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メールマガジン『杜の本屋さん』
今回のテーマは、『ボランティア』です。女子中学生三人が、老人ホームでのボランティア活動を通して、何を見て、考え、学んでいくか。ひとが人になっていく過程を描いていきたいと思っています。
【メールマガジン『杜の本屋さん』 2008.05.03-00133】
発行日時: 2008/05/03_/_/_/☆ Orangutan Kingdom ☆_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
オランウータン王国・ことばの杜
メールマガジン『杜の本屋さん』 2008年05月03日 No.00133 号
2002年07月06日 創刊 毎月第1・3土曜日発行
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∬もくじ∬_________.................................................
・連載『こころの瞳』 第67回 VOL.2
・編集後記
※このメールマガジンは、等幅フォント(Macintosh)、固定ピッチ
(Windows)で正しく表示できるように編集しています。
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§連載『こころの瞳』 第67回 VOL.2§_________...................
《六十七−その2》
あの時の私には、どうしても生きたいとか、こういうことをしたいとか、
あの人のようになりたいとか、そんなものなんて、何も持っていなかった
の。前にも話したけど、加藤さんは覚えているかな。あのころは、生きるこ
とに謙虚でもなければ、真摯でもなかった。せいいっぱいに生きていなかっ
た。それは、どうしても叶えたい私だけの夢を持っていなかったからなの。
夢です。私だけが持っている、誰のものでもない私だけの夢です。生きる
力になる、かけがいのない私の夢なのです。
こんな私って、とても安易だって笑うでしょう。夢なんかで、何にもなら
ないってね。でもね。田辺さんは、田辺さん自身の夢を持っていたわ。だか
らこそ、あんなにも謙虚で、真摯に自分の人生を生きてこられたのだと思う
の。
町工場で働き出した田辺さんは、すぐに工場の寮に入り、一人暮らしを始
めたの。朝早くから夜遅くまで油まみれになりながら、身を削るようにして
一生懸命に働いた。寮に帰ってからも、寝る間も惜しんで勉強をしたそう
よ。いつかお金が貯まって、ほんの少し生活に、気持ちに、時間に余裕がで
きたら、また学校へ行きたいって。高校にも、大学にも行きたいって。田辺
さんは、こころのどこかで諦めていなかったのね。看護師さんになりたいと
いう夢をね。
あっという間に一年が過ぎて、五年目になった頃だったわ。田辺さんも、
優しくて綺麗な女性になり、恋愛もするようになっていったわ。毎日の生活
は、相変わらず苦しかったけれど、きっとこのころの田辺さんは、一番輝い
ていたと思う。
やがて、同じ町工場で働いていた男性と結婚をしたの。一人から二人へ。
もう一度、田辺さんは、大切な家族を作ることが出来たわ。でも、そんなに
簡単なことではなかったの。田辺さんは、新しい家族を作ろうとしたとき、
随分悩んだわ。また大切な家族を失うことにならないかって。もう二度と、
この世の中で大切なものを失うような哀しい想いをしたくはない。もう二度
とひとりぽっちになりたくはない。家族さえ作らなければ、そんな哀しい想
いもしなくてもいい。田辺さんは、そう考えていたの。
そんな田辺さんのこころをゆっくり、ゆゆっくり解かしてくれたのが、田
辺さんの旦那さんだったわ。ずっと、ずっと田辺さんを支え続けた。見守り
続けてくれた。だからこそ、田辺さんは、新しい家族を作りたいと思うよう
になったの。
新しい家族を作ることが出来た田辺さんは、今まで以上に、一生懸命に働
いて、働いて、働き続けたわ。それまでの一人ではなくて、二人でいられる
ことが、何よりもしあわせだったの。旦那さんと田辺さんの二人でね。やが
て、小さかったけど、旦那さんの夢だった中華料理のお店を持つことが出来
たの。
田辺さんの旦那さんはね。何となく田辺さんと同じような境遇だったの。
戦争中、家族全員で渡った中国。それも、日本の敗戦で状況が一遍。銃砲が
響く中を長い距離、日本へと歩き続ける。食糧も水もなくなり、病気になる
人が多くなる。薬もなくて病気はひどくなるばかり。田辺さんの旦那さん
も、最後の最後まで頑張ったけれど、家族全員で日本へ帰ることが出来な
かったわ。
やっとの思いをして、旦那さん一人だけが生きて、日本へ帰ってきたの
ね。だからこそ、中華料理は本場仕込みでね。小さな二人のお店は、本格的
な料理でおいしいということで街の評判が評判を呼び、とても繁盛したそう
よ。人のいい旦那さんだったから、すぐに常連さんたちが出来ていったわ。
小さくてもお店を持てたこともそうだけど、何よりも旦那さんと二人でいら
れる。二人で生きていけることが、それだけで田辺さんにとって、この上な
くしあわせだった。
でも、夢を夢で終わらせないために、随分無理を重ねてしまったのね。ど
うにか、お店が軌道に乗った直後、田辺さんの旦那さんは、突然の病気で亡
くなってしまったの。
また、最愛の人を亡くしてしまった田辺さんだったけど、今度は、途方に
暮れる暇などなかったわ。それは、田辺さんの息子さんたちがいたから。小
さな息子さんを育てていくためにも、旦那さんがいのちと引き換えにして残
してくれたお店を守っていかなければならなかったの。幸い旦那さんが生き
ている時、いつも隣にいた田辺さんは、覚えていたことを見よう見真似で、
中華料理を作っていったわ。最初は、うまく出来なったけれど、作っていく
中でうまく出来るようになった。中華料理の味も、ほとんど旦那さんの味に
似てくるようになっていったわ。そのお陰で、引き続きお店を守っていくこ
とになったのよ。いまでも、息子さんとお嫁さんが、しっかり守っている
わ。」
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∇編集後記∇_________...............................................
ちょうど一週間前。
北京五輪の聖火リレーが長野でおこなわれた。
混乱の中、嵐のように聖火が過ぎ去っていったという感じだ。
中国とチベットの両方の旗が、聖火に、そしてランナーに重くのしかか
る。
真実を見えにくくして、人々を力で押さえる。異なる意見は排除する。
行き過ぎるナショナリズムの中で、何も見えなくなってしまう。何も言え
なくなってしまう。
いまの日本も似たようであり、本当に怖い。
これまでの中で、一番哀しい聖火リレーだったように思う。
平和の祭典であるオリンピック。
北京五輪が終わるまでに、これまでにない素晴らしい聖火となるように祈
りたい。
今回も、このメールマガジンを最後まで読んでいただき、本当にありがと
うございました。
ご意見・ご感想をお待ちしております。
どうかよろしくお願い致します。
次回の発行は、2008年5月17日(土)を予定しています。
もし、よろしければ、引き続き読んでいただければ幸いです。
本当にありがとうございました。
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_/_/☆ 2008年05月03日 No.00133 号 ☆_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
オランウータン王国・ことばの杜 メールマガジン『杜の本屋さん』
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