えられない我々以降の世代にとって、まさに必見
の評伝。8.14大阪空襲からベトナム北爆、阪神大震災、そして9.11へ続く「意味な
き死の意味」を問う姿勢、市民の立場からの異議申し立てに徹した人生は、「反論
できない世界なんてもう民主主義じゃない」という真理に気づかせてくれるのです。
「反省」なき改憲論議の時代に、まだ若いお嬢さんを残して旅立たねばならない親
心の煩悶に思わず涙しました。(清水浩之)
B-264『生きていてよかった』
1956年/制作:原水禁日本協議会+日本ドキュメントフィルム/監督:亀井文夫
見た場所:川崎市市民ミュージアム「亀井文夫の戦後」
http://www.kawasaki-museum.jp/
併映の『基地の子たち』(1952)ではブラックジョークすれすれの戯画化で米軍基地
への怒りを叫ぶのに対し、こちらは山田五十鈴さんが「広島…平和大橋…平和記念
資料館…平和大通り…」と淡々と読み上げるのをはじめ、極力抑えたトーンで
「10年後」の人々の生活を静かに見つめることで、怒りの深さを伝えます。「死ぬ
ことは苦しい/生きることも苦しい/でも、生きていてよかった」という三枚のタ
イトルに凝縮させた構成が見事です。(清水浩之)
B-265『ノンフィクション劇場 市民戦争』
1965年/制作:日本テレビ/演出:土本典昭
見た場所:川崎市市民ミュージアム・3階情報コーナー(ビデオライブラリー)
http://www.kawasaki-museum.jp/
港沿いのバラック集落を強制撤去しようとする尾道市役所と、一方的な立ち退き命
令に必死で抵抗する住民。「双方から平等に」若い土木課職員と酒場の女将さん、
二人を取材して彼らの心の動きを観察した結果、一体誰が「戦わせている」かまで
見えてくる無言の雄弁さ。ある映画の「客観性に問題がある」と文化庁をケンエツ
した某代議士先生に、「主観なきドキュメンタリー」なんて成立しないのをご承知
いただくためにもお薦めします。(清水浩之)
◇────────────────────────◆◇◆
■告知:ANDファンド募集開始
アジアのドキュメンタリー企画を製作助成するANDファンド2008の募集が始まりま
した。日本を含むアジアから8企画、韓国から5企画に今年は総額で約1050万円が授
与されます。主催は韓国のプサン映画祭。応募締め切りは4月30日です。応募資料
は英語にしなくてはならないので手間はかかりますが、受賞者はプサン映画祭に招
かれワークショップなどに参加することができます。ちなみに「在外コリアンの監
督」という部門に企画がなかなか集まりにくいようです。詳細はホームページで。
http://and.piff.org/eng/index.asp
※プサンには別にACFという劇映画の助成ファンドもあります。
問い合わせ:藤岡朝子 ( fujioka@tokyo.yidff.jp )
◇────────────────────────◆◇◆
■上映
■『映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事』と土本作品の上映
3月18日(土)〜21日(金) 名古屋シネマテーク
公式HP: http://www.tsuchimoto-eiga.com/
3/15(土)
10:30 『ドキュメント路上』『ある機関助士』
12:30 『映画は生きものの記録である』※トークゲスト:藤原敏史監督
15:00 『パルチザン前史』
17:15 『水俣・患者さんとその世界』
3/16(日)・17(月)
10:30 『水俣一揆 一生を問う人びと』
※3/16(日)のみトークあり トークゲスト:藤本幸久監督
13:15 『医学としての水俣病』(一部・二部・三部)
18:30 『映画は生きものの記録である』
3/18(火)・19(水)
10:30 『水俣の図・物語』
12:35 『海盗り』
14:30 『原発切抜帖』『はじけ鳳仙花』
16:20 『映画は生きものの記録である』
18:10 『パルチザン前史』
3/20(祝)・21(金)
10:30 『映画は生きものの記録である』
12:20 『不知火海』
16:10 『みなまた日記』
18:15 『よみがえれカレーズ』
●入場料:1プログラム 1300円(当日券のみ)
3プログラム 3300円(前売券のみ)
●名古屋シネマテーク:
464-0850名古屋市千種区今池1-6-13今池スタービル2F
http://cineaste.jp tel.052-733-3959 fax.052-733-39
◇────────────────────────◆◇◆
■第2回 天神庵ドキュメンタリーまつり
〜ドキュメンタリーから見えるニッポン〜
あらゆる映像が目的の奉仕にされるのに対し、あくまで映像の力を信じた作品を
