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ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン neoneo 47号 2005.11.15

発行日: 2005/11/15


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┃n┣━┫o┣━┫e┣━┓ ★ドキュメンタリー映画の最前線メールマガジン
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  ┗━┛ ☆━┛ ┗━☆    47号  2005.11.15


∽∽∽∽∽∽ HEADLINE ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

 †01 日本のドキュメンタリー映画のかたち
      8ミリの生きている場所(1)  山崎 幹夫
 †02 neoneo坐通信(27) 11月後半のプログラム
 †03 広場
     投稿:ヤマガタ映画祭に参加して
       『ダーウィンの悪夢』『メランコリア〜三つの部屋』
       『水没の前に』の映評、  大方 栄太郎
     投稿:ヤマガタふわふわゆらゆら  中村 のり子
     新・クチコミ200字評!(22)
       『不滅の男 エンケン対日本武道館』『金洞山に挑戦』
       『あの日 昭和20年の記憶』の映評、  清水 浩之
     上映と講演:土本典昭監督講演と上映の夕べ
     告知:「毎日映画コンクール」の作品を募集!
     告知:上映の告知の有料化とカンパのお願い  伏屋 博雄
 †04 編集後記  伏屋 博雄


    ★バックナンバー閲覧はこちらまで

   まぐまぐ配信   http://www.mag2.com/m/0000116642.htm
   melma!配信    http://www.melma.com/mag/39/m00098339/



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┃01┃□日本のドキュメンタリー映画のかたち
┃ ┃■8ミリの生きている場所(1)
┃ ┃■山崎 幹夫
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●東京8ミリシネ倶楽部

京急空港線で京急蒲田から2駅めに「大鳥居」という駅がある。ここからほどちかい
荻中集会所でその集まりはとりおこなわれている。集まりの名称は「東京8ミリシネ
倶楽部」。そう、日本でただひとつだけの8ミリフィルム専門のアマチュアサークル
だ。

海外のサイトを見てみると、アメリカやドイツを中心にして、まだまだ8ミリ愛好家
のシネクラブ活動は盛んにおこなわれている。日本だけですよ、アマチュア映像の
人々がおしなべてビデオにいってしまったのは。新しい物が大好きな国民性なんで
しょうかねぇ。ま、それはともかく。

荻中集会所に到着して玄関のボードを見る。ありり、集会室のところには何も記載が
ないぞっ。臨時休業かい、ラーメン屋じゃあるまいし。とあせった私はあわてもの。
会は「会議室」ではなく「高齢者集会室」でおこなわれていた。そろりそろりと入っ
てみると、なかは広い畳敷き、高齢者がカラオケなんかやっているような部屋ですね。
そこに集う人々は、キャリア何十年の大ベテランから、若者まで10人ぐらい。それぞ
れが持ち寄った8ミリフィルムを映写している。かしこまった上映会ではない。過去
のホームムービーや旅行の記録映画、最近撮ったものだけれど未編集のラッシュフィ
ルムなど。上映中に会話してもOK。じつに和気あいあいな雰囲気だ。張りつめた雰囲
気の真剣勝負型の上映会の緊張も好きだけれど、こんな温泉みたいにリラックスでき
る場もいいもんだ。

しかしちょっと待て! なにげに机の上に置かれた映写機が、ヘンなかたちをしてい
るぞ。使われているのはエルモGS1200でまちがいない。しかし、側面にくっついてい
る金属の箱は何。よく見ると下に電源部がある。そう思ってスクリーンを見ると、何
これ? これは8ミリの画像じゃない。まるで16ミリじゃないか。

手っ取り早くこの映写機の画像を見たい人は、こちらのサイトのメニュー「高輝度映
写機」をクリックしてください。
 http://www.h4.dion.ne.jp/~s8mmeiga/ 
そう、これは主宰者の松田さんが改造した映写機なのだ。

「山崎さんなら貸しますよ」
「ホ、ホントですか!」
「爆発する可能性もあるんでよく知らない人には貸せないよ」
え〜、爆発。そういえばPFFの映写技師をしていた時に、エルモGS1200のクセノンラ
ンプが爆発して映写室の窓に傷つけたっけ。おー、こわ。

