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ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo 84号 2007.7.15

発行日: 2007/7/15

 
 
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┃n┣━┫o┣━┫e┣━┓ ★ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン
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∽∽∽∽∽∽ HEADLINE ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

 †01 ■ドキュメンタリー映画のかたち
     小川紳介と戦後日本ドキュメンタリー史が英語になった:
     阿部・マーク・ノーネス著「Forest of Pressure: Ogawa Shinsuke and
      Post-War Japanese Documentary」読後のノート(2)  水野 祥子
 †02 ■ワールドワイドNOW ≪パリ発≫
     勢いづく「パリ・シネマ」の試み  高橋 晶子
 †03 ■列島通信 ≪名古屋発≫
     プライベート・ドキュメンタリーの問題作  越後谷 卓司
 †04 ■neoneo坐7月後半の上映プログラム
 †05 ■広場
    ■新・クチコミ200字評!(57)
      『地球ドラマチック ジェラート大好き!』『芸術劇場 小川典子&
       田部京子 ピアノ・デュオ・コンサート』(以上の評:脇阪 亮)
      『五重塔はなぜ倒れないか』『ボラット 栄光ナル国家カザフスタン
       のためのアメリカ文化学習』『腹腹時計』『水になった村』
        (以上の評:清水 浩之)
  ■上映:『belief』(シネマアートン下北沢) 7月28日〜8月17日 
  ■上映:『水になった村』公開記念<ダム映画特集>
       7月28日(土)〜8月3日(金) ポレポレ東中野
  ■募集:「自作を語る」などの原稿募集!
    ■上映の告知の有料化とカンパのお願い  伏屋 博雄
 †06 ■編集後記  伏屋 博雄


    ★バックナンバー閲覧はこちらまで
   まぐまぐ配信   http://blog.mag2.com/m/log/0000116642/ 
   melma!配信    http://www.melma.com/backnumber_98339/ 


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┃01┃□日本のドキュメンタリー映画のかたち
┃ ┃■小川紳介と戦後日本ドキュメンタリー史が英語になった:
┃ ┃ 阿部・マーク・ノーネス著『Forest of Pressure: Ogawa Shinsuke and
┃ ┃ Post-War Japanese Documentary』読後のノート(2)
┃ ┃■水野 祥子
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Forest of Pressure の第一章に先立つイントロダクションのなかで、著者 阿部・
マーク・ノーネスは小川との出会いを語る。小川紳介は、1988年のハワイ映画祭に
おいて『1000年刻みの日時計〜亜牧野村物語』(1986)を見てアプローチを試みた
著者を、クレジットカードを持たないアメリカ人、として後にメンバーに紹介した。
このエピソードは、ある人間との出会いに繋がりを見いだし、そのことをさらに大
勢との仲間意識として浸透させる小川の巧みな話術を物語るエピソードとして機能
している。この他に、小川のカリスマ性、小川プロの集団製作と共同生活について、
山形映画祭、そして小川神話とその崩壊について、を簡単に解説する。明るさ、暖
かさ、情熱と裏腹に 、映画作家としてのひとり立ちを助けながらもその芽を結局
は潰してしまう、そんな小川とプロのメンバーとの関係をノーネスは、この本のタ
イトルにもなった“圧殺の森”ということばに見いだしたということにも触れてい
る。映画作家小川について、日本映画史について、なにも知らない読者も興味をそ
そられる始まりだ。

同時にここで、この本の焦点の解説がなされる。60年代、70年代初期の小川プロ作
品については、当時の社会の生産物であるという視点で語りたいというだけでここ
では多くは語られない。著者がプログラマーとして積極的に関わってきた山形国際
ドキュメンタリー映画祭がやがて10年目を迎える1998年の山形映画祭でのエピソー
ドへとぶ。1980年代とその後の日本ドキュメンタリー特集に組まれたシンポジウム
で観客の中にいた元小川プロの福田克彦の発言を契機に、進行役の批評家山根貞男
が発したことばがこの本で探求される疑問として提示され、その後反復されている。

それは、1960年代と70年代初期に質量ともに目を見張るドキュメンタリーが存在し
た、だが「70年代初期から半ばにかけて何かが起きた」ということ。(xxii)
その後、日本のドキュメンタリーは「自信を失い」、かつ、「決定的な暗黒」
(”critical darkness,” xxiv)の時代に突入していると言い切っている。80年
代以降欧米で展開していた文化政治的でパフォーマティヴなドキュメンタリー映画、
ビデオ作品に似ているが、それらは論理的に厳密な政治的かつ理論的であるのに比
べて、経済発展が急進する80年代から今日までの日本のドキュメンタリーは、例外
の存在を認めながらも、「ぼんやりとした政治とは無関係な自己を記録する」とい
う。(xxiv)

何かが70年代半ばに起きた。それは何か。それ以前の映画作家たちは欧米の映画を
知っていたが模倣をすることなく、独自の表現方法と政治性等を追求して行ったと
いうことが指摘される。この、何が起きたのか、という問いに、それはどうもドキ
ュメンタリー製作において「ある集団が他の集団を撮ることと個人が手持ちカメラ
によって自己を記録することとを分割し、公と私を分割し、主体と対象を分岐する
もの、1960年代と今日を分岐するもののようだ」(xxv)、という仮説をたて、著者
は、戦後ドキュメンタリーを切り替えた何かを手探りで探す、と宣言する。

ここで興味深いところは、何かが言説上にもあった、という指摘と探求である。小
川プロが使った映画作家としての主体という言葉は完全に社会的であった。そして
その「主体」は映画上で認識可能な表現を必要とし、同時に、カメラの前で動いて
いる対象との密な関係性を知らしめることであった、という。ところが、私ドキュ
メンタリーにおける作家の主体は、自己や家族の小さな世界にひきこもり、政治的
な立ち位置や社会的な距離感なしに、社会との関係性を断っている、という飯塚敏
男の見解を支持している。ドキュメンタリーという言葉も、英語圏でも日本でも時
代によって定義がかわってくるから、言説分析は映画史、比較映画史には欠かせな
い。ノーネスが展開したドキュメンタリー言説と作品の変容、そして主体と対象を
キーワードにした言説構造分析は作品分析とからめて次号で纏めてみることにして、
方法論について考えたところをすこし述べたい。


