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経営コンサルのマジな時事問題 【年末対談:経済問題からトヨタ生産方式まで】
発行日: 2002/12/27━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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』が発行され、好評発売中です。(詳しくは文末を)
今回の『市場創造の経営学 2002年版』の副題は、「〜トヨタ生産方式に学
ぶ〜」としていますが、この号は臨時増刊号として、『市場創造の経営学
2002年版』のお知らせと共に、この不況の中、より安定して行かねばならな
い第3次産業において『トヨタ生産方式』を取り入れることの重要性を解説
しています。日本の産業を救うキーポイントかも知れません。
既にお買いあげいただいた方には、御礼申し上げます。
お陰様で、順調な売れ行きです。
※今回は、<年末対談・特大号>です。
一年を振り返って、時事問題から経済、商売の話まで大分長くなりました
が、冬休み中にじっくり読んでみてください。
いつもの記事では聞けない話もあります。
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■■
◆◆◆ 【年末対談:経済問題からトヨタ生産方式まで】
■■ 〜2002のまとめ〜
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<編集者>:今年もご苦労様でした。 『集客の達人も』2周年を越え、専
門家を中心に問い合わせが多くなっているようです。 今日は本年のまとめ
として、原稿ではなく生のお話をうかがいたいと思います。 三河主席よろ
しくお願いします。
<三河> :こちらこそ。 今年も一年間ご苦労様でした。
<編集者>:ご苦労様でした。 今年も色々あったようですが(笑い…)今
年の出来事で何に注目したらよいですか?
●コンサルタントの仕事
<三河> : その前に、今年もほんとに色々あったのですが、コンサルタ
ントの使い方について疑問に思うことが多いですね。 やはり、「教えろ」
とお金を出して呼んでおきながら”教わらない”。 極端なところでは「色
仕掛けで投資させよう」とした人までいます。 この30年間でコンサルタ
ントを名乗る人が増えて、職業としてのイメージが落ちているのに気がつき
ます。 「ノウハウの指導」との意味合いより、「金儲けのコネ」を紹介す
ることと勘違いしているようですね。 あるゴルフ場からの問い合わせでは
「売上を上げる方策は?」との問いだったのですが、よく聞いてみると「コ
ンペを紹介出来るか?」との考えなのですネ。
<編集者>: 売上を上げる運営技術を求めているのではなく、お客さんを
紹介するコネがあるかと?・・・・・・。
<三河> : そうです。そこまで極端でなくても「魔法の杖」を求めてい
ることが多い。『トヨタ生産方式』を見れば解るとおり、「考え方の進歩」
があり、それを実現する技術開発が続いていく、そして全体の経営レベルが
上がることにより、理想的な方策がとれるようになるのです。 社内モラル
があがらなければ高度なことは出来ない。 例えば『サービス満点』と広告
に謳っても、掃除も満足に出来ていない店内ではお客様にあきれられてしま
うばかりです。 トヨタで『かんばん方式』が有名ですが、『かんばん』が
正確に書かれても現場で無視していては何の意味もない。 でもこれは笑え
ない事実です。 人間は教わることがきらいですから、単なる「突っ張り」
で何の意味もなく、指示通り動かない社員はとても多い。 『経営者が先頭
に立つ』ことが不可欠なのはこのためです。 ある程度最初は強権に寄らな
ければならない。しかし肝心の経営者が『教わらない』。 新しい概念を取
り入れるとの認識が出来ないことがあるのです。 単に広告代理店の広告技
術と考えたり、調理技術と勘違いしたり、『安く仕入れる問屋のコネの問い
合わせ』が、この第3次産業のコンサルタントをはじめて一番多いですね(
笑い・・・・・・)。
<編集者>: 「経営ノウハウ」とかソフトの概念がないのでしょうか?
<三河> : 「ソフトの概念」とは良いことを言いますね。 その通りで
、『経営技術、管理技術』との概念がないのですね。コンピュータで言えば
「オペレーションシステム」がない、ウィンドウズがないと同じことです。
(笑い・・・・) でも、本当に笑えない事実なんですヨ!
