ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo |
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┃n┣━┫o┣━┫e┣━┓ ★ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン
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┗━┛ ☆━┛ ┗━☆ 72号 2007.1.15
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†01 発表:「わが一押しのドキュメンタリー2006」アンケート
岡田 秀則、藤原 敏史、山下 治城、清水 浩之、春田 実、
阿部 嘉昭、萩野 亮、脇阪 亮、越後谷 卓司、村上 賢司、
小野 さやか、本田 孝義、石坂 健治、樋渡 麻実子、
水野 祥子、佐藤 寛朗、伏屋 博雄、(回答順)
†02 neoneo坐1月後半の上映プログラム
†03 広場
募集:「自作を語る」などの原稿募集!
上映の告知の有料化とカンパのお願い 伏屋 博雄
†04 編集後記 伏屋 博雄
★バックナンバー閲覧はこちらまで
まぐまぐ配信 http://blog.mag2.com/m/log/0000116642/
melma!配信 http://www.melma.com/backnumber_98339/
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┃01┃□発表:「わが一押しのドキュメンタリー2006」アンケート
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■岡田 秀則(東京国立近代美術館フィルムセンター主任研究員)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー2006」
やっと観られた『チーズとうじ虫』の、コスモス畑をかき分けるキャメラに泣きま
した。あと『ダーウィンの悪夢』は、有言実行とばかりに口コミに努めました。
ちなみに、2006年のドキュメンタリー映画で忘れられない名言は、『もっこす元気
な愛』の「恐るべし、首都高。」です。
(2)「ドキュメンタリーの現状について」
『ダーウィンの悪夢』のしたたかな戦略性には批判もありましたが、やはり一つの
テーマから世界の現在へ突き抜けてゆく訴求力は否定できないでしょう。そのよう
な「突き抜け」が其処彼処に生まれてほしいと願います。
(3)「私の2006年」
2006年は、本職ではドキュメンタリーからやや離れた一年でしたし、neoneo坐方面
もなかなか顔を出せませんでした。また、樋口源一郎、黒木和雄、松川八洲雄の各
監督や岩波映画の小口禎三さんなど、ドキュメンタリー界の巨人の逝去の報を耳に
するのも残念でした。そんな中、山形映画祭の本「ドキュメンタリー映画は語る」
に参加できたことは幸運でした。
■藤原 敏史(映画監督)
1)「わが一押しのドキュメンタリー2006」
自作が招待されたのでフェリーニの故郷リミニの隣町になるペサロの国際映画祭に
行き、ペレ・ポルタベーラといういままで全く聴いたことすらなかったカタルーニ
ャの作家のレトロスペクティヴに遭遇。 とにかく驚いた作品ばかりながら、一本
挙げるならばなにしろイタリア語字幕上映でなにを言ってるのかすら分からない政
治ディスカッションが延々と続く158分の大作「Informe general sobre algunas
cuestiones de interes para una proyeccion publica」の力学的にして政治的な
カメラワークの壮絶さに、まったく飽きることがなかった。せめて英語字幕版が見
られないものか。
(2)「ドキュメンタリーの現状について」
ドキュメンタリーにお金がないのは相変わらずながら、「分かり易さ」の美名の下
に現実を既存の類型のなかに強引に押し込めたり「善悪」などの一元的な物差しだ
けでものごとを把握する現代の世界的な傾向に対して、現実の一筋縄では行かない