●作家論と映画史

前号では英語圏での日本ドキュエメンタリーの作品と情報の希少さ、とりわけ小川
と小川プロ作品に関する情報量の欠如という状態のなかで出版されたこの本に課さ
れた重要な役割について話した。 私はこの本を初めて手にしたとき、ノーネスが
まずはどうやって、小川紳介の作家性と戦後として括られた日本ドキュメンタリー
史の大きな流れを絡めて語るか、作家主義と歴史性の相反しがちなところをどう交
渉していくか、戦後ドキュメンタリーというのはどういうことなのか、に興味を持
った。

まず明らかになるのは、 戦後ドキュメンタリーという枠組みの問題である。ここ
での戦後とは、20世紀を終戦の1945年前後で区切る戦後55年と今日までという大き
なものであった。戦前のドキュメンタリー史はすでにノーネス自身が一冊の本を出
版しており、本書は、戦前との連鎖性を強調しながら、戦後ドキュメンタリーとい
う大河に特筆すべき小川という作家とその製作集団小川プロの映画と活動に焦点を
あてることにより、第一章が小川前史としての戦後占領期と50年代ドキュメンタ
リー、二章が自映組時代、三章は小川プロ三里塚時代、四章が山形への移動期、そ
の頃のプロ内外の様々なドキュメンタリー作品に見いだされる変化、それらを巡る
理論、言説上の展開、そして小川プロという森のなかの圧殺について、5章目が山
形時代、6章が80年代から今日まで、という内容になっている。三里塚時代の第三
章を中核に、小川プロ前史と何かが起きた転換期とそれ以降について、という大ま
かな区分けである。(決して章の区切りがターニングポイントとされているわけで
はない。)

一目には作家主義的なアプローチとも見える、小川を中心として前後を模索する戦
後日本ドキュメンタリー史編纂という方法だが、この二項の間である巧みな交渉が
なされている。小川プロ全盛期以降の私ドキュメンタリー時代の低迷を指摘し、小
川全盛時代は質量において卓越していたということを前提としていることから、著
者はこれらの映画に優越をつけている、ということになる。もしこの点だけに着眼
するなら、確かに、この本を小川プロという(集団)作家主義に基づく映画史とし
て読むこともできる。しかしノーネスは、おそらく意識的に、読者にとって読みや
すい作家主義のジェスチャーをとりながらも、旧式の作家主義と進化論的映画史に
ありがちな映画作品テクスト中心の言説だけに頼ることを避けている。

オーソドックスな作家主義はテクストを重視し、量より質を重視する。いかに優れ
た映画を作り出した偉大な作家であるかを説く。作家主義は、同時代のその他や大
群から逸脱し優れた作品を世に出したからこそ作家として語ることができるのが前
提だからだ。これは偉人伝のようなものだから、広く一般的な読者には読みやすい。
しかし、これは歴史家にとっては穴だらけの映画史だ。映画も同時代の政治、社会、
文化の産物であるという視点からの映画史編纂(やさらなる選別回避を試みる映画
保存)の論理においては矛盾を提示するからだ。

ひと昔前まで、映画史は、作品批評の延長として時代を追いながら作家主義的に優
れた作品を中心にどう映画が進化したかを中心に追ってきた。そこに名を刻まれる
名監督の傑作の中には批評的には成功していても殆ど見られていないものもある。
しかしそれだけではある国の映画史を語ることにはならない。最も量産されたパタ
ーンや、どの規模でどのような観客に見られてきた文化的な側面について触れない
では、時代や文化との繋がりが見えないし、進化論的な日本映画傑作史になってし
まう。アメリカ映画史、日本映画史、中国映画史、というナショナル・シネマを語
るときの枠組み構成が非常にむずかしくなってきたのは、グローバル化が進み何処
の国の映画ということが一言で言えない状態になっただけではない。アーキヴィス
トたちが選別することを避けるように、大衆に支持されたジャンル映画等の量的な
重み、その時代性、作品制作におけるその他の貢献者を無視してある国の映画史を
語ることはできないという認識が広まり、集団性、産業史、文化史としての視点が
重要視されるようになってきたからでもある。

さて作家主義と歴史編纂がForest of Pressureでどう絡んでいるか、という点であ
るが、 まず、小川プロ前後の章においては、 特筆すべき作品とその作家について
の解説と、社会的背景、映画史上の量的な大きな流れについての説明においてバラ
ンスがとれていることで和解されている。第一章では、PR映画について、安保闘争
と学生運動という文脈、小川の岩波映画製作所時代、青の会、新旧左翼思想につい
ても解説がされる。二章では、 小川の自映祖時代の活動と作品解説だけでなく、
映像芸術の会結成、黒木の『あるマラソンランナーの記録』(1964)を巡る抵抗、土
本の『ドキュメント・路上』(1964)についても注意深く言及され、1964年半ばから
65年の夏の12ヶ月が、日本の「独立系ドキュメンタリー」の定義が変容する時期で
あったという論点の裏付が行われる。 これらは私が『ある機関助手』のニュー
ヨーク上映後になくてはならないと感じた文脈であった。

ふたつ目は、小川という作家の多面性を語ることと、第四章と六章が採り上げる
『どっこい!人間節 -寿・自由労働者の町』(1975)と『映画作りとむらの道』
(監督福田克彦、1973)の再評価を通して、小川という作家の名の看板をつけながら
集団製作を強調する小川プロのなかでの矛盾を浮き彫りにすることで、偉大さと個
の貢献を強調する旧式の作家論に挑んでいること。映画づくりにおける作家とその
集団がいかに動いたかについてのディテールだ。ノーネスはここで、 小川紳介と
いう紛れも無い映画作家が、成熟しつつあったメンバーへチャンスを与えながらも、
フィードバック、構成、編集のプロセスで批判し事実上監督の座を取り上げてしま
ったこと、そして福田と湯本以下それぞれの製作に関わったメンバーが実際わずか
な予算と小川なしで三里塚での経験をもとに、どう対象とかかわり、困難を乗り越
え作品を完成させたかを語る。長い作品解説と分析のあと、『どっこい…』には
「高度成長の頂点の日本が抑圧した現実の[都市]空間に敢然と立ち向かうポート
レートであり、[小川プロという]集団の最も力強い映画のひとつである」という賛
辞が贈られ(170)、それまで一本の完成作品として見なされることが少なかった
『映画作り…』には、ある作家を名監督として映す見せ物的伝記映画とは違って、
「カメラの前後の人間の交流」(251)を記録した資料性の高い貴重な作品との評
価がなされている。


