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【ある日の教室】〜塾講師から見た子供の世界 Vol.126
作者:荒木崇
(合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ)
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『中学受験』
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「あの・・・」
問い合わせにいらっしゃったお母さんがおそるおそる僕に尋ねた。
「今からでも、中学受験って間に合うのでしょうか?」
とりあえず、座ってもらい、学年を聞いた。「今からでも」とおっしゃるので
予想はしていたが、案の定、6年生だった。
おりからの教育行政への不安からか、中学受験をする生徒が増えている。
2005年度、首都圏の中学受験率は約16%。東京・神奈川に限ると、約20
%にも上る。生徒は減っているのに、受験者は増えているという現状だ。
中学受験を目指すなら、最低でも5年生から始めることをお奨めしたい。
5年生で入試に出題される単元を一通り学習するからだ。6年生ではそれ
らの応用・発展・総合といった形になる。
ただ、最近は、5年生よりも4年生から始めるケースが非常に多い。4年
から通塾できるのなら、それに越したことはないと私も思う。4年生で学
習習慣を、5年生で単元学習を、6年生で総合的学力を、と段階的に入試
に突破する学力を養成していく。
6年生からだと、追いつくのがとても大変だ。特に算数はやっかいだ。例
えば、分数の計算。普通、小学校では掛け算・割り算を6年生で習うのだ
が、中学受験を志す生徒達は5年のうちに学習を終えている。
また、鶴亀算だの、旅人算だの、面積算だの、方程式を使えないがゆえに
とたんに難しくなる問題たちが待ち構えている。
6年生から始めて上位校といわれる学校に合格するには、文字どおり「寝
ないで」勉強する覚悟でないとならない。才能の問題よりも学習する量が
物理的に追いつかないからだ。
だから、このお母さんに対して、どうしても聞かなければならないことが
とりあえずいくつかある。
「どこかで中学入試の勉強をなさっていましたか?」
お母さんの態度から、そういう経験はないことを確信していたが、念のた
め尋ねてみた。中学入試の勉強経験があるのなら話の展開は変わってくる。
「いえ、ないんです」
か細い声で答えるお母さん。
「志望校はどちらをお考えですか?」
もし、どこか行きたい(行かせたい)特定の学校があるのか、ないのか。
また、今から受験勉強を始めて受かりそうな学校なのか確認しておく必要
がある。
何も知らずに超難関校を口にされる保護者の方がたまにいらっしゃる。そ
ういう場合には、受験の現状からご説明しなくてはならない。
「いえ、私立なら、行ければどこでもいいんです」
この答えから察するに、理由は限られる。
「地域の公立中学には進学させたくないということですね?」
「はい、実は、今、凄く荒れているらしくて。それでも、通わせようかと
思っていたのですが、ご近所の方からお話を最近うかがって、やっぱり不
安になりまして」
「男の子さんですか?女の子さんですか?」
男子か、女子か。中学入試においてこれはかなり重要だ。なぜなら女子校の
ほうが男子校に比べ、圧倒的に数が多い。ということは「どこでもいい」
とおっしゃるのなら、受かる確率は女子のほうが高くなる。実際、首都圏
では、学校を「選ばなければ」、合格を手にすることは可能だ。
「娘です」
「お子さんは受験に対して何かおっしゃってますか?」
お母さんが望んでも、受験勉強するのは最終的には子供だ。
「はい、娘も荒れているから、私立に行こうかなってボソッと言うんです。
あと、クラスで何人かの子が受験するみたいで、そういうのを見ていると
私もっていう気持ちがちょっとはあるみたいです」
このような問い合わせでの問答を重ね、一度、体験授業を受けてもらい、
現在の学力を見るために非受験用のテストを受けてもらうことになった。
いろいろと心配は尽きないが、今のところ2つ。
一つ目は早く目標を持ってもらうこと。
「どこでもいい」という志望校だが、これから学校見学・説明会を重ね
ると、気に入った学校が必ず出てくる。
最初は「私立ならどこでも」と言っていたのが、「最低でもこの学校」に
必ず変わる。そういう学校をなるべく早くみつけてほしい。ゴールが分か
らず、ただ闇雲に走るだけのマラソンは非常に辛い。
それから、やはり、単元が追いつくのにどれだけかかるか。もちろん、補
習は行うが、集団指導なので、授業は容赦なく進んでいく。それに耐える
ことができるのか。
お母さんは最後に「大変なのは分かっています」とおっしゃった。
しかし、本当にその大変さは体験してみないと分からない。「これほどとは」
とおっしゃる方のなんと多いことか。
子供が苦しむ姿をみて、お母さんもまた苦しい。中学受験の一面である。
(登場する子供たちは全て仮名です。)
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◇◇◇Global Thinking and Local Acting◇◇◇
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