複雑さをどう映画に提示していくかがますます大きな課題に…などと小難しいスロ
ーガンを立てる以前に、そもそも既存の類型や「善悪」の物差しで最初から結論が
見えているのになんで映画を作れるのか、だいたい映画を作ることで新しい発見を
したりなにかを学ぶことがないのに映画を作る動機が維持出来るわけもないし、そ
んな結果が分かってる映画を見てもおもしろくもなんともないと思うのですが。も
っとも、これはドキュメンタリーに限った話でなく映画全般の話でもありますが。
(3)「私の2006年」
2月に劇映画『ぼくらはもう帰れない』をベルリン国際映画祭で初上映、その後す
ぐに土本典昭監督についての記録映画長編『映画は生きものの記録である?土本典
昭の仕事』を完成、夏からは神奈川県逗子市の池子米海軍家族住宅問題についての
短篇『柵に囲まれた森』に取り組んで12月初めに逗子市で初上映と、一年で3本の
作品を完成させ、そのあいまには『ぼくらはもう帰れない』を持ってあちこちの映
画祭を渡り歩くという、大変な駆け足の年でした。今年は『映画は生きものの記録
である』の公開、どうぞよろし
く。
■山下 治城(TVCMプロデューサー)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー2006」
『ヨコハマメリー』
この映画は、文化庁芸術祭を初めとしていろいろな賞を受賞することとなった。
それによってアンコール上映などが行われることが嬉しい。戦後すぐに横浜の街角
で客をとりつづけた娼婦の話。いろんな関係者の証言を中心に構成されている。
横浜でのたった一人の女性の物語が、横浜の、日本の戦後史となる。極力説明を排
除した造りが潔い。そこから観客たちは自ら感じ取って、感動をする。ラストシー
ンには深い心の厚情がある。
(2)「ドキュメンタリーの現状について」
ドキュメンタリーを上映する劇場が増えてきたように思う。そして、ドキュメンタ
リーを面白いと思う人たちも同時に増えて来ている。ドキュメンタリーに対する、
評判や映画賞の受賞が、上映館を増やすきっかけにもなっている。きちんとしたコ
ンテンツは、必ず誰かが見て評価してくれる。いままではマイナーという理由だけ
で切り捨てられていたドキュメンタリーが、ネット配信やDVD化などで日の目を見
る機会が増えてくる時代が確実に来ている。
(3)「私の2006年」
「ウェブ進化論」梅田望男(@ちくま新書)
WEB2.0以降のネット社会の未来を、楽観的に論じており、そのことが僕たちに勇気
を与えてくれる。誰でも、表現者になれる時代だからこそ、本当の意味でのコンテ
ンツをきちんと作れる人が求められてくるだろう。既得権益にあぐらをかいている
メディアの人たちにとっては脅威である。しかし、チャンスでもある。このような
時代の流れから、短期的で商業主義的なコンテンツだけでないものが、わずかなが
らでも出てくると嬉しい。
■清水 浩之(神田小川町neoneo坐/ゆふいん文化・記録映画祭)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー2006」
『愛国心(東京のこだま No.102)』
1961年/日本教育テレビ(現・テレビ朝日)/ディレクター:鳥山拡/
出演:菊村到(作家)・清水幾太郎(評論家)・川喜田二郎(東工大教授)ほか
日比谷図書館の16mmフィルムライブラリーから面白い作品を探す「短篇調査団」は、
僅かな資料を頼りに“当てずっぽう”でプログラムを組んでおりますが、たま〜に
異色作に遭遇するのが醍醐味。題名で選んだこの作品は東京都提供の討論番組でし
たが、各世代の都民が意見を述べる合間になぜか空席が映るなと思ったら椅子の前
に「学徒出陣戦死・23歳」の名札が…つまり英霊も出演!今ではお目にかかれない
大胆演出に度肝を抜かれました。
(2)「ドキュメンタリーの現状について」
『太陽』も『硫黄島からの手紙』も輸入に頼らざるを得なかった現状に、映画界の
企画部門には奮起していただきたいところですが、今や全てが自主作品へ液状化し
た日本映画(特にドキュメンタリー)では、「見たい」「作りたい」私たち一人一
人に問われている課題にも思えます。小泉参拝をメロドラマ化しようとした(!)
