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[ 素顔のアジア アフガニスタンの青空と涙(3) ]

発行日: 2005/12/12


■ 間もなく三井が旅に出るので、卓上カレンダー2006の販売は12月13日で締め切ります。

■ 「素顔のアジア」は旅フォトグラファー・三井昌志が2001年から2005年にかけて旅したアジア各国の表情を綴る写真付き旅行記です。初めての方は、まずホームページをご覧下さい



 2004年5月に訪れたアフガニスタンの旅行記をお送りしています。(バックナンバーはこちら

 僕らを乗せたハイエースはデコボコな山道を順調に走り抜き、午後一時前にバーミヤンに到着した。僕はさっそく食堂の二階にある安宿にチェックインして、ベニヤ板で仕切られた簡素な部屋に荷物を置き、町を歩いてみることにした。

 バーミヤンはタリバンによって爆破された巨大な石窟仏像があることで知られた土地なので、僕もまずはそこに向かったのだが、仏像の修復作業の様子を一通り見物した後は、例によって目的も定めないままぶらぶらと歩き回った。

 バーミヤンは「町」と呼ぶには小さすぎるし、「村」と呼ぶには大きすぎる、という土地である。「山里」という表現が一番ぴったりと来る。里の北側に万年雪を湛えた山が聳えていて、そこから流れ出る雪解け水が畑を潤している。農民達が住む家は高台の上に建てられていて、どの家も日干し煉瓦を三メートル以上も積み上げた高い塀に囲まれているのだが、大地と同じ色をしているので、印象は控え目だった。

 人々の主な移動手段はロバである。普通に歩く人よりも、ロバの背にまたがった人とすれ違うことの方が多いぐらいだ。人だけでなく、干し草や水の入ったタンクなどの荷物を運ぶロバの姿も多かった。たまには馬のように軽快なリズムで駆けているロバを見かけることもあったが、それは例外的な存在で、ほとんどのロバは人が歩くのとあまり変わらないスピードでトコトコと進んでいた。バーミヤンは砂埃を巻き上げて疾走するジープよりもスローペースなロバの方が似合う、のんびりとした土地柄だった。



 僕は様々な国で数多くシャッターを切ってきたけれど、バーミヤンで撮った写真は今までとは明らかに違う雰囲気を持つものになった。その理由のひとつが、光の質の違いだった。

 バーミヤンの空に輝く太陽は、標高が高く空気が澄み切っているために、非常に強い光を放っていた。それは鋭利な刃物のように硬質な光だった。その光は全 てのものを光と影の領域に二分してしまう力を持ち、全てのものの輪郭を非現実的なまでに鋭くさせていた。必然的に、ここで撮った写真は他にはないコントラストの強さとシャープさを併せ持つことになった。

 女性の写真をほとんど撮らなかったのも、他の国と異なる点だった。アフガニスタンでは女性を撮りたくても、なかなか撮らせてもらえなかったのである。チャドルやブルカを被って顔を隠している大人の女性に対してカメラを向けるのは、大変失礼なことだからまずやらなかったし、たとえ子供であっても十歳を超え るぐらいの年齢になると、カメラを構えた途端にわっと逃げられることが多かったのだ。「女性は家族以外の男性にむやみに顔を見せてはいけない」というのは、イスラム国に共通する習慣であるけれど、アフガニスタンほどそれを忠実かつ強固に守っている国はなかった。

 というわけで、思わず足を止めたくなるような美しい女性を見かけたとしても、ほとんどの場合は撮りたい気持ちをぐっと堪えて通り過ぎなければいけなかった。言うまでもなく、それは「美少女写真家」を自称する僕にとって、大変辛いことだった。翼に重りをつけて大空を羽ばたいてみろ、と言われているに等しかった。

 しかし、女性の代わりに撮り始めたアフガン男性が、被写体としてとても魅力的だということに気が付いてからは、女性を撮れないこともそれほど気にならなくなった。女性が写真を撮られるのを頑なに拒むのと反対に、男達はカメラに対してとても鷹揚だった。一見すると眼光鋭く近寄りがたい雰囲気を持つ老人が、カメラを向けた途端に無邪気な笑顔を見せてくれることもあった。

 バーミヤンの男達の働く姿は、とても存在感があった。農夫の顔に刻まれた彫刻刀で彫ったような深い皺や、畑仕事で鍛えられた厚みのある手は、この土地で生きることの厳しさを雄弁に語るものだった。





 9月28日に発売になった写文集「素顔のアジア」には、現在更新中のアフガニスタン旅行記のほか、インドネシア、アフガニスタン、ネパールの旅行記と写真が収録されています。
 メルマガやホームページでは未公開のエピソードも多数含まれています。是非お買い求めください。
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 旅写真家・三井昌志が撮った写真の中から厳選された12枚が、2006年度の卓上カレンダーになりました。

 世界各地の人々の表情や風景がひと月ごとに入れ替わるので、仕事や勉強の合間に眺めるのにぴったりです。大切な方へのプレゼントにも是非どうぞ。

 カレンダーの注文は12月13日までです!! お急ぎ下さい。

 (→詳しくはこちら)




 写真展@麹町が終了 12/11

 次の目標に向けての確かな手応えを掴めたということが、今回の写真展の一番の成果でした。
 間もなく僕は冬を越すためにアジアに向かうのですが、春に日本に帰ってきてからは、次の作品作りを始めるつもりです。写真集になるのか、写文集になるのか、それはわかりませんが、まだまだ僕の引き出しの中には、皆さんに伝えたいメッセージや表情がたくさん仕舞われているのです。 (→続きを読む)




 1974年、京都市生まれ。旅フォトグラファー・フリーライター。機械メーカーでエンジニアとして2年間働いた後退社し、2000年12月から10ヶ月に渡ってユーラシア大陸一周の旅に出る。
 帰国後立ち上げたホームページ「たびそら」が「@niftyホームページグランプリ2002」で準グランプリを受賞。2003年12月に初の写真集「アジアの瞳」を出版。
 2004年1月から6月に再びアジア(カンボジア、ミャンマー、バングラデシュ、ネパール、アフガニスタン)を旅する。2005年には東南アジアと津波後のインドネシア・スリランカを旅し、3月に帰国した。
 2005年9月には2冊目の著作「素顔のアジア」を出版。 (→更に詳しく)



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