先日、旧通産省の役人と話したら「これから国民には、ソフトというもの
は誤りが多い物だと認識してもらう努力をしていきます。」などと言ってい
たのですが、「そりゃ〜逆だろう!」ですよね。 ましてや基本ソフトの誤
りは、大変な損害を伴うことです。 国家的損害が起きる。 国全体の基本
システム、日本では資本主義と議会制民主主義が正常に機能しないことは、
北朝鮮の例を見れば解るように多大の人命の犠牲が出る。 その国家全体の
システムの概念がない。
例えば店舗では、万引きを防ぐことはお客様に充分なサービスが出来て信
頼を得るためなのですが、『万引きを防ぐことが目的』になってしまい、お
客様と見ると『万引き犯』と疑ってしまう。 例えば、税務署のような役所
なら疑われても仕方なく必要な手続きはとるでしょうが、税理士がお客様を
疑ってばかりいては充分な事務処理も出来なくなってしまう。 店舗であっ
たら間違いなく『客離れ』が起きてしまう。 通販でも巧妙な詐欺行為を警
戒しすぎると、面倒で実用にならなくなる。
すべての間違いの元は、システムとしての全体像の概念がない。 これが
最大の問題点でしょうね! ですから『真実』『事実』を認識出来ないこと
になる。 そして本当の問題点『悪用出来るカードシステム』等が見えてこ
なくなる。 日常のことで言えば、これほどカードなしでは生活出来ない社
会なのに悪用される方が悪いとなってしまう。 車なしでは生活出来ないの
に”交通事故死”するやつは運が悪いとなってしまう。 本当なら、これは
システムの不具合と見なし、『安全対策』『安全教育』を徹底しなければな
らない。 年間1万人の死者は『完全なシステムはない』だけでは済まされ
ない。 市場経済の最大の弱点です。
●絶望的デフレ
<編集者>: 次に、今年の経済問題についてはいかがですか?
<三河> : 商売と時事問題と統一して『デフレ』ですかネ! デフレの
構造は経済の構造にあるのですが、これがまるでマルクス経済学なんですよ
。 来年度予算では先行減税をするようですが、企業減税を先行させて個人
に増税になるわけですが、経済の基本を見れば当たり前なんですが、「企業
活動が出来るのは全て最終的には個人消費」なんですね。 確かに企業活動
が活発になれば最終的には個人消費も良くなると考えられるのですが、国内
消費は打撃になることばかりですから、輸出産業が元気になってから国内の
個人にも”分け前”がまわってくるのを待つことになります。 先頃までア
メリカの好景気を繁栄して少し景気が動いているように感じられましたが、
現在貿易黒字が拡大していることを見ても、国内消費が動かないと海外市場
に出ていくしかないはずです。 つまり、国内最終消費を縮小してしまうの
ですから輸出するしかなくなっていきます。 何故国内の個人消費を冷え込
ませる施策しか打てないのか不思議なくらいですが、これが現在の日本の体
制ですね。
つまり、一部の利権を握った人々、例えば道路公団を牛耳る官僚達が、た
くさんの関連会社をもうけて天下りをする、そこで高額の給料や退職金をも
らうことになると、ごく少数の国民に富が偏ってしまう。 それは働きに見
合った物ではなく赤字国債など公的資金からの借金を”一部の人間が山分け
している状態”ですので、マルクスの言う『搾取』そのものになっているわ
けです。つまりこれは、「不労の利益」を一部の人が『搾取』してしまい、
国内で生産した物を消費することが出来なくなってしまって海外に売るしか
なくなる。 第1次、第2次世界大戦のメカニズムとなった『帝国主義』で
すよ。 日本も参画して結局戦争に負けたわけですが、現在では『植民地主
義』をとらなくなったために解りにくくなりましたが、『グローバル化』な
どと言って聞こえは良いですが、「経済的な侵略」は当たり前になっている
。
さらに、現在では『空洞化』が日本の番ですので、トヨタやホンダソニー
など多国籍企業が好成績をあげても、国内に雇用を生み出さず海外生産が主
流となってしまう。 これは深刻です。 金持ちの税率を下げ資金の動きを
よくしようとの国務大臣の発言も聞かれますが、市中に出回る率は我々貧乏
人の使わなければならない金の率の方が大きいはずですから、これはエンゲ
ル係数でわかることですが、元々金持ちに金が渡っても市中に金は回らない
のです! みなさん解るでしょ! 使わなければならない金の比率が大きい
のですから、我々貧乏人に金を回すべきですがネ!