『レクイエム神社』(しまだゆきやす監督)のように無謀な試みがもっと増えると
楽しいし、増やしたいものです。
(3)「私の2006年」
おかげさまで2周年!「短篇調査団」で上映した73本から個人的ベストテンを…
『愛国心』(鳥山拡)『海底炭鉱に生きる』(野崎健輔)『昆虫記の世界』(布村建)
『富士山―その植物社会』(上野耕三)『廣重』(樋口源一郎)『めがね小僧』(宇野
重吉)『あき巣』(山崎大助)『ぶんきょうゆかりの文人たち』(時枝俊江)『竜門の
人びと』(堀内甲)『赤道直下の一本釣り』(黒田輝彦)別格:『原発切抜帖』(土本
典昭)『人間みな兄弟』(亀井文夫)。
■春田 実(「恋するアジア」主宰。 http://www.geocities.jp/haruasia/ )
(1)「わが一押しのドキュメンタリー2006」
『泣きながら生きて』(企画・演出 張麗玲。東京はフジテレビで2006年11月3日
に放映。21.00〜22.56)
最初から最後まで泣かされた。ともかく総てが切なく万感胸にせまった。感動また
感動だった。描かれているのは中国の普通の家族で、貧困、出稼ぎ、離散生活、医
師希望の一人娘、10年ぶりの再会、などなど 、ある意味、涙を誘うあざとい状況
ばかり。作り方もベタで、見る者の涙腺を絞り取る作為がモロ見えている。しかし
それでも感動した。この家族が見せる仕草や目線が作為をのり越えて本物のせいで、
また10年 におよぶ取材期間の長さが、作為ごときで揺れない本物の保証を映像に
与えていたからである。人の悲しみや喜びが、 まっ正直に映っていた。
(2)「ドキュメンタリーの現状について」
世の中はグローバル化して多様となったけれど、人は多様には耐えられず言葉は単
純化していくばかり。 その世界的な単純化は、世界的に人を文字通り馬鹿にして
いっているけれど、この進行はとめられず、表現者は馬鹿な言葉(表現方法)で、
馬鹿でないことを描いていくしかないのだろう。ドキュメンタリーも単純に、通俗
的に描くことが必要な気がする。これはペンです、いい面も悪い面もふくめて、そ
ういうところから作品は作っていかなくてはならないのではないか、そんな気がす
る昨今です。
(3)「私の2006年」
昨年は入院、手術など体験し、身辺整理をし遺言状も書いた。そんなことがあった
ので、この年明けは地球に生還してきたような気分で、さて、何をやったらいいの
か、と戸惑っているところです。恋は無理か。
■阿部 嘉昭(サブカル論/映画評論)
http://abecasio.s23.xrea.com
(1)「わが一押しのドキュメンタリー2006」
大浦信行『9.11−8.15 日本心中』が第一の圧巻だった。ナレーションと意味の一
本線で作品を整序的に推進させるのではなく、まさにベンヤミンのいう「星座型」
に人や光景を配置し、それで観客の想像力をスパークへと導く。結果、鑑賞体験の
一回一回が万華鏡のように揺らめくことにもなる。金芝河の織り成す「ハン」の寓
意、重信メイの語るパレスチナでの「命」の意味、鶴見俊輔の気概…。辻智彦とい
うカメラマンが同時に躍り出た。
(2)「ドキュメンタリーの現状について」
大浦前述作は東アジア共同体が混沌により導きだされねばならないと語る。そう、
ドキュが現在、政治的に有効になるには、柄谷行人のいうアソシエーショニズムの
具体提案が必要だった。だから一国二民族制をも語る佐藤真『エドワード・サイー
ド』がラディカルとなる。そのイスラエル/パレスチナ共生地区に入りこんでゆく
映像が06年第二の圧巻。一方『ワーキング・プア』を頂点とするNHKドキュでは敵
が見定められていた。
(3)「私の2006年」
こんなに鑑賞映画の本数が少なかった年はなかった。忘れられないのは、大阪のア
マチュア岡大地『トロイの欲情』の近視眼構図の連続によるエモーション。僕自身
は06年は低徊した。やったことといえば大量のmixiブログの記述と、女子学生シン
ガー&ソングライターとの曲の共作。加齢して自分がますます「複数」になる。だ
から松江哲明らのセルフドキュでも今後は主体の複数化が見たい。それと今年は真
利子哲也を絶対に観ます。
■萩野 亮(大学生)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー2006」
『トスカの接吻』 Il bacio di Tosca ダニエル・シュミット/スイス/1984年
(2006.10.28池袋新文芸坐「ダニエル・シュミット追悼オールナイト」)
2006年、映画史はダニエル・シュミットを亡くした。ヴェルディが建てた養老院で
はかつてのオペラ・スターたちが暮らしている。人前に出るのが好きな彼らは、カ
メラを前によく歌う。歌によって紡がれるいくつもの記憶を、シュミットはまるで
オペラのように構成している。幸福と、同時にその幸福が失われてゆく予感とが記
憶と記録をめぐる。わたしたちは、追悼の形式としてのシュミット映画を追悼しな
ければならないときにきたようだ。
■脇阪 亮(ファイナンシャルプランナー)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー2006」
キム・ドンウォン監督『送還日記』
この映画には、壁を越え溝を埋める手がかりがあります。
しかし、このドキュメンタリーは、壁を越え溝を埋めるヒントだけでなく、「人間
という謎」を描き出した映画です。この映画で描かれている「人間という謎」は、
ほとんど、不条理の域に達しています。しかし、それが人間というものの奥深さな
のでしょう。だけど、人間とは何と不思議な存在なのだろうか?
