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現役 オックスフォード大学院 留学生がリアルタイムでお届けする、愛と肉欲(ウソ)の留学叙述詩。 日記?紀行文?詩?短編?エッセイ? イギリスや留学の話を交え、セキララにお届けしてます。 必見!!




英国留学『牛津録』第九録の六

発行日: 2005/2/22

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■DOMI|MINA■  くるり学 の                ■■■■
■ NVS|TIO ■          牛津録           ■■■■
■ILLV|MEA ■        oxford  record         ■■■■
■ |VVV| ■                第九録の六   ■■■■
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●第九録「ブリティッシュショック」(六)

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   ◆Contents◆

      ◆「ブリティッシュショック」(六)
        「ああ無理だよ」面接官は不敵な笑みを浮かべ…

      編集後記
        □オックスフォードに留学する方法(二)
        □次回予告

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●「ブリティッシュショック」(六)
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  このときの僕といったら目も当てられないほど惨めに映っていたかもし
 れない。
 
  さしずめ僕は犬だった。しょぼくれた犬。ない餌を探して下を見続ける
 残飯処理の犬。なるべく目立たないように街を徘徊しながら、いつ訪れる
 かも分からない最期に怯える。子犬ならまだかわいげがあるが、大人になっ
 た野良犬に情けをかけてくれる人はいない。
 
  打たれ弱すぎ?
  僕も全く挫折を知らないわけじゃない。今まで受けてきた面接全てに好
 成績を収めたわけじゃないし、実際落とされた面接もいくつかある。その
 少ない経験から言っても、決して楽観的になれるような展開ではなかった。
 むしろ、今すぐここを出て行ってもかまわないよと言われそうで、それが
 怖くて犬のように物ほしそうな眼差しで、面接官を見つめていたかもしれ
 なかった。
 
  なぜここまで意気消沈しなければならないのかには、さらに理由があっ
 た。
  僕と指導教官との間の折り合いの悪さは、既に書いたとおりだ。それな
 のにこの僕が面接会場に現れたということは、つまり、何だかんだ言って
 も最終的には推薦状を書いてもらうことに成功したということだ。なあん
 だ前の話はただのフリか、と思うなかれ。この結果にももちろん裏がある。
 つまり、ただで書いてもらった訳じゃないのだ。ある覚悟をして、ある条
 件を出して、その見返りとして推薦状を受け取ったのだ。その条件とは、
 その研究室を出て行くこと――。僕は既に背水の陣を引いていた。
 
  その状況でこの結果だ。正直目も当てられなかった。問題を簡単にして
 もらった上、時間を引き伸ばすような交渉もしておきながら、全く結果を
 出せないなんて……。言わずもがな、こういった面接でのスピーチは、与
 えられた時間の中で与えられた事柄を述べる、一種の事務処理能力が問わ
 れる。それにしくじった時点で、その項目について0点を与えられても文
 句は言えないのだ。どんなに不格好でも不手際極まりなくても、最期まで
 完遂してはじめて一つの仕事だからだ。
  僕はこう考えている間も、奇妙な脱力感を感じていた。まだこの場にい
 る限りは、常に前向きに対処するべきだ、あがくべきだ。そう思う一方で、
 潔く今の状況を受け入れなければいけない。終わったんだ、惨敗なんだよ、
 と。
 
  面接官たちは、三人でまだこそこそと話をしている。今となっては時間
 がひどくゆっくり流れているように感じる。勢いよく崖の下へと飛び込ん
 だはいいが、途中の枯れ枝にひっかかってしまい、じわじわと谷底まで転
 落する時間を味合わされているようだ。
 「Please sit down」
  面接官の一人に促されるまま、僕は席についた。
 「もう既に面接時間は過ぎてしまいましたが、後いくつか質問があるので、
 もう少しばかり答えてください」
  面食らった僕をよそに、あの痩せ身の面接官が言葉を続ける。
 「研究以外に何か打ちこんでいたものはありますか?」
 
  幸か不幸は、面接は続行されたのだった。
  既に履歴書に書かれてあることのチェックでもするのだろうか。研究・
 教育歴のあとに、extra-curricular activities(課外活動)が書いてあ
 る、順番からいってそうだ。
  僕はうなだれながらまた考え始めた。
  バンドをやったこともあるし、ライブイベントをいくつか企画したこと
 もある。いろんな所に行って頭を下げ、工事現場で使うような足場を大量
 に借りてステージを組んだこともある。あのときは皆の集まりが悪くて途
 方に暮れながらせっせと足場を組んでいったな。雨と突風でビニールシー
 トが飛ばされたりしてさんざんな目に会った。他には、自主制作映画の手
 伝いとか、それから演劇をやったこともあるし、短いお話を書いたことも
 ある。 細かくは伝えられなかったし、伝える気も起きなかったけれど、
 これらのことをつらつらと並べ立てて言った。
 
