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New York Black Culture Trivia #154
ニューヨーク・ブラックカルチャー・トリヴィア
イラク・ニューヨーク No.5
移民兵士とマドンナの巻
2003/04/05
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※今回の記事は、ホームページにある<日々の考察>にアップ済みのも
のを編集したものです。http://www.nybct.com
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■移民の兵士のお話
米軍の中にはガイジンの兵隊さんがいる。全兵士のうち約3万人は、
なんとアメリカ国籍を持たない移民なのだという。以下の6人はその3
万人に属し、そして今回のイラク戦争ですでに戦死してしまった若者たち。
ホセ・グテイエレス(22歳)ガテマラ国籍
ホセ・アンジェル・ガリベイ(21歳)メキシコ国籍
フランシスコ・マルティネス・フローレス(21歳)メキシコ国籍
ヘスース・スアレス・デル・ソラ(20歳)メキシコ国籍
ディエゴ・リンコン(19歳)コロンビア国籍
ジョセフ・メヌーサ(33歳)フィリピン国籍
合法移民には以下の3種がある
1)就労ビザなど、なんらかの合法滞在ビザ保持者(国籍は元のまま)
2)永住権(通称グリーンカード)保持者(国籍は元のまま)
3)市民権保持者(アメリカ国籍となる)
通常は(1)→(2)→(3)と進むのにそれぞれ数年ずつかかり、
特に市民権取得には10年以上かかるケースもある。軍に永住権保持者が
入隊した場合、これまでは3年勤めれば市民権の申請ができた。(逆に
いえば、3年勤め上げるまでは申請もできなかった。さらに申請から取
得までに何年かかるかは移民局の審査次第で、それこそ神のみぞ知る)
ちなみに、移民兵たちは外国人なので諜報部門やグリーンベレーなど
の精鋭部隊には配属されないし、指揮官にもなれない。軍に勤めること
自体6年しかできないので、そもそも出世のしようもない。つまり、
いったん戦争が始まれば外国人でありながら前線に送られ、アメリカの
ために闘い、そして戦死も有り得る。けれど入隊3年後に市民権申請を
し、残りの3年以内に取得できなかった場合には除隊するしかない。こ
れではほとんど<使い捨て>ではないか。
9.11テロ事件を経て昨年7月、ブッシュ大統領は、入隊すればすぐに
申請ができるように新しい法律を発令した。その結果、既に軍にいる移
民兵たちがこぞって申請書を出し、現在、審査はかなり滞っている模
様。そんな中、上記の6人は市民権を手に入れないままに戦死してし
まった。
6人のうちの2人には市民権が与えられることがすでに決まった。中
には申請手続きを済ませていなかったために、市民権取得ができるかど
うか分からない者もいるという。
命をかけても、まだ取得できない市民権。その市民権をエサに移民兵
を募るアメリカ。
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■ 移民のお話
移民にはアメリカでの労働許可を持っている合法移民と、観光名義な
どで入国してこっそり働いている不法移民(通称イリーガル)がいる。
アメリカの全人口は2.8億人で、イリーガルは推定500万人。これは
10年に一度の国勢調査に基づいている(と思う)けれど、アメリカの国
勢調査はそれほど正確ではない。国勢調査票は郵便で送られてくるのだ
けれど日本のような住民票がないので、宛名がなくて住所のみ。つまり
<この住所に住んでいる人が答えてください>というわけ。面倒くさい
から答えない人も多いと思うけど、なによりイリーガル移民が、移民局
にアシがつくことを恐れて答えないし、英語が読めない人にいたっては
論外。(実は国勢調査に答えた事によって移民局から捜査されることは
ない…らしい)
だから全人口も怪しいと思うけれど、イリーガルの数に至っては識者
による全くの<推測>だろう。けれど、たくさん居ることに変わりはな
い。その大量のイリーガルは、アメリカの3K市場を支えている。アメ
リカ人がやりたがらないキツい仕事をイリーガルが、最低賃金以下でや
るのだ。
だから、もし明日、すべてのイリーガルを掴まえて国外退去させたと
したら、アメリカ経済は確実にマヒする。特にニューヨーク。まず、エ
スニック・レストランからはウエイター&ウエイトレスが消える。イタ
リアン・レストラン、中華レストラン、日本食レストラン、ギリシャ・
レストランetc…みんな本国人を雇っていて、イリーガルも多い。そし
て、ほぼ全てのレストランの裏方(皿洗い、出前)は中南米系イリーガ
ルだ。他にもあちこちのオフィスから清掃員が消える。お金持ちの家か
らはメイドやナニー(乳母)が消える。日雇いの建設現場労働者もいな
くなる。チャイナタウンの人口の一体どれほどがイリーガルなんだろ
う? ラティーノもかなり多くがイリーガルだ。
つまり「法律違反を承知で勝手にやってきた」という理由でイリーガ
ルをイリーガルのまま放置しておいては、やはりだめなのだ。アメリカ
はイリーガルを安い労働力としてさんざん利用しているのだから、それ
なりの見返りを保証するべきだ。特に子供。親に連れられて移民してき
てイリーガルな子供、またはイリーガルの親+アメリカ生まれで米国市
民権を持つ子供、の親子に医療と教育の保証を。
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■ 放っておきなさい。
昨日、タイムズスクエア駅のNR線のホームにて。4人の制服警官(黒
人男性2人、白人女性、白人男性)が、海賊盤CDのベンダー(露天
商)から、200枚はあろうかというCDを没収していた。売っていたの
は、南米系の若い女性ふたり。間違いなくイリーガル移民だ。
海賊盤CDはカラーコピーの紙ぺら1枚のジャケットを付けて、普通
は1枚5ドルで売られている。デジタル to デジタル・コピーだから音質
はオリジナルと同じ。ニューヨーク中のどこででも売られている。道端
や駅のホームに布を広げ、そこに、ばばばーと20〜30枚並べて売るの
だ。警官が来れば当然一目散に逃げる。
海賊盤CDを売ることはもちろん違法だし、音楽業界が何百万ドルも
の損害うんぬん…は知っている。でも、移民なのだ。これでギリギリの
生活をしている移民なのだ。元締めからCDを買って、売れたら一体1
枚いくらが手元に残る仕組みなのだろう?