■越後谷 卓司(愛知県文化情報センター主任学芸員)
(1)「 わが一押しのドキュメンタリー2006」
映像作品では、『森達也のドキュメンタリーは嘘をつく』(テレビ東京、監督:村
上賢司)が少し遅れてテレビ愛知でも放映され、観ることが出来たのが幸いだった。
メディア・リテラシーに関する啓蒙を主旨としながら、プライベート・ドキュメン
タリーの手法を用いて、虚構というかフェイクの映像を構築するアクロバットのよ
うな力業を、テレビの枠組みの中で成立させてしまったことに驚かされた。
(2) 「ドキュメンタリーの現状について」
一時的な流行現象は去ったものの、実験映画における日記映画ないし私映画と呼ば
れる作品が、実質的にプライベート・ドキュメンタリーとオーバーラップする形で
進展している状況は変わりがなかった。ベテランでは、鈴木志郎康は一年ごとの彼
自身の生活が作品化している感があるし、かわなかのぶひろの近作は自分史映像と
いった色合いが濃い。新人では、作者自身をユーモラスに客体化する内村茂太もク
ローズアップされた。
(3)「 私の2006年」r
「第11回アートフィルム・フェスティバル」で以前より構想を温めていた、松本俊
夫の特集を実現することが出来た。先行する川崎市市民ミュージアムでの特集と合
わせて、ドキュメンタリーから実験映画までを、領域を横断して活動した松本の全
体像がようやく明らかになってきたのではないか。『気配』(90年)や『ディシュミ
レーション 偽装』(92年)などの作品は、今日のドキュメンタリーの状況を予言す
るところもあることを再認識した。
■村上 賢司(映画監督・テレビディレクター)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー2006」
『御巣鷹山(12月20日・盛岡市民文化ホール上映バージョン)』(監督・渡邊文樹)
孤高の映画監督の最新作。すべての音声はカセットテープで再生されるため「画」
と「音」がずれる時が多く、監督自ら、映写機を止めて何度も修正した。しかしこ
の「パフォーマンス」によって必要以上に「映画」が意識され、フィルムに執着す
る監督の心意気が伝わった。感動した!
(2)「ドキュメンタリーの現状について」
せっかく廃止が延長されたのだから、皆さん、シングル8を使いましょう!私は作
品のためではなく、プライベートで使おうと思っている。
(3)「私の2006年」
作品名を羅列すれば、『犯罪学会』(ガンダーラ映画祭作品)、『ケータイ刑事・
銭形雷』(出演・小出早織・国広富之・草刈正雄、『森達也の「ドキュメンタリー
は嘘をつく」(出演・森達也・水木ゆうな/民放連賞・優秀賞)、『拝啓・扇千景
様』(背徳映画祭作品/シングル8発売中止の報を受けて制作)、『恋する日曜日
・ニュータイプ』(出演・南沢奈央・林隆三・白木みのる)、『工場萌えな日々』
(ただ日本の工場を撮影しただけの作品)、『ほんとに撮れた!呪いのビデオ』
(あるホラー映画の監督自身が本当に怪奇現象に遭遇した衝撃映像を、関係者のイ
ンタビューを加えて構成。そのホラー映画のDVDの特典映像に収録)、『占い師・
天尽』(出演・片桐仁・矢吹春奈)となります。
あとお父さんになりました。よって今年もがんばります!よろしくです。
■小野 さやか(『アヒルの子』監督、製作日誌執筆中)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー2006」
2006年11月1日発行「文藝」冬の特集号、綿矢りさ「夢を与える」
芥川賞受賞後第一作。一人の人間が培ってきた世界観がガラリと音をたてて折れ曲
がる様が描かれている。夢から叩き起こされる瞬間とも言える。凄みがある。と同
時に一人の作家が誕生する瞬間を眼の辺りにする。どこか現実味のない時代を象徴
し、文章に音を感じ、虚と実の調べはある瞬間発光し残滓が宙を舞う。小説ですが、