ドキュメンタリーというジャンルにこだわって構成された松戸のささやかな映画祭。
2年毎に開催され、今年は2回目。
【上映作品】「関さんの森」(70分)「新線が通る」(74分)監督・香取直孝
「わたしの季節」(107分)監督・小林茂
「東京ホームレス」(70分)監督・寺田靖範「六ヶ所村ラプソディー」(119分)
監督・鎌仲ひとみ
【上映日】
【3月28日(金)・29日(土)・30日(日)】
【28日(金)】ゲスト・寺田靖範(19:30〜)
12:00〜 「わたしの季節」 14:00〜 「関さんの森」
16:00〜 「六ヶ所村ラプソディー」 18:00〜 「東京ホームレス」
【29日(土)】ゲスト・小林茂(20:00〜)
12:00〜 「関さんの森」 14:00〜 「六ヶ所村ラプソディー」
16:00〜 「東京ホームレス」 18:00〜 「わたしの季節」
【30日(日)】ゲスト・菊川慶子(20:00〜)
10:00〜 「新線が通る」 12:00〜「関さんの森」
14:00〜 「わたしの季節」 16:00〜「東京ホームレス」
18:00〜「六ヶ所村ラプソディー」
料金:前売り 1作品800円 2作品1500円 4作2800円
当日 1000円
場所:天神庵 【松戸市大金平3−130−2】 ※やおや旬のとなり
JR北小金駅より徒歩14分
主催:天神シネマクラブ 連絡先:TEL 047−343−2756
◇────────────────────────◆◇◆
■優れたドキュメンタリー映画を観る会 vol.21
「〜遙かなる記録者への道〜いのちの文化を求めて」
4/19(土)〜4/26(土) ドキュメンタリー作品特集上映
下高井戸シネマにて 全14作品日替わり モーニング&レイトショー
優れたドキュメンタリー映画を観る会は1999年4月下高井戸シネマでの開催を皮切
りに、地域の皆様のあたたかいご支援をいただき、今年で10周年を迎えることがで
きました。全国で限界集落と呼ばれる寒村が6000を超え、食の自給率が38%まで下
がり絶望感漂う日本列島…。自然と、人間とのかかわり方を、深く理解していた先
民達の暮らしぶりを、この特集上映から見つけて下さったら、また、生きる喜びを
感じて下さったら、幸いです。
優れたドキュメンタリー映画を観る会 飯田光代
<日程>4月19日(土)〜4月26日(土)
<会場>下高井戸シネマ
<料金>一般・学生1300円/小・中・シニア・障害者・会員1000円
(ドキュメンタリー特集共通前売り券発売中! 1回券1000円/5回券4500円)
●全14作品を日替わりでモーニングショーまたはレイトショーにて上映いたします。
●各回、10分程度のトークも予定しております。
●ロビーにて大西暢夫さん(『水になった村』監督)の写真を展示
●各回先着5名様に大西暢夫さんのポストカードをプレゼント
※詳しい作品内容、上映日程・時間は下高井戸シネマ公式ホームページ
( http://www.ne.jp/asahi/kmr/ski/shimotakaido_cinema.html)または、直接
劇場にお問い合わせください。
<上映作品>
「旅―ポトシへ」*劇場初公開
(2007年/イスラエル・フランス/4h06)
●'07年山形国際ドキュメンタリー映画祭 インターナショナル・コンペティション
優秀賞監督:ロン・ハヴィリオ静寂なアンデスの風景、ゆったりとした音楽。それ
らと相反して厳しい環境に生きる人々。ボリビアのポトシという鉱山の街を訪れた
イスラエル人の一家は、ゆっくりと歩み心を通わせていく。
4/19(土)モーニングショー AM 10:00 *途中15分の休憩あり
「阿賀に生きる」
(1992年/日本/1h55) *16mm上映
●'92年度キネマ旬報日本映画ベストテン第3位
監督:佐藤真/撮影:小林茂
新潟水俣病被害の現場となった、阿賀野川。この川沿いの民家に、7人のスタッフ
が三年間住み込み、田んぼ仕事を手伝いながら撮影した、川の豊かさと美しさ、川
と共に暮らす人々の誇りと夢。
4/19(土)レイトショー PM8:55 ★小林茂さん(撮影)によるトークあり
「あもーる あもれいら・第1部」*劇場初公開
(2007年/日本・ブラジル/1h34) *プロジェクター上映
監督:岡村淳
ブラジルの田舎町、貧困家庭の子供たちが通う保育園。複雑な家庭の問題で心に傷
を抱えた子供たちと日本人シスター達の、祈りと戦いの毎日。グローバリゼーショ
ンと格差社会を問う。
4/20(日)モーニングショー AM10:30 ★岡村淳監督によるトークあり
「をどらば をどれ」(1994年/日本/50分)
監督:伊勢真一
「何故この小さな村にだけ、をどり念仏は残ったのか。村人たちは何故こんな踊り
を700年も残したのか。」この踊りに魅かれた監督が日本の様々な文化、芸術に影
