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New York Black Culture Trivia #143
ニューヨーク・ブラックカルチャー・トリヴィア
『ボウリング・フォー・コロンバイン』
『アホでマヌケなアメリカ白人』
2003/01/29
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今、日本でも映画『ボウリング・フォー・コロンバイン Bowling for
Columbine』と、同作品の監督マイケル・ムーアが書いた本『アホでマ
ヌケなアメリカ白人 Stupid White Men』が話題になっていると聞いた。
映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』は、アメリカの<銃問題>
を取り上げたドキュメンタリー作品。タイトルは、1999年にコロラド州
のコロンバイン高校でふたりの少年が起こした銃乱射事件から付けられ
ている。
監督のマイケル・ムーアは、その巨体をひきずって全米を駆けめぐ
り、恐れ知らずの体当たり取材を敢行する。と言っても、取材対象に舌
鋒鋭く迫るのではなく、あくまで<近所の人の良いおっさん>的態度で
ユルユルと攻める。しかも笑わせて、いや爆笑さえさせてくれる。ただ
し、切り込みの鋭さは半端ではない。これがこの作品がアメリカはもち
ろん、世界各国の映画祭で高く評価されている理由だ。
マイケル・ムーア。ミシガン州出身。18歳で高校の教育委員会会長に
立候補し(生徒会会長ではない。普通は教育問題に知識・関心のある大
人が付くポジション)、驚くべきことに当選。以来、社会活動家として
映画制作、著作業、テレビ出演などを通して活躍。現在44歳。
作品中、マイケル・ムーアは、呑気そうに見える風貌や喋り方とは裏
腹に、データ数値も交え、アメリカ銃社会の驚くべき実態を次々と明ら
かにしていく。
さらには、笑いを誘う妙に腰の低い態度で、しかし、ひるむことな
く、全米ライフル協会NRAの会長チャールトン・ヘストンにも食い下
がっていく。ちなみにチャールトン・ヘストンとは、言うまでもなく
『十戒』(57) や『ベン・ハー』(59)などで知られる誉れ高き名優。しか
し、同時に極端な銃礼賛者、人種差別主義者としての悪名も高い。
さて、チャールトン・ヘストンへのインタビューの際、マイケル・
ムーアはヘストンから人種差別発言を引き出してしまう。そう、マイケ
ル・ムーアは黒人問題、貧困問題にも大きな関心を寄せているのだ。
映画の中に『サウスパーク』のクリエイターが作ったショート・アニ
メが挿入されている。(『サウスパーク』とは、絵はまるで幼児向けの
かわいらしさながら、内容は子供にはとても見せられないブラック
ジョーク満載のアニメ。wowowで放映中)この爆笑必至のショート・ア
ニメでマイケル・ムーアは、アメリカの銃の伝統を<恐怖の歴史>と結
びつけている。
イギリスでの迫害を恐れて新大陸にやってきたピューリタン、イン
ディアンを恐れて討伐しようとした開拓民、黒人を恐れて迫害してきた
白人。過度な銃への依存は、常に恐れから来ているという。
しかし…。黒人の反逆を恐れて銃で武装する白人、というのは、昔な
ら理解できた。事実、奴隷制の時代から公民権運動の盛んだった時代に
は、多くの白人は怒れる黒人の反撃を常に恐れ、銃を構えていたはず。
けれど現在では、白人が黒人を撃つことはほとんどない。白人警官が黒
人容疑者(もしくは容疑者と間違えられた悲運な黒人)を撃つケースは
後をたたないけれど、白人の一般市民は黒人を撃たない。しかし、黒人
は黒人を撃つ。これは貧困が招いた事態だ。黒人社会の中で、貧しい者
同士が撃ち合っているのだ。
マイケル・ムーアも、もちろん、そのことは分かっている。貧困も銃
蔓延の理由のひとつだとして、貧しい黒人母子家庭の悲劇を取り上げて
いる。しかし、これは黒人少年が白人の少女を撃ってしまった事件であ
り、ブラック・オン・ブラック(黒人対黒人)ではない。
著書『アホでマヌケなアメリカ白人』では、恐れを知らないブッシュ
大統領批判を延々と繰り広げるマイケル・ムーア。「ジョージよ、君は
成人レベルの読み書きができるのか?」と問いかけ、同時にブッシュの