<編集者>: なるほど、やけに力が入ってますネ!(笑い・・・・・)
<三河> : 当然です! 自民党税調が問題ですネ! 給料を据え置いた
り減らす企業が34%ほどになってきているようですが、もうこれからは生
活レベルを下げていくしかないでしょう。 観光産業の振興策も採るようで
す。 しかし、かつてアメリカが日本に追い上げられていた時、”貿易摩擦
”でアメリカが要求してきたことはトウモロコシやオレンジを日本に買えと
いうことでした。 その時あのアメリカ人でさえ「アメリカが後進国のよう
だ」と嘆いていたのです。 これからは中国やインドが日本の立場になり、
産業のなくなった日本は観光客を呼ぶことになるのでしょうかネ。
こんな時に、官僚や大企業、政治家など一部の支配階級がますます太るよ
うな政策をして”暴動”になる危険さえ出てきましたネ! 社会主義も一党
独裁官僚主義になってしまい北朝鮮のようになってしまいましたし、中国は
社会主義でありながら市場経済になってしまい、これから中国が経済的に日
本などに追いつくぐらいになった時は、特権階級の支配は日本よりひどいも
のになるでしょうネ。それも2〜30年後ですよ。 もうすぐ目の前です。
<編集者>: これは絶望的な話になってきましたね。話題を変えましょう
か。
<三河> : かつてオランダは、チューリップのバブル投資がはじけて以
来二度と浮かび上がれませんでしたが、日本人は何とかすると思いたいです
ネ。 新年に持ち越さないように、本年はとことん現実を見ておきましょう
。 若い人たちは自分の身の回りのことばかり考えていないで、少しは『天
下国家』を論じてください。 しかし、金儲けをするにはどうしたらよいか
ばかりではだめですよ!! 超一流大学の大学院を出た若い経営者がいまし
たが、その経済理論は、自分の立場を養護することから発していて”極めて
独善”にすぎない、視野の狭い、大局から見れば誤りは明白なものでした。
残念ですね。 若い次の世代の官僚を含めたエリート達の中で、”考えの
足りている人”を今年は見かけませんでした。 生活レベルを下げていかな
ければならない時代に、『お金』以外の価値観、概念を持たないのですから
、これは大変だ。 これほど特権階級が『搾取』していても、暴動どころか
”デモ”すら起こらないのですから…、これほどリストラをする企業があり
ながら、大規模な労働争議がないのですから…、不思議なくらいです。 か
つてイギリスでは”大停電”が起きるぐらい争議になった。『鉄の女』サッ
チャーが登場した頃のことです。 小泉改革どころではないのは、現在の日
本は当時のイギリスに比べて労働者が権利を握っている度合いが小さすぎて
、より支配階級の人が特権を握っているからでしょう。 むしろ北朝鮮に近
い形なのでしょうね!!
<編集者>: 三河主席、力が入りすぎです! でもこんな状況なのに、み
んなおとなしいのは確かですね。
●ついに郵政省も『トヨタ生産方式』導入。
<編集者>: では、経済問題はこのくらいにして、話題を変えましょう!
