国際ニュース解説と評論記事
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AC通信 No.201
発行日: 2007/4/27[AC通信:No.201] (2007/04/25)
[AC論説] No.201 台湾人に生まれてよかった
台湾から戻ってくる飛行機の中で考えたことがある。川柳に「夕涼
みよくぞ男に生まれけり」というのがあるが、「よくぞ台湾人に生ま
れけり」と思った人はいるだろうか?
台湾人は虐げられた民族である。台湾人は自分の国を持たない。ユ
ダヤ人も自分の国を持たず、虐げられた民族として二千年も生きて
きたが、ユダヤ人にはユダヤ人の誇りがある。台湾人にはそれがな
い。こう書いたら反対して怒る人は何人いるだろうか?
●外省人と台湾人の格差
今回の旅で見聞したのは、外省人と台湾人の恐るべき格差待遇であ
る。これほどの差別をうけてどうして革命がおきないのかが不思議
である。台湾人は団結力がない、行動に移せない。人民を代表する
政治家や与党の民進党が何もやらないから民衆はうかつに動けない。
民衆には「お上」に頼る心が強いが、その「お上」が国民党の差別
統治に対して何もしない。野党に成り下がっても外省人の勢力が強
すぎて何もできないという。それが事実なら国民党が政権を取り戻
したら大変なことになる。
蒋介石が台湾に亡命してから、蒋政権は軍、警、公、教のグループ
の待遇改善に力を入れてきた。このグループは中国語を話すグルー
プが主体で、台湾人の農、工、商は無視された。外省人に対する政
府の補助はいろいろな名目をつけて増加し、外省人の生活が飛躍的
に向上する一方、人民の生活は景気の後退と共に悪化していった。
たとえば学歴も職業もない退役軍人は家屋手当てや生活補助金など
の名目で一ヶ月に6万元以上の収入が保証されているのに対し、貧
農の生活補助は数千元にとどまっている。しかも外省人が引退して
中国大陸に移り住めば大陸における家屋、生活、衣類、などの補助
金を台湾の住所とは別個に支給される。また、外省人子弟の大学進
学率は15%以上だが農民子弟の進学率は3%に満たない。
これほどの差別待遇を受けながら台湾人は沈黙を守り、外省人は事
あるごとに種族偏見を叫び、陳水扁政府は外省人と種族和解を優先
するという。台湾人民を無視して少数派の外省人を優遇する論客が
民進党の内部に多数いる。
●民進党は泛緑ではない
民進党が政権を取っていらい7年の間、政府は事毎に泛藍に牽制さ
れて政策は麻痺し、国防予算を通すことが出来なかった。それでも
民族融和、政党合作を唱えて和解を主張する政治家がいるのは不思
議というよりほかない。
民進党は選挙のたびに中間路線と称して泛藍との合作和解を主張し
てきた。これに対し泛藍陣営は和解どころか攻撃批判を繰り返し、
人民は民進党に失望して選挙はいつも失敗に終わっている。それで
も和解を主張する政治家が後を絶たない。
●民進党四つの過ち
民進党は四つの大きな過ちを犯している。その第一は民進党のみが
台湾人を代表する泛緑政党という思い上がりである。人民の中にも
民進党が潰れたら泛緑は潰れると憂慮する人が多い。台聯党を潰し
て大政党となり、国民党と二大政党で国を操ると主張する。国民党
(泛藍)は敵なのに敵を優遇して台聯党を潰そうとする。
第二の過ちは選挙を優先して国益を無視することだ。選挙のたびに
種族和解、金銭補助、道路建設などを宣伝するが、経済、国防など
は問題にしない。軍警公教の優遇処置を発表して、農民の怨嗟には
無関心である。
第三の過ちは人民が民進党(泛緑)を支持するのは当然と思い込ん
で人民の声に耳を貸さないことである。人民がなぜ泛緑を支持する
か、何を求めているかを模索せず泛藍との和解ばかり考える。泛藍
が和解に応じないことは歴然としているのに和解を唱えるのは愚劣
であり、民心が離反するのは当然である。次期総統候補者には泛緑
の色を棄てて空色(浅藍)の旗を立てる者もいる。これまで二度の
選挙で中間路線を主張した民進党は敗退したが、それでも中間路線
を主張するものがいるのは不可解である。
第四の過ちは中華民国の形骸を維持するあまり、中国の恫喝や国民
党の圧力から逃れることが出来ない。民進党は正名制憲をやらず、
改名修憲を唱える。現状維持が民意と言うが、現状維持とは中国の
お情けにすがるだけ、現状打破ができないことへの言い逃れに過ぎ
ない。中華民国を棄てて現状を打破しなければ台湾はよくならない。
●洗脳、恫喝と情報統制
民進党の批判になってしまったが、本意は民進党の批判ではなく、
人民は民進党に期待している、強い指導者を希求しているというこ
とである。陳水扁がメディアの横暴を潰す絶好の機会にTBVSを支持
してメディアを収拾不可能なほどに増長させた罪は大きい。
台湾のテレビ、新聞は9割が中国系統で占められて台湾人の声は殆
ど聞こえない。これが台湾人を無気力にさせる要因である。中国人
は毛沢東、蒋介石の時代から宣伝と洗脳に力を入れてきたが、台湾
人は洗脳と恫喝、情報統制のため中国、国民党の歪曲報道にどっぷ
り浸かっている。憤慨するだけで鬱憤の捌けどころがない。