それにしてもこの改造映写機で見た8ミリ映像の美しいことよ。私もこれまで気づか
なかったような情報が、8ミリフィルムには盛り込まれていたのだ。8ミリ低感度フィ
ルムの解像度をムリヤリ画素数に換算すると60万をちょっと越える数字になる。これ
は現行のテレビ放送規格の倍になる。しかし今の今まで、それほどの解像度があると
は信じられなかった。松田さんの高輝度改造映写機の投射する画面を見て、はじめて
納得したのだった。

映写中にも質問が飛んでくるけれど、上映後もしばしおしゃべり。頃合いをみはから
って「では次を」ということになる。批評し合うというよりは「ここどう撮ったんで
すか」というような技術交換の場になる。

このように紹介すると、いかにも長い年月やってきた集まりのように思うかもしれな
いけれど、この会の設立は昨年、2004年の春だ。つまり、今でも雑誌『ビデオサロ
ン』の「ビデオクラブ通信」というコーナーを見ると全国各地に趣味の映像制作サー
クルが存在することがわかるけれど、それらはすべてビデオでの制作に移行してしま
った。フィルムにこだわりを持つ人は時代に取り残されてしまったのだ。それではフ
ィルムを愛する人だけで集まりましょうという主旨で松田さんが設立したのがこの会
だ。

羽田空港に近いところでやっているのは、全国各地から日帰りで参加する人がいるた
めである。というのはウソだけれど、1回だけの参加でも500円でOKなので、高輝度映
写機から出て来る画像を見るだけでも訪問してみる価値はあると思う。

次の例会は今月26日。ってneoneo坐で鈴木志郎康さんの7時間の8ミリ映画『風の積
分』の日じゃないか。私は『風の積分』の映写担当なので8ミリシネ倶楽部の方には
いけないけれど、そうか、東京のあちらとこちらで8ミリの小さな花が咲くわけね。

      (つづく)


■山崎 幹夫(やまざき・みきお)
1959年、東京生まれ。中学生の時から8ミリカメラで映画ごっこを始め、現在もなお
続けている。代表的な作品は『海辺の記憶』(1982)『極星』(1987)『猫夜』(1992)
『虚港』(1996)『無翼の朝と夜』(2004)。2000年に8ミリを今から始めたい人に向け
て『8ミリ映画制作マニュアル』を刊行。また自主映画製作のノウハウ本『映画を楽
しくつくる本』(ワイズ出版)も発売中。



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┃02┃□neoneo坐通信(27) 11月後半のプログラム
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neoneo坐の11月後半の上映をお知らせします。
会場はいずれも神田・小川町のスペースneo(都営新宿線小川町駅B5出口より徒歩1分、
JR御茶ノ水駅聖橋口より徒歩5分)です。
詳細と地図は下記のneoneo坐サイトをご覧下さい。
 http://www014.upp.so-net.ne.jp/kato_takanobu/neoneoza/index.html 

■「知られざる短篇映画を見てみる」上映会
短編調査団 SHORTFILM RESEARCHERS
(19) 地震の巻…2005年11月30日(水) 20:00〜

『マグニチュード7.9―地震予知の科学―』(1972/27分/カラー)製作:岩波映画
製作所/企画:科学技術庁/プロデューサー:高橋宏暢/演出・脚本:桑野茂/撮影
:竹内亮
地震に関する最も新しい知識を紹介するが、同時に地震の恐ろしさも教え、防災対策
を忽せない事を説いている。

『日本の地すべり』(1973/30分/カラー)製作:全国農村映画協会/企画:日本林
業技術協会/プロデューサー:福森友久/演出:荒井英郎/脚本:小野春夫/撮影:
阿部義則
日本の地すべりの概要を主として、科学的な技術と治山土の立場からみた工法を紹介
して多くの国民と林業、土木、建設関係者に役立てたいと考え製作したもの。

『洪水をなだめた人びと―治水と水防にみる先人の知恵―』(1997/30分/カラー)
製作:文化工房/プロデューサー:桂俊太郎/演出・脚本:田部純正/撮影:高橋慎
二・戸塚均
先人たちが自然に対して生存を賭けた「水防と利水」の苦闘の跡を全国に訪ねる。水
の力を巧みに操った武田信玄の独創性。加藤清正の自然に対する鋭い洞察力。彼らの
治水事業を紹介し、自然と技術が見事に融合した卓抜な戦略を検証してゆく。