”商売”の話題になりますが、最近NEC、ダイエー、病院、地方自治体
、等に続いて、ついに郵政省も『トヨタ生産方式』に師事しているようです
。 当社の『提案型販売』もトヨタの生産方式が元になっていると聞いたの
ですが。
<三河> :そうですね。 『トヨタ生産方式』なんて流通業やサービス業
の方達にお話しすると、「なんだ関係ないや!!」と思われてしまうので、
そんな説明はしなかったのですが、今年は業種の枠を越えて『トヨタ生産方
式』を導入する企業、団体が増えていますので、当社の技術の成り立ちを理
解してもらうには、かえって『トヨタ生産方式』の考え方から入った方が”
ウケ”が良いんですヨ。(笑い・・・・) 今年は時事問題では北朝鮮問題
もありますが、経済問題を含めて考えて『トヨタ生産方式』に注目するのが
このメールマガジンとしては妥当でしょう。
<編集者>: それは店舗においてもですか?
<三河> : もちろんですが、ここで誤解のないようにお話ししていかな
ければならないのは、私は15年生産管理の仕事をしていましたので否応な
く『トヨタ生産方式』を学ばされたわけですが、これは特別のものではなく
企業活動として当たり前のことで、その考え方で行ってこなかった企業の方
が異常に見えるのです。 現在ダイエーが、復活の切り札としてこれを取り
組んでいると聞きますが、”今さら”というのが正直な感想です。 35年
にも前になりますが、銀行の窓口に行って順番を待っていた時、『待ち行列
』の技術から言って銀行側が”大混乱”の状態にしているんだなと思ったの
ですが、現在でも相変わらず”お客様を待たせる”ことを平気でしています
ね! あの当時から行員の人数は半減出来るなと思っていました。 これは
基本的考え方が『自分たちの都合』を前提にしているからなのです。 前に
も話しましたが、店舗のオーナーで万引きを気にして”お客様は全員万引き
犯”として扱っている状態にしている方がよくいます。 しかし、店側の都
合が全面に出過ぎてしまうと”客ばなれ”が起きてしまいます。 このよう
なトンチンカンプンをしてしまうことにならないように、自分たちが「何を
しているのか」正確に掴むことが『トヨタ生産方式』の基礎です。 正確に
言えば、「誰が考えても正しく考えれば『トヨタ方式』になる」のです。
<編集者>: それでは特別な技術ではないと。
<三河> : いえ、考え方は当たり前でありますが、それを実現している
ところが”尋常じゃない”のです。 つまり、理論的に当たり前で正しいこ
となのですが、それを理論に近づけようと実現し続けている。 正しいこと
を実現出来ている。 それが普通では出来ない。 その『実現するための努
力の継続は大量の技術開発があり、組織論や人生観にもなって』おり、今や
トヨタは日本最大、いや世界最大のコンサルタント会社と言えるかも知れま
せん。
<編集者>: トヨタが当社のライバルですか・・・・。(笑い)
<三河> : トヨタは昔から生産方式の指導をしてきました。 あのライ
バルのGMに教えていたのですから。
<編集者>: え! アメリカの自動車メーカーのGMにですか?
<三河> : そうですよ! 貿易摩擦が激しかった頃、”日本たたき”を
和らげるため、不振だったアメリカの援助をしているのです。 それで、ア
メリカ人はその体格の大きさから15%日本人より動作が鈍いことが解った
そうですが。
<編集者>: そうなんですか。 ”ずうたいが大きいと動きも鈍い”と。
<三河> : 全員がそうではないでしょうが、平均して差が出ることは予
想出来ますね! 話は飛びますが、最近『セル生産方式』が普及しています
が、あれもトヨタが発案したと一部で言われているのですが、あれは最初に
取り組んだのは「ボルボ」のはずですよ。
<編集者>: え! 話題になっているのでお聞きしようと思っていたので
すが『トヨタ方式』ではないのですか?