過去の情けない逮捕歴を暴露する。いかにアメリカといえども、自国の
大統領をここまで批判することはジャーナリストとして、相当な勇気が
必要だ。幸い(?)なことに、この本は9.11直前に書かれており、9.11
以後のブッシュ大統領の言動については触れられていない。(それでも
最初の発刊予定日が9.11直後だったので、一時は発行を止められた)も
しマイケル・ムーアが9.11以後のブッシュ大統領について書けば、おそ
らく彼は活動の場を一切奪われてしまうだろう。
これほど真摯で勇気(蛮勇?)のあるマイケル・ムーアも、自身が白
人であるため、黒人社会の内部には、実は切り込めないでいる。映画で
は<恐怖の歴史=白人vs黒人>と、現在の<貧困黒人社会に於ける銃の
蔓延=黒人vs黒人>の関連をうまく説明し切れずにいる。『アホでマヌ
ケなアメリカ白人』でも、「第4章:白人野郎を殺せ Kill Whity」とし
て、黒人問題にまるまる一章を割いているけれど、内容は章題が示すよ
うに、黒人差別をする白人がいかにマヌケか、黒人差別をなくすために
白人がなにをしなくてはならないか、ということであって、黒人自身が
なにをするべきかについては書かれていない。
白人が黒人社会に対して「あれをしろ」「これはするな」と発言すれ
ば、黒人からたちまち非難の嵐を浴びるはず。それこそ、「大きなお世
話だ、白人野郎!」と。だから、マイケル・ムーアの手法(黒人を批判
せず、白人に反省を促す)は、白人でありながら黒人に受け入れられる
ためには賢明なのかもしれない。
いずれにしても、ジャーナリスト生命を賭して大統領をあれだけケナ
すマイケル・ムーアすら、黒人社会への率直な意見は差し控えてしま
う。これは、アメリカの抱える黒人問題がいかに根深いかを物語ってい
るように思えてならない。
そんな深読みはさておき、アメリカという国が抱えている病巣を知る
には絶好の作品だし、でも、こんな国にもヒューマニティを信じて、な
んとかしようとしている人間がいるということも分かる。加えて、派手
な映画や番組ばかりがもてはやされる今の風潮にあって、敬遠されがち
なドキュメンタリーの新しい可能性を見ることも出来る。ぜひ、観てみ
てください。
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お知らせ
ブルースマン、テッド・ウィリアムスの来日公演は大成功し、テッド
は無事ニューヨークに帰ってきました。たくさんの人が来てくれたと、
テッドもご満悦です。みなさん、どうもありがとうございました。
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お知らせ
ヒップホップ世代の天才タップ・ダンサー、セヴィアン・グローバー
が来日! とても残念なことに、これもまた東京オンリーですが、ブ
ロードウェイで喝采を浴びたショー「ノイズ&ファンク」を再演しま
す。私も公演パンフレットにエッセイと写真を提供します。
内容:http://www.noise-funk.com/
公演スケジュール:http://www.tbs.co.jp/p-guide/event/noise/index-j.html
参照:セヴィアン出演、スパイク・リー監督の映画『Bamboozled』に
ついてのセッセイはこちら。(この作品、日本ではVHS/DVD化されてい
ないんですね…)
http://www.nybct.com/3-08-bamboozled.html
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ハーレムに来てください!
リアルなハーレムを体験・ガイド付きハーレム散策ツアー
※ハーレムのエッセンスを3時間で体感できる!これより中身の濃いツ
アーは他にはないでしょう(主催者談)
http://www.nybct.com/11-tour.html
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発行人:堂本かおる Keideee@aol.com
バックナンバーはホームページで http://www.nybct.com
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