「マガジン」はアラビア語が語源だということをごぞんじでしたか?週刊アラブマガジンはアラブ・イスラーム文化について幅広くご紹介します。中東及びアラビア語、アラブ・イスラム文化に興味のある方、必見です!
- 最新号:2008-06-26
- 発行周期:毎週1回
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週刊アラブマガジン [Vol. 127]
発行日: 2005/12/28Vol.127 2005.12.28発行
◆◇◆ 『週刊アラブマガジン』 ◆◇◆
【今週の目次】
1.編集長のごあいさつ
2.アラブサッカーに恋して 【サッカーボールに希望を込めて】
3.詩のそよ風 【人生とは】
4.イスラーム建築 【今後のマスジド】
5.預言者たち 【預言者ムーサーとハールーン その7】
★★1.編集長のごあいさつ ★★★★★★★★
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読者の皆様
【週刊アラブマガジン】をご愛読いただきましてありがとうございます。
2006年1月からは内容を一新いたしますので、引き続きご愛読下さい。
それでは、皆様方、良いお年をお迎え下さい。
編集長
【シリーズ : 2006年前期】
●アラブ社会
サウジ女性の筆者とアラブ社会が抱える問題を共に考えましょう。
●詩のそよ風
恋に落ちたアラブの詩人が語る愛の世界。。。
●アラビア人と私
ギリシアでの日本人とアラビア人のエピソードです。
●イスラーム世界の文化と美術
千四百年以上にわたって伝わるアラビアの文化、学問、美術に触れましょう。
●アラブ料理
アラビア料理が好きな方におすすめです。
●預言者たち
旧約聖書、新約聖書、コーランに登場される預言者たちの物語をコーランの視
点から紹介します。
★★2.アラブサッカーに恋して ★★★★★★★★
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【サッカーボールに希望を込めて】
レバノンのトリポリは、美しい海がある観光地ですが、首都のベールートに比べ
ればはるかに田舎で、のんびりした小さな町です。ホテルの数はさほど多くはあ
りませんが、予約をせずに入った安宿はシャワーも完備されていて、一泊ツイン
で2000円位、オーナーのおじさんは親切で、安心して滞在できました。
トリポリ中心部、ホテルからタクシーで5分ほどの近い場所に、試合が行われる
ムンシパルスタジアムがあります。チェックインを済ませ、荷物を置いて、急い
でスタジアムへ向かうと、前日練習を行うザウラーの選手たちも、ちょうど到着
したところでした。イラクの選手たちとはガルフカップ以来、半年ぶりの再会。
U-17代表選手のアラァとオマルは昨年の夏、日本に来日しましたが、久しぶ
りに会った二人はすっかり大人びていて、ザウラーのレギュラー2トップとして
活躍していました。ただ、変わらないものが二つあります。終わらない戦争と、
それを感じさせない彼らの笑顔です。
試合はレバノン軍が警備する物々しい雰囲気の中、観客もほとんどいない状態で
行われました。それとは裏腹に、快晴の空の下、青々した芝でプレーする白いユ
ニフォームのイラク選手たちは、伸び伸びとピッチを駆け回り、力強い印象を焼
き付けます。ウズベキスタンの選手のコンディションも良くなかったのか、終始
ザウラーが攻勢を保ち、1対0で勝利しました。予選敗退が決まっていた消化試
合でも、この勝利は彼らにとってかけがえのないものとなったでしょう。スタジ
アムを引き上げるバスの中は大騒ぎ。大音響で流れるアラブミュージックに合わ
せ、代わる代わる踊っては勝利の雄叫びをあげていました。
試合翌日、バグダードまでの帰路、陸路でシリアのダマスカスまで彼らのバスに
同乗しました。レバノンとシリアの国境で、日本のパスポートとあらかじめ取っ
ておいたビザのおかげで、私の税関手続きはすぐに終わりましたが、彼らのほう
は簡単ではありません。はじめはバスの中で待っていましたが、しばらくして彼
らは大きめのタオルや敷物を持ち、全員が外に出てきました。礼拝の時間。国境
の駐車場に、しばしの静寂が漂います。
これまで幾度となく、イラク選手以外でもアラブのサッカー選手たちと出会って
きましたが、彼らに共通して言えることは、絶対的な信仰です。普段どんなにふ
