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NYBCT#146/ラティーノ〜黒人を上回ったマイノリティ

発行日: 2003/3/12

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          New York Black Culture Trivia #146
     ニューヨーク・ブラックカルチャー・トリヴィア

      ラティーノ〜黒人を上回ったマイノリティ
        
             2003/03/11
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 とうとうラティーノ(*1)が黒人を抜いて、全米に於けるマイノリ
ティ最大グループとなった。


全米人口 約2.8億人
ラティーノ 3,700万人(13.1%)
黒人 3,620万人(12.9%)


 「人口で上回ったといっても、我々黒人がこれまでに苦労して築き上
げてきた社会基盤をラティーノはまだ持っていない」
 「だいたい市民権を持っていない移民が多いから、選挙権保持者は
40%にしか過ぎない。つまり政治パワーはないってことさ」
 「ラティーノってのはカリブ海・中南米のあちこちの国から来ている
わけで文化はバラバラ。団結力に欠けるね」
 「そもそも英語を話さない奴も多いじゃないか」


 以上はニュースを知った時の、黒人の反応。特に長年に渡って黒人の
地位向上を目指してきた知識層には相当なショックだったようだ。この
件が国勢調査局から発表されたのが1月末。2月は黒人史月間なので多
くの黒人文化関連イベントが準備されていたが、この件がディスカッ
ションのテーマに取り上げられたりもしたようだ。


 けれど、ラティーノ人口が黒人の人口を追い抜くことは、ごく近い将
来に起きると以前から予測されていたし、ニューヨーク市ではこの逆転
現象がすでに起きていた。


ニューヨーク市の全人口 約800万人
白人    35%
ラティーノ 27%
黒人    25%
アジア系  10%
他      3%
(2000年国勢調査より)


 ラティーノの急増振りは、ニューヨークの地下鉄に乗ってみるとよく
分かる。あちこちからスペイン語による会話が聞こえてくるし、車内に
貼ってあるポスターにも英語とスペイン語の2ヵ国語表示が多く、スペ
イン語オンリーのものまである。


 ニューヨークでは黒人とラティーノの居住区は隣り合っているか、も
しくは混じり合っている。ハーレムも黒人が多いのは<セントラル・
ハーレム>で、<イースト・ハーレム>はプエルトリコ系の街だし、<
ウエスト・ハーレム>にはドミニカ共和国系が多い。だから黒人とラ
ティーノの若者文化は複雑に混じり合っているし、なによりヒップホッ
プ発祥の地も実はハーレムではなく、ラティーノの多いサウスブロンク
スだ。故ビッグ・パン、ファット・ジョー、ジェニファ・ロペスはサウ
スブロンクス出身のラティーノだし、彼らほどメジャーではなくとも、
ローカルなラティーノ・アーティストはたくさん存在する。


 ラティーノ以外のアメリカ人はもちろんスペイン語を話さないが、い
くつかのスペイン語の単語はすっかり英語の中にとけ込んでいる。その
一例が小さな食料品店を指す<bodega ボデガ>という言葉だ。


 2月8日、2軒の食料品店で強盗殺人事件が起こった。同一犯による
悲惨な事件ではあったが、事件そのものとは関係のない部分でスペイン
語の普及を思い知らされることがあった。翌日のニューヨークタイムズ
の記事には、ブルックリンにある<デリ>(*2)と、クイーンズにある
<ボデガ>で事件は起こったと書かれていた。


 この2軒、実はほぼ同じ規模と品揃えの食料品店だ。唯一の違いは、
デリの経営者がインド系で、ボデガの経営者はラティーノであったとい
うこと。ニューヨークでは、食料品店の中にテイクアウト用のサンド
イッチとコーヒーを作って出すカウンターがある店を一般に<デリ>と
呼んでいるが、ラティーノが経営する店が増えてからはスペイン語の<
ボデガ>という呼称も使われ始めたのだ。


 このように、いまやラティーノはニューヨークに於いて見逃すことの
できない大きな存在となっている。確かに黒人ほどの社会基盤はまだな
く、選挙権保持者も少ない。けれど、その人口はこれからまだまだ増え
続けるし、アメリカ生まれの二世、三世は将来選挙権を持つ。黒人に
とって得策なのは、増え続けるラティーノに脅威を感じたり、口先だけ
で自分たちの優位を誇ることではなく、うまく協調してゆくこと。具体
的には、公民権運動以来培ってきた権利拡張運動のノウハウを、まだ黒
人以上に厳しい生活環境にあるラティーノに提供し、選挙など数の力が
必要な時にはそれを借りること。


 実のところ、ハーレムの中では黒人とラティーノはうまく共存してい
るように見える。それはラティーノがマイノリティだということを自覚
しており、ハーレムのマジョリティである黒人に多少の気兼ねをしなが
ら暮らしているからだ。けれどラティーノが黒人に遠慮なく自己主張で
きる日が遠からず、やって来る。その時までに黒人は、ラティーノを対
等なパートナーと見なす準備をしておかなければならない。


*1:ラティーノ
カリブ海、中南米のスペイン語圏出身者。よりより生活のために貧しい
母国を出てアメリカに移住してくる者が多いが、不法移民も多く、平均
生活水準は黒人よりも低い。西海岸では国境を接するメキシコからの移
民が多いが、ニューヨークではプエルトリコ系、ドミニカ共和国系が多
く、メキシコ系も近年急増中。ヒスパニックとも呼ぶ


*2:デリ
ドイツ語のデリカテッセンの短縮形。昔はドイツ系が経営する食料品店
が多かったことから定着した言葉だが、現在はドイツ系の店はほとんど
ない

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バックナンバーはホームページで http://www.nybct.com
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