メールマガジン『杜の本屋さん』 |
「障害」がある父親を持つ女子中学生。「障害」者である男子高校生。いま、二人の文通が始まります。社会福祉をテーマに長編物語を連載。今秋より新連載を開始します
創刊日:2002-07-05
最新号:
2009-11-07
発行周期:第1・3土曜日
読んでる人:11人
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最新号のみ
発行者サイト:
あり
オランウータン王国 ことばの杜
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メールマガジン『杜の本屋さん』 2009年11月07日 No.00168 号
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【もくじ】
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◎連載『優愛物語』 第1話
◎編集後記
※このメールマガジンは、等幅フォント(Macintosh)、固定ピッチ(Window
s)で正しく表示できるように編集しています。
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【連載『優愛物語』 第1話】
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『迷い』の中にある人たち
共に『迷う』人たち
誰もがぶつかる人生の問題
乗り越えたいから
乗り越えて欲しいから
こころで
こころを
癒いやす
それが『看みる』と言うこと
貴方には
いま
何が看えますか?
何を看ようとしていますか?
そんな貴方に、この一冊を贈ります。
《一》
また、春がやって来た。
一年前のことなんか、何もなかったかのように…。
明日は、皐の結婚式。
そして、二十五回目の誕生日だ。
「もう一年か…。早すぎるよ」
皐は、誰に言うのでもなく、一人小さな声で呟いた。
皐は、明日から始まろうとしている新しい生活に不安を感じていた。これま
でいつも両親たちに守られてきた自分が、これからは、新しいパートナーとと
もに新しい生活を、新しい家族を守っていかなければならない。本当に自分に
できるのだろうか。憧れの両親たちのような家族が築いていけるだろうか。不
安は尽きることがない。皐は、大きく一つため息をつく。
皐の不安は、これだけではない。皐にとって、何よりも両親たちのことが心
配だった。特に父親のことが、一番の気かがりだ。だからこそ、皐は、新しい
パートナーとの生活を選択した。これからは、新しいパートナーと一緒になっ
て、両親たちのことを支えていきたい。守ってもあげたい。皐は、ずっと心に
決めていた。
だが、その決意が、最後まで皐のこころを苦しめた。苦しんで、苦しんで、
その中で皐は思った。いっそのこと、これまでと何も変わりなく、いつまでも
両親たちと一緒に暮らしていこうか。そうすれば、両親たちも、自分自身も、
新しいパートナーとなる人も、誰も哀しい想いをしなくてもいい。させなくて
もいい。そして、『あの人』にも…。
そんなときに決まって、『あの人』の笑顔が皐の中に浮かんでくる。この一
年間、いつもそうなのだ。まるで、新しい生活へ弱気になっている皐自身の背
中をそっと後押ししてくれているようだ。だからこそ、皐は、一歩、また一歩
と前へ踏み出すことができた。だからこそ、新しいパートナーと未来や希望を
持つことができた。いまの皐は、一秒、一秒、刻々と移り変わっていく瞬間、
瞬間が夢でなければと願うぐらい最高に幸福な気分だった。
しかし、こころが重たかった。こころの奥深くに閉じ込めてきたもう一人の
皐が、手放しで祝福してくれていないからであろう。哀しい瞳をして、じっと
皐自身を看つめている。
(これで、本当にいいの?)
皐自身、もう解っていることだった。この一年間、何度も、何度も繰り返し、
自分自身に問いかけてきたことなのだ。皐にとっては、そのためだけに一年間
という時間が必要だった。
(いまさらだよね。いまさら…。あの時には、もう戻れるはずがない。私が
決めたことなんだよ)
皐は、ゆっくりと目を閉じる。涙がこぼれそうになったからだ。このところ、
いつもそうなのだ。もう一人の皐の声が、どこからともなくきこえてくるたび
に、皐自身、息ができなくなるほど胸が締め付けられる。こころが痛い。気づ
けば、いつも涙を流している。だからこそ、皐は、どんなことがあったとして
も開けることの出来ない鍵をつけ、こころの奥深いところへもう一人の皐を閉
じ込めてきたのだ。一年前からずっと、あの日のことを後悔し、哀しみ続けて
いるもう一人の皐自身を…。
でも、それは無駄な抵抗だった。いくら頑丈な鍵をかけてみても、いまもな
お、もう一人の皐と皐自身が鬩ぎ合う。
(ほんとうにこれでいいの?)
皐は、もう一度大きくため息をつく。
「それも、今日で終わりになるね」
皐は、また誰に言うのでもなく、一人小さな声で呟く。そして、本当に最後
となる日記を書き始める。
最後の日記。
それは、長い間、こころの奥深くに閉じ込め、決して向き合おうとはしなか
ったもう一人の皐自身を自由にしてあげること。
一緒になって、明日から始まろうとしている新しい生活を楽しみながら生き
ていこうとすること…。
そして、もう一人の皐にこころからの笑顔で、「おめでとう」と言ってもら
うこと…。
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【編集後記】
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いよいよ今日から新しい物語が始まる。
一度書き終えたものをあらためて書き直していく作業は、思っていた以上に
大変なようだ。
なぜ、こんなことばを使ったのだろう。
ここでは、どんなことが書きたかったのだろう。
なぜ、あのときは書かなかったのだろう。書けなかったのだろう。
あの頃、ただ書くことだけで精一杯で見えていなかったことが、やっと見え
てきたのかもしれない。
ギリギリの状況は、まだまだ変わらないが、それでも、ほんの少しだけ自分
にも、周りにもゆとりを持つことができつつあるのだろうか。
それなら嬉しいことだ。
今日から始まるこの物語が、どんな新しい展開を辿っていくか。どんな新し
い発見ができるのか。
私自身、いまから楽しみにしている。
もし、よろしければ、そんな楽しみにお付き合いいただけば幸いである。
今回も、このメールマガジンを最後まで読んでいただき、本当にありがとう
ございました。
ご意見・ご感想をお待ちしております。
どうかよろしくお願い致します。
次回の発行は、2009年11月21日(土)を予定しています。
もし、よろしければ、引き続き読んでいただければ幸いです。
本当にありがとうございました。
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ランウータン王国・ことばの杜 メールマガジン『杜の本屋さん』
◇発行日 2002年07月06日創刊 毎月第1・3土曜日発行
◇発行責任者 櫻町 浩
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