ざけていたり、底抜けに明るい彼らでも、礼拝中の表情は真剣そのものです。時
間や場所を選べないことがあっても、スタジアムの中、グランドの上、移動の合
間、いつも彼らは神と共にいるような気がします。そして、試合中の表情は、礼
拝中のそれと似ています。
中東というと真先に戦争やテロといった危険なイメージを抱かれてしまいがちで
すが、武器や権力を振り回さず、ボールに夢を託し戦う人々がいるということを
知っていて欲しいと思います。以前、バーレーンのスタープレーヤーのムハンマ
ド・サルミーン選手がこんなメッセージを残してくれました。
「アタマンナー タウフィーク ワッサラーム リル・シャリクルアウサト」
中東の繁栄と平和を願っています。
今回のアラブマガジン連載はこれで終了します。まだまだ書き切れないことやエ
ピソードがたくさんありますが、今後もアラブサッカーを追い続け、お伝えする
ことができればと思います。いつかまた、どこかで、お会いできますように。ご
拝読ありがとうございました。
執筆:渡邉真由子
フリーライター
★★3.詩のそよ風 ★★★★★★★★
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【人生とは】
困難がないならば、人々は凡て支配者となり、
そして気前のよさが身を滅ぼし、勇気が殺される原因となる。
自分のことを語られるのは、その人にとって第二の人生で、
(人生にとって)必要なものは消費したもの、だからそれ以上のものは、
雑事に過ぎない。
アルムタナッビィー
★★4.イスラーム建築 ★★★★★★★★
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【今後のマスジド】
これまでの歴訪を通じて、マスジド建築にまつわる様々なことがらに触れること
ができましたが、ここに今後の建設へ向けて、二点ほど改めて特記しておきたい
と思います。
1.マスジド建築と他の芸術
一つは、マスジドの形態や装飾などは、見てすぐにそれと分かる特色が色々ある
わけですが、それらの多くは他の分野の芸術作品と相当自由に交流があるという
ことです。つまり、マスジドの正門や中庭を巡るイーワーンの入り口は、かまぼ
こ板のような長方形の板を立てかけて、その中をくりぬいたような形に発達して
いったのですが、その長方形全体のデザインはそのままたとえば、本の表紙の装
丁のデザインに用いられているということです。あるいは両者の関係は、逆の場
合もあったかもしれません。さらにはまた、壁のモザイク文様も、絵画に描かれ
たり、本の挿絵に使われたりしています。また絨毯の文様やデザインは、マスジ
ドの壁に見るモザイク模様と瓜二つであることは、広く知られているかと思いま
す。このような多分野のデザインやモチーフの自由な相互往来の発想は、日本で
は見られない現象ですし、また欧米でもこれほど自由奔放にかつ大々的にはあり
ません。
この事象の文化的な背景や原因を総合的に判断するのは、なかなか興味のありそ
うなテーマではあります。ここでは、最初に触れたことをもう一度繰り返すにと
どめたいと思います。それは、マスジドは、仏教・神道やキリスト教などの聖堂
と異なり、その建物自体は神聖視されないということです。ですからマスジド芸
術と他の分野の芸術交流は、一向に特別の意識なく、良いものは良いとして、積
極的に進められたのでしょう。もちろんこれは憶測以上ではありません。ただ憶
測であっても、マスジドの性格の一面に光を当てているかと思われたので、触れ
た次第です。
このことを少し敷衍しますと、マスジド建築で発達したドームの技巧が大市場の
天井建造に利用されたり、イーワーンの造りはそのままシリアなどで、冷気を誘
う快適な住居造りにも利用されているのをみると、あっと驚かされます。同時に
良いものは良いとしてちゃっかり利用している様には、思わず微笑ましさを禁じ
得ません。
そしてこのことは日本でマスジドを建設する時にも、斟酌して良い点ではないで
しょうか。ムスリム・コミュニティが主体となって建てられるマスジドは、小規
模ではあっても大いにその土地柄に順応して設計されていることは、今までの章
でいくつもの事例を見たわけです。
2.マスジド建築の目指すもの
最後には日本でもマスジドやムサルラーは増えて行くでしょうから、どのような