なーんか、納得がいかないのである。こんな若い女性ふたりの海賊盤
ベンダーなんかそっとしておけばいいのだ。警官が駅に4人も固まって
パトロールしているのはテロ防止のためであって、こんなことのためで
はないのだ。ニューヨーク市はこの警護プロジェクト<アトラス作戦>
に週500万ドルを払っているのだ、しつこく言うけれど。そして、それ
は私たちが払った税金から拠出されているのだ。これは、いたいけなイ
リーガル・ベンダーを掴まえるためでは決してない。
1時間後、用事を済ませてまた同じホームに戻ってきた。そこには別
の南米系女性が海賊盤CDを広げていたのであった。
(全米のCD売り上げチャートには、もちろんこの海賊盤は含まれてい
ない。けれどゲットーの黒人やラティーノの若者は正規盤なんか買わな
い。海賊盤を含めればチャート順位が変わるかも)
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■ 反戦することのリスク
マドンナが新曲「アメリカン・ライフ」のビデオクリップの発表を取
り止めた。理由は、内容が思いっきり過激な反戦イメージだったから。
その内容は、今ならニューヨーク・タイムズの記事(英語)で読めます。
(初めて訪れる人は登録が必要)
http://www.nytimes.com/2003/04/02/arts/music/02MADO.html
さすがのマドンナもディキシー・チックスに何が起こったかを目の当
たりにした今となっては、考えざるを得なかったのだろう。ビジネスと
してマズいというだけではない。ディキシー・チックスは何も言ってい
ないけれど、命を脅かす脅迫状を受け取っていることも確かだと思う。
過激な反戦メッセージをぶちあげたコロンビア大学の教授は命を狙う
という脅迫状を受け取り、講義をキャンセルしているという。ベトナム
戦争時代からリベラルで知られるコロンビア大学の教授ですら、こうな
るのだ。脅したのはニューヨーカーか、それとも州外の人間かが気にな
る。とにかくマドンナも人の親。万が一、子供に危険が及んだらと、そ
れも考えたことと思う。
私はバックパックに<Anti-War>のバッジを付けている。ニューヨー
クというリベラルな土地柄、これまでそのことに対して特に危険を感じ
たことは無かった。実際、反戦メッセージを身に付けている人はよく見
かける。けれど先週だったか、地下鉄の中で、こちらをじっと見つめて
いる太った白人青年に気付いた時には、もし彼が過激な愛国主義者だと
したら…と、一瞬の恐怖を感じた。
もっとも、彼がなぜこちらを見ていたのかは分からない。特に理由は
なかったのかもしれないし、「へえ、アジア人も反戦なんだ」ぐらいの
ことを考えていたのかもしれない。または、実は彼自身も反戦で、同志
だと思ってくれたのかもしれない。(視線が気持ち悪い人だったので、
あんまり有り難くないけど)
それはさておき、ディキシー・チックスの曲をボイコットしたラジオ
局シンジケートの経営者は、ブッシュとつながりがあるとか。
もうひとつ。ディキシー・チックスとマドンナがこれだけの大騒ぎに
なったのに、でもパブリック・エナミーの「Son of a Bush」は全然話題
にならなかった。つまり、白人は黒人ラッパーが何を言おうと全く気に
掛けていない、ということなのか? じゃ、アジア人の私が何を言って
も影響力もない代わりに危険もないってこと? ラッキーなんだか、ア
ンラッキーなんだか。
パブリック・エナミーの「Son of a Bush」ここで聴けます。
http://www.peace-not-war.org/Music/PublicEnemy/
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発行人:堂本かおる Keideee@aol.com
バックナンバーはホームページで http://www.nybct.com
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