【料金】鑑賞無料・上映カンパ歓迎
(毎月第2・第4水曜/20:00〜21:40 終映予定・16mm上映・追加情報はblog版短篇調
査団へ)
【お問合せ】清水 E-mail: shimizu4310@bridge.ocn.ne.jp 


■鈴木志郎康監督上映会―極私的に662分

11月26日(土)・12:00〜20:00 (途中休憩有・軽食つき)
『風の積分』(1989/8mm(全23巻)/420分/COLOR)
  映写担当:山崎幹夫氏
「1988年7月1日から89年6月30日まで、渋谷区代々木上原の自宅の3階の南西に向かう
窓から、昼夜連続して、「ライキナ・スーパー」という8ミリカメラにマノンワイ
ダーというアタッチメントを付けて、ほぼ150度ぐらいの画角で、自動シャッターの
設定で連日撮影した。始め、隣の家が出来るまでと思ったが、昭和の最後の空から平
成の初めの空を撮ろうと思うようになった。」(作品解説;鈴木志郎康)

11月27日(日)・13:00〜14:30
『15日間』(1980/16mm(VIDEO版上映)/90分/COLOR)
「『草の影を刈る』(1977)でおよそ3年に渡る日記映画を作ったが、日記映画には自
分のまともに撮影されていないことに気づき、自分の姿を映像にした『写さない夜』
(1978)をカメラマンを立てて作った。しかし、納得がいかず、自分で自分を撮るとい
うことの実践として『15日間』を作った。当時、自分が写っているので、作品と成立
しているか、ちょっと悩んだ。」(作品解説;鈴木志郎康)

11月27日(日)・14:45〜16:17
『眺め斜め(宗教学者・中沢新一)』(1983/16mm(VIDEO版上映)/52分/COLOR)
「人間にとって「眺める」ということはどういう意味を持つか、ということを、宗教
学者の中沢新一さんにチベットでの修行体験を語って貰って、わたし自身の沖縄旅行
で得た原風景と思える映像と、次男の誕生シーンなどを合わせて構成した。「眺め
る」ということは、人にとって「再生」を意味するということがわかった。映像表現
の本質を考える道筋を辿った作品。」(作品解説;鈴木志郎康)

『極私的にEBIZUKA(彫刻家・海老塚耕一)』(2001/VIDEO/40分/COLOR)
「彫刻家の海老塚耕一さんは、多摩美のわたしの授業の一部を担当して貰うことで知
己を得た人。考え方が本質を踏まえた上で挑戦的でねばり強い人と分かって、是非と
も海老塚さんをわたしの作品にしたいと思った。海老塚さんは主に野外に作品を置く
ので、瀬戸内海の島や山の中に置かれた作品を訪れて撮影して、その海老塚さんの芸
術表現のあり方を語った作品。」(作品解説;鈴木志郎康)

11月27日(日)・16:35〜17:35
『日没の印象』(1975/16mm/24分/B&W)
「個人映画ということをはっきり意識して作った最初の作品。当時、NHKで16ミリ
フィルムカメラマンとして働いて、組織の作る映像と個人的表現の映像とは違うとい
うことを自覚した。その時、37,000円で売っている中古の「CINE KODAK-K」で市販の
16ミリフィルムが使えることが分かって、早速購入して、家族を撮影するところから
スタートした。」(作品解説;鈴木志郎康)

『極私的に遂に古希』(2005/VIDEO/36分/COLOR)
「最近作の作品。70歳を迎える前年、膝の老化のために街中で転倒したのを切っ掛け
に、体操を始めて膝の痛みを克服する。そのことから身体のあり方が優先するように
なる。周囲の演劇をやる若い人達の姿にも触発されて、単刀直入に生きる極私的ラジ
カリズムということを考え、実践しようと思うようになる。「山形国際ドキュメンタ
リー映画祭2005」で上映される。」(作品解説;鈴木志郎康)

18:00〜 鈴木志郎康監督を囲んで「極私的パーティー」 

【料金】
 2日間:予約 4,500円 予約+パーティー 5,500円
 26日: Aプロ(軽食付) 予約 2,500円/当日 3,000円
 27日:3プロ予約 3,000円/当日 3,500円
    1プロ(当日のみ) 各1,500円
    極私的パーティー 2,000円

