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[GEN 685] 毒餃子事件報道を検証する【第24回】

発行日: 2008/6/26

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     世界の環境ホットニュース[GEN] 685号 08年06月26日
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          毒餃子事件報道を検証する【第24回】        

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 毒餃子事件報道を検証する                                 原田 和明

第24回 ポッカ缶コーヒー事件の背景

毒餃子事件に毒飲料事件、長野聖火リレーなど一連の騒動に対して、日本政府
は国民に気付かれないようにする以外どうすることもできなかったようにみえ
ます。そこへ長野では、聖火リレーの妨害を阻止しようと中国人留学生の大動
員が計画されていました。妨害活動を数で圧倒しようというわけです。しかし
ながら、彼らの目前で挑発行動が繰り返されれば何が起こるかわかりません。
日本政府はそれでも、警備の強化以外に打つ手がありませんでした。

そこに、日本旅行業協会がひとつの対策を示しました。中国人留学生の大動員
は「旅行業法違反」にあたると指摘したのです。中国人留学生の長野集結がな
ければ、暴動に発展する危険性は非常に小さくなります。ところが、日本政府
は、この指摘を握りつぶしてしまいました。ポッカ缶コーヒー事件はちょうど
このタイミングで発生しています。ほとんど何も知らされていない国民には、
突然、数千人の中国人留学生が長野に押しかけた光景を見ることになりました。
一触即発の雰囲気の中、聖火リレーはスタートしたのです。

中国政府は、キャンベラでの聖火リレーに続いて日本でも中国人留学生を動員
して、聖火リレーの妨害運動を数で圧倒、封殺しようというわけです。しかし、
これは諸刃の剣です。封殺できればよいでしょうが、もし彼らの目の前で挑発
行為が繰り返されたら、群集をコントロールできるかどうかはわからないので
す。いきおい、日本政府は警備体制を強化せざるをえません。

中国人留学生の動員は当初、民間の協賛による「学友会」の自主的な企画だと
発表されましたが、後に、キャンベラと同様、中国大使館が指導していたこと
が判明しています。

「学友会」は「在日留学生長野五輪聖火リレー参加組織委員会」を独自に結成
して、大学だけで7万人以上いる中国人留学生や卒業生に、ホームページ上で、
「聖火リレーが、中華民族の空前の団結力を示している」などと参加を呼びか
けてきました。そして、参加費2000円で往復バス代+軽食2回、Tシャツと小
旗が含まれる、日帰りの“弾丸ツアー”を企画、ホームページで大々的に参加
を募っていました。(4.24 IZA ニュース)

聖火リレー当日、長野には予定数を大幅に上回る4000人が集まりました。日帰
りだとしても、全国一律2000円で長野往復+2食+αとは破格の料金です。大
口のスポンサーがなければできないツアーです。不足分は、企業などからの献
金でまかない、主催の「組織委員会」は、あくまで“民間”で、中国大使館か
らは 国旗など物品の提供だけを受ける(4.24 IZA ニュース)ということでし
たが、実際のスポンサーは中国大使館でした。(4.29朝日新聞)

東京から参加した複数の留学生によると、1人2000円の交通費は負担したが、
残りの費用は、すべて大使館側が負担してくれたとのことです。そして、配ら
れたマニュアルには、「体を張って 妨害を食い止めてもいいが 暴力を振るっ
てはいけない」「大声を出してもいいが、相手を侮辱するような言葉は使わな
い」など、法律やルールを守るよう呼びかけ、現場でも注意されたといいます。
中国のイメージが損なわれないよう配慮していることがうかがえます。 

パリやロンドンで聖火妨害が相次いだため、各大使館が中国人留学生や在外中
国人を動員し、聖火を防衛することを決めたとのこと。4月24日にあった中国
外務省の定例会見で、「中国大使館が費用を負担して現地の中国人を動員して
いるのか」という記者からの質問に対し、姜瑜副報道局長は「そのような質問
をして、どんな意味があるのか」と回答を拒否しています。(4.29 朝日新聞)

