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NYBCT#164/黒人の家族の在り方

発行日: 2003/8/10

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          New York Black Culture Trivia #164
     ニューヨーク・ブラックカルチャー・トリヴィア

         貧困ー崩壊家庭ー助け合う親戚
          〜黒人の家族の在り方〜

             2003/08/08
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ちょっと忙しかったこともあり、メルマガ発行が1ヶ月振りとなってし
まいましたが、その分、今回は内容がヘビーかも、です。
とりあえず読んでみてください。

            ・・・・・

8月8日(金)の朝、ブルックリンにあるプロジェクト(低所得者用公
営団地)で、3歳の男の子が、9歳の従兄弟(いとこ)に頭を撃たれて
重体となっている。


この朝、9歳の少年は、同居している17歳の親戚の少年のベッドの下に
潜り込み、なにかの写真を探していたという。ところが写真の代わりに
マットレスとベッドのフレームにはさまれた拳銃を発見。それを取り出
し、おもちゃと思って撃ったところ、目の前で遊んでいた3歳の男の子
の頭に命中。ベッドで寝ていた17歳の少年は銃声で目を覚まし、事態を
悟るとアパートを飛び出し逃亡。しかし、その日の夜に逮捕された。拳
銃は17歳の少年のもので、少年はギャングのメンバーだった。15歳の時
に強盗で2回、逮捕されている。


これが事件の顛末で、3歳の男の子はいまだに生死の境をさまよってい
る。まだよちよち歩きの従兄弟を撃ってしまい、「こんなつもりじゃな
かった」と泣きじゃくったという9歳の少年は、幸いなことに罪には問
われないという。ニュースで報道された3歳、9歳、17歳、及び親の名
前から察するに、一族全員がアフリカンーアメリカン。17歳の少年は写
真が公開されており、外観は黒人だがロドリゲスというラティーノ姓。
おそらく両親がアフリカンーアメリカンとラティーノの取り合わせなの
だろう。


この悲惨な事件が起きた理由は、簡単に考えると以下のように思える。
(1)10代の黒人/ラティーノ・ギャングの蔓延・横行
(2)銃があまりにも簡単に、しかも安価で手に入る環境


しかし、新聞の記事をよく読むと、この一家の家族形態の複雑さに気が
付く。このアパートで暮らしているのは、被害者となった3歳の男の子
と、その母親(23歳)、3歳の男の子の従兄弟にあたる9歳の少年と、
その父親の計4人。3歳の男の子の父親は別居している。17歳の少年は
このアパートに時々住んだり、いったん出ては戻ってきたりを繰り返し
ていたといい、近所の住人は「他の親戚も出たり入ったりしていた」と
証言。事件当時はアパートに親戚の男性(43歳)もいたが、同居はして
いない。17歳の少年も、43歳の男性も“親戚”とだけ書かれており、警
察も実際の血縁関係をまだ確かめられていないという。


この家族は極端な例としても、貧しい黒人家庭には似たようなケースが
よく見られる。“両親”“子ども”“祖父母”といった直系の家族以外
に、“いとこ”“叔父・叔母”または“親戚”という人物が同居してい
る。実際に血縁関係がある場合がほとんどだが、時には誰かの結婚(未
入籍の関係も多い)による繋がりで“親戚”となった人物の場合もある。


こういった親族による同居現象が起こる理由は

(1)貧困:それぞれの人物が経済的に自立できていないために、家を
失った親族を、他の親族が一時的に引き受ける


(2)婚姻制度の崩壊:シングルマザー家庭が極端に多く(離婚・死別
による場合もあるが、圧倒的に未婚の出産によるケース多い)→新しい
恋人との同居→恋人にも連れ子があったり、時には恋人の親族の面倒ま
で見る場合もある。また、シングルマザーも経済的に苦しいことが多
く、親族が多少なりとも家賃を払うなら同居(間借り)させる


