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NYBCT#167/ハーレム先週の徒然

発行日: 2003/9/8

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          New York Black Culture Trivia #167
     ニューヨーク・ブラックカルチャー・トリヴィア

            ハーレム 先週の徒然

             2003/09/08
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             ・その1・


 マンハッタンのダウンタウンから地下鉄2番線に乗ると、96丁目でほ
ぼすべての白人が降りて、車内は黒人とラティーノだけになる。次の
110丁目から135丁目はハーレム、それより北はブロンクスだからだ。


 この日、夜10時頃。私は車両間の連結ドアのすぐ脇に座っていた。列
車がハーレムに入ってしばらくするとドアが開き、隣の車両から黒人の
男がひとり、移動してきた。40代、ごく普通のTシャツにジーンズ、カ
ジュアルなナイロン布製の黒いアタッシェケースを下げている。身なり
は特に怪しくはない。けれどその男、連結ドアを閉めると、それまで自
分がいた方の車両の様子を窺いながら、アタッシェケースのジッパーを
開けて片手を突っ込み、なにやら必死で探っている。しかし視線は連結
ドアの小さなガラス窓から反らさない。


 男は誰かに追われいて、万が一のためにアタッシェケースの中の拳銃
かナイフを探している……誰が見てもそうとしか思えない行動で、そん
な男が自分の目の前に立っているのだ。映画や小説じゃあるまいし、
まったくシャレになっていない。


 列車は次の駅のプラットフォームに滑り込みつつあった。迷うことな
く座席を立ち、しかし、男を刺激することのないようにそっと男の目の
前をすり抜け、下車するべくドアに向かった。その途端、男が大声で喋
り出した。「みんな、落ち着け! オレは今、ちょっとマズい状況に
あって、カバンの中には9ミリ口径のベレッタ銃があるんだ!」


 この瞬間に事情が分かった。男は単にアタマがおかしかったのだ。誰
からも追われてなどいないし、銃も持ってはいないに違いない。本当に
「マズイ状況」にあるなら、誰もこんなことを叫んだりはしないだろう。

             ・その2・


 ハーレムの某有名音楽プロデューサーに取材を申し込んだ。事務所に
足を運ぶと本人はおらず、中年女性と年配の女性が世間話に花を咲かせ
ていた。一応きちんとスーツを着込んだ中年女性に用件を伝えると、い
きなり、けたたましくまくしたて始めた。


 「これはビジネスだからね、単にここに来てインタビューったって、
そうはいかないわよ。こちらのビジネスを中断することになるんだか
ら、タダってワケにはいかないのよ。何時間かかるの? え? 
たった1時間で済むの? TVカメラも持ち込むんでしょ。それじゃカメ
ラのセッティングから始まるから、もっと時間がかかるわよ。え? カ
メラは一台だから、そんなに時間はかからない?」


 そういった詳細は、すべて最初に手渡した書類に書いてあるのだけれ
ど、女性はそんなものには目もくれずに喋り続ける。要は長時間インタ
ビューに持ち込んで、その分、多額の謝礼金を取りたいのだ。ショービ
ジネスに関わる人間は人種に関わらず、本当にしっかりしている。(と
いうか、時にえげつない。)


 喋り続ける女性をなんとか遮り、彼女の名前と肩書きを聞いた。(私
は一体、誰と喋っているのだ?) 女性はそれまで自分の名前も肩書き
も告げずに一方的にまくし立て続けていたのだ。名刺もくれなかったけ
れど、「マネージャー」で、「プロデューサーの娘」だそうだ。


 後日に彼女が提示してくる謝礼金は一体いくらになるのだろうか。そ
んなことを考えつつ、事務所を後にしようとした時、私とマネージャー
兼娘の会話の間ずっとそこに座っていた柔和そうな年配の女性が言っ
た。「あなたの腕時計、とてもステキね」。


