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【ある日の教室】〜塾講師から見た子供の世界 Vol.145
作者:荒木崇
(合資会社マネジメント・ブレイン・アソシエイツ)
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『プラス思考』(後編)
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例えば、駅のホーム。
ホームへ続く階段を上ると、乗りたい電車がすでに停まっている。
続いて、発射のベルがけたたましく鳴り、電車めがけて慌てて駆け出す。
「間に合う!」と思った瞬間、シューっと言う大きな深呼吸とともに
電車は鼻先で扉を閉じる。
「危険ですので、お下がり下さい」
明らかに駆け込み乗車に失敗した乗客を責める駅員のアナウンスが
響き、電車はすっと走り出す。
このときどう思うかが問題である。
普通なら「間に合わなくて、残念」だとか、「あと5秒ぐらい待ってくれ
てもいいじゃないか!」と嘆いたり、怒ったりする。
確かに、僕もそうだった。何かツイていないこと、失敗したことなどが
あると、ムカつき、嘆き、暗澹たる気持ちになったりしたものだ。
しかし、大学時代の友人が教えてくれた。関西生まれの彼は言う。
「お前、そりゃ、オイシイで」
『オイシイ?・・・』
そうなのだ。電車に乗ろうと思って、猛ダッシュしたが、ギリギリで間
合わず、駅員にあてつけのアナウンスをされたのは『オイシイ』出来事
なのだという。
以下、彼の解説。
電車に乗れないことはあるが、駅員にアナウンスまでされるというよう
な出来事は滅多に起こることではない。他人に語っても恥ずべきことで
ない面白い出来事である。人はそういう失敗談のほうが、成功談よりも
ずっと面白く感じる。
だから、多少の失敗や身にかかる不幸はオイシイ出来事なのである。面
白おかしく、笑いながら人に話が出来るぐらいの失敗は『オイシイ』の
であって、決して悲観する必要はない。
(もちろん、人が怪我したり、死んだりしたというような場合は例外で
あることも彼は付け加えた。)
後日、駅からの帰宅途中、突然の雨に降られてしまった。
出かけるときに振っていなければ傘なんぞ決して持たない私は、徒歩
20分の距離を雨に降られどおしで歩いた。
しかし、嘆きはしなかった。傘を持って出なかった自分を馬鹿だと罵る
こともなかった。
ただただ、歩きながら心の中で思ったのは、これが『オイシイ』ってや
つだなぁ、ということであった。
ずぶ濡れで、前髪から垂れる滴がうっとおしくても、不思議と嫌な気持
ちはしなかった。なぜならこの状況は『オイシイ』のだから。
彼が僕に教えてくれたのは、つまりこういうことだ。
「物事は気の持ちようでどうとでもなる」。
それから今まで、好きな女性にフラれても、大学を5年間通うことにな
っても『オイシイ』精神でなんとか乗り切ってきた。もし、友人がこの
ことを教えてくれなかったら、僕はもっとウジウジして湿度の高い性格
になっていたことだろう。
「模擬試験の結果が悪かったりしたとき、どう気持ちを持っていくか。
せっかく頑張っているのに結果が悪かったら、残念なのもよく分かるけ
ど、『本番前に弱点が分かって良かった。ありがとう。』ぐらいの気持
ちでもいいんじゃないかと俺は思うけどな。」
大学時代の『オイシイ』話の後、こんな感じで生徒に話した。全員とは
言わない。一人でも分かってくれれば良かった。
「失敗しても、間違えても、みんなで笑い飛ばしちゃおうぜ!」
努めて明るく元気よくみんなに呼びかけた。さぁ、気持ちを切り替えて
授業だぁ!と進行しようとした矢先、里美(小6受験)が口を開いた。
「先生、気持ちが大切っていうのは良く分かったけど、間違えた答えを
みんなで笑うのはちょっと嫌です」
「そうだね」と誰かか続き、「間違いを笑うのはちょっと・・・」に教
室の空気が染まる。
「いや、だから、それは物のたとえであって、本当に間違いをみんなで
笑おうというのはなく、キミ達があまりに悲観的なものだから・・・・・」
いつの間にか、僕の伝えたいことが有耶無耶になってしまい、この後、
どんよりした雰囲気をなんとか盛り上げるのに苦労してしまった。
生徒を元気付けることもままならない僕である。
なんとも情けない話ではあるが。
(登場する子供たちは全て仮名です。)
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◇◇◇Global Thinking and Local Acting◇◇◇
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