<三河> : ベルトコンベアーの生産ラインをなくして、台車に乗せて移
動させ、一台を最後まで同じ人が組み立てるようにしたのです。 工程間の
工数のばらつきをなくすことになり、また作業に責任を持つことになるので
生産性と品質の向上がなされたと聞いています。 たしか生産性が30%も
違っていたと記憶しています。 『セル生産方式』とねらいは同じです。
20年ほど前のことです。 これは人間性の研究なのですよ。 結局人間の
やることですから、人が働く気にならなければ成功しない。
<編集者>: 『トヨタ方式』だけでなく、当たり前のこととして世界中の
人が研究していたのですね。
<三河> : 勘違いしてほしくないのは、『トヨタ方式』と言っているの
もその元になる技術は以前からあったと言うことです。 OR技術(オペレ
ーションズリサーチ)はその応用から全ての元になっていると言って良いで
しょうし、品質管理技術は『デミング賞』などが有名で、アメリカのデミン
グ博士の提唱です。 『TQC』はトヨタに限ったことではないでしょう。
『QCサークル』などやらされた?(笑い・・)経験のある人は多いはず
です。 トヨタの成功は、それが会社の体質になっていることです。 ホン
ダも、本田宗一郎創業者のチャレンジ精神が企業体質となって成功していま
すね。 SONYもしかり、そこまでしたことが”尋常ではない”のです。
●『トヨタ生産方式』の効果
<編集者>: その『トヨタ生産方式』の効果について解説してください。
<三河> : とても、この場では話切れませんのでセミナーを申し込んで
ください。(笑い・・・・) それは冗談ですが、一言では難しい。 デフ
レの状態で売上が上がらない、だからコストダウンに『トヨタ生産方式』と
単純に注目している人が増えているのですが、トヨタが生産方式を確立して
きたのは、高度成長期のインフレの時代です。 コストダウンの意味がよく
わかっていない方が多いのではないでしょうか? ダイエーの内情は解りま
せんが、流通小売業の人は、何故か『効率』の意味を知らない。 関心がな
いと言ってもいいかも知れません。 商品個別の『粗利』が目に付きますの
で、どうしても利幅の大きな商売をしようとする。 安く仕入れることが腕
前と単純に考えている。
ここで、私の製造業での経験を一つお話ししておくことにします。
25年ほど前、大変大きな商品で平均すると1トン以上の重量があり、月
平均300個作るだけなのに1000坪ほどの工場面積を必要としていたの
です。 正確に言えば、材料置き場などを加えるともっとかかっているので
すが、改善作業に関わった範囲ではそういうことです。
まず何が『ムダ』かと言えば、工程間の在庫なんです。 工程ごとの工数
差も大きく、在庫を置かなければ遊びが大きいと考えられていました。 そ
こで『工程結合』と名付けて出来るだけ工程を分けずに一人が作業出来ない
かとなったのです。 『屋台』=『セル生産方式』と同じねらいです。 と
もかく1トン以上あるのですから、その辺にごろごろしていては邪魔でしょ
うがないわけです。 しかし工程を結合して実施すると、工程間で行ってき
た部品の変形などの修正が出来ないのです。 大きな物ですが、その精度は
3メートルで1センチ程度に規定されており、つまりは時計よりも精度を要
求されていたわけです。 その生産技術の開発に試行錯誤がなされ、それま
での常識では考えられいことばかりでした。 ベテラン職人は最初反対ばか
りでしたが、私も先頭に立ち、徹夜続きで工場の中で寝ていたら、朝出勤し
てきたベテラン達がいつの間にか集まってきてくれて、研究を替わってくれ
ていました。 そして「物を動かすのではなく人間が移動する」方が重量物
の場合、楽であるとの発想も出て、その作業は劇的に替わりました。 つい
に、1/5の面積に収まってしまったのです。 1000坪が200坪で済
んでしまった。 時間そのものも大幅に減り、最初反対していた職人達も作
業が楽で管理も楽になることを感じてからは、積極的に生産技術開発に参加
するようになりました。
劇的な成果でしたが、すぐに次の課題が出てきて休む暇はありませんでし
た。 でも、現在紹介されているセル生産方式による成果で工場がガラガラ
になっていくのを見かけますが、私は25年前にあの感動を覚えました。
本当にガラガラにすいてくるのに生産はもっと上がるのです。 『ムダ』の
意味を身にしみて理解しました。 しかも、同じように考えている企業が多
くあると知ったのは後々でしたが、真似たわけでなく、全部自分たちで考え
自分たちで作り上げたのですから。 この考え方は多種少量生産に強く、現
在の基本となるものでした。
●流通業、サービス業への応用
<編集者>: 流通業に応用していく過程はどんなことだったのですか?