●上映、受容史への着眼

さらに興味深い小川プロ論と映画史編纂の接点は、映画がどのように上映され、い
かに知識層だけでなく一般の観客に見られてきたかという着眼点にある。特に小川
前史の第一章、三里塚シリーズの第三章は充実している。第一章では占領期に量産
されていながらも映画史言説上で周辺化されてきたGHQ/SCAPの民間情報教育局、
Civil Information and Education(CIE)、の占領期プロパンガンダ教育映画につ
いて、その配給と上映に焦点をあてて解説されているくだりは、既存の日本映画史
の盲点であったのではないかと思う。

著者によると、 終戦直後の日本において国民がファシズムから脱し米国が説く新
しい民主主義を理解することを目的にしたCIEのプロパガンダ映画は、19488年まで
に1300以上もつくられ、数多くのプリントが複製され、全国津々浦々の教育機関や
図書館に行きわたり上映された。CIE映画は、その資料によると、占領期が終わる
までにのべおよそ5億(472,341,919)の人が見ていたとある。終戦直後、上映会場
の多くが屋外であった。CIEは「成功する映画上映のための7段階」という箇条書き
のガイドラインまで配布し、上映機関にはそれに添って行うよう指導していた、と
ある。
(p.3-5) このターゲットとなった観客は、日本国民、とりわけ、子供、青少年だっ
た。 CIE映画はこれまで劇映画検閲の文脈では語られてきたが、この量産されたプ
ロパガンダの影響力と現存するプリントの数を考えると、これはさらなる調査の余
地があると感じた。当時の小川はこれらを見ていただろうか、私は想像を巡らせた
りもしてしまった。

このような上映活動と受容の歴史編纂へのアプローチは、小川プロ映画を熱く語る
3〜4章においてさらに成功している。これほど映画上映に力を入れた作家は稀であ
るという前置きで、体制が支配する公の領域を侵した反体制的ポリティカル・ドキ
ュメンタリー・ムーブメントとはどういうものかということを、理論を用いたテク
スト分析だけでなく、小川プロの草の根上映活動と観客の動向に焦点をあてること
により紐解く。これはオーソドックスな一元作家主義には見られない大変興味深い
作業である。

著者はまず、三里塚時代に使われた上映用ポスターを掲載し分析する。立ち退きを
拒否する清宮力さんが頭を挙げ遠くを見るその表情には、百姓わ、土地売ったらお
しめえだ という言葉が添えられている。もう一つは無人の荒野の写真に、一声、
関東に不平あり。この名言は近代化の過程の環境汚染問題が起き、日本政府が初め
て住民の移住を提案した1880年代の足尾鉱毒事件の折の反政府運動家で知られる政
治家田中正造の言葉であると解説されている。ポスター上にはプロ活動の支持を希
望する人たちのために、連絡先が記載してあるのだという解説も添えられている。
(80) さらに、カンパと地方ボランティアの協力を得ながらの小川プロの草の根的
自主映画上映運動の展開を、『三里塚の夏』(1968)のアンケートを掲載し(98-9)
一般観客の答えの例をあげながら、著者は、主要メディアが独占していた公共圏で
小川プロが地方から一歩一歩足固めをして進んでいった様子として語る。 結果的
に空港建設は完了し成功とはいえなかったとはいえ、映画製作集団が、観客を動か
し文化を動かすことができるという可能性を提示したダイナミックな過程である。
小川プロ映画が戦後ドキュメンタリーに放った光は、一般の観客のなにかしなけれ
ば、という意識を芽生えさせたのだ。この上映活動は明らかに何かが起きた私ドキ
ュメンタリー時代には消えていく、小川プロが開拓した、公の世界での政治的映画
運動の重要な特色であった。

上映、受容は作家論上でも映画史上でも軽視されがちである。それらを単なるコン
テクストではなく動的なテクストとして作品と同等に扱うことによって、 CIE映画
が戦後掌握した文化的統治基盤を使ったトップ・ダウン的体制側の成功例と、その
対照的な、小川プロが後にボトム・アップの方向性で試みた支配的な政治、社会、
文化との対峙の上映運動の様子が対照的に浮かび上がってくる。 小川プロの上映
会は、「意義なし」、「ナンセンス!」といった観客の声があがるインタラクティ
ブなものだったという。(100)今日の映画上映では、これは確かに消えてしまっ
ていることは確実である。上映活動は映画そのもの同様、映画史と社会史とを交差
させる最も重要な映画史の一面なのだということを再確認した。

次号では小川プロ映画に宿る創造性と政治性について、そして、主体をキーワード
にした言説上の転換について、さらにもうひとつ、何かの後の日本ドキュメンタリ
ー史がどう語られているかについて言及したい。


※本文中「」内の抜粋箇所は筆者が原文を翻訳したものです。


■水野 祥子(みずの・さちこ)

比較映画史研究。マイケル・ムーア監督による最新作『シッコ』拝見。ああ、だか
らアメリカで老後を過ごしたくないんだ、とこぼしてみたら、「何を言ってるんで
すか、日本では数年前から医療費が3割負担になってるんですよ」と友人に指摘さ
れ青くなる。そうでした。これはすべての日本人が、明日は我が身、と思いながら
見る映画です。そして今回こそよく考えて、選挙に行きましょう。



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┃02┃□ワールドワイドNOW ≪パリ発≫
┃ ┃■勢いづく「パリ・シネマ」の試み
┃ ┃■高橋 晶子
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