ことに注意すべしと考えられるのか、またどのような場所がそうだと認められる
のかについて、これまでの観察も踏まえながら少しまとめてみたいと思います。
その基本は、清潔、清浄なスペースがあること、キブラの方向を示すミフラーブ
があることに尽きます。それに説教師のお立ち台として、預言者の例に倣って少
なくも階段が3段くらいのミンバルがあれば十分でしょう。また出来れば、金曜
日のためにある程度の人数が入れるスペースは確保したいものです。これでマス
ジドとしては、もう大丈夫です。
そこで以上の4要素―清浄さ、スペース、ミフラーブ、ミンバル―が揃えば、本
当は大丈夫どころか、それ以外は不必要と言う見解を強く主張する人たちは、少
なくありません。まずは少しそれに耳を傾けてみましょう。
タイルなどによる壁の文様やミンバルの螺鈿装飾などは、凡て何のご利益もな
い、ドームは元々預言者の時代にはなかったものでいっそのことなくて良い、ミ
フラーブを飾り立てるのは信者の心を戸惑わせるに過ぎない、などなどマスジド
の造りかたに関する議論や著作が少なからずあります。また電気で照明をし過ぎ
るのは浪費である、ミイザナも拡声器がある今日不要となったので、その建造の
ために大変な費用を掛け、ましてそれがムスリムの誇りだと思うのは、勘違いだ
と断じるのです。ドームもマスジドの原型にはなかったもので、ミイザナ同様マ
スジド建設費用の大きな部分を占めるので、必需品ではないとし、またあらゆる
絵画はもちろん、さらには書道の額も許されず、「礼拝するものの心を乱しては
ならない」という預言者の伝承に反する云々と主張する考え方が相当あります。
さらには他宗教から入ってきたもので、一番排斥すべきは、墓だ、とも言いま
す。確かにそれは預言者の最後の助言でもあったわけです。墓の中でも最悪は、
それがキブラの方向に設けられている時である、またメディーナの預言者の墓は
もちろんそのような位置にはないのですが、それでも預言者マスジド部分から壁
で仕切ったほうがいいのではないか、などと主張は続きます。
もう一つは、同じ生活圏内でいくつものマスジドを建造すると、一体であるべき
ムスリムの共同体を分断することになり、それは許されないという主張もありま
す。同様の発想は、近いからと言って小さなマスジドで金曜日の礼拝を済ませる
のは、これも共同体分断に繋がるので、やはり少し離れていても金曜日は大きい
マスジドヘ行くべきだとします。これらの考え方は分かるとしても、他方でどこ
で礼拝してもよいと言う原則もあります。マスジドを方々に設けてはいけないと
いう根拠は、歴史的にも概念的にもはっきりとは示しにくいとすれば、このよう
な説は拘束力はないが、できるだけ拝聴する重要な参考事項であり、勧められる
意見という範疇になるのでしょう。
このような議論については出版物も色々ですが、建造物としてのマスジドだけで
はなく、そのほかマスジドに関するあらゆる側面が議論されていることを付言し
ておきます。例えば説教の仕方、アーザーンの仕方、亡くなった人への弔辞をマ
スジド内で行うことについての是非論、マスジドの構内から自動車で出入りする
ことについてはどうか、などなどです。行儀作法、マスジドの管理・運営方法、
金曜日には二つの説教が行われますが、それらの間に礼拝することの是非(普通
は行わずに、一呼吸を置いてからすぐに第二の説教に移る)、またこれらに加え
て、聖マスジドなど特定のマスジドでの決め事などなど、あらゆる議論が進行中
なのです。当然ながらこれらを全面的にカバーすることは、興味も惹かれて重要
な事柄でしょうが、本書の範囲を出てしまいます。
著者自身もマスジドやムサルラーの建物は、簡素、清貧に限ると信じるものです
から、以上につい多くを引用してしまいました。光と影を強調したマグレブ様
式、色彩を強調したイラン様式などを見てきました。それからマムルーク朝やオ
スマン・トルコ様式は、いかにも権力誇示的でした。そしてそれらはそれぞれ大
いに印象深いものでした。しかし同時に、原型というか、元祖のスタイルと思わ
れる、ダマスカスのアルジャーミゥ・アルウマウィー、カイロのジャーミゥ・イ
ブン・トールーンなどの、清楚で静謐な様を越えるものではなかったように思わ
れるのです。前の章で少しだけ触れた、サハラ以南の粘土固めの素朴なマスジド
に、無性に心をとらわれる感覚にも言及しました。これらの背景から、預言者マ