<三河> : 今年、私が失敗した唯一の事例があるのですが(笑い・)。
レストランなのですが、このメールマガジンで実名で紹介する了解を取り
付けていたほどモデルケースになりうる条件で、売上が2倍になったが赤字
を増やして失敗した例になった。 失敗例としてもモデルケースになるので
みなさんに紹介したいと考えていますが、これなど経営者が『効率』の概念
がまるでないことにこちらが気付かなかったと言えるかも知れません。
『効率』とは『金』の効率で、事業の全てを支配している概念です。 人
・物・金、全てです。 資産家のご子息が経営者で、『人』についての捉え
方においては田中真紀子元外務大臣と同じように『敵と家族と使用人』しか
存在しない。 『味方』が存在しないのです。 そのため社内で人が育たな
い。 方針に賛同して経営者に苦言を呈することがあっても、背負って実行
してくれる人が育たない。 トヨタで言うところの『言い出し屋』ですね。
大枠の方針を言っても、危険や悪役を背負って社内を動かす人が出てこな
い。 どうしても資産家のご子息は『わがまま』ですので、自分の気が済む
ように動く傾向にあり、方針のバラツキが出て周りが『ご機嫌伺い』になる
。 顔色を窺って本当のことは言わなくなる。 トヨタの『改善』に必要な
自主性が育たない。 店舗経営者の場合、知識の視野が狭く規模も小さな企
業が多いため、これと同じような人事面の技術不足が慢性的にあるのです。
本当は、まずその人生観を修正しなければならない。 トヨタの社風も社
員の人生観となっているため変化に強く、『ムダ』と自分の仕事を他人から
指摘されても、『良いことを教えてくれた!』と受け止める下地があるので
す。 これがないと『ケチを付けられたくない』との感情が支配して、『ム
ダ』の排除が出来ないのです。
このレストラン経営者の場合、企業風土から変えることが急務なのです。
売上が伸びている間は、ダイエーや水島そごうのように問題とならないので
すが、『ムダ』がこれだけ多いと、売上が伸びなくなった時すぐに資金に行
き詰まることになる。 これは、たくさんの事例があることです。 『トヨ
タ生産方式』に学ぶことは、まず謙虚に心構えをおいて、たゆまぬ『改善』
を当たり前とすることです。
<編集者>: 『教えることより教えられることの方が難しい』と常々、三
河主席がおっしゃっていることですね。(笑い・・・)
<三河> : ほんとに教わることは難しい。 いまだに教わるとしゃくに
さわる。(笑い・・・・) 何で自分が先に気付かなかったかと。 『そん
なこと解ってるよ!』てネ!(笑い・・・)知ったかぶりしたくなる。
●流通は『売りたいときに売りたい物を売れ』
<編集者>: 流通部門で研究するきっかけは何だったのでしょう。
<三河> : 『2割の商品が8割の売上をする』です。 だったら売れ行
きの良くない8割の商品はいらない。 これは『ジャストインタイム』に反
する。 在庫金額は増えるわ、仕入れの手間はかかるわ、並べたり片づけた
りしなければならないし、第一店舗面積の8割を占めていることになり、莫
大な『ムダ』になる。 トヨタ流にいえば『ムダ取り』の対象としないわけ
がない。
<編集者>: でも品数の多い店の方が売りやすいですね。
<三河> : その通り。 商品が多い方が売上がいい。 売れ筋商品をそ
ろえることは容易ではない。 そろえても値引き合戦になる。 店舗運営の
ベテランの常識に反することになる。 でも企業の基本である『資金の回転
効率を悪化させている』。 こんな場合、問題点をクリアする技術開発が必
要となるのであって、現状の常識はナンセンスと言うことです。 つまり、
在庫は少なければ少ない方がよいのです。 議論の余地はない。 迷っては
いけない。 必要経費は少なければ少ない方がよい。これは当たり前です。
店舗の面積だって同じ売上なら小さいに越したことはない。 人数もです。