7月3日から14日まで、パリ市内の各地で「パリ・シネマ」というフェスティバルが
開催された。夏休みの時期になるとパリの住人が皆バカンスに出掛けてしまうため、
公開日を夏に予定するのはなるべく避けたり旧作を繰り返し上映したりと、なにか
とパリの夏の映画館では目を惹きつけるものがなかった。そんな事態を改善させる
願いから、夏でもパリに残っている人々が映画館で楽しめるようにと5年前に細々
と始まったパリ・シネマだが、年々勢いよく成長し、今年は長編・短編併せて450
作品がパリの20箇所の会場にて上映された。国内・国外作品コンペ部門の他に、特
別上映としてレバノンの新作映画や映画学校の学生の卒業制作特集、過去の名作の
再発見上映や子供向け上映会等さまざまなプログラムが目白押しだった。商業的側
面もフォローし、スターを招いて華やかな部分もある一方で、このように多様な映
画を分け隔てなく扱う映画祭は大変珍しい。「映画」というキーワードを中心に、
異なる傾向の人々が一堂に会している感を得た。主に、ドキュメンタリー監督とし
てもデビューを果たした仏女優サンドリーヌ・ボネール、撮影監督クリストファー
・ドイル、伊監督フランチェスコ・ロージ、マレーシアのヤスミン・アハマド監督
らにオマージュが捧げられ、日本からは5月のカンヌ映画祭にて「殯の森」でグラ
ンプリを受賞したばかりの河瀬直美監督が招待された。

面白いのは、作品と関わりのある場所にスクリーンを設置して野外上映をするとい
う試みで、20年代の歓楽街の名残を今に残すモンマルトルの丘ではピアノの生演奏
付で当時の無声映画が上映され、レバノン映画はアラビア模様のモザイク床が美し
いアラブ世界研究所の広場に設置されたスクリーンで上映されたりした事だ。今年
はあいにく例外的な寒さと雨でしっかり防寒をしないといけないのが残念ではあっ
たが、映画館では味わえない映画体験だった。このレバノン映画特集では60本の作
品が上映された。レバノン国内における今年度の劇場公開作品数は4本だと言う。
言うまでもなく政治情勢の悪化から2000年から2004年にかけて公開作品数がゼロだ
った時に比べると状況はずいぶん改善されているらしい。レバノンの映画人らが招
待され自国の映画製作の苦しい現状を語った。彼らを応援する意を込めて映画祭が
特集上映を決定したと言う。

上映の他に、講演会や分科会も行われた。最も大規模に行われたのは、国際映画祭
の役割についてを問うもので、カンヌ映画祭のジル・ジャコブ会長、ローマ映画祭
のジョルジオ・ゴセッティ氏や映画の海外セールス会社の代表などが参加した。伝
統的な映画祭の代表らが「映画祭は映画を人々に発見してもらう役割がある」と自
信を持って声をそろえたのに対し、セールスの立場にある参加者からは、「インタ
ーネットで情報がいち早く出回る現在において、映画祭で初めて作品が発見される
なんてありえない。映画祭の始まる数ヶ月も前から受賞作品の予想がされるくらい
だ。」と反論もあがった。国際映画祭をとりまく状況が刻々と変わっている事が伺
われた。

また、「シネ・キャンパス」と題してプロデューサーのための勉強会も開かれた。
ヨーロッパ内での合作が増える中、映画製作における各国の税金制度の違いや公的
資金援助のシステムのあり方を学ぶと言うものだ。各国から現役のプロデューサー
が参加し具体例を挙げながら意見交換が交わされた。

この他に、フランスからの資金を希望している海外の企画が紹介される場が持たれ
た。撮影が予定されている、もしくは終了した企画でも、資金難で完成できない作
品がフランスで出資者を探すと言うものだ。今年はユニジャパンが日本のプロデュ
ーサーをバックアップして7名が渡仏し、今後の可能性を探った。各々の企画をフ
ランスのプロデューサーらにプレゼンテーションし、共同制作の実現へと働きかけ
た。フランスのプロデューサーにとっては日本との合作はまだまだ前例が少ない上、
2国間の協定もまだ実施されるに至らない点が多く容易ではないようだが、こうし
たきっかけ作りが今後もたらす結果に期待したい。

昨年よりもさらに規模が大きくなった今年のパリ・シネマは、夏のパリの映画状況
の一面を大きく変えたようだ。


■高橋 晶子(たかはし・しょうこ)

横浜生まれ。フランスの言語・映画に魅せられ94年に渡仏。パリ第8大学映画学科
卒業。映画・TV関係のコーディネート・通訳・字幕翻訳及び助監督として活動。



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┃03┃□列島通信 ≪名古屋発≫
┃ ┃■プライベート・ドキュメンタリーの問題作
┃ ┃■越後谷 卓司
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●これまでとは異質の『空の箱』

実験映画において、ジョナス・メカスを嚆矢とする日記映画や、鈴木志郎康を代表
格とする身辺雑記的な個人映画の系譜があり、これらの作品が、プライベート・ド
キュメンタリーと呼ばれる、作家自身が語り手となって家族など身近な存在を対象
とするドキュメンタリーの、近年のおける特徴的な傾向とオーバーラップするもの
であることは、以前にも述べたが、最近そうした中で、ある種の問題提起となる作
品に出会うことができた。それは、祢津悠紀が自作・自演した38分の短編『空の
箱』(2006年)である。

これは、「イメージフォーラム・フェスティバル2007」(4月28日から5月6日まで、
東京新宿のパークタワーで開催、その後、各地を巡回し、名古屋では6月16日、17
日に当・愛知芸術文化センターで開催された)の一般公募部門で奨励賞を受賞した
作品で、カタログによれば祢津は、この作品が初めてのフェスティバルへの応募作
であったとのことで、新人といっていい存在である。彼自身の日常の暮らしを題材
として、画面に登場するのも彼一人だけというミニマルな作品で、刺激的なイメー
ジの作品が集まる実験映画のフェスティバルの中では、ただ取り留めのない日常を
撮っただけの地味な作品といった感じで受け止められていたようだが、私自身には
強く印象に残るものであった。

この作品で最も際立っているのは、私映画なりプライベート・ドキュメンタリーと
呼ばれる作品のほとんどが、作家自身の内面吐露というか心情告白をベースに作ら
れていたのに対して、ここでは作者自身の内面がまったく描写されないという点で
あろう。それは『空の箱』を〈からのはこ〉と読ませていることからも、意識的か
つ意図的であると思われる。ここで描かれるのは、作者が自転車でマンションに帰
宅し、ベランダの植物に水をやり、ワープロに向かってひたすら何かを入力し、夕
食を自炊し、入浴し、やがて朝を迎えて洗濯をする、といった、取り立てて珍しく
もない日常の営みを、ただ淡々と追っていることだろう。そこに彼自身の心情を語
るナレーションも被られなければ、まして作者が独白することもない。また、ワー
プロに向かって入力する姿は写しだされるものの、その文書が画面に示されること
もなく、ましてや読み上げられることもない。つまりこの作品には、作者を知る手
掛かりが言葉では何も示されないのである。そのため、画面には何者であるかが判
らないこの男が、異様に不気味な存在となって立ち上がってくるのだ。