黒人の親戚付き合いの広さ・絆の強さはよく知られている。上記の事件
でも、総勢30人の親戚が病院に駆けつけ、3歳の男の子の無事を祈って
いるという。つまり、お互いに困った時には助け合うという精神がある
のだ。このことと矛盾しているようだが、家族にどうしようもないメン
バーがいる場合、容赦なく家から追い出してしまうこともままある。事
件の17歳の少年の家庭については報じられていないが、15歳の時にすで
に強盗事件を起こし、ギャングのメンバーである息子を、親が愛想をつ
かして追い出したことは充分に考えられる。また、なにかトラブルを起
こした時だけ親とケンカになり、家を飛び出して親戚や友人の家を泊ま
り歩いているというパターンも考えられる。(親がおらず、親戚に育て
られたケースも考えられる) いずれにしても、23歳の母親は自身も貧
しいにもかかわらず、こういった行き場のない親戚たちを自宅に泊まら
せているのだ。少なくとも、17歳の少年から家賃を取っていたとは思え
ない。


これは貧しい黒人社会(注:近年、黒人社会がすべて貧しいわけではな
い)が、貧しさゆえに保っている素晴らしい寛容さだといえるだろう。
その一方、結婚制度がもう少し定着し、経済的にも潤っていれば、“両
親+子ども”という形態の家族がもっと多いはずだ。そうすれば親が子
どもを監視することが容易になる。シングルマザー家庭で母親が働いて
たり、もしくは生活保護で暮らし家庭にいるとしても、4人も5人もの
子どもがいて、なおかつ雑多な人間が家に出入りしていれば、どうして
も母親は子どもに100%目を配れない。同居していたり、居候していた
りする人間も親族なので当然子どものことは気遣うが、そもそも本人が
問題を抱えており、子どもにとって必ずしも良い環境とはいえない。


「片親=子どもにとって不十分な環境」といっているわけでは決してな
く、ただ、ここにはアメリカの貧しい黒人社会に特有の他の問題〜暴力
(ギャング)、特に男の子にとっての男性ロールモデルの不在など〜
が、いくつも重なりあっているのだ。


先にも書いたように、17歳の少年の家庭の事情は分からないので断定は
できないが、おそらくは問題のある家庭だと思われる。それが仮に落ち
着いた家庭環境であったとすれば、少年はギャングにならなかったかも
しれない。もしくは少年は自宅に留まり、親戚の家には寝泊まりしな
かったかもしれない。もし9歳の少年の家庭が落ち着いていれば、両親
は銃の危険性を教え、たとえおもちゃに見えても触るなと教えることが
できたかもしれない。


黒人女性のシングルマザー現象の根本的な理由は貧困であり(男性に充
分な収入がない。時には職を見つけることさえ難しい)、貧困のいちば
んの犠牲者は、子どもなのである。もちろん、アメリカでは両親の揃っ
た豊かな家庭にもそれなりの問題があるし、白人家庭でも離婚率は異常
に高く、“再婚”→“連れ子”の現象がある。しかし今回のような事件
は中流以上の白人家庭ではめったに起こらない。3歳と9歳の男の子が
今回の事件の被害者であることは間違いないが、ギャングのメンバーと
はいえ未成年の17歳の少年は、果たして加害者なのだろうか、それとも
被害者なのだろうか。


※次回はサミュエル・L・ジャクソン、コリン・ファレル、L.L.クールJ.、
ミシェル・ロドリゲス出演の破天荒アクション映画『S.W.A.T.』のレ
ビュー(予定)

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             お知らせ

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  voice@usfl.com(日本語)


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    9月号(7/26発売)
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●ホームページに新しいコーナーを作りました
    こちらはブラックカルチャー以外のエスニック事情、
    ニューヨーク事情から英語や日本語にまつわる考察
    などを軽く書いています。時々のぞいてみてください。
    http://www.nybct.com → <日々の考察>コーナー

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発行人:堂本かおる Keideee@aol.com
バックナンバーはホームページで http://www.nybct.com
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