  そうやって話していくうちに、やがて懐かしさで心に少し余裕ができて
 いた。というのも、この課外活動のほとんど全てが、研究で忙殺される大
 学院以前の話だからだ。進学以降は、既に書いた通り、そんな雰囲気や余
 裕が与えらていなかった。もしやっていたとしても極力最小限度に抑える
 しかなかった。それも、こそこそと隠れるように。なぜ? もちろん怖かっ
 たからだ。研究室にばれてしまうことの恐怖感と言ったらない。いつ首に
 されるかわからない恐怖と隣合わせと言えば分かるだろうか。
 
 「どんな作品なの? 何か、例えば作品の名前でも言ってくれないか」
 
  面接官たちは僕の趣味に興味をひかれたようで、短いお話というものに
 さらに突っ込んだ質問をしてきた。
  ガイジンはノリがいいので、冷やかしなのかなんなのか分からない。僕
 は相手の顔色を窺いながら、おそるおそる題名を口にした。
 
 「『聖牛は泥の中でいななく』 英語でいうと……」
 
  それを口にした途端、三人の目が一斉に輝いた。
  僕は、そのまま軽く説明を試みる。
  聖牛とは sacred cow つまりインドなどで崇め奉られる聖なる生き物と
 しての牛のことだ。それはつまり、ただ生きるだけで崇め奉られ、全く批
 判されることのない物を暗喩していて、そういった存在が皮肉にも、泥に
 代表されるような汚物の中へと落ち込み、足を取られ、叫びをあげてしま
 う、というような意味だ。テーマも実際そのあたりにあった。
  すると、なんとこちらが詳しい説明を始める前にストップをかけられた。
 それから三人で題名の意味を反芻するように頷いて、題名の説明を一足に
 飛ばして内容の説明を求めてきた。
  なんて飲み込みの早い連中だろう。先ほどまで説明で四苦八苦していた
 のが嘘のようだ。題名一つで意味を汲み取り、おそらくはプロットの一つ
 も想像したに違いない。僕は一気阿成といった風に内容の説明に入る。そ
 れにもすぐにストップがかけられ、納得したように三人は首を振りあった。
  続いて、出版されたのかい? と訊いてくる。
  とんでもない。この国で、そんな簡単に一介の学生の小説が出版される
 なんて考えられない。強力なコネか新人賞でも取らない限り出版なんて夢
 のまた夢だ。後で知ったのだけれど、オックスフォードの人は古くから出
 版界とコネクションがあって、学生の段階で既に本を出版している人が何
 人もいるらしい。そういう実績もあって、逆に出版業界でも本にしやすい
 かもしれない。
  とにかく僕は「いいえ、出版していません」と答えてその事情を簡単に
 説明すると、日本の不自由なシステムに納得が行かないといった様子を見
 せて、僕に憐れみの眼差しを手向けた。
 
 「で、最近はどうなの?」
  唐突に、そしてにこやかにあの痩せた経済学者が尋ねてくる。
  この質問に僕は実は戸惑った。そして話すかどうか躊躇した。
 「研究が第一ですから、最近は全くやっていませんよ。研究者になろうと
 しているんですから」と返した後で、続けて「続けるかどうかは……」と
 口を濁した。
  すると今度は先ほどまで静かに座っていた女性が、乗り出してきて言っ
 た。
 「You should do that(それ、やるべきだね)」
 「Should I do that?(やるべき?)」
  すぐに意味がとれなくて、オウム返しで聞き返すと、
 「Yes, you should(そう、続けるべき)」と、三人が声を合わせるよう
 に言った。
  僕は耳を疑った。
 
 「大学院に限らず、最も熱心に研究をしなければならないのは、最初の一
 年なんだよ」
  後は、そこから出発して、どうやって自分の視野を広げていくかの方が
 重要なんだ。
 「研究だけが、人生じゃない。オックスフォードに行ったら、重要なのは
 そこでの生活すべてなんだ」
  全ての経験を肥やしにし、いろんなことをやるべきだ。
 「もちろんこれに受かったらという前提だけどね」
  と笑いながら付け加えた。
  さきほどまでの曇天が嘘のようだ。突然三人の対応がぱっと明るく変化
 したように感じた。あまりの対応の変化に僕は信じられず、思わず逆に質
 問してしまった。
 「でも、さっきのスピーチで fail (不合格) なんじゃあ……」
  三人は顔を見合わせながら苦笑し、代表するように白髪の老人が言った。
 「君はとにかくチャレンジした。それに向かう精神は本当に大切なことな
 んだ。大切ってだけじゃない、これからの君の人生の中で、最も必要なこ
 との一つだ。これからも頑張って」
  僕が信じられないという気分で経済学者を見返すと、彼はうんうんと頷
 きながら、
 「次はきっとオックスフォードだと思うよ」
  と握手して、笑顔でもって僕を面接室から締め出した。
 
  いつのまにかエレベーターの音が聞こえたかと思ったら、気付くと僕は、
 桜の下で呆けるように歩いていた。
 
  なんてことだ。
  ショックだった。そしてこれだ、と思った。この意識、ジャッジするポ
 イント、いろんなものに興味を持とうとする人へのサポート、厳しさと柔
 軟さ、そしていい加減さ? これら全てが僕が求めていたものなのかもし
 れない。
  そこで全てが、英国へ留学しなければならない必然が出揃った。
  イギリスへ行かなきゃ。
 
  I must go to UK.
 