画面を観る我々は、その中で示される限られた情報に注視せざるを得ない。例えば、
自転車で帰宅後、缶飲料を飲み干して共用のポストの上に空き缶を置く。ちょっと
したマナー違反といった感じで見過ごしてしまいそうだが、この人物に関する情報
が限られているために重みを増し、反社会的で不穏な感触も漂ってくる。あるいは、
壁にピンナップのように貼られる、雑誌のコピーとおぼしきいくつかの写真も、単
に彼の趣味の表れという以上のものを感じさせる。また就寝前にテレビを点けるの
だが、映りが悪いのか、さかんに叩いた挙句、あっかなく消してしまうのも異様に
暴力的な印象を与えることになる。そして終盤、洗濯機を廻しながら無言でいる彼
の映像に、不意に心象風景といった感じで、何処とも知れぬ河の映像がインサート
されるのだが、それが何であるかは具体的には示されず、すべては観客の解釈へと
委ねられてしまう。

丹念に男の一人暮らしが映像で綴られながら、心情的に何かを語るという訳ではな
いこの作品は、端的にいうと掴み所がなく、観客もまたこれについて語り難いこと
は確かだろう。ただ少なくとも、プライベート・ドキュメンタリーの形式に拠って
作られたこの作品は、我々をひたすら画面に注視させることによって、安易に内面
を言葉で語ってきたこれまでの作品群に対するアンチテーゼを提示したことは確か
だろう。そしてこのことは、決して軽視できない硬質で重い問題提起であると思わ
れるのだ。


■越後谷 卓司(えちごや・たかし)

愛知県文化情報センター主任学芸員。映像アートの祭典である「イメージフォーラ
ム・フェスティバル2007」に合わせ、このジャンルの入門となる上映会「実験映画
とドキュメンタリーの愉しみ」を開催した。現在は、7月26日スタートの「アート
・アニメーション・フェスティバル」の準備に追われている。



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┃04┃□neoneo坐7月後半の上映プログラム
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会場はいずれも神田・小川町のスペースneo(都営新宿線小川町駅B5出口より徒歩
1分、JR御茶ノ水駅聖橋口より徒歩5分)です。
詳細と地図はneoneo坐のHPをご覧下さい。  http://www.neoneoza.com/ 


■NEO Gallege Bar 飯村隆彦と映像の夕辺 (2) リプレイド・パフォームズ
7月24日(火) 20;00〜

会費:2000円
問合せ先:SPACENEO(mail: spaceneo@tcn-catv.ne.jp )


■短編調査団(53) 農業の巻
7月25日(水) 20:00〜

『農業とバイオテクノロジー』
1988年/20分/カラー/制作:東京シネ・ビデオ/
プロデューサー:横川元彦・佐藤有弘/脚本・監督:米内義人/撮影:豊岡定夫・
立野邦夫
葉や茎、オシベなどの組織を培養して植物を増やす技術を、バイオテクノロジーと
いう。農業分野におけるバイオ技術、胚培養、生長点培養、細胞融合、遺伝子組換
えなどの実際をアニメーションを交えて判りやすく描き、バイオ技術の農業利用に
ついての理解を深める。

『根ノ国―有機農業とは何か―』
1981年/24分/カラー/制作:東京写真工房/企画:マルタ柑橘生産組合/
プロデューサー・撮影:菊地周/脚本・監督:荒井一作/撮影:豊岡定夫
色とりどりの草花や豊かな農作物をはぐくむのは、「母なる大地」である。この映
画は今まで不可視であった土の中の世界を映像化、そこに潜む神秘な生命のはたら
きを解明してゆく。

『消えゆく農耕馬』
1977年/21分/カラー/制作:全国農村映画協会/企画:家の光協会/
プロデューサー:小野寺正寿/脚本・監督:河野哲二/撮影:阿部義則
機械文明の発達とともに馬と接する機会はほとんどなくなってきた。戦争によって
馬が減り、機械がそれに代った。東北地方のある農村では、人は馬と共に生きてき
て、今も馬と人とのきずなが残っている。

『山地酪農にいどむ』
1968年/30分/カラー/制作:春秋映画社/企画:貯蓄増強中央委員会/
プロデューサー:榊原六郎/監督:本間賢二/脚本:小森礼夫/撮影:蒔田昌武
未利用の急傾斜地を利用して乳牛の放牧に成功している高知、群馬の実例を紹介。
更に山をきりひらいて乳牛を飼おうとしている秋田の青年たちを描く。

【料金】鑑賞無料! カンパ歓迎!
【お問合せ】清水 E-mail: shimizu4310@bridge.ocn.ne.jp 


■NEO Gallege Bar 番外編
7月26日(金)

『アンダーグラウンド映画入門講座』
20:00〜 第一部・大西健児作品集上映 & 第二部・ライブ上演(予定)。
参考映像上映を含む大西健児のアングラ映画史講習会 + 16ミリ映画『焼星』
『水槽都市』上映(他)。

【料金】 1,500円(軽食付・アルコール類は別料金/1ドリンク300円)
【問合先】スペースneo 佐々木 TEL:090-3271-5280


■『もっちょむぱあぷるへいず』あがた森魚月刊映画上映会
7月27日(金)18:00-
18:00〜『もっちょむうすけしぱあぷるへいず6月號』
(17時より開場・開場中に『もっちょむうすけしぱあぷるへいず5月號』を上映し
ます)上映後、トークあり 監督:あがた森魚、岡本和樹 来場予定

【料金】当日券・・・・・2,000円(『月刊映画6月號』DVD-R付)
【お問合せ】月刊ぱあぷる(倉科)Email: purple@agatamorio.com 


■「neofest2007」
7月28日(土)、29日(日)

未知なる映像作品を発見する場〜
「neofest」は上映機会の少ない学生作品・自主制作映像作品に発表の機会を提供
する場。新進気鋭の作家たちの作品をドキュメンタリー・劇・アニメ等ジャンルを
問わず一挙上映します。観客からの評価がもっとも高かった作品が「neo賞」を獲
得する、観客参加の映画祭です。未知なる映像作品を発見する場にお立会いくださ
い。