それが現状の方法では必要だからと思いこんでいる。
<編集者>: 利益が出る方向に努力すべきなのですね。
<三河> : 私が今年失敗したレストランの経営者は、在来の経験が一番
と考えている。 トヨタ流の『改善』の概念がない。 企業の進歩の意味が
わかっていないのでしょう。 これは深刻です。 ですから業績が悪いと、
何か”一発大逆転の方法論”を求めてしまう。 今回は『広告』でした。
『広告』しただけで売上が2倍近くなったものですから、それだけを大金を
かけてやってしまった。 それも私には内緒にです。 さらには広告技術と
しては低いものであるにもかかわらずにです。 見事失敗です。 店内の『
改善』と連動しなければならないのですが、そのような新しい概念を受け入
れる下地がない。 まず『トヨタ生産方式』から学ぶべきは、『意識改革』
です。 積み上げて全体のレベルをあげていく概念です。 商売を”金鉱掘
り”にしないことです。
<編集者>: それは経営トップの考えが変わらないと、どうしようもない
のではありませんか?
<三河> : その通りです。 『TQC』ではまず経営トップに研修を受
けてもらうことを条件にしているくらいです。 ただ店舗経営者の中では、
決算書を読めない人も多いので、まず基礎的知識を付けなければなりません
。ただ儲かっているうちは聞いてくれませんね。 行き詰まるのを待たなけ
ればならない。(笑い・・・・) 人はそれほど教わるのが苦手なんです。
それを意識すべきですね。 私なんか年ですから、忠告されるとムキにな
る。(笑い・・・・・)
<編集者>: 理論的には、店舗経営でどのような努力をすればよいのでし
ょう。
<三河> : それはセミナーに呼んでくださいよ。 それが商品ですから
。(笑い・・・) ただ努力すべきポイントは『売れない8割の商品も売れ
るようにする』ことです。 当たり前ですが、店舗の在庫は一度仕入れたら
それほど動きません。 在庫が減れば資金に余裕が出ますが、大規模でなけ
れば目立ってメリットが出ません。 小規模であれば売上を上げる努力しか
ないといえるくらいです。 それも効率を上げることが前提ですが。
そこでどんな商品もそこそこ売れていくことなのですが、それをお話しし
ておきましょうか。
<編集者>: それをお聞きしてまとめましょうか。
<三河> : まずどんな商品にも「潜在市場」があることを理解してくだ
さい。 「顕在市場を追いかけるのではなく、潜在市場を掘り起こす」ので
す。 全国的に新しい市場を掘り起こすことは一社では不可能ですが、店舗
の周りの地域に限ると、これが意外に出来るのです。 これにはみなさん気
付いていません。 その積み重ねでかなりの商品が売れていくのです。 こ
れが当社の『提案型販売』です。 2倍3倍の売上が可能な理由です。 し
かし、それにはトヨタが営々として築いてきたように「潜在市場を掘り起こ
す技術開発」が必要です。 これらの意味をよく理解しておくことです。
流通は『売りたいときに売りたい物を売れ』です。
決して『広告』など単一の方法ではなく、トヨタのように管理レベルの向
上を目指すことです。 企業、スタッフ全体のレベルアップをはかることで
す。
<編集者>: ありがとうございました。 『トヨタ生産方式』との関わり
合いについては、今回だけでは不十分ですので新年も続けていきたいと考え
ています。
<三河> : そうですね、これではほとんど説明になっていませんし、誤
解も生じるでしょうから、早速、新年4日にでも集まりませんか? その時
は、今日逃げられてしまった当社の専務も捕まえて行いたいですね。(笑い
・・・・・)
<編集者>: 4日はきついですね・・・・・。 でも新年早々に行いまし
ょう。 本日はありがとうございました。 それでは良いお年を。
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