【予約受付・お問合せ】
spaceNEO(佐々木):Mail: spaceneo@tcn-catv.ne.jp  FAX:03-5281-7611
        :〒101-0052 東京都千代田区神田小川町2-10-13-1F



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┃03┃□広場
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■投稿:ヤマガタ映画祭に参加して
■大方 栄太郎(東京都、会社員、29歳)

『ダーウィンの悪夢』
物憂い音楽に導かれた鄙びた空港の管制室。ブンブン唸る蜂の羽音がこれから始まる
「悪夢」に対するどす黒い好奇心を掻き立てる。ジェットの唸りを遠くに聞きながら
巨大魚が工場に運び込まれる。この映画は食うこと生きることの倫理を巡るハードボ
イルド映画。目眩めく地獄巡りの果てに売春婦が二言三言漏らす呟きに悶絶。もはや
慈悲なし。しばらく呆然。必見。劇場公開熱望。

『メランコリア〜三つの部屋』
三つのいずれの部屋にもかわいい少年たちが登場する。というか、作者はひたすら美
少年にこだわる。彼らはみな難しい家庭環境又は家庭が無いなどの背景を持っている。
作者は、そういう少年たちが服の襟を直されたり、母の脇で泣きじゃくったり、朝方
目をこすったりする様や、彼らのうなじ、足首などに執着する。少年好きは必見。

『水没の前に』
この映画がすばらしいのは、例えばワイズマンの「福祉」の混乱の楽しさと同様に、
水没前の町の混乱を突拍子もないコメディとして描いた点だと思う。教会取り壊し後
の何かの権利を巡る議論はどういうわけだか複雑にこんがらがる。階段通りを滑り落
ちるコンクリート製の階段を追いかける奴もいる。人力による建物引き倒し作業はど
こまでも破壊し尽くしてしまいそうな狂騒的な熱気を帯びる。グルーチョの方のマル
クス主義的野心作。必見。


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■投稿:ヤマガタふわふわゆらゆら
■中村 のり子(大学生)

●記映写室から見る映画

期間中の2日半だけ、フォーラム5の映写室でボランティアとして働いた。誰にでもで
きる、ビデオ作品のプロジェクターの操作である。フォーラムはシネコンなので映写
室はひとつだけで、“5”のとなりでは“4”が「在日」特集をかけているし、背中合
わせには通常の劇場映画の35ミリがまわっていた。映写室なんて用事がなければ入れ
ないところだから、嬉しい機会である。薄暗い空間で35や16の映写機が影の模様をつ
くっていてうっとりする。

でも私の役割は、コンペ部門のビデオ作品だ。テープの頭出しをしておいて、時間に
なったら客電を落として、ビデオを再生する。それだけだが、侮れない。自分が観客
でいる時、映画とは時間になれば“自然に”はじまるものだという感覚があるが、こ
の“自然に”はしっかりと演出されたうえのことだったのだと、思いを改めるに至っ
た。映写係が電気を消さなければ暗闇は訪れないし、ビデオプロジェクターの場合は
光源に被せているフタを取らなければ何も映し出されはしない。

このフタを取る手さばきが実はいちばん緊張させられた。100人単位の人びとの夢の
時間が、自分の作業に左右されるのである。“5”の映写の窓からは客席がよく見え、
観客の先行きをこちらが操作しているのだという実感がこもる。映画を上映すること
は、その創成期以来、興行師によるショータイムなのであるという事実が、私の中で
確かになった。

●人間の対立と失われゆく場所と

こうして映写を担当したのはすべてインターナショナルコンペティションのビデオ作
品であったので、延々とかけながら見ていると、個々の作品にまたがって共有されて
いるテーマ性に気づかされる。一つには、『ファイナル・ソリューション』や『ルー
ト181』や『イラク──ヤシの影で』が明らかにした、人間同士が分かり合えない状
況、憎み合っている現実である。それもパーソナルなケンカとは違う、もはや顔の見
えない国とか宗教とかいったものを相手にした出口の見え難い対立の構図だ。もう一
つには、『静かな空間』や『老いた猫のお引っ越し』や『水没の前に』が見せた、人
の生きてきた場所の問題、豊かな時間とそれを培った場所が各地で失われてゆくとい
う現象である。そしてこの二つのトピックはけっこう重なり合っていて、『イラク─
─ヤシの影で』ではイラク戦争の結果、市井の人びとの生活の場所が崩れ去ってしま
ったし、『水没の前に』の街の解体の下では当局vs市民やら市民vs市民やらの対立が
軋み合っている。見渡してみると、破壊と崩落と喪失と、人権侵害、人権無視、憎悪、
不和といったものが目についてくる。

