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[GEN 556] 沖縄の化学兵器【第十回】
発行日: 2005/12/24■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
世界の環境ホットニュース[GEN] 556号 05年12月24日
発行:別処珠樹【転載歓迎】意見・投稿 → ende23@msn.com
沖縄の化学兵器【第十回】
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沖縄の化学兵器 原田和明
第10回 耐用年数
琉球政府に招待され第一次移送に立ち会った東大教授田村三郎は、無事に作業が
終わったことに安堵しながらも微妙な違和感を覚えていました。69年の毒ガス事
件で漏洩したのはサリンだったにも拘わらず、なぜ運び出されたのはマスタード
ガスなのか? なぜ150トンだけなのか? 当初 彼は 耐用年数が迫ったものが 選
別されたのだと考えていました。しかし、沖縄のマスタードガス弾は1955年製で
1962年に配備されたもの。その耐用年数は25年と処分するにはまだ時間的余裕が
あり、何より運び出された砲弾は現場に残された砲弾と比較して保存状況に違い
が感じられなかったことなどから、沖縄からの搬出には「もっと他の意図があっ
たのではないか?」と田村はそのとき思ったといいます。(1971.3.10 参院沖縄
及び北方問題に関する特別委員会)
1970年6月に米上院で 生物化学兵器の実験・貯蔵・輸送を厳重に制限するグラハ
ム法が可決されました。そのため1年後には毒ガスを米国内に持ち込むことは禁
止されるし、貯蔵・輸送・処分に関わる費用を米政府が支出することも認められ
なくなります。一方でレアード・佐藤会談の結果、72年中に予定されている沖縄
返還までには毒ガス撤去を実行しなければならない。そのため、米国は1971年の
夏までに沖縄から毒ガスを全部搬出すると言い出したのです。しかし、輸送経路、
安全対策、住民の避難先などまだ何も決まっておらず、夏までに搬出を終えるこ
とは到底無理であり、国土の狭い沖縄で無害化することも危険すぎると思われま
した。それを米軍は強行したのです。渡辺武(共産党)は「アメリカが無理やり
こういうことを言い出してきている。何かウラがあるのじゃないか?」と米国の
対応に疑念を表明しました。(1971.3.10 参院沖縄及び北方問題に関する特別委
員会)
自民党の塚田十一郎(後に新潟県知事)の疑念はさらに具体的です。「今度アメ
リカが廃棄をしないでジョンストン島に持っていくというのは、あすこに置いて、
また何かの機会があればどこかで使うという考え方であるのか、その辺の見通し、
何かありましたら。」と田村に見解を求めました。田村は次のように答えるのが
やっとでした。「(化学兵器は)船に積むこと自体非常に大変であります。であ
るからこそ、沖繩にあれだけ備蓄するのに二、三年かかったということなので、
一たんかりにそれをジョンストン島に運べば、それをまた全部を持ち込むという
ことはなかなかできない。ほんとうに戦争に使うとしたら一万何千トンも要らな
いわけで、それをどっかへ運ぶということは否定はできないのでございますけれ
ども、これはちょっと私の専門外でございまして、お許しいただきたいと思いま
す。」
化学兵器の耐用年数が25年というのはどこから来た数値でしょうか。サリンが猛
毒であることがわかったのが1937年です。第二次世界大戦中にドイツで量産化が
計画されましたが、終戦までには量産工場は完成しませんでした。ただし数百キ
ログラムから数トン程度のサリンの製造には成功したとされています。そして沖
縄でのサリン漏洩事件が1969年夏。マスタードガスについては相模海軍工廠で製
造したのは1943年からでした。中国大陸で使用された化学兵器は陸軍造兵廠火工
廠忠海製造所(広島県大久野島)で作られたもので、相模海軍工廠の毒ガス(総
量760トン)は本土決戦に備えて国内各地に配備され、使用されないまま 終戦を
迎えました。沖縄具志川海岸で廃棄マスタードガス弾が原因と見られる小学生の
被災は1968年7月でした。
こうしてみると、第二次世界大戦中に作られた毒ガス兵器の寿命が25年だとした
ら60年代後半に処分しなければならないことになります。そして田村が見た化学
兵器が米軍のいうとおり1955年製ならば、その廃棄時期は1980年前後。さらに、
1970年に「ガスを近代的な容器に移した」ということになると、1995年あたりが
使用期限ということになります。
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