響を与えた“をどり念仏”を追う。
*「津軽こぎん〜高橋篤子〜(25分)」併映
4/20(日)レイトショー PM8:45 ★伊勢真一監督によるトークあり
「遙かなる記録者への道―姫田忠義と映像民俗学―」*劇場初公開
(2007年/日本/1h15) *プロジェクター上映
企画・制作:民族文化映像研究所・紀伊國屋書店・ポルケ
「記録者とは何か。どうあることが、その名にふさわしいのか。」今なお模索のな
かにある「遙かなる」課題を、民族文化を映像に記録し続けてきた姫田忠義、自ら
が問いかける。
*「奥会津の木地師(55分)」併映
4/21(月)モーニングショー AM10:00
「9.11−8.15 日本心中」
(2005年/日本/2h25) *プロジェクター上映
●'06年モントリオール世界映画祭正式招待作品
監督:大浦信行
9.11米国同時多発テロとの関連で現代日本のありようを見つめ直す。 針生一郎、
鶴見俊輔、鵜飼哲の言葉が熱く、重信メイが訪ねる韓国現代詩人、金芝河の極東か
ら発信する共生と平和の言葉が重く心に響く―。
4/21(月)レイトショー PM8:40 ★大浦信行監督によるトークあり
4/24(木)モーニングショー AM10:00
「水になった村」
(2007年/日本/1h32) *プロジェクター上映
監督:大西暢夫
「降り注ぐ笑いが僕の宝物だった。この先ジジババたちはどこへ行くのだろう。」
今はもう地図を探しても見つからない、岐阜県揖斐郡徳山村。ダムの完成を待つば
かりのこの村で写真家・大西暢夫が出会った“ジジババ”達との15年間。
4/22(火)モーニングショー AM10:00
4/25(金)モーニングショー AM10:00
4/26(土)レイトショー PM8:50 ★大西暢夫監督によるトークあり
「イヨマンテ−熊おくり」*劇場初公開
(1977年/日本/1h43) *16mm上映
監督:姫田忠義
アイヌの自然観、生命観が凝縮した最大の儀礼であるイヨマンテ(熊の魂を神々の
国へ送り返す祭)。故・萱野茂の指揮のもと、ウタリによるイヨマンテを準備から
記録したアイヌ民族復活の証。
4/22(火)レイトショー PM8:45 ★姫田忠義監督によるトークあり
「プライドinブルー」
(2007年/日本/1h24)
●'07年度文化庁映画賞 優秀賞
監督:中村和彦
ワールドカップの開催年に実施されている知的障害者のサッカー世界選手権、通称
<もうひとつのワールドカップ>。'06ドイツ大会に参加した選手たちを追う。彼ら
の希望と誇りが暖かい感動を呼ぶ。
4/23(水)モーニングショー AM10:30
「M」*劇場初公開
(2007年/アルゼンチン/2h30)
●'07年山形国際ドキュメンタリー映画祭 インターナショナル・コンペティション
優秀賞 監督:ニコラス・プリビデラ
1976年、軍事政権下で突然消息を絶った監督の母マルタ。謎を追うにつれて判明す
る地下活動仲間らの軋轢や裏切り、そして風化。血塗られたアルゼンチンの歴史が
あぶり出される。
4/23(水)レイトショー PM8:40 ★星野弥生さん
(2007年山形国際ドキュメンタリー映画祭スペイン語通訳)によるトークあり
「プージェー」
(2006年/日本/1h50) *プロジェクター上映
●'08年サンダンス国際映画祭出品作品
●'07年韓国EBS国際ドキュメンタリー映画祭 グランプリ
監督:山田和也
探検家・関野吉晴が出会った遊牧民の少女・プージェーとその一家。市場経済へと
変わりゆくモンゴルの草原で起こった、小さいけれど深い出逢いの物語。
4/24(木)レイトショー PM8:45 ★山田和也監督によるトークあり
「バックドロップ クルディスタン」*劇場初公開
(2007年/日本・トルコ・ニュージーランド/1h42) *プロジェクター上映
●'07年山形国際ドキュメンタリー映画祭 アジア千波万波部門 奨励賞・市民賞
●'07年度毎日映画コンクール ドキュメンタリー映画賞
監督:野本大
迫害を逃れるために日本にやってきたクルド人一家の現実を目の当たりにし、「傍
観者」であった監督が、一家の背景を追ってトルコへ飛ぶ。個人と社会、国家への
バック・ドロップ。
4/25(金)レイトショー PM8:45 ★監督またはプロデューサーによるトークあり
<お問い合わせ>
○下高井戸シネマ
〒156-0043 世田谷区松原3-27-26 京王下高井戸ビル2F
〔TEL〕03-3328-1008/03-3328-5441
〔公式ホームページ〕
http://www.ne.jp/asahi/kmr/ski/shimotakaido_cinema.html
○優れたドキュメンタリー映画を観る会 飯田光代
〔TEL〕03-3426-7053
◇────────────────────────◆◇◆
■募集:「自作を語る」などの投稿歓迎!