 
 (了)
 
 
###################################
◎編集後記

 どうもくるり学です。今週の話、いかがだったでしょうか。
 不必要に長くなってしまいましたが、やっと終わりました。はー、やっと本
編に戻れる。
 またまた前回の編集後記で誤字を出してしまいましたが(次号は九録の「六」
なのに「五」と紹介。さらに「伏線」を「複線」だなんて…電車かよ)、めげ
ずに今回も編集後記を書き散らそうと思います。
 さて早速……

□オックスフォードに留学する方法(二)

 前回では、大学院留学・入学する際の手順をざっと説明してみました。
 今回はその続きと、さらなる方法をご紹介します。

4.入学の決め手!
 ずばり、学部からの受け入れ表明です。
 奨学金がどうとか英語がどうとかは二の次です。向こうの教授や講師が気に
入るか、こちらの名前でも認識してくれて、「入れてあげれば」と一言いうだ
けで入れるのです!(強調)
 実際それに近いことも聞いたことがあります。
 近年、優秀な英国人が減って、外人でもいいから質を保ちたいと思っている
ので、基本的に勤勉な日本人には好意的だという追い風もあります。みなさん、
どんどんトライしましょう。入るのは比較的簡単です。学部にまで面接に呼ん
でもらえればしめたもんですよ!

5.カレッジはどこ?
 面接に受かってしまったり、自費にしろ向こうのデパートメントから受け入
れの連絡がくれば、そこではしゃいで後は10月の入学を待つだけだ、と思い
がちですが、実はそこに小さな落とし穴が待っています。
 そう、カレッジ。
 実はこのカレッジ選びがことの外重要なポイントだと言うのは、来てから知
らされることが多いんです。大学院ではなく大学に入学する人は、そもそも学
部じゃなくカレッジに入学しにくるので、どのカレッジに申し込むかは入念に
チェックしてから入学してくるんですが、大学院生の方は研究=学部がメイン
なので意外とおろそかに考えがちです。しかも重要なポイントは、学部から受
諾の連絡をもらっただけでは実は入学できなくて、カレッジからの受諾の連絡
ももらって初めて、正式な入学手続きに移行することです。カレッジからオファ
ーをもらうことも忘れないでおきましょう(笑)。
 ちなみにこのカレッジたち、今までのメルマガを読んでいれば薄々伝わって
いるかもしれませんが、歴史や資金の潤沢さ・規模などで大きく人気が分かれ、
どのカレッジに所属するかで全く学生生活の様相が変わってきます。たとえて
言うと、医学部と農学部、法学部と教育学部程度の違いが出てきます。あなど
れないでしょう?
 学部に受け入れてもらえれば、どこかに入れるのはほぼ間違いないですが
(笑)。
 といって、忘れていてもひどく滅入る必要はありません。外から見ればみん
な「オックスフォード」です。ただ生活が不便になるだけです。
 またいつか、余裕があればカレッジの違いをメルマガで書くかもしれません。

6.事前交渉・渡航準備
 カレッジが決まってしまえば後は簡単です。カレッジの担当者が適切な書類
をどんどん送ってきて、住む場所などの斡旋なりをしてくれるので、難しいこ
とはないでしょう。もちろんこもサポート等もカレッジによるので、人気が有
り尚かつ予算も潤沢にあるカレッジを選んでおくとよいでしょう。あと、日本
から初めて英国に行く人が不安に思う点といえば、語学でしょうか。これにつ
いては次号以降でふれる予定です。

7.その他の方法

 交換留学制度: 一番オーソドックスな方法です。ただし、期間に制限あり。
 1.アメリカの大学との交換留学制度で
 2.ヨーロッパの諸大学との交換留学制度で
 3.日本の大学からの交換留学制度で
 ただしこの場合、通常の入学とはことなるので、通常の学位等とは無縁です。

 企業派遣: 大学院の日本人留学生ではこれが一番多いです。但し、勤続●
年以上などの制限あり。
 省庁派遣: 数は少ないですが、コンスタントに来ているようです。これも
勤続年数などで制限があるようです。外務省など。


□次号予告

 さて、次号でやっと本題の大学院留学の話に戻ります! といっても、時系
列に沿って今回の話と地続きで進んでいく予定です。
 オックスフォード入学は決定した。渡英するまな〜ぶの目前には、予期せぬ
現実が次から次へと現れてくる?
 次号、第十録「移民」、請うご期待です。
 って、先に余禄だしちゃうかな?(笑) 第十録、いつになるかは不明です
が、気長に待ってあげてください(汗)。

by Kururi

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ある日『これからは中国だ』と思い、中国上海で事務所を開いてしまいました。
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