ドキュメンタリーとはなんぞやと考えた昨年一番の刺激でした。あと、瀬戸口未来
の『はらわたのはらわた』の己の内臓にまでも広がる圧倒的他者の切り撮りかた、
見事な血しぶきを観ました。快感です。
(2)「ドキュメンタリーの現状について」
昨年は自作『アヒルの子』が国を越え多くの映画祭で上映され、実りある年であり
ながら、作品を手放すこと、語り合うこと、作り続けることの難しさを知りました。
ドキュメンタリーの現状についてはもっと若い世代の強烈な刺激を欲します。
(3)「私の2006年」
今年度中には「アヒルの子」の製作日誌を完成させ、芥川賞を受賞し海外に高飛び
したいです。うそです。執筆と自作の上映を成し遂げたいです。
■本田 孝義(映画監督)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー2006」
『RIZE』(監督:デヴィッド・ラシャペル)
とにかくホットなドキュメンタリーだった。どうも私は、人間が体を動かしている
だけで感動するたちのようで、そういう意味ではこの映画に登場する極限的な“ク
ランプ・ダンス”には目頭を熱くした。「踊ってるんじゃない。闘ってるんだ。」
のキャッチコピーもうなずける、ヒリヒリしたアメリカの今を切り取った映画でも
あったと思う。
(2)「ドキュメンタリーの現状について」
2006年は本当にいいドキュメンタリー映画が多数公開された年だと思う。質・量と
もにこれだけ充実した年は記憶にない。欲を言えば足りないことも多々あると思う
が、まずはこの充実振りを素直に評価すべきではないだろうか。
(3)「私の2006年」
現在製作中の新作『船、山にのぼる』の完成が遅れ、2007年に持ち越しとなったの
は痛いところだが、2007年春には完成できそうだ。個人的には、2006年末から
2007年にかけて大変なことがあったが、これも一生に一度の経験ではあった。
■石坂 健治(国際交流基金)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー2006」
山本起也『ツヒノスミカ』、中村高寛『ヨコハマメリー』
老婆と記憶にまつわるカタカナ2本。前者は一人住まいの老婆の家が取り壊される
過程をじっと見る。画面のなかの「現在」のそこここに彼女の生きてきた長い時間
の記憶がくっきりと刻印される。べりべりと壁や天井が崩落するときに「世界」も
終わると心底震撼した、近年まれな黙示録の風景。後者では街角の異物だった老婆
の不在から伊勢佐木町の戦後裏面史の記憶が浮上するさまが圧巻。異形の者が消え
たとき共同体の大切な何かもまた失われたのだ。
(2)「ドキュメンタリーの現状について」
記録映画の国家助成システムは文化庁のものと芸術文化振興基金のものが並立して
おり、(煩雑さを厭わなければ)併願も可能だが、前者の応募条件が依然として
「16mm以上のポジフィルム」なのに対して後者は「16mm以上のポジフィルムまたは
ビデオテープ等」と何でもありに緩んできており、要するに助成する側も揺れてい
る過渡期ということ。デジタル製作上映の進化をみれば、フィルム限定という条件
は早晩消えていくだろうが、いっそ韓国(映画振興委員会)みたいに助成元を一本
化して大きな基金にした方がいいのではないか。
(3)「私の2006年」
昨年は本誌連載の「パルチザン土本典昭前史(6回)」「パルチザン土本典昭は語
る・青雲立志篇(6回)」の構成をさせていただき本当に勉強になりました。やっ
と1960年代を通過したところ。もうひと頑張りしてまとめるつもりです。今年は同
じインタビュー源を使いつつ活字とは全く異なる映像的アプローチで土本監督の人
と作品に迫る藤原敏史監督『映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事』がい
よいよ公開されます。請ご期待!