 もしかして、プロデューサーの奥さんなのだろうか。だとしたら、こ
れではまるで、刑事ドラマによく出てくる「良い刑事と悪い刑事」のコ
ンビではないか。アメとムチの使い分けで容疑者から自白を引き出すよ
うに、私から多額の謝礼金を搾り取ろうというのだろうか。ま、どちら
の女性も憎めないタイプではあったけれど。


             ・その3・


 アメリカに住むと双子の多さに驚かされる。それがハーレムのような
黒人コミュニティだと、さらに多くの双子を見かけることになる。通り
では、横二連結または縦二連結のベビーバギーを押しているか、また
は、おそろいの服を着せたよちよち歩きの双子を連れた若い母親と頻繁
にすれ違う。


 うちにアパートにも1歳半くらいの女の子の双子がいて、毎日、夕方
になるとドレッドロックの若いお父さんが散歩に連れ出している。こち
らでは幼児用の散歩ヒモが売られていて、この双子もピンクのヒモを背
中に括り付けられていて、お父さんはまるで二匹の子犬を散歩させてい
るような様相となっている。そのヒモが目立つせいもあり、通行人たち
から「まぁ、可愛いわねぇ!」といちいち声を掛けられ、若いお父さん
は大変そうだ。


 それはさておき、どう考えても白人よりも黒人に双子が多いように思
える。ちょっとネットで調べてみると、やはりアフリカンーアメリカン
に双子の率が高いと、多くの医療系、妊娠・出産系サイトに書かれてい
る。原因は解明されてない。ただし、最近は白人も含めて双子(正確に
は双子だけではなく、三つ子、四つ子などすべての複数児を含む)の出
生率がどんどん上がっているらしい。こちらの理由は解明されていて、
まず、人種を問わず、高齢出産だと双子妊娠の率が上がること。次に、
排卵誘発剤を使うと、やはり双子となる率が上がること。つまり、女性
も自身のキャリアを優先させるために結婚・出産が遅れ、なおかつ不妊
の症状が見られる女性の場合は、高額でも妊娠誘発治療を行うことか
ら、双子は増えるばかりなのだ。


 しかし、20〜30代で自然妊娠をした場合、双子はやはりアフリカンー
アメリカンに圧倒的に多いのだ。(ちなみにアジア系が双子を生む確率
は、白人よりも低いそうだ) なぜアフリカンーアメリカンに双子が多
いのか? 子孫繁栄への本能的欲求が他の人種よりも強いのか?


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             お知らせ

●ハーレム・黒人史・黒人文化を撮り続けているドキュメンタリー・
フィルム作家ビル・マイルズ氏のウエブサイトがオープンしました。
フィルム、写真をメディアへ貸し出ししています。
http://members.aol.com/milesef/


●連載エッセイ「NYエスニック事情」
  9/5号は「コリア・ウェイ」の巻
 (マンハッタンにある韓国系コミュニティを探索)

  在米邦人向け雑誌 U.S. FrontLine 毎月5日号掲載  
  ※東京の有隣堂書店・各支店でも販売開始
   http://www.nybct.com/8-profile_yurindo.html

※入手希望の方は有隣堂もしくは以下に問い合せてみてください
  U.S. FrontLine News Inc.
  http://www.usfl.com
  voice@usfl.com(日本語)


●連載エッセイ「125th Street, Harlem」
    ファッション雑誌 LUIRE(ルイール)
    リットーミュージック刊 毎月26日発売
    10月号(8/26発売)
 「本を読まない黒人」〜黒人は読書しないという伝説は本当なのか?

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●ホームページに新しいコーナーを作りました
    こちらには、ハーレムの日常、
    ブラックカルチャー以外のエスニック事情、
    ニューヨーク事情から英語や日本語にまつわる考察
    などを軽く書いています。時々のぞいてみてください。
    http://www.nybct.com → <日々の考察>コーナー

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発行人:堂本かおる Keideee@aol.com
バックナンバーはホームページで http://www.nybct.com
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