【開催日時】7月28日17:00−21:00
        29日14:00−20:00
(全作品に観客賞の投票を/参加作家挨拶有)

【プログラム】
7月28日(土)17:00-
『any』4分/2007/アニメ /笠原幸弥
『遠い人民のひらいた夢の気分』14分/2007 /実験/ 下江隆太
『地縛のアルバム』38分/2007/ドキュメンタリー・実験/太田智丈
『影の光』47分/2006/ドキュメンタリー /ヴァンサン ギルベール
19:00-
『WAVE』13分/2005/ドラマ/渡辺あい
『Flying to』7分/2004/ドラマ/渡辺あい
『終月(ヨミ・おわりつき)』40分/2007/実験/鈴木修人
『横濱ブルース24時間の女鳴海マリ子』43分/2007/ドラマ /鈴木勇馬

7月29日(日)14:00-
『HOME』10分/2007/ドラマ/西原孝至
『お城が見える』11分/2006/ドラマ/小出豊
『最後の笑顔』24分/2007/ドラマ/木野吉晴
『昇らない太陽』56分/2007/ドラマ/山中雄作
16:00-
『現代の海賊と女』6分/ 2007/ドラマ/宮崎大祐
『ネムの樹』13分/2007/ドラマ/稲井耕介
『La Nuit D'Amour』19分/2007/ドキュメンタリー/石川正幸
『すみれ人形』63分/2006/ドラマ/金子雅和
18:00-
『女、けだもの』10分/2007/ドラマ/島田 恒
『“WHERE WERE YOU?”』14/2007/ドラマ/渡辺あい
『In The Past』37分/2005/ドラマ/池田 泰典
『写真をよろしく』47分/2007 /ドキュメンタリー/遠藤協

【料金】入場券2日券(全20本制覇券) 1000円
    上映後参加作家との交流会おひとり様 1000円
【お問合せ】 space neo 03-5281-7820



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┃05┃□広場
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□広場

■新・クチコミ200字評!(57)
■清水浩之(短篇調査団・7/25は農業の巻! http://d.hatena.ne.jp/tancho/
オススメの作品を200字以内の短評で紹介してください!映画・ビデオ・テレビな
ど皆さんがノンフィクションだと思う作品だったらなんでも可!もちろん「オスス
メしない映画とその理由!」もOKです。
本文とは別に「あなたのお名前(ペンネーム可)/掲載確認のご連絡先(メールアド
レスor電話)/題名/制作年/監督/見た場所(よろしければあなたのプロフィール
や近況も)を付記してお送りください。ちなみにここでは稿料は出ません。
清水浩之 E-mail:shimizu4310@bridge.ocn.ne.jp /ファクス:03-3703-0839

A-059『地球ドラマチック ジェラート大好き!』
2005年/制作:イタリア・STEFILM
放映:2007年7月4日・NHK教育テレビ
 http://www.nhk.or.jp/dramatic/backnumber/70.html 
イタリアのジェラート以外のアイスクリームも扱われている。
題材がジェラートという軽いものだからだろうが、映像に遊び心が溢れている。
絵やスチールの写真を切り絵のように動かしている。この切り絵風の映像処理で、
イギリスのマーガレット・サッチャー元首相も戯画化される。彼女は政界入りする
まで、化学者としてアイスクリームの研究をしていたらしい。ジェラート研究家が、
イギリスでアイスクリームを買うときには重さに注意するようにいうところでは、
ふきだしてしまった。軽いアイスクリームには空気がたくさん含まれているようだ。
多国籍企業に支配されるアメリカ市場と、家族経営の自営業が成り立っているイタ
リア市場やフランス市場の違いについても考えさせられた。(脇阪亮)

A-060『芸術劇場 小川典子&田部京子 ピアノ・デュオ・コンサート』
2007年/制作:NHK/放映:2007年7月6日・NHK教育テレビ
 http://www.nhk.or.jp/art/ 
ホルストの『惑星』から、「火星」、「金星」、「木星」を抜粋してピアノ・デュ
オで演奏。『惑星』は元々ピアノ曲だったそうで、勉強になりました。オーケスト
ラに比べると、ピアノ・デュオでは音の厚みや華麗さが感じられませんが、リズム
がくっきりと耳に残るように感じられた。ピアノが弦をハンマーで叩く打楽器(?)
だったことを思いだしました。見終った後、思わずあの「木星」のメロディ
を鼻歌で歌ってしまった。(脇阪亮)

B-220『五重塔はなぜ倒れないか』
2006年/制作:日映企画/監督:浅野光彦/脚本:田部純正
DVD発売元:井上書院
 http://www.inoueshoin.co.jp/books/ISBN4-7530-3851-3.html 
貴重な新作科学映画!地震国・日本で1200年以上にわたり天災をくぐり抜けてきた
多層塔のメカニズムに迫るために、宮大工・宮崎忠仍氏による「5分の1スケール法
隆寺」が登場。釘一本使わない“巨大な寄せ木細工”が建ち上がっていく姿に、こ
こまで手の込んだ仕掛けを考え出した御先祖様にメカフェチ日本人のルーツを感じ
ること請け合い(笑)。耐震実験で生き物のようにしなる五重塔が雄々しく見えたア
ナタはきっとロボットアニメ世代!(清水浩之)

B-221『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』
2006年/アメリカ/監督:ラリー・チャールズ/主演:サシャ・バロン・コーエン
渋谷アミューズCQNほか各地で公開中  http://movies.foxjapan.com/borat/ 
「自称カザフスタン人のアメリカ文化レポート」という設定は意外にあっさりタネ
明かしされ、後はアメリカ伝統の「闖入者が巻き起こすドタバタ」で押しまくる
84分。マルクス兄弟がやっていた暴力的な笑いを80年後の今受け継ぐには、ビデオ
撮り・アポなし・素人ドッキリでいくしかないことがよくわかりました。ボラット
氏の“被害者”の皆さんが見せるしかめっ面がいちいち素敵な21世紀の『我輩はカ
モである』。ハイル・フリドニア!(清水浩之)