もちろん、これらへの問題意識はもともとドキュメンタリーにつきものであるし、ま
た個別の作品にもかかわらず大枠の傾向にまとめるのは慎重にするべきだが、今日の
世紀末のような新世紀のムードを良くも悪くも暴露してしまっていた。『アンコール
の人々』での遺跡の素朴な美しさとか『生まれなかった映画たち』での頭の中で作ら
れた出来事は、どうしてもかき消されてしまうようなところがあった。私が見ていた
作品はすべてビデオだから余計に、その即物的な描写が強調されたのかもしれない。
コンペの中でもフィルム作品にはまた違った特徴があらわれていたら面白いと思うが、
どうだっただろうか。

●線引きを越える視点

戦争とか虐殺とか別離とかばかりで、本当に気持ちが暗くなってゆくのだが、そこか
ら脱却しようとする時、国や民族や宗教や性別や職種などなどに自分を帰属するのを
やめてしまって、ふわふわした視点から見てみること、そういう状態を良しとしてし
まうこと、というのは一つの可能性である。クロージング上映だった『OUT OF 
PLACE』はそれを示唆している点でこれからの世界のための映画であった。それに膨
大な「在日」特集は副題の示す通りで、しかも彼らはふわふわゆらゆらせざるを得な
い存在なわけで、コンペ作品で頭が痛くなった私に、ひそかに新しい発想を提示して
くれた。

こんなふうにもってくるとちょっとウマくまとめ過ぎてうさんくさいけれど、それで
もドキュメンタリー映画自身、線引きを越えるようなアイデアと、撮影と、編集と、
音響と、そして予想外のアクションや人間の魅力を排除しないで取り込み、曖昧なと
ころに居続けること──私が今回見た作品の中でこれを実践してもっとも印象深かっ
たのは、境界の道を行きながら双方をすくいとり、単純な二項対立化からは離れた人
間の姿を沢山キャッチし、自分たちもそういう立場を貫いた『ルート181』の監督た
ちだ──を願う。そして同様に、映画を見ること・作ること・見せることを隔絶する
のではなくて、その間を探っていく意識を持つことを自分への宿題にして、帰途につ
いた。


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■新・クチコミ200字評!(22)
■清水浩之(短篇調査団・11/30は地震の巻! http://d.hatena.ne.jp/tancho/ 
オススメの作品を200字以内の短評で紹介してください!映画・ビデオ・テレビなど
皆さんがノンフィクションだと思う作品だったらなんでも可!もちろん「オススメし
ない映画とその理由!」もOKです。
本文とは別に「あなたのお名前(ペンネーム可)/掲載確認のご連絡先(メールアドレ
スor電話)/題名/制作年/監督/見た場所(よろしければあなたのプロフィールや
近況も)を付記してお送りください。ちなみにここでは稿料は出ません。
清水浩之 E-mail:shimizu4310@bridge.ocn.ne.jp /ファクス:03-3703-0839

B-123『不滅の男 エンケン対日本武道館』
2005年/アルタミラピクチャーズ/監督・出演・演奏:遠藤賢司/
撮影監督:長田勇市/舞台監督:萩原克彦
全国順次公開中!  http://www.fumetsuman.com/ 
誰でも生涯に1本は映画が撮れると言われたりしますが、世界に誇る四畳半ロッカー
・エンケンさん58歳がそのチャンスを見事に活かし比類なき音楽映画&究極のセルフ
ドキュメンタリーを撮りました!武道館を一日借りて巨大セットを組み、たった一人
で歌い叫ぶ「格闘技戦」の記録。群れず媚びずおもねらずの音楽人生を象徴するよう
な、エレキとドラムを同時に奏でる荒技に男泣き必至!武道館のススキ野原に立つギ
ター侍の雄姿は必見!(清水浩之)