スジドはイスラーム第二の聖マスジドとされたわけです。結局、信心に直球で訴
えてくるのは、いずれのあり方か、ということが問われるのでしょう。また共同
体の中で信心を確認し強化すること、それがマスジドの最大にして唯一の、存続
理由でもあります。前の章で引用した、現代マスジド建築家アブド・アルワーヒ
ド・アルワリードが「宗教という神聖な目的の建築物については、刷新と言う言
葉は当てはまらない。それは何世代にも渡る、技術、芸術そして象徴などの総合
である。建築家は、新しい用語や作り変えた文法を必要としないで、従来のもの
を使いながら、読者の心を広げることのできる、詩人のようなものである。」と
述べたことも想起されます。
コーランにはこう出ています。「浪費者は本当に悪魔の兄弟である。悪魔は主に
対し恩を忘れる。」(夜の旅章27)
本書の色々の物語を通じて、最後にこのような点に思いを致していただければ、
著者の幸いとするところです。
何れにしても始めに述べたように、預言者に倣う作法として、マスジドへ入る時
はあたふたと駆け込むのではなく、できるだけ心静かに右足から入るようにし
て、また「お慈悲の扉をいくつも開けてください」とアッラーに静かにお願いし
ながら入るようにしましょう。そして出る時には、左足から出して、「どうかお
恵みを分けてください」とお願いすることを忘れないようにしましょう。
執筆:アミーン水谷
アラブ イスラーム学院研究員
★★5.預言者たち ★★★★★★★★
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【預言者ムーサーとハールーン その7】
ムーサーはついに魚が逃げ出した場所へたどり着きました。そしてムーサーと従
者が以前そこで休み、かごから魚が逃げ出した岩のところまで戻ると、そこでヒ
ドル(ハディル)と出会ったのです。ムーサーはヒドルに、彼から学ぶためにお
供をさせてほしいと申し出ました。
『ムーサーはかれに、「あなたに師事させてください。あなたが授かっておられ
る正しい知識を、私にお教え下さい。」と言った。』(聖クルアーン・洞窟章
66節より)
しかしヒドルは、「あなたは、私と一緒には到底耐えられないであろう。」(洞
窟章67節より)と言うのです。そこでムーサーが、「もしアッラーが御好みに
なられるなら、わたしがよく忍び、またどんな事にも、あなたに背かないことが
わかりましょう。」と言うと、ヒドルは同意しました。
ムーサーがヒドルと一緒に海岸を歩いて行くと、1艘の船のそばを通りかかりま
した。ヒドルとムーサーは船の持ち主たちに自分たちを乗せてくれるよう頼みま
した。彼らはヒドルのことを知っていたので、ヒドルへの敬意から、彼とムー
サーを船賃なしで乗せていってくれました。
やがて船が岸に着き、船の所有者や乗客たちは降りていきましたが、ヒドルは船
に残り、彼らが離れるや否や船に穴を開け始めたので、ムーサーはとても驚い
て、ヒドルのしたことを非難しました。船の所有者たちは親切にも船賃なしで私
たちを乗せてくれたというのに、彼はこうして船に穴を開けて壊している!!
ムーサーの考えではその振る舞いは責められるべきものでした。ムーサーは自分
の早急な性質に支配され、また真実を守ろうとする激しい心に動かされて、自分
の師に話しました。師が条件付けたことをすっかり忘れて。
『それでかれ(ムーサー)は言った。「あなたがそれに穴を開けるのは、人々を
溺れさすためですか。あなたは本当に嘆かわしいことをなさいました。」』(洞
窟章71節)
するとヒドルは、ムーサーが耐えられないだろうということを彼に思い起こさせ
ました。
『かれは言った。「あなたは、わたしと一緒では耐えられないと、告げなかった
か。」』(洞窟章72節より)
そこでムーサーは約束を忘れてしまったことを謝り、自分を咎めたり、困難で悩
ませたりしないでほしいと願いました。
『かれ(ムーサー)は言った。「わたしが忘れたことを責めないで下さい。また
事を、難しくして悩ませないで下さい。」』(洞窟章73節より)
こうして2人はまた歩き出しました。彼らがある庭園に差し掛かると、そこで一
人の少年が遊んでいました。するとヒドルは突然その少年を殺してしまったの
で、ムーサーはとても驚き、興奮して、一体何の罪で少年はこのように殺されな
ければならなかったのか、とヒドルに問いただしました。するとヒドルは、ムー