■樋渡 麻実子(映画監督)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー2006」
『愛の矢車菊』(監督:樋渡麻実子)
ドキュメンタリー風フィクション。作者のいまの気分が見えるということで、ある
意味ドキュメンタリーと言えるかと。
(2)「ドキュメンタリーの現状について」
日常的に様々な映像を目にするが、あまりに表面的で、心が見えず、いたたまれな
い気持ちになることが多い。何か問題を感じても、結局曖昧なままに見過ごしてい
る状態では、いい映画は作れないように思う。
作り手は、明快な答えが見つけられずとも、もっと、自由とか、権利とか、平等に
ついて、考え続けなければ、と、思う。
(3)「私の2006年」
2006年は、酒で失敗した年。
2007年は、休肝日をつくり、本当にいい映画を作る年。
■水野 祥子(映画研究)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー2006」
Le sang des betes (1949, Blood of the Beast) ジョルジュ・フランジュUCLAの
アーカイブにあるプリントで初めて見た作品です。期待以上に、ナレーション、日
々屠殺するものたちとされるものたち、空間、音楽など、圧倒されました。これを
見ながら、映画史的、思想的な文脈を追求するとおもしろい批評が書けそうだな、
と興奮気味に思い描きながら、つい映画の登場人物のように日々の労働に追われる
私でした。新年は「みること」だけでなく「書くこと」にも大いに集中したいです。
(2)「ドキュメンタリーの現状について」
最近アメリカの劇場では、9.11を劇映画化することと、イラクの現状を伝えようと
する様々なドキュメンタリーが増えているようです。残念ながらまだ多くを見てい
ないので何も語れないのですが…。
(3)「私の2006年」
山形で新作に没頭できた一昨年に比べて、2006年は新作を見る機会が少なく、それ
でもDVDやアーカイブ映像を中心にして故きを温ねた一年でした。エロル・モリス
の初期作品を何度か見直したこと、さらに、エドワード・R・マロー(2005年に公
開されたジョージ・クルーニー監督作品Good Night, Good Luckのモデルになって
いる、ジョゼフ・マッカーシーを糾弾した伝説の米CBSニュース・キャスター)の
See ItNow(50年代から60年代初期)シリーズも、また、BFIから発売された英国の
フリー・シネマ特集のDVDもとてもよかった。今年は大画面でどんどん新作を見て
いきたいです。
■佐藤 寛朗(neoneo坐プログラマー)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー2006」
劇場公開の本数が多かった割には、これといって印象に残る作品が無かった。自分
が余り見られなかったせいもある。旧作では1月にneoneo坐で見たTVドキュメンタ
リー『いつもでない一日〜北見北斗高校の強行遠足』(NHK、小沢爽ディレクター、
1970)が斬新だった。neofest出品作で気がかりなのは『あひるの子』(小野さや
か/日本映画学校/2005)。セルフという枠に留めておくには勿体無い普遍的な問題
提起がある。広く公開されることを望む。
(2)「ドキュメンタリーの現状について」
TVの世界にも、良いドキュメンタリーを作ろうと志す若い人達が沢山いた。彼らと
話をして思ったのは、「TV(映画)とはこういうもの」という自己規定にどれだけ
意味があるのかということ。手法やメディアの特性・制約以上に意識的な垣根を作
っている気がする。
同じ事が『ドキュメンタリー映画畑』の人達にも言えないか。優れた演出家はどの
媒体でも面白い作品を作る、という意味で、作品の交流の必要性を感じた。そして
山形映画祭の今後がすごく気になる。
(3)「私の2006年」
若手作品の集中上映「neofest 2006」を企画したことが大きかった。また知人の
紹介で TV番組の演出助手の仕事をはじめた事も大きかった。まだまだ未熟だが、
2007年も引き続き「現在形の世界に向き合うこと」を念頭に置いた活動を継続して
いきたい。
■伏屋 博雄(本誌編集長、プロデューサー)
(1)「わが一押しのドキュメンタリー2006」
かわなかのぶひろ『つくられつつある映画』(2006/ビデオ/カラー/80分)
新宿の空気に馴染み、人生の教科書ともいえるゴールデン街(の人に)親しみ、こ
こを拠点として生きた半生を活写。キャメラは片時も手元にある。キャメラが無く
ては生きられなかった人間の讃歌!その他の作品では、『極北のナヌーク』(ロバ
ート・フラハテイ)、『三里塚 辺田部落』(小川紳介)といった随分昔の作品の
鮮度を味わった。
(2)「ドキュメンタリーの現状について」
やはり山形映画祭の動向が気になる。運営母体が山形市から独立し、今春よりNPO
法人として活動していくことになる。今年の映画祭は従来の方式を踏襲する面もあ
ると聞くが、2009年からは丸ごと力が試されるはず。運営面、さらに資金の工面な
ど、多難が予想される。英知をもっと周囲に求めるべき。「改革」の機運の足音が、
まだ弱い。
(3)「私の2006年」
私が企画・製作した『映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事』が完成し、
東京では今春(ゴールデンウィーク明け)ユーロスペースでの公開が決まった。戦
後のドキュメンタリー映画の源流ともいうべき土本監督の映画術と半生をかけて取
り組んできた水俣への視座を若い世代の監督・藤原敏史が検証する。なお、東京公
開に合わせて、撮影時に収録した土本監督の全発言も出版(石坂健治二編、現代書
館)する予定。
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┃02┃□neoneo坐1月前半の上映プログラム
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会場はいずれも神田・小川町のスペースneo(都営新宿線小川町駅B5出口より徒歩
1分、JR御茶ノ水駅聖橋口より徒歩5分)です。
詳細と地図はneoneo坐のサイトをご覧下さい。 http://www.neoneoza.com/
■シネマトレイン傑作選〜映像の原始体験 8ミリ映画の響宴
2007年1月19日(金)・20日(土)
シネマトレインとは?