B-124『金洞山に挑戦』
2004年/監督:吉野和彦
北信濃小布施映画祭2004「第2回超短編映画コンペティション」一次審査通過作品
動画公開中  http://www.obusefilmfestival.jp/awards_2004.html 
昨年の調布映画祭ショートフィルムコンペを席巻した山岳&愛妻映画『それでも妻は
登った』の吉野監督。斬新過ぎて?なかなか作品が見る機会がありませんが、吉野フ
ァンの村上賢司氏が動画公開中の超短編(1分)を発見!関東最高難度の縦走路で知
られる金洞山への単独登山+単独撮影作。絶壁をよじ登った後わざわざカメラを取り
に戻る労力と、全行程を詰め込んでコマ撮り人形アニメのようになったハイパー編集
にきっと感動します!(清水浩之)

B-125『あの日 昭和20年の記憶』
2005年/東京ビデオセンター/総合演出:正岡裕之
放映:NHK衛星第2・毎朝6:50〜6:59  http://www.nhk.or.jp/bs/anohi/ 
※11月19日は羽田澄子監督、20日は岩波ホールの高野悦子総支配人が出演。
数多ある戦後60年記念番組の中でも記念すべき好企画。年中無休で各界の人々が語る
「日めくりの戦争体験」は、ともすれば儀式やロマンとして捉えてしまう戦後世代へ
の貴重な置き土産です。美輪明宏さんの見た長崎、米倉斉加年さんの亡き弟への悔悟
など記憶に深く残るエピソードとともに、沖縄の大田昌秀さんが10月末まで山中を逃
げ回っていたことなど、歴史の記述から漏れてしまうことが日付とともにあらためて
浮かび上がります。(清水浩之)


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■上映

●【土本典昭監督講演と上映の夕べ−−水俣病公式発見から49年−−】
2006年5月1日で「水俣病公式発見」から50年目を迎えます。その前年の今秋−水俣病
の苦しみを抱えながら生きる人々に温かいまなざしを向け続ける土本監督をお招きし
て、「不知火海」(1975)を上映し、お話を伺う中から、近代社会が何を手に入れ、
何を失ってきたのかを考えます。

日時:2005年11月26日(土) 13:30から(開場は13時)入場無料
会場:和光大学(小田急線・鶴川駅下車。徒歩12分) J-301教室
上映:『不知火海』土本典昭監督作品・150分(日本語字幕付き)

講演:土本典昭監督
     「コミュニケーションツールとしてのドキュメンタリー映画」
      最首悟(和光大学人間関係学部教員)
     「水俣病と土本典昭監督」
講演終了後、土本監督を交えての交流会があります。

お問合せ先:和光大学企画広報課 〒195-8585 東京都町田市金井町2160
                      TEL:044-988-1433


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■告知

●「毎日映画コンクール」の作品を募集!

日本映画の年間ナンバー・ワンを決める「第60回毎日映画コンクール」のドキュメン
タリー部門作品を募集します。最優秀作品はドキュメンタリー映画賞として来年1月
に発表、2月に表彰します。

《募集作品》05年1月1日〜12月31日までに東京地区で封切りまたは完成するドキュメ
ンタリー映画。フィルムのほかビデオまたはDVDの作品も可。(但し、上映時間が5分
未満、制作目的がテレビ用のみ、外国語版の作品は除く。)

《応募方法》作品をビデオ(VHS)またはDVD(ファイナライズ済み)に変換し所定の
応募用紙、資料とともに提出する。送料は応募側が負担。一次選考通過作品で原版が
フィルムのものは当該プリントを指定期限内に再提出。

《締め切り》11月25日必着。
《応募・問合せ先》〒100―8051毎日新聞社事業本部「毎日映画コンクール事務局」
(03・3212・0187)。
応募用紙は毎日新聞社のウェブサイト( http://www.mainichi.co.jp/ )の
同コンクール項目からダウンロードまたは80円切手を同封の上前記応募先へ。
詳しくは、毎日新聞社のウェブサイト( http://www.mainichi.co.jp/ )の毎日映画
コンクール項目をご覧下さい。


