トップ > 学校・教育 > 教育問題 > ごかいの部屋 〜不登校・引きこもりから社会へ〜

子どもの不登校と大人のひきこもり。その心理は…。対応のあり方は…。親・教育者・援助者は彼らに何ができるのか…。元当事者の教育相談員が語る体験的不登校・ひきこもり論と解説




□ ごかいの部屋 No.114

発行日: 2005/12/21


   2005.12.21 [No.114]                   vv
==■========================================================\(ё)/
 :         ご か い の 部 屋          §
 :   〜 不 登 校 ・ 引 き こ も り か ら 社 会 へ 〜   人
--□-----------------------------------------------------------■--
       元 当 事 者 の 教 育 相 談 員 が 語 る      □
     体 験 的 不 登 校 ・ ひ き こ も り 論 と 解 説    :
===============================================================□==


>====・● コ ラ ム ●・===========================================<
                  濃いスープより薄いスープを
>-----------------------------------------------------------------<

 2005年も残りわずか。年末年始休業の間、1日中ご家族揃っての生活
になるご家庭が多いことと思います。そして、その期間にわが子とどう
接したらよいか、どう話し合ったらよいか、と気をもまれる親御さんも
少なくないかもしれませんね。

 1ヶ月近く前の11月25日、私は地元の公民館で開講されていた「思春
期教育学級」という5回シリーズの講座の第3回で、ゲストスピーカー
として不登校体験を語りました。

 この講座のテーマは『思春期を考える―ことばが伝える気持ちときも
ち』というものだったので、私は単に体験発表をするというより、テー
マに沿った話をする必要がありました。

 そこで私は、事前に「親など周囲のおとなは、不登校児の言動をどう
受け取ればよいか」という観点から、当メルマガに書いてきたことを読
み返し、次の点を再確認しました。

 それは「子どもの言動には、そのまま受け取っていい場合と、そのま
ま受け取らずに隠れた意味を察しなければならない場合の、ふた通りあ
る」ということです。

 すなわち、親御さんが子どもと話しているとき、または子どもの行動
を見ているとき、そのまま受け取っていい言動を、深読みして違うふう
にとったり、隠れた意味を考えなければならない言動を、そのまま受け
取ったり、ということがしばしば起きているようなのです。

 不登校の場合はもちろん、一般的にも、このような原因で親御さんが
子どもを誤解してしまうことが少なくないと考えられます。

 では、当メルマガに書いた事例から、上のふた通りのパターンをひと
つずつ挙げてみます。

 まず、そのまま受け止めていい言動は、たとえば112号に書いた「明
日こそ登校する」「テストだけは受ける」などといった発言です。

 それらが実行されないことが繰り返されると、親御さんとしては「思
いつきで言っているのでは?」とか「嘘ついて親の気持ちをもてあそん
でいるのでは?」などと深読みしたくもなるでしょう。しかし、これら
の言葉はすべて子どもの本心です。

 これらの言葉に対しては、まず「そうかわかった」と、言葉じたいを
そのまま受け取ります。そのうえで、実行できなかったときには、発言
の真意(この場合は「願望」であること)を理解すればよいのです。

 そうすれば、子どもの言葉を聞くと「そうありたいということなんだ
な」と、ゆったり感じられるのではないでしょうか。

 反対に、隠れた意味を考えなければならない言動は、たとえば33号で
挙げた「寝食を忘れてテレビゲームに没頭する」「手を洗うのがやめら
れない」などといった<二次症状>と呼ばれる行動です。

 これらが繰り返されると、親御さんとしては、ゲームの場合なら「学
校へ行かずに遊んでいる。怠けているだけなのでは?」と、手洗いの場
合なら「病気なのでは?」と、それぞれ思いたくなるでしょう。

 確かに、本人が不登校でなければ、テレビゲームは単なる遊びですし、
手洗いを繰り返すことは、医療では「強迫神経症」という“病気”と診
断されます。

 しかしこれらは、不登校であるがゆえに生まれた、罪悪感や将来への
不安などに襲われている本人が、そのつらさを、はたから見えるかたち
で表出することによって、自分で自分を支える行動なのです。

 これらの行動に対しては、見たままに受け取らずに、隠された意味を
理解すればよいのです。そうすれば、子どもの行動を見ると「よっぽど
苦しいんだな」と、しみじみ感じられるのではないでしょうか。

 以上のように、子どもの言動にはふた通りのパターンがあるわけです。

 ところで、親御さんが日々の生活場面で、子どもの言動をそのつどこ
のように区別することは、意外に難しいと思います。

 そこで、区別できない場合はどうするか。とりあえず「子どもは悪意
にもとづく言動はしない」というふうに“性善説”に立って判断してい
けば、子どもを誤解するのを、かなりの確率で防ぐことができます。

 さて、この3ヶ月間「不登校児やひきこもり青年の変わりにくさ」と
「変わりやすくする対応」について考えてきました。

 そのなかで、不登校児やひきこもり青年に「常識を捨てよ」「自分が
どう生きるかを考えよ」などと“正論”を伝えても、それが本人に理解
され、本人の変化につながるまでには、想像以上の時間がかかることを
お伝えしてきました。

 たとえ話をすると、病人に早く栄養をつけさせようとして、濃いスー
プを与えても、体力が回復していなければ受け付けないどころか、病状
を悪化させることになりかねません。逆に、薄いスープを与えながら、
時間をかけて体力の回復を促せば、自然治癒力がよみがえって快方に向
かいます。大病でないかぎり、このことに異論は出ないでしょう。

 不登校やひきこもりも、これに似ています。

 彼らが変化するには、想像以上の時間がかかると申し上げました。そ
うです。彼らの心は、即効性のありそうな強力な対応を受け付けないの
です。したがって、効果的な対応を求めるなら、彼らの心が受けつける
範囲の、地道な方法を選択するしかありません。

 今回提案した接し方は、まさに薄いスープを与えるような方法です。
即効性はありませんが、地道に積み重ねていけば、必ず彼らの心に届い
ていき、彼らの自然治癒力がよみがえってくるのです。

 この年末年始、ここで提案したことを参考にされ、お子さんとよい関
係を築かれるようお祈りします。

 それでは、よいお年を――。


:筆者:丸山 康彦(まるさん)
 スクールソーシャルワーカー(訪問子ども援助職)。高校時代、
 不登校と留年の末、入学7年後に卒業。高校講師・ひきこもりを経て、
 1999年4月に個人事務所「教育対策研究所」を開設。2001年10月に
 当ヒューマン・スタジオを設立し代表に。


>===・● ごあんない ●・==========================================<
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 : ご か い の 部 屋 〜 不登校・引きこもりから社会へ 〜  (ё )
 :   2005/12/21 NO.114  (発行:第1・3水曜 月2回) \§/
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ペンネーム : ヒューマン・スタジオ

  • スクールソーシャルワークにもとづき、子どもの不登校と青年のひきこもりを中心に、子育て・家族・学校などの悩みの解決をお手伝いする相談機関。元不登校児にして元ひきこもり青年である代表兼相談員(スクールソーシャルワーカー)が、ときに自らの体験を織り交ぜながら、理解と対応について解説・提言しています。

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