「日本から飛行機を使わずにケープタウンまで行ってみよう」それが当初の旅の目的だった・・・3年4ヶ月世界一周半。累積訪問国110ヶ国以上。アジア、中東、アフリカ、中南米、中央アジア、ロシア。「辺境」を好んで旅した著者による記録。是非ご登録下さい。(無料)【相互紹介歓迎】
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SHIZA旅(バーミヤンの戦車5)
発行日: 2008/3/24
SHIZA旅(バーミヤンの戦車5)
2008.03.23 17:00作成:日本
2008.03.23 23:49貼付:日本
2008.03.24 02:00配信予定(日本時間):時差0時間
まぐまぐ:165部 melma!:458部
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【このメールマガジンについて】
これは、2003年4月から2006年8月まで旅をした経験などを元に
旅の思い出などを中心に語るメールマガジンです。
現在は、日本で再就職をしていますので、
お間違いないようにお願い致します。
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(まぐまぐ)
http://archive.mag2.com/0000206271/index.html
内容は同じです。
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【目次】
1.大仏の跡
2.瓦礫
3.偶像
4.石窟
5.編集後記
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信仰に背いた啓典の民と多神教徒は、ジャハンナムの火に落ちて、
そこに行く末永く住みつく定め。これこそ最悪の被造物。
【コーラン「九八章 神兆」岩波文庫(下)「井筒俊彦訳」】
SHIZA注:
啓典の民 = ユダヤ教徒
(一時期、ユダヤ人とムハンマドは協力関係にあったが、その後反目する)
多神教徒 = クライシュ族など
(クライシュ族などの信仰するカアバ神殿の偶像を破壊した故事は有名)
ジャハンナムの火 = 地獄の業火みたいなもの
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【1.大仏の跡】
埃っぽい風が、殺風景な通りを吹き抜けていく。
朝の風はまだ冷たい。
バーミヤンの街(というか邑)中心部にある、
未舗装の通りを抜け、畑の中の道を歩いた。
白い砂の道が崖の方まで続き、道の両側には青い木々が並んでいる。
今は、その青々とした葉が眩しく感じられる。
道を歩いていると、どこからともなく子供たちがたくさんやってきた。
私について歩いてくる。
子供たちもやはりハザラ人のようだ。
前方の崖には、ぽっかりと大きな穴が空いているのが見えている。
有名な「バーミヤンの大仏」があった跡だ。
その黒くて長細い空洞の両側に、小さく見える無数の穴がある。
アフガン内戦のときは、ハザラ人難民が避難したという石窟だ。
この石窟には、貴重な壁画が描かれていたとも言う。
タリバンとアルカイダによって破壊されてしまった大仏は、
もう跡形もない。
破壊されたのは、2001年3月。
ニューヨークで大事件があった9月11日の半年ほど前のことだ。
大仏は二体あり、小さい方は一回の爆発で破壊され、
大きい方は下半身だけ吹き飛ばされ、その後、上半身も吹き飛ばされた。
(「大仏破壊」バーミアン遺跡はなぜ破壊されたのか(高木徹)P.298)
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【2.瓦礫】
風はまだ冷たいのに、日の光が強く、歩いていると体力を消耗する。
道路から、ゆるい坂道を登っていくと、ざらざらと足元が崩れる。
もう、大仏の跡は目の前だ。
細長い空間がすぐ目の前に迫っている。
その穴には、無数の瓦礫が散らばり、もう大仏の姿は見えない。
そうだ、失われたものは永久に戻らない。
それを嘆いていても仕方がないことかもしれないけれど、
それでも、やはり残念でならない。
大仏の穴のすぐ下まで行き、ぽっかりと空いた長細い穴を見上げる。
この穴の中に、数年前には大仏がいたのだった。
見上げるほどの巨大な空間。
間に合わなかった。
この目で、実物のバーミヤンの大仏を見ることはできなかった。
そこには、もはや大仏は無く、ただゴツゴツとした岩肌があるのみ。
今、私の足元に転がるのは、無数の瓦礫。
この瓦礫の山は、もしかしたら、
大仏の体の一部を形作っていたものなのかもしれない。
おそらくそうだろう。
しかし、もうそれは意味をなさない残骸になってしまった。
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【3.偶像】
イスラーム(イスラム教)が偶像を禁じていることは有名だが、
実は、例外も多く、現代において必ずしも厳格に守られている訳ではない。
シーア派のイランなどは、ホメイニ師の肖像画が街中に溢れ居ているし、
この後、訪問したシリアでも、アサド大統領(バース党?)の写真を見た。
あまり真面目にイスラームを信仰していない(と思われる)
アゼルバイジャンや、トルコも人物写真は氾濫している。
(余談だが、アゼルバイジャンはシーア派)
アゼルバイジャンは、ソ連の支配にあったとき、
宗教の影響は徹底的に排除されてしまったし、
中央アジアも状況は似ている。
偶像に関して、特に厳格なのは、ワッハーブ派だ。
ワッハーブ派はサウジアラビアなどで主に信仰されている。
ワッハーブ派と聞くと、多くの方は何かを思い出すことだろう。
そう、アフガニスタンとの関連で言うと、
ウサマ・ビン・ラディン(ウサーマ・ビン=ラーディン)が有名だ。
大仏破壊を強行したため、
タリバンは原理主義者というレッテルを貼られがちだが、