     ◇────────────────────────◆◇◆    


■上映の告知の有料化とカンパのお願い
■伏屋 博雄(本誌編集長)

neoneoは2003年11月1日の創刊以来、月2回(1日と15日)、購読料無料で配信してま
いりましたが、配信を継続する経費、その大部分は稿料ですが、ここに到って、皆様
の力をお借りしたく、下記の二点につきご協力をお願いする次第です。

(1)上映等の告知の有料化―1200字(40字×30行)以内につき、2,000円を頂きたい
と思います。但し、それ以上の字数の場合は加算します。
(2)カンパのお願い― 一口2,000円。何口でも。

上記の送金は下記の方法でお願いします。
郵便振込み:00160−8−666528 neoneoの会、又は、
みずほ銀行池袋支店、普通口座、2419782 (有)ネットワークフィルムズ
(銀行振込の場合は、その由を visualtrax@jcom.home.ne.jp 伏屋宛にお知らせくだ
さい。)

以上、neoneoの継続と、今後一層の充実した内容を図るためにも、皆様のご協力を
何卒お願い致します。



┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃04┃■編集後記 伏屋 博雄(ふせや・ひろお)
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●前号まで掲載した鈴木志郎康さんの「ドキュメンタリー映画のかたち」はすこぶる
好評だった。私は何人もの方から、「若い世代の作品の傾向がわかった。」とか、
「(鈴木さんの)懐の深い見方に驚嘆しながら、楽しく読みました。」などのメール
を頂いた。鈴木さんは今も旺盛な制作活動をされている。11月26日と27日に「極私的
に662分」と銘うって行われる上映会(neoneo坐)は絶好の機会だ。詳しくは、
「neoneo坐通信」をご覧下さい。

さて、鈴木さんからリレーして、今回から山崎幹夫さんによる4回の連載(予定)が
始まった。山崎さんはご存知の通り、一貫して8mmフィルムに固執されてこられた監
督である。今や「過去」と思われがちな8mmだが、「どっこい、生きている」現役で、
その魅力を全面展開して頂けるものと思う。山崎幹夫さんのHP:「ムエン通信」は、
 http://www.ne.jp/asahi/muen/press/index.html である。

ところで8mmと同様に16mmフィルムの映写が出来る人がいない現状をどう考えたら
いいだろうか。昨年の10月から「小川紳介のコスモス―小川プロの仕事」と題して計
10回、16mmフィルムによる上映会をneoneo坐で行ってきた。ここで直面した問題は、
映写機を廻せる者がいないということだった。もちろん映写技師を頼めば解決するが、
当然経費がかさむ。よって自前で工面するしかない。私自身、30年以上前に操作して
以来、実績がないから、万が一トラブルが生じた場合、的確に対処する自信がない。
ましてや小川作品は長尺が多いからロングリールを使わざるを得ない。幸いにして大
半は山崎さんに頼んで事なきを得たが、8mmにしろ16mmにしろ「どっこい、生きてい
る」ことを思えば、若い世代が操作技術のバトンを受け継いでいかなければ、映画の
基盤は脆くなると痛感した。

●「投稿こそ、本誌の充実度を測るバロメーター。」と思っている。すでに本誌では
お馴染みの清水浩之さんの「新・クチコミ200字評!」は、1回も欠かさず22回を数え
ている。ユーモア溢れる寸評は、改めてドキュメンタリーのフィールドの広さを痛感
する。加えて今回は2人の応募があった。いずれも山形映画祭にちなんだ投稿で、大
方栄太郎さんは3作品についての感想、もうひとりの中村のり子さんはボランティア
としてビデオ作品のプロジェクターの操作に関わり、映画の裏方として得た貴重な経
験を語っているように思う。

本誌は多彩な投稿を求めています。作品批評や問題提起、さらに監督自らが語る「自
作を解剖する」など、積極的に応募ください。原稿の規定等についてのお問合せは、
下記にお願いします。
 visualtrax@jcom.home.ne.jp 

●今回は予定していた原稿2編が締め切りに間に合わず掲載できなかった。チョン・
スワンさんの「ワールドワイドNOW」≪ソウル発≫と、藤原敏史さんの「ドキュメン
タリー時評」である。おふたりの原稿は次号に掲載する予定です。ご了承ください。



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■責任編集 伏屋博雄
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