B-222『腹腹時計』
2000年/制作:マルパソプロ/監督・主演:渡辺文樹/撮影・照明:中村賢二郎
見た場所:渋谷区代々木八幡区民会館
4月以降は東京→横浜→大阪→東京と活発に上映を続ける35mm自主映画の怪人。
「北東日本福島」製なのにインド映画やイラン映画を見た気になるのは、映画とし
ての独学度が高いから?「あの人」暗殺計画という内容のため劇場公開は不可能と
噂されるこの作品も、20年前なら福島版『太陽を盗んだ男』として歓迎されたであ
ろうポリティカル・アクションの力作。地元キャストの皆さんのカチカチな演技
(笑)もドキュドラマと思えば無問題!(清水浩之)

B-223『水になった村』
2007年/制作:ポレポレタイムス社/監督・撮影・語り:大西暢夫
8月4日よりポレポレ東中野にてロードショー http://www.mmjp.or.jp/pole2/ 
ダム用地として地図から消えた岐阜県徳山村の在りし日を、15年後の今振り返る。
家々を訪ねては小豆・芋・山菜・川魚・酒などをひたすらご馳走になる「大西暢夫
のくいしん坊!万才」風な展開の向うに見えてくるのは、全て自給自足のこの食卓
こそが何千年も昔から当たり前だったということ。二度と味わえぬ〈山グルメ〉の
数々に食欲を刺激されながら、村を離れたおばあちゃんが呟く「丸ごとなくした財
産」を観客みんなで惜しむ92分!(清水浩之)


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■上映

■『belief』劇場公開のご案内

7月28日(土)〜8月17日(金)
連日11:10〜 モーニングショー1回上映 (上映時間62分)
当日券:一般1500円、学生1400円、小・中・シニア・会員1000円
劇場:シネマアートン下北沢  http://www.cinekita.co.jp/ 
東京都世田谷区北沢1-45-15 スズナリ横丁2階


【映画解説】
ある朝、母がカルト視される宗教に入ったことを知った息子。その現実に直面して、
彼は母にカメラを向けた。次の日、印鑑などの購入の他に、多額の献金をしている
ことが判明する。
どうしてこんなことになってしまったのか?母は特別信仰心に篤い人ではない。
3年前に父が亡くなったことが原因かもしれない。あるいは、仕事を辞めて毎日一
人で家にいるのが悪かったのかもしれない。繰り返される様々な対話。淡々と続い
ていく母の日常。
やがて疑問の矛先は彼自身に向けられる。彼はうつ病を患っていた。苦しむ息子を
思いやる母。母はもしかしたら自分のためにカルトに入ったのではないか?彼は事
実を知ろうと思う。カルトとは何か?そして、家族とは何か?

この映画は、監督自ら全編撮影し、母親をはじめとする家族、宗教信者、宗教識者、
心理学者、弁護士らとの対話によって制作されました。しかし本作を「カルト問題
についてのドキュメンタリー」とだけ見ることは適切ではありません。これは、監
督自身の母親への愛の告白であり、同時に母親の息子への愛の告白であり、そして
家族というものがいかに成り立っているかということの記録でもあります。自分の
母親と話がしたくなる、そんな映画です。


【推薦文】
「人は誰もが何かに依存して生きる。そのやり方がいかに畸型であろうが、心の中
の空洞をどうにか埋めようと必死にもがいて生きている。それを“愛”と呼ぶなら、
その愛への渇望の強靭さの一点で、この作品は私ドキュメンタリーの袋小路をギリ
ギリのところで抜け出している。」(佐藤真/ドキュメンタリー映画作家)

「この映画が美しいのは、さながら祖母から孫にいたる親子三代のホーム・ドラマ
ででもあるかのように、家族のあやうい均衡が画面を震わせるためである。カルト
教団に入信した母親と鬱病の息子。映画を介してふたりの間に会話が生まれる。そ
れから家族のあやうい紐帯に宇宙的光芒が輝きはじめる。」(加藤幹郎/映画批評
家・京都大学大学院教授)

「この作品には、涙も叫びも親切な説明もなければ、見終わったあとのカタルシス
もない。しかし、<リアルなもの>だけが持つ圧倒的な迫力が、静かに胸に迫って
くる。一度ではわかりづらければ、安易に誰かに説明を求めずに、ぜひ何度でも見
てほしい。」
(香山リカ/精神科医・帝塚山学院大学教授)


【トークイベント】
8月4日(土)   下村健一さん(ジャーナリスト) ― メディアとしての「私」─
8月8日(水)   加藤治代さん(映像作家) ― 母親を撮るということ ─
8月10日(金)  香山リカさん(精神科医) ― 生きづらいぼくと母親 ─
8月11日(土)  紀藤正樹さん(弁護士) ―カルト被害の現状と課題 ─
8月14日(火)  諏訪敦彦さん(映画監督) ― 暴力装置としてのカメラ ─
各回ともに上映終了後、ゲストの方と監督との対話形式で行います。


監督:土居哲真
製作:麻田弦 音楽:福島諭 整音:横山純 意匠:桝尾あき 題字:並河久美子
2007年/日本/デジタルビデオ/62分 配給:「belief」製作委員会
公式ホームページ  http://www.devenir.info/belief.html 


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■『水になった村』公開記念<ダム映画特集>
2007年7月28日(土)〜8月3日(金) ポレポレ東中野にて一週間限定開催!

ダムに沈む旧徳山村に住む人々を追ったドキュメンタリー『水になった村』の公開
を記念して、ポレポレ東中野では「ダム映画特集」を開催します。

今日ダムは、建設に莫大な費用が掛かる上、水環境の汚染や建設予定地の住民問題
など多くの問題を抱えており、市民団体のみならず行政からもダムに対する反対運
動が高まっています。しかし、元々ダムは人々にとって有害なだけではなく、水害
対策や農業用水においてたいへん有益なものでもありました。

また、映画史上において、ダムはスペクタクルの格好の舞台として存在していまし
た。人類がつくる最大級の建造物としてダムはその威厳や迫力を君臨させていたの
です。

この特集上映では、ダムが出来るまでを追った産業映画や、ダムに沈む村に住む人
々のドキュメンタリー、ダムが舞台となる娯楽大作などを並列に上映します。それ
らのダムが登場する映画を観ることで、私たちにとってダムはどのような存在なの
か、ダムの問題点は何か、ダムの魅力とは何なのか、多くのことを考える機会とし
ていただければと思います。