映像作家・大西健児が1995年より設立した映画団体。新宿を拠点に国内外の映像作
品の上映を展開。個人・実験映画を中心に、8ミリ映画作家を多数紹介。日本の若
手フィルムメーカーだけに留まらず、海外の映像作品も多数取り上げた。また、大
西自身がキュレーターとして、日本の映像作品のパッケージを、外国の映画祭・巡
回上映プログラムにコーディネイト。ヨーロッパ圏から北米・カナダ等の映像/現
代美術グループとの国際交流も盛んに行っている。
〜タイムテーブル〜
1月19日(金) 20:00〜 Aプログラム
1月20日(土) 17:00〜 Aプログラム
19:00〜 Bプログラム
Aプログラム(19日20:00〜、20日17:00〜)
『バーボンタイム』大西健児/1997年/10分/8mm
『空気息子』栗原みえ/1995年/25分/8mm
『Fresh』橘 薫/1993年/6分/8mm
『水星』長屋美保/1996年/23分/8mm
Bプログラム (20日19:00〜)
『青の数値』栗原みえ/1999年/13分/8mm
『TIMETIDE』橘 薫 (新作)/2000-2002-2006年/8mm
各プログラム 1,000円 両日とも終映後懇親会あり(飲食付1,000円)
主催:CINEMATRAIN/WayWest Productions
■短篇調査団 (41) 雪の巻
2007年1月24日(水) 20:00〜
全て16mm上映・鑑賞無料・カンパ歓迎
『流氷 そのなぞを追って』
1970年/28分/制作:鹿島映画 /企画:文部省大学学術局/プロデューサー:岩
佐氏寿/脚本・監督:辻功/撮影:大野洋
北海道大学低温科学研究所付属流氷研究施設の科学者たちが進めてきたオホーツク
海における流氷の研究活動を映画化。冬のオホーツク海の大自然の変転を科学の目
でとらえようとしている。
『雪とたたかう鉄道』
1961年/14分/制作:学研映画/プロデューサー:古岡勝/脚本・監督:小野豪/
脚本:森田純/撮影:鈴木鉄男
鉄路を守るためにかげの苦労を続ける保線区線路班の人々にスポットをあてながら、
除雪機械、除雪施設その他のしくみを紹介し、人々が自然と対処しながらどのよう
に交通機関を守るために努力しているかをとらえる。
『北風のくれたテーブルかけ』
1967年/15分/制作:学研映画/プロデューサー:原正次・石川茂樹・神保まつえ
/脚本・監督:渡辺隆平/
人形アニメーション:和田京子・安藤映子・武川和子/人形:紙谷元子/美術:
中川涼/撮影:八木正次郎・阿部行雄/音楽:小林亜星
ノルウェーの昔話を人形映画化。少年ハンスが納屋に粉を取りに行くと、北風が粉
を吹き飛ばす。ハンスは北風を訪ねて文句を言うと、北風はごちそうを出すテーブ
ルかけをくれた。帰り道の夜、宿に泊ったハンスのテーブルかけを、ずるい主人が
取り替えてしまうが…。
『山形は白い国 岡本太郎のやまがた讃歌』
1983年/27分/制作:東京福原フィルムス /企画:山形県/プロデューサー:
近藤隆治/監督:岡田喜一郎/撮影:田中凌一
芸術はバクハツだ!の岡本太郎氏がスキー界の名物男達と雪の山形を遊びまくりま
す。飲み、食い、滑る岡本太郎氏のエネルギーがあふれでています。
主催:短篇調査団 http://d.hatena.ne.jp/tancho/
上映協力:東京都立日比谷図書館
【お問合せ】清水 E-mail: shimizu4310@bridge.ocn.ne.jp
■筒井武文の ワンダーランドへ
2007年1月27日(土)
筒井武文プロフィール
1957年生まれ。映画監督。東京造形大学デザイン学科映像専攻卒。同期に諏訪敦彦、
一期下に犬童一心がいる。大和屋竺のゼミに参加し、大きな影響を受ける。卒業後
は、フリー助監督として、主に記録映画の現場を体験する傍ら、84年より、サイレ
ント映画『ゆめこの大冒険』を自主制作として撮り始める。同作品は、86年完成し
たが、公開の見込みのないまま、3ヶ月パリを中心に、ヨーロッパを巡り、300本の
映画を観て帰国。仕事は、助監督から編集になる。87年『ゆめこの大冒険』が公開
される。88年、仕事で監督業を始める。PR映画、記録映画、CM、イヴェント映像な
どを撮りつつ、劇映画の企画を進めるが、実現せず。2004年の『オーバードライ
ヴ』まで、空白の時期を過ごす。97年より映画美学校講師、05年より東京藝術大学
大学院映像研究科助教授を務める。