ところで、このツアーについて、日本政府はどのような見解をもっていたのか
は明らかになっていません。オーストラリアの首相のような、大動員に対する
怒りのコメントは聞こえてきません。聖火リレーコースの変更・短縮は認めな
い、留学生は動員するという中国政府の意向を、日本政府は粛々と受け入れた
ということになります。ところが、日本の旅行業界を統括する「日本旅行業協
会」(通称 JATA、東京・霞が関)が、「学友会」の企画したツアーは 旅行業
法に抵触する可能性が あると、「待った」をかけたのです。(4.24 IZA ニュ
ース)日本旅行業協会とは、JTB や近畿日本ツーリストなど国内の登録旅行業
者1243社が加盟する社団法人です。

 (以下4.24 IZA ニュースより引用)
  「不特定多数を対象にした『募集型企画旅行』を取り扱う場合、主催者はあ
 くまで、国土交通省認可の『第一種旅行業務』(海外・国内可)か、都道府
 県知事の認可を得た『第二種旅行業務』(国内のみ可)の免許を持った旅行
 会社でなくてはなりません」 (以上、JATA 法務担当者の解説)

 ここでいう主催者とは、今回のケースでいえば、『組織委員会』に該当する
 が、当然、旅行業の免許など持っていない。また、一定の組織内で旅行を企
 画し、その構成員に限って募集する場合(職場旅行、同窓会など)はこの限
 りでないが、

 「留学生というくくりで、対象者が7万人もいるうえ、ツアー申し込みの条
 件が代表者の口座への2000円振り込みとなっている以上、事実上『不特定多
 数』に向けた企画旅行の募集です」「募集型企画旅行の募集広告では『法定
 表示事項』が定められていますが、ホームページの募集案内を見る限り、何
 一つ要件を満たしておりません。日本国内において、金銭を伴った旅行イベ
 ントを行う以上、これらの法律はキチンと順守していただく必要があります。
 知らなかったでは済まされません」(JATA 法務担当者)

 これらの違反が 確定すれば、ツアーは中止のうえ、100万円以下の罰金が科
 せられることになる。JATA では、事実関係を 正確に調査した上で警告もあ
 り得るとしているが、留学生学友会関係者は「大丈夫だろう」と話している。
 (引用終わり)

日本旅行業協会の指摘はもっともなことだと思われます。ところが、その後の
事実から言えば、この学友会関係者の「大丈夫だろう」との言葉通りに、ツア
ーは実施されて、長野には予定数を大幅に上回る4000人が集まりました。法律
違反は明白だと思われますが、なぜツアーは実施できたのでしょうか? 留学
生学友会関係者は JATA の指摘にも動じることなく、「大丈夫だろう」と話し
ているのはどうしたわけでしょうか?
 
中国人留学生の長野集結は、中国大使館の動員によるものと考えて間違いない
でしょう。従って、「日本旅行業協会」の異議申し立ては、中国政府の要求で、
日本政府により握りつぶされたのかもしれません。しかし、ひとつの可能性と
して、ポッカの毒コーヒー事件との関係も否定できません。「日本旅行業協会」
の異議申し立ては4月24日に報じられ、ポッカの毒コーヒー事件は4月25日に
発生しているからです。多くの中国人応援団の目前で挑発行為を繰り返せば暴
動に発展する可能性が高まることが犯行の狙いと考えられます。ポッカの事件
は有機リン系農薬ではありませんでした。急遽対応しなければならなくなった
ので、毒物の用意が間に合わなかったとも考えられます。それに毒コーヒーは
コンビニなどの店頭ではなく、自販機に置かれていました。これも急な対応だ
ったことをにおわせます。

中国人留学生の大動員の実現が、中国大使館の要請であるか、ポッカ缶コーヒ
ー事件での脅迫の結果だったかに関わらず、中国大使館の目的は達成されまし
た。

 「(聖火リレー)の沿道には五星紅旗が林立した。長野に集結した中国人留
 学生らは当初予想の倍近くの約4000人にもふくれあがり、『北京がんばれ』
 の叫びは、中国政府の 人権抑圧を 訴える亡命チベット人や『国境なき記者
 団』など活動家を数で圧倒した。」(4.27 産経新聞)

