「日本から飛行機を使わずにケープタウンまで行ってみよう」それが当初の旅の目的だった・・・3年4ヶ月世界一周半。累積訪問国110ヶ国以上。アジア、中東、アフリカ、中南米、中央アジア、ロシア。「辺境」を好んで旅した著者による記録。是非ご登録下さい。(無料)【相互紹介歓迎】
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SHIZA旅(戦闘の果て1)
発行日: 2008/4/14SHIZA旅(戦闘の果て1)
2008.04.13 21:44作成:日本
2008.04.13 22:55貼付:日本
2008.04.14 02:00配信予定(日本時間):時差0時間
まぐまぐ:167部 melma!:461部
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【目次】
1.食堂の二階
2.インド人殺し
3.渓谷の道
4.茜色の世界へ
5.祈りの後
6.編集後記
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【1.食堂の二階】
「起きろ、出発だ」
時計を見ると、午前3時を回ったところだった。
体のあちこちが、ずきずきと痛む。
頭の芯が重たい。
無理もない。
食堂の二階にある大きな部屋で雑魚寝をしたのだ。
絨毯の敷かれただけの肌寒い部屋の中で。
余談だが、アフガニスタンでは、
食堂の二階が簡易宿泊施設になっていることが多い。
私がアフガンで宿泊した場所も、多くは食堂に併設された施設だった。
建物を出ると外は暗闇に包まれている。
夜の風がかすかに流れていく。
ここは、恐らく標高1000メートル以上はあるだろう。
昼間は灼熱の大地も、この時間は冷たく眠っているような気がする。
食堂の駐車場に止められたトヨタハイエースに乗り込む。
夜の静寂にエンジン音が響き渡ると、車は未舗装の路を走り始めた。
目的地は、マザリシャリフ。
アフガニスタン北部の中心的な役割を担っている街だ。
暖房の無い車内は身震いするほど寒い。
しかし日が昇れば、耐え難いほどの暑さに苦しめられることだろう。
路面が舗装されていないため、振動が車体を揺らす。
ガタガタと音を立てて車は北へ向かう。
振動に身を任せていると、じわじわと疲れが全身を浸し、
意識がすっと消えていった。
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【2.インド人殺し】
バーミヤンから一旦カブールに戻り、
そこからアフガンの北、マザリシャリフを目指した。
アフガンの北と南は、ヒンドゥークシ山脈で分断されている。
ヒンドゥークシ(ヒンドゥクシ、ヒンズクシ)とは、
「インド人殺し」とかいう意味で、
奴隷として連れられたインド人が、
この山を越える時に寒さや疲労で命を落としたとか、
西へ侵攻したインド軍がこの山に遮られ進軍を断念したとか、
いくつかの伝説を持つ険しい山並みだ。
その山を越えるには、主に2つの選択肢があった。
(2003年8月当時)
(1)ヒンドゥークシ山脈のサラン峠にあるトンネルまで車で行き、
トンネルを徒歩で越え、トンネルの先で他の車に乗り換える。
(2)サラン峠を大きく迂回して、車で越える。
サラントンネルを徒歩で越えてきた日本人に会ったが、
中は暗く、足元が悪く非常に難儀をしたという。
ポーターを雇わないと難しいとも聞いた。
サラン峠を迂回するルートは、時間はかかるが比較的楽らしい。
そう、私は今、サラン峠を迂回するルートを走る車に乗っている。
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【3.渓谷の道】
24時間程度でマザリシャリフに着くという事だったが、
食堂の二階で仮眠を取ったため、まだマザリシャリフは遠い。
食堂のある街までは、険しい山道を越えてきた。
荒々しい岩肌が両側に迫る狭い路を何度も曲がりながら車は進む。
路面は未舗装で、前を走る車が巻き上げる砂埃が
こっちのフロントガラスを白く曇らせる。
細かい砂埃は、窓を閉め切っていても車内へ侵入し、
埃が全身に、へばり付いてくる。
顔に手を触れると、ざらざらとした感覚が指先に残った。
川があった。
しかし、そこの橋は落ちている。
車は浅瀬を見つけ、川の中に突っ込んで越える。
川の中では深みにはまり、
抜け出せなくなったトラックが立ち往生している。
お祈りの時間になると車を止め、
人々はメッカ(マッカ)の方角へ向かって祈る。
そうやって、一日中走った後、暗くなってから食堂で一泊した。
午前3時に、再び出発。そして車は平坦な道を走っている。
そう、「インド人殺し」の山脈はもう越えたのだ。
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【4.茜色の世界へ】
ガクッと車が揺れ、目を覚ました。
時間は、午前5時を過ぎている。
朝のお祈りの時間だ。
ドアを開けると、朝の風が車内に流れ込んでくる。
人々はお祈り用の絨毯(ジャイナマーズ)をいそいそと準備し、
それが草原に敷かれた。
ゆっくりゆっくりと、お祈りが開始される。
お祈りが終わると、私の隣で男が質問してきた。
「お前はムスリムか?」
「いや仏教徒だ」
「なぜ祈らない?」
「仏教徒は寺で祈るのだ」
これだけ毎日真剣に祈る人たちの国が戦闘で疲弊している。
それでも(あるいは「だからこそ」)彼らは祈るのを止めないのだ。
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【5.祈りの後】
トヨタハイエースは、再びマザリシャリフを目指し疾走する。
そろそろ日の出が近い。
道の両側の平原には、青い草が生えている。
その向こうに山が見える。
太陽が昇り始めると、周囲は茜色に染まり、
その刹那、山並みは杏のような色に輝いた。
曙光が、地上のあらゆるものを茜に染め、
茜色に少しずつ浅緋色が混じり、
それさえもが消えて透明になっていくのだろう。
天頂が鮮やかなインディゴ色に変化したとき、
道端に電線の工事をしているのが見えた。
通信用の線なのか、それとも電力供給用の線なのか?
ここからでは確認ができない。
しかし、やわらかな茜色の世界の中で、新しい息吹が感じられる。
アフガニスタンでは、これから復興が進んでいくのだろうか?
それとも、また、世界の人たちはアフガニスタンのことを忘れてしまい、
この国は再び混乱に襲われるのだろうか?
マザリシャリフまで車代:500アフガニ(約10ドル)
クリックすると写真が表示されるはずです。
(飛べない場合はコピペして下さい)
アフガニスタンのガソリンスタンド
http://www.geocities.jp/shizatabi/top/afghan42.jpg
渓谷の険しい道
http://www.geocities.jp/shizatabi/top/afghan43.jpg
電線の工事中
http://www.geocities.jp/shizatabi/top/afghan44.jpg
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【6.編集後記】
国際社会に見捨てられたアフガニスタンは、チベットとも重なる。
アフガニスタンは、ムスリム諸国からの援助があったし、
ムジャヒディンと呼ばれる戦士が、
ソ連軍と(アフガン政府軍に対しても)戦い、
最終的にはソ連軍の撤退という事態に至った。
チベットは、援助する国もほとんどないし、
チベット人は、武器を持って戦うのに慣れていない。
かつてはCIAがチベットを援助した。
(ニクソンの訪中で、CIAとも縁が切れてしまったようだが)
インドは現在もチベットを支援しているように見えるが
もちろん本気で支援はしていない。
このままの状況ではチベット民族は消えてしまう。
しかし、大変残念なことに、国際社会は、チベットよりも
中国の巨大市場を重視しているし、これからもきっとそうだろう。
これは大変なことを示唆している。
チベットだけではなく、他の国も、
国際社会に見捨てられる可能性があるということを。
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