最近のことだが、選挙演説で「宋楚瑜はおそらくマージャンでもや
っているのだろう」と皮肉を飛ばした李登輝が名誉毀損で有罪宣告
を受け、200万元の罰金を宣告された。これに比べて陳水扁の辞職
を呼びかけた馬英九が「弾は込められた、引き金を引くばかりとな
って、(辞職せねば)醜い死に方をするぞ」と公言した事件は不起訴
となった。国民党メディアはこの二つの判決に凱歌をあげた。
司法官がこれほど不公平で横暴なのに民進党や人民団体は沈黙した
ままである。民主国家を自慢しながら司法がこんなにも不公平では
中国の共産党独裁と同じである。平然と不公平な判決をする司法官
に抗議しなければ、馬英九の公務特別費の汚職事件も不起訴か執行
猶予となる可能性がある。それなのに民間では馬英九の有罪を見込
んで議論を交わし、馬英九が不公平にも無罪宣告を受けた場合を考
慮した言論は書かない。
●台湾人の誇りとは金と権力
話を元に戻して、「私は台湾人であることを誇りに思う」と言う人は
いるが、「台湾人に生まれて本当によかった」と感じる人や、台湾人
として生まれた喜びを感じる機会はないだろう。台湾人にとって、
誰かがオリンピックで金メダルを取っただというニュースで興奮す
るぐらいで、連日のように報道される外省人の横暴、立法院の横暴
ぶりや滅茶苦茶な裁判などに対する憤懣の捌け口もない。台湾人が
誇るものはないのである。
虐げられた台湾人が求めるものは金と権力、これしかない。金があ
るように見せびらかす、公務員がモンブランをポケットに挿し、ロ
ーレックスの時計をはめる。ベンツやBMWでゴルフ場へ行く、名刺
に肩書きをズラリと並べるなど。後藤新平が台湾人のことを「愛銭、
愛面子、恐死」と喝破したように、金と権力を見せびらかすよりほ
かに自分の存在を誇示することができない、誇るべきものがないの
である。
台湾人は概して勤勉である。よく働き、金儲けがうまい。政治家に
なりたがる人もお金と権力を求めるのが第一義で、国益、社会利益
などは選挙のスローガンに過ぎない。だから当選しても金と権利を
追及するが国のために尽力する気持ちが薄い。
●国家、郷土観念の欠如
台湾人はメディアの洗脳によって中国化されてきた。同文同種とか、
漢民族の血統、歴史の帰属など、騙され続けてきた。民進党でさえ
台湾を中華民国と称して恥じることがない。国家観念が薄いだけで
なく、中国に投資して金儲けをする連中は独立しなくても経済が繁
栄し生活が保障されていれば少しぐらいの『不自由』は我慢できる
という。この不自由とは外省人に統治され、剥奪され続けることで
あり、奴隷に甘んじていれば生活は保障されると思い込む。しかし、
台湾が中国に併呑されても今の生活が保障されるだろうか?中国に
は10億の貧乏人がいるが、このうちの一億人が台湾の生活にあこが
れて移住し、彼らが今の外省人に代わって台湾人奴隷を統治すれば
どうなるか、考えない。
台湾の軍備予算は約6400億元であるが、野党は7年間もこの予算を
拒否し続けてきた。ところが、政府が補助費やその他いろいろな名
目で外省人、特に退役軍人とその眷属に支払っている金額は軍備予
算とほぼ同額の6400億元、これを立法院の審査を通さない「特別予
算」名目で毎年支払っているのである。これほどの掠奪を60年も続
けてきた事実を台湾人は殆ど知らされていない。GNPの何割かが毎
年掠奪されている、もしこの掠奪を除けば台湾は更に繁栄するはず
である。だが、中国が台湾を併呑すれば現在の掠奪よりも数層倍も
ひどい結果を齎すことを考えたことはない。
●人民の欲するものは何か
人民が望んでいるのは何か?台湾人に生まれてよかった、と実感で
きる自分の国を作ることだ。それには国つくりを阻む外省人を一掃
することである。外省人とは60年も台湾に生まれ、台湾に住んでい
ながら台湾を故郷と思わぬ中国人のことである。台湾を故郷と思わ
ぬ人間は追い出すよりほかない。
これを達成するには台湾人の団結と努力がいる。有り余る不満を抑
えて不本意な生活をするより、自分の国創りのために奉仕すべきで
ある。これは決して困難ことではない、みんなが団結すれば少数派
の外省人は追放できるはずだ。
張超英の伝記「宮前町九十番地」の中に(p.234)彼が述べた信念があ
る:「一年が365日、十年で3650日とすれば、80年、90年の人生は
だいたい三万日と思えばよい。このうちの一万日を学習に使い、一
万日を事業と子女の養育のために使い、残りの一万日は世間に奉仕
すべきだ。人生に別れを告げるときになって『わが人生であの事も
この事もやれなかった』と慨嘆しない様に生きるべきだ」。
まことに素晴らしい信念である。私も彼と同じような信念を持ち、
一万日を学習、一万日を事業と家庭に使い、今では残りの人生を台
湾のために奉仕したいと努力してきた。それでも『台湾人に生まれ
て本当によかった』と思う日はまだ到達していない。みんなが同じ
ような信念を持って台湾のために努力することを心から願っている。
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