ただし、いくらマニュアルを作って、ルールを徹底させたところで、現場で挑
発行為が繰り返されれば、何が起こるかわかりません。現場で暴動とならなく
ても、その後の日中関係に悪影響が出るだろうと指摘する専門家がいます。

CIA出身で、天安門事件のとき北京の米国大使を務めていたジェームズ・リ
リー氏は、産経新聞とのインタビューで、26日に長野市内で行われるリレーが
強い抗議や妨害に遭遇すれば、(中国で)反日デモなど日本への「報復」があ
り得ると警告した。こうした行動のコントロールを誤った場合、批判の矛先が
中国政府に向かう危険も あると同氏は指摘しました。(4.23 産経新聞)日中
分断は毒餃子事件にも共通する狙いと考えられます。

そして、聖火リレーでは中国人留学生を挑発するように、妨害行為が頻発しま
した。これらが各自の思いつきなのか、シナリオに沿った挑発行為なのかは不
明です。

 (以下、4.27 朝日新聞から引用)
 タレント萩本欽一さんに対してチラシなどが投げ込まれ、神奈川県の男(30)
 が道路に飛び出した。卓球選手福原愛さんの時は、チベットの旗を持った台
 湾人の男(42)が列に飛び込んできた。ほかにも東京都の男(25)が飛び出
 して卵のパックを投げ込んだ。愛知県の男(63)がトマトを投げ込み、東京
 都の男(38)が走者の列に飛び込もうとした。 

 県警はトマトを投げた男を暴行容疑で、4人を威力業務妨害容疑で、それぞ
 れ現行犯逮捕。沿道から火のついていない発煙筒と抗議ビラを投げ込んだ神
 奈川県の会社員の男(33)を暴行と道交法違反の容疑で逮捕した。いずれも
 容疑を認めており、神奈川県の30歳の男は「チベット問題の解決を訴えたか
 った」、台湾人の男は「中国人がたくさんいたので興奮した」などと話して
 いる。また、県警は観客同士の暴行、傷害事件2件を調べている。(引用終)

聖火リレー終了までに、沿道では断続的に小競り合いが起き、中国人男性計4
人が病院に運ばれましたが、いずれも軽傷でした。こうしてみると、毒飲料事
件との関連は不明ながら、善光寺の辞退、聖火リレーコースの変更なし、中国
人留学生の大動員、そしてリレー中の挑発行為はいずれも一連の出来事のよう
にもみえます。それでも大きな騒乱にならずにすんで、福田首相はホッと胸を
なでおろしたことでしょう。5月1日の午後、福田首相が、中国人留学生の応
援ツアーを仕切った全日本中国留学人員友好連合会会長・李光哲らを官邸に招
いて、学業に励み、日中友好に貢献するよう留学生らを励ましたことを新華社
のウェブサイト「新華網」が伝えています。(5.2 人民網日本語版)聖火リレ
ーでの慰労が目的だと思われます。日本政府は、中国の応援ツアーが旅行業法
違反であるとの日本旅行業協会の申し立てを握りつぶした挙句、その「違法ツ
アー」の主催者を官邸に招いたことになります。

もし、中国人留学生の大動員が日本政府の懸念を無視する形で中国側からの強
い要請により実行されたものだったならば、福田首相は代表数名を官邸に招い
て慰労するという破格の待遇をするでしょうか?  いくら福田首相が中国贔屓
だったとしてもです。それよりも、中国政府からの強要がなくても、日本旅行
業協会の申し立てを握りつぶさなければならない事情が日本政府の方にあった
と仮定すると、より福田首相の心情が理解できます。胡錦濤国家主席の来日を
目前に控えて、中国「学友会」の協力で無事に聖火リレーを乗り切ったという
認識が福田首相にあったからこそ、彼らを慰労したかったのだと考えられます。
日本のマスコミは、中国「学友会」を官邸に招待したこと自体をまったく伝え
ていません。そして、ポッカ缶コーヒー事件が聖火リレーの前日に発生してい
たことも、胡錦濤が主要行事を済ませて東京を離れた後に、小さな記事で報道
されただけでした。

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