タリバン内部にも破壊に反対していた人たちは多いという。
有名どころでは、ホタクやムタワキルなどだろうか。
(ホタクは情報文化次官、ムタワキルは外相)
この辺の詳しい内容は、前掲書「大仏破壊」に詳しい。
(この本は、とても読みやすく知的刺激に満ちているためお勧めする)
逆に、破壊を推進したのは、タリバン関係だと「勧善懲悪省」だろうか。
(Ministry of Promotion of Virtue and Prevention of Vice)
(例:カブール博物館の仏像を破壊した事件)
「勧善懲悪省」は、女性差別的な行動が知られている。
そして、その行動が、
タリバンを窮地に追いやってしまった原因の一つになる。
(女性に教育を受けさせないようにした、
ブルカを被らない女性に暴力を振るったなど)
マデリン・オルブライトや、ヒラリー・クリントンを激怒させたのは、
主にタリバンの女性に対する扱いだろうし、
タリバン不信の根底には「勧善懲悪省」の存在がある。
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【4.石窟】
「いいから付いて来い」
大仏近くに佇んでいると、どこからともなく現れた人がいる。
ハザラ人だ。
彼は、私を手招きすると、階段を上っていった。
狭い階段は、大仏が彫られていた崖の中を続いている。
石窟の中を階段が続いているのだ。
石窟の中は、ひんやりした空気が満ちている。
息を切らしながら階段を上っていくと、
6畳ほどの大きさの部屋にたどり着いた。
中には何も置かれていない。
壁には、アラビア風の文字で、びっしりと落書きが書かれている。
さらに進むと、次の部屋は壁が煤だらけになっていた。
ここに暮らしていた避難民が炊事をしていたのだろうか。
天井を見上げると、はっと息を呑んだ。
煤けた天井には、足跡が無数に付いていたからだ。
これは、異教徒を侮辱するために実施される行為の一つで、
異教徒の神聖な場所を、足跡で踏みつけにするのだ。
ここには、きっと仏像が飾られていたに違いない。
祀られていた仏像は、ムスリムたちによって破壊されてしまったのか。
(ムスリム=イスラーム教徒)
それとも、外国人の手で国外に持ち去られたのか。
(この後、私はバーミヤンの街で、仏像を売っているところを見た)
石窟には、縦1メートル、横2メートルほどの「窓」があり、
ここから、バーミヤンの街を見下ろすことが出来た。
青々とした木々、そして畑。
あの畑では、ナーンの材料となる麦が栽培されているのだろう。
土色の家の壁が見え、遥か彼方には青い山並みが続いている。
まるで、パキスタン北部、フンザと呼ばれる地域で見た風景だ。
こうしてバーミヤンの街を見ていると、今はかすかに風の音がするだけ。
そしてまた、乾いた風が、石窟の中にも入り込んでくる。
(1アフガニ=約2.5円:2003年7月)
クリックすると写真が表示されるはずです。
(飛べない場合はコピペして下さい)
泊まった宿
http://www.geocities.jp/shizatabi/top/afghan25.jpg
バーミヤンの通り
http://www.geocities.jp/shizatabi/top/afghan26.jpg
ハザラ人の子供たち
http://www.geocities.jp/shizatabi/top/afghan27.jpg
大仏のあった跡
http://www.geocities.jp/shizatabi/top/afghan28.jpg
石窟の天井にある足跡
http://www.geocities.jp/shizatabi/top/afghan30.jpg
石窟から見たバーミヤンの街
http://www.geocities.jp/shizatabi/top/afghan31.jpg
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【5.編集後記】
私がチベットで出会った人々は、まだ無事だろうか?
トゥクパ(チベットうどん)をよく食べに行った食堂の人たちは?
親切にしてくれた宿のチベット人従業員は?
お茶を飲みながら話をした僧侶たちは?
殺戮から逃れられたのだろうか?
そういう考えが頭の中に常に渦巻く一週間になった。
北京五輪を控えたこの時期に、
あれほどまでに強行な弾圧をする必要性はなかったはずだが、
報道されない要因によって、
軍隊までも出動させる事態になったのだろう。
これに関しては興味深いテキストがある。
「国家と犯罪」船戸与一(小学館文庫)
引用:
外電によって伝えられた中華人民共和国チベット自治区の
首都ラサで生じた断続的な蜂起は、
日本では新聞の隅に小さく押し込められたまま、
もはや忘れ去られようとしている。
だが、これはむしろ日本独得の現象と言わなければならない。
(p.368)
これは、1987年の武装蜂起についての一文だ。
それが、20年あまり経った今も、全く同じ状況ではないか?
この本で、私にとって驚きだったのは、ダライ・ラマとの会見。
詳細は、本書を読んでいただくということにして、
この本を読んで、私は失望を感じ、
しかし、もしかすると、
ダライ・ラマには、もうこの手段しか残されていないのでは?
と考えたものだった。
それは、時間との勝負だろうけれど、中国の圧倒的軍事力と、
国際社会での発言力、そして殺戮され続けたチベット人を
(結果的に)見捨ててきてしまった国際社会を考えると、
ダライ・ラマにはこの手段しか残されていないのでは?
と考えたのだった。
「平和的対話」を主張し、状況が変化するまでひたすら待つ。
今、殺戮されるか、運を天に任せてしばらく生き延びるか。
ダライ・ラマは、後者を取ったのだ。
しかし、中国は想像以上に・・・
他には台湾の選挙の話も書きたいが、長くなるので終了します。
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