〜タイムテーブル〜
14:00〜15:30 Aプログラム
『ゆめこの大冒険』1986年/70分/白黒/16mmスタンダード
『アリス・イン・ワンダーランド』1988年/14分/カラー/35mmシネスコ3D(ビデ
オ版)
16:00〜17:50 Bプログラム
『レディメイド』1982年/60分/白黒/16mmシネスコ
『学習図鑑』1987〜1989年/50分/カラー/16mmスタンダード
18:10〜20:15 Cプログラム
『シネマ100 フランス篇』1995年/100分/カラー/ビデオ
『映像の発見 松本俊夫の世界 (パイロット版)』2006年/13分/カラー/DV
『ヒカリ』2006年/8分/カラー/HD(DV版)
20:20〜 新年会
【料金】(各プログラム入替制)
1プログラム・・・・・ 1,000円
3プログラム通し券・・ 2,000円
新年会・・・・・・・・2,000円 (飲食付)
【主催・お問合せ】
スペースneo(佐々木)
E-mailまたは Tel:090-3271-5280
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┃03┃□広場
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■募集:「自作を語る」などの原稿募集!
「自作を語る」欄は、監督自らが作品について語るコーナーです。制作した動機や
撮影のポイント、編集で心がけたこと等を内容に盛り込んで頂きたいと思っていま
す。
文字数:1600字程度。厳密な規定はございません。
監督のプロフィール(150字程度)
その他:作品の仕様(制作年度、時間、ビデオ又はフィルム、スタッフ等)
上映のスケジュール、HP等をお知らせください。
原稿締め切り:配信日(1日&15日)の3日前までに、下記に送信ください。
E-mail: visualtrax@jcom.home.ne.jp 伏屋まで
稿料:無料。
その他、さまざまなご意見、投稿を募集しています。
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■上映の告知の有料化とカンパのお願い
■伏屋 博雄(本誌編集長)
neoneoの購読は無料ですが、経費を(その大部分は稿料ですが)賄うため、上映等の
告知は有料にしています。なお皆様にカンパもお願いしていますので、ぜひご協力
ください。
(1)上映等の告知の有料化 1200字(40字×30行)以内につき、2,000円です。
それ以上の字数の場合は加算します。
(2)カンパのお願い 一口2,000円。何口でも。
送金方法:郵便振込み:00160?8?666528 neoneoの会、又は、
みずほ銀行池袋支店、普通口座、2419782
(有)ネットワークフィルムズ
(銀行振込の場合は、その由を visualtrax@jcom.home.ne.jp 伏屋宛にお知らせ
ください。)
以上、neoneoの継続ため、よろしくお願い致します。
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┃04┃■編集後記 伏屋 博雄(ふせや・ひろお)
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●新春にあたり、今年もご愛読のほど、よろしくお願いいたします。
●今回は「わが一押しのドキュメンタリー2006」の特集である。17名の方から回答
をいただき、心より御礼申し上げます。
応募数としては例年に比べて少なかったが、昨年は山形映画祭が開催されなかった
ことが影響したのだろうか。しかし回答は実に多様だった。各自が一押しした作品
は見事なまでに分散し、コメントを読めば作品への関心の持ち方が窺え、面白い。
当然、「ドキュメンタリーの現状について」や「私の2006年」についての文章も多
岐に渡り、読む楽しみは倍増する。
●今年も誌面をより充実させてゆく所存です。皆様の寄稿、投稿をお待ちしていま
す。
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■発行:ビジュアルトラックス visualtrax@jcom.home.ne.jp
■責任編集 伏屋博雄
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