上映作品
『ふるさと』(1983年/106分) 作品提供:こぶしプロダクション
『水没の前に』(2004年/143分) 作品提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭
『タキアン』(2003年/99分) 作品提供:アルバトロス株式会社
『ザ・ダム』(2006年/80分) 作品提供:アルバトロス株式会社
『ホワイトアウト』(2000年/129分) 作品提供:東宝
『モスラ』(1961年/101分) 作品提供:東宝
『ウルトラQより「ガラダマ」』(1966年/25分)
  作品提供:円谷エンタープライズ
『消えゆく故郷』(1981年/27分) 作品提供:市原市/(株)千葉県創映グループ
『消えゆく故郷 続編』(1983年/24分)
  作品提供:市原市/(株)千葉県創映グループ
『佐久間ダム−総集編』(1958年/96分)
  作品提供:電源開発(株)/(株)日立製作所
『御母衣ロックフィルダム(第1部・第2部)』(1960年/95分)
  作品提供:(株)間組/英映画社
『井川五郎ダム』(1958年/82分) 作品提供:(株)間組/英映画社
『アルプスにダムができた』(1969年/33分)
  作品提供:鹿島建設(株)/(株)カジマビジョン
『地熱に挑む−新黒部第3発電所導水路』(1963年/25分)
  作品提供:(株)日映企画/大成建設(株)
『斜坑に挑むTBM−下郷発電所・水圧管路工事』(1980年/35分)
  作品提供:電源開発(株)/(株)カジマビジョン
『水になった村』(2007年/93分) 作品提供:サスナフィルム<特別先行上映>

タイムテーブルなど詳細はポレポレ東中野のホームページをご覧下さい。
  http://www.mmjp.or.jp/pole2/ 

予告編: http://www.youtube.com/watch?v=fKD-mhhcnko 

期間 2007年7月28日(土)〜8月3日(金)<一週間限定開催>
場所 ポレポレ東中野 東京都中野区東中野4-4-1 ポレポレ坐ビル地下
   TEL:03-3371-0088 Homepage: http://www.mmjp.or.jp/pole2/ 
料金 前売:三回券3,600円(ポレポレ東中野窓口にて発売中)
   当日:一般1,500円/学生1,300円/中・高・シニア1,000円/三回券3,000円


   ◇────────────────────────◆◇◆     


■募集:「自作を語る」などの原稿募集!

「自作を語る」欄は、監督自らが作品について語るコーナーです。制作した動機や
撮影のポイント、編集で心がけたこと等を内容に盛り込んで頂きたいと思っていま
す。

文字数:1600字程度。厳密な規定はございません。
監督のプロフィール(150字程度)
その他:作品の仕様(制作年度、時間、ビデオ又はフィルム、スタッフ等)
上映のスケジュール、HP等をお知らせください。

原稿締め切り:配信日(1日&15日)の3日前までに、下記に送信ください。
E-mail: visualtrax@jcom.home.ne.jp  伏屋まで
稿料:無料。

その他、さまざまなご意見、投稿を募集しています。


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■上映の告知の有料化とカンパのお願い
■伏屋 博雄(本誌編集長)

neoneoの購読は無料ですが、経費を(その大部分は稿料ですが)賄うため、上映等の
告知は有料にしています。なお皆様にカンパもお願いしていますので、ぜひご協力
ください。

(1)上映等の告知の有料化 40字×30行(行数の空きも計算)以内につき、2,000円
です。それ以上の行数の場合は加算します。
(2)カンパのお願い 一口2,000円。何口でも。
送金方法:郵便振込み:00160-8-666528 neoneoの会、又は、
     みずほ銀行池袋支店、普通口座、2419782
     (有)ネットワークフィルムズ
(銀行振込の場合は、その由を visualtrax@jcom.home.ne.jp 伏屋宛にお知らせ
 ください。)

以上、neoneoの継続ため、よろしくお願い致します。



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃06┃■編集後記 伏屋 博雄(ふせや・ひろお)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■編集後記 伏屋 博雄(ふせや・ひろお)

●ここ数年の間に、私はかって寺山修司が主宰した演劇実験室・天井桟敷のメンバ
ーだった二人の本を読んだ。ひとつは女優として劇団内部の人間関係を軸に執筆し
た本であり、もうひとつは作曲ならびに照明担当にして寺山修司の秘書だった女性
が著した本である。どちらも興味深い本であった。というのは、私は読みながら、
たえず小川紳介と小川プロを念頭において読んだからだ。

前者は極めて個人的な色彩が強い。劇団スタッフとの恋と離別が主な内容で、若い
が故に同世代の劇団員の動向に視線が集中している。彼女からは寺山は遠い存在。
事実、寺山の言動はほとんど書かれていない。それに対して後者は、劇団中枢にい
て寺山とは至近距離にあり、その一挙手一投足が克明に書かれている。二人の天井
桟敷の立ち位置の違いが、結果的には集団を立体的に浮かび上がらせている。もち
ろん小川プロと天井桟敷は、その活動も構成員や人数、目指す方向も違う。しかし
一方では、集団とは大なり小なり、必ずさまざまな問題が発生するものだ、という
感がある。しかも主宰の個性が強烈であればあるほど、その振幅は激しいものだと
いう感を禁じえない。

阿部・マーク・ノーネスの著書は、小川紳介と小川プロの活動を遠近両面から叙述
した本である。小川は天才的だったとも言える話術でスタッフをその気にさせた。
「小川のカリスマ性、小川プロの集団製作と共同生活について、山形映画祭、そし
て小川神話とその崩壊」(水野祥子)といった内容だ。小川は猛烈な勢いで作りつ
づけた。それだけに時間の経緯と共に、スタッフにアンビバレントな感情を生んで
いく。小川没後15年にして公然として現れた『Forest of Pressure: Ogawa 
Shinsuke and Post-War Japanese Documentary』。日本語版を出す出版社はないも
のか。私的ドキュメンタリーを検証する意味においても、鋭い問題提起を投げかけ
るに違いない。

●と、書いたところで,越後谷卓司さんの「プライベート・ドキュメンタリーの問
題作」は、祢津悠紀の自作・自演の短編『空の 箱』について論考している。私は
未見の作品だが、新しい私的ドキュメンタリーのあり方として、興味深く読んだ。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■発行:ビジュアルトラックス  visualtrax@jcom.home.ne.jp
■責任編集:伏屋 博雄
■編集デザイン:能川 悦子
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せん。また、いただいたメールをこのメールマガジンに掲載させていただくことが
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