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NYBCT#147/銃撃事件とプロジェクト

発行日: 2003/3/13

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          New York Black Culture Trivia #147
     ニューヨーク・ブラックカルチャー・トリヴィア

           銃撃事件とプロジェクト

             2003/03/12
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※今回2日連続の配信となりましたが、以後はなるべく隔週で発行します


 3月9日、10日に凄惨な銃撃事件がニューヨークのあちこちで3件起
きた。犯人はいずれも黒人男性だが、被害者は黒人の若者、警官、移民
労働者とさまざま。しかし1件ずつ丹念に見ていくと、その背景には共
通因子が確かにある。


 3月9日(日)未明、タイムズスクエア42丁目にあるゲームセンター
“ブロードウェイ・シティ・アーケード”の2階にあるダンスフロアで
銃撃事件があった。クラブの客8人が撃たれ、2人が刺されたが、幸い
にも死亡者はなかった。17歳、20歳、21歳、21歳、22歳の5人が逮捕
された。全員黒人男性。


 犯人は、クイーンズ・ファーロッカウェイ地区にあるふたつのプロ
ジェクト(低所得者用の公共団地)の若者たち。オーシャンビュー・ハ
ウスとエッジメア・ハウスというプロジェクトに住む若者たちは普段か
らお互いをライバル視しており、この日、偶然このダンスフロアで鉢合
わせとなり、事件は起こった。


 このゲームセンターがある42丁目(7番街と8番街の間)には、ふた
つのシネコン、ミュージカル「ライオンキング」の劇場、B.B.キング経
営のライブハウス、いくつものレストラン、サンリオショップや吉野家
まであり、昼間は観光客と映画を観に来るニューヨーカーで溢れてい
る。しかし、夜間は一転して若者たちのたまり場となる。ニューヨーク
の治安が、単に場所だけでは説明できない事情がここにある。(ニュー
ヨークのエリア別犯罪発生件数はホームページ参照)

             ・・・・・

 3月10日(月)、ブルックリンのベッドフォード・スタイブサンド地
区アトランティック・アベニューにあるコインランドリーの店員が強盗
に射殺された。


 犯人は逃亡中だが、NY市警は他の3件の強盗殺人事件と同一犯人だと
発表。そのうち2件はメルマガ#146で触れた、2月8日にクイーン
ズ・オゾンパーク地区とブルックリン・ミルベイジン地区で起こったも
の。もう1件は3月1日にブルックリン・イーストニューヨーク地区で
起きている。


 NY市警が公表した犯人の人相書きは、ふたりの若い黒人男性。計4件
の被害者は、ガイアナからの移民男性43歳(スーパーマーケット・マ
ネージャー)、インドからの移民男性50歳(食料品店経営者)、イタリ
ア系アメリカ人男性37歳(自動車部品店マネージャー)、ロシア系二世
の男性32歳(コインランドリー勤務)。被害者はいずれも地道な仕事に
ついている人たちであり、イタリア系男性以外は移民。


※この記事は3月12日未明に書いたが、12日付けニューヨークタイムズ
にほぼ同内容の記事が掲載された
http://www.nytimes.com/
The Only Motive Seems to Be Murder By SHAILA K. DEWAN

             ・・・・・

 同じく3月10日(月)の夜、スタテン島のトンプキンズヴィル地区に
あるプロジェクト、ステイプルトン・ハウスで、銃密売グループから銃
を買おうとした覆面捜査官ふたりが射殺された。犯人たちは逃亡した
が、NY市警は事実上スタテン島を封鎖、大量の警官を投入して大掛かり
な捜査を展開した。最終的に5人が逮捕されたが、うち3人はNY市警の


 逮捕されたのは、警官を射殺したとされる19歳の他に、16歳、18
歳、21歳、年齢未詳の5人。全員黒人。亡くなった警官ふたりは34歳と
36歳、共に黒人。それぞれ2人と3人の子供がいた。なお、NY市警の警
官が殉職したのは、9.11テロ事件を除けば1998年以来。

             ・・・・・

 麻薬や銃の密売グループはプロジェクトを根城としていることが多
く、高校をドロップアウトした十代の少年が末端の構成員として働いて
いる。4件の強盗殺人事件の犯人たちも低所得家庭の出身であることは
ほぼ間違いない。筆者の憶測ではあるが、プロジェクト育ちの確立もか
なり高いといえる。


 これらの犯人には弁解・擁護の余地はまるでないが、こういった事件
があとを断たない理由として、やはり貧困、特にプロジェクトという、
若者が育つにはあまりに過酷な環境を考えざるを得ない。いくら親や本
人が真面目に生きていても、自宅から一歩出れば、そこにはドラッグ
ディーラーが居て、少年たちを“リクルート”するのだ。また、密売組
織には加入しなくとも銃は簡単に手に入るし、強盗をうまくやりおおせ
て小金を手にした者を目にすることもある。十代の不安定な時期に、こ
ういった誘惑の多い環境に感化されずにいるのは相当に難しい。一見
ショッキングな、しかし「犯人はまた黒人だよ」で片付けられる銃撃事
件には、実はこういった背景がある。


 プロジェクトの麻薬密売組織の様子は、ケーブルテレビ局HBOのドラ
マ『The Wire』で描かれている。しかしプロジェクトには一般市民も暮
らしており、彼らが犯罪組織と同居せざるを得ない実情は映画『Hardball』
で観ることができる。(キアヌ・リーブスがプロジェクトの子供野球
チームの監督となる話。映画自体の出来はさほど良くはないが、プロ
ジェクトの内情は詳しく描写されている)


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             お知らせ

ホームページに新しいコーナーを作りました。こちらはブラックカル
チャー以外のエスニック事情、ニューヨーク事情から英語や日本語にま
つわる考察などを軽く書いています。時々のぞいてみてください。
http://www.nybct.com → <日々の考察>コーナー

今ならブラジルのストリート・ギャングを描いた映画『シティ・オブ・
ゴッド』のレビューあります。

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発行人:堂本かおる Keideee@aol.com
バックナンバーはホームページで http://www.nybct.com
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