サーが到底耐えられないと自分が言ったことを再び彼に思い出させました。
『かれは答えて言った。「あなたは、わたしと一緒には耐えられないと、告げな
かったか。」』(洞窟章75節より)
そこでムーサーは約束を忘れたことを謝り、自分はもう二度と尋ねないだろう、
もしもう一度尋ねたら、自分をもう連れて行くことはないと言いました。
『彼(ムーサー)は言った。「今後わたしが、何かに就いてあなたに尋ねたなら
ば、わたしを道連れにしないで下さい。(既に)あなたはわたしからの御許しの
願いを、(凡て)御受け入れ下さいました。」』(洞窟章76節)
ムーサーはヒドルとまた歩き始め、やがて2人はある村へ入りました。持ってき
た食べ物が尽きてしまったので、彼らは村人たちに食べ物を求めましたが、彼ら
は2人に食べ物をふるまうのを拒みました。それから夜が来たので、彼らは倒れ
かけた壁のある空き地を見つけ、そこで休むことにしました。その壁は本当に今
にも崩れ落ちそうでした。
するとヒドルが起き上がり、壁を修理して建て直したので、ムーサーは驚かされ
ました。自分の連れの、また自分の師の行いにびっくりした彼はこう言いまし
た。「もし望んだならば、それに対してきっと報酬がとれたでしょう。(洞窟章
77節より) それによって食べ物を得るために。」
しかしその一言で事は終わりを告げ、ヒドルはムーサーにこう言ったのです。
『「これでわたしとあなたは御別れである。」』(洞窟章78節より)
そしてムーサーに今までの行いの訳を説明し始めました。
―あの船の所有者たちは貧しい人たちでした。彼らが船に穴が開いたことを災難
だと思ったとしても、逆にそれは彼らにもたらされた恩恵だったのです。あの地
には、すべての船を強奪する不義の王がいたのですが、あの壊れた船は放置する
ので、家族の糧を得る手段はそのまま残され、飢えて死ぬことはありません。
そしてあの少年ですが、彼の両親は信者であり、少年は将来大きくなると彼らを
大変苦しめることを我々は知っていて、そのために彼を殺したのです。殺された
子の父親も母親も、罪もない小さな一人児が殺されて大惨事に見舞われたと思う
でしょうが、実は彼らにとってあの子の死は大きな御慈悲だったのでした。
アッラーはあの子の代わりに、彼らが年老いた時には彼らを世話し、殺された少
年のように傲慢さや不信心で彼らを苦しめるようなことをしない息子を、いずれ
彼らにお与えになるのです。―
またヒドルが報酬を求めないで苦労して建て直した壁についてですが、実はあの
壁の下には、町に住む、まだ力のない2人の孤児の少年たちの財宝が隠されてい
て、壁があのまま崩れ落ちていれば、その下から財宝が現われ、村人たちがそれ
を支配してしまうところだったのです。小さなその少年たちにはまだそれを守る
事ができません。
彼らの父親は正しい人物だったので、アッラーは2人がまだ小さくて力のない
間、その正しさによって彼らを助けられ、二人が成長して強くなり、財宝を守れ
るようになってから、それを掘り出すようにと望まれたのでした。
それからヒドルはアッラーの御慈悲を示し、彼がしたことはすべて至高至大なる
アッラーからの啓示によるものであり、アッラーが彼にお教えになったことであ
ると言いました。そしてこれが、ムーサーがよく耐えられなかった事柄だったの
でした。
ハールーンはムーサーより少し前に亡くなり、ムーサーにも定められた最期の時
が近付きました。しかし彼はまだ、アッラーがイスラエルの民にお定めになった
40年のさまよいの中にいました。そのため彼は主に祈って言いました。「主
よ、聖地へ私を近付けて下さい。」
彼は、自分がめざした地であり、自分の民をも向かわせたその地の近くで死にた
かったのです。
しかしながらそれは叶わず、彼はさまよいの中で亡くなり、エルサレムの近くの
赤い砂地に埋められました。地上最後のアッラーの預言者モハンマドはそのこと
について、夜間飛行の奇跡を体験した時、このように話しました。
《夜間飛行の夜に赤い砂地のところで、私はムーサーのそばを通りました。その
時彼は、彼の墓の中で礼拝をしていました。》(ムスリムによる伝承)
・・・・終わり。
執筆:ヌーラ アッダハマシ
━━━━━━━━━━━━━━━━━
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