「自作を語る」欄は、監督自らが作品について語るコーナーです。制作した動機や
撮影のポイント、編集で心がけたこと等を内容に盛り込んで頂きたいと思っていま
す。その他の投稿も歓迎します。「自作を語る」は1600字程度。監督のプロフィー
ル(150字)、作品の仕様(制作年度、時間、ビデオ又はフィルム、スタッフ等)、上
映スケジュール、HP等をお知らせください。
原稿締め切り:配信日(1日&15日)の3日前までに、下記に送信ください。
E-mail: visualtrax@jcom.home.ne.jp 伏屋まで
◇────────────────────────◆◇◆
■上映の告知の有料化とカンパのお願い
■伏屋 博雄(本誌編集長)
neoneoの購読は無料ですが、経費を(その大部分は稿料ですが)賄うため、上映等の
告知は有料にしています。なお皆様にカンパもお願いしていますので、ぜひご協力
ください。
(1)上映等の告知の有料化 40字×30行(行数の空きも計算)以内につき、2,000円
です。それ以上の行数の場合は加算します。
(2)カンパのお願い 一口2,000円。何口でも。
送金方法:郵便振込み:00160-8-666528 neoneoの会、又は、
みずほ銀行池袋支店、普通口座、2419782 (有)ネットワークフィルムズ
(銀行振込の場合は、その由を visualtrax@jcom.home.ne.jp 伏屋宛にお知らせく
ださい。)
以上、neoneoの継続ため、よろしくお願い致します。
┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃07┃■編集後記 伏屋 博雄(ふせや・ひろお)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●「コミュニティシネマの日々」の最終回がきた。岩崎ゆう子さんには日頃のご多
忙にも拘わらず、連載していただいたことに感謝したい。今回は最終回のテーマに
相応しく、「コミュニティシネマのこれから」である。冒頭から、住みたい町がイ
メージ豊かに描かれている。具体的で細やかで、引き込まれた。私は一読後、「こ
んな町だったら、直ちに引っ越して、住んでみたい」と、心底思ったのだ。町の活
性とコミュニティシネマの関係が不可分に結束している。
岩崎さんは原稿の中の一節。―「コミュニティシネマというのは、映画だけ、コミ
ュニティシネマだけでは実現させることができないことなのだと思う。ある町の、
あるコミュニティの、ある国の人たちが、思い描く、ありたいと願う、その町や国
の生活のあり方、その中にコミュニティシネマがあることによって、コミュニティ
シネマが実現するのだと思う。」
●映画は往々にして、灯台下よりも遠方に強烈な光を与えることはよくあることだ。
今回、北京で映画を学ぶ前田佳孝さんの「日中ドキュメンタリー映画史〜中国での
小川紳介の影響〜」を読むと、その感を強くする。国境を越えて、映画は影響し合
う。
小川紳介の場合、国内においても、例えば佐藤真が『阿賀に生きる』を制作した際、
小川作品を繰り返し観て(特に『三里塚 辺田部落に』)刺激を受けたことは有名
な話だし、劇映画の監督が若い頃に影響を受けたという話を聞いたこともある。し
かし小川が、中国の(韓国を含む)インディペンデントの監督たちに与えたインパ
クトは想像以上で、前田さんの文章を読むと、ことの次第がよくわかる。一方で、
中国の若き世代の監督サイドに立てば、それは、現状を突破しようとする情熱は新
しい表現の希求となって、受容の密度は桁はずれに大きかったに違いない。昨今の
中国のドキュメンタリー映画の躍進を考えると、ふと、こんなことを思ってしまう。
フィリピンのキドラット・タヒミックは小川とも親交があったし、山形映画祭とは
お馴染みのインディペント映像作家だ。その彼が名古屋とも強い絆を結んでいるこ
とを、越後谷卓司さんが活写している。彼は昨年のヤマガタのコンペの審査員とし
て元気な姿を見せたが、私はここしばらく、彼の作品を観ていなかった。それだけ
に、越後谷さんのレポートによって、廣田緑さんのプロ ジェクトに参加し今なお
映像活動を持続していることを知り、頼もしく思った。
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- フォト・ジャーナリスト、ビデオ・ジャーナリストが世界の戦場から今を伝える。
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