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旅写真家・三井昌志が送るビジュアル・メルマガ。等身大のアジアの表情を、美しい写真と旅情溢れる文章で綴ります。大きな反響を得て、写真集として出版されました。 




[ たびそら+写真 写真展「少女達との再会」のお知らせ ]

発行日: 2004/6/30

 写真展がいよいよ一週間後に迫ってきました。今回の「たびそら」は写真展の告知と、今回の旅で撮ってきた写真の一部をご紹介します。
 なお、本日(6月30日)の毎日新聞朝刊に三井@作者のインタビュー記事が掲載されています。
ミャンマーの少女
会期 2004年7月8日(木)〜7月14日(水) am10:00〜pm6:00(最終日はpm3:00まで) ※11日(日曜)はお休みです
会場 アイデムフォトギャラリー「シリウス」(新宿御苑) (アクセス方法と地図はこちら)。入場は無料です。
トークショー 7月10日(土)の午後2時〜4時には、今年の旅を作者自身が語るトークショーをギャラリー内で開きます。興味がある方は、この時間にご来場ください。
トークショー2 7月12日(月)の午後7時から、エクスプローラ「地球探検隊」主催のトークショーでも語ってしまいます(詳しくはこちら)。こちらは30名限定の予約制ですが、さらにディープな旅話を聞いてみたい方は是非参加してください。
プレゼント 写真展会場で写真集「アジアの瞳」をお買上げの方には、他では手に入らない「アジアの瞳」オリジナルグッズをプレゼントします。(内容は当日まで秘密なんだそうです)
ポストカード 会場では「たびそら」読者の皆さんにはお馴染みのオリジナルポストカード(2004年の作品を加えた新ラインナップです)と、大判プリント写真の販売も行います。
三井は? 三井@作者はほとんどの時間を写真展会場で過ごす予定ですので、ご来場の際には気軽に声を掛けてください。
展示内容 2001年の旅と2004年の旅で撮った写真70点です。また、今回展示しきれなかった作品は、ファイルに入れて自由にご覧いただけるようにします。では、今回展示する新作写真のうち、いくつかの作品をダイジェストで紹介しましょう。

 2001年の旅で出会った少女達に再会するというのが、今回の旅の目的のひとつだった。カメラを向けてシャッターを切り、すぐに手を振って去っていくのではなく、しばらく同じ時間を過ごして、彼女たちがどんな風に暮らしていて何を考えているのかを知りたいと思った。
 住所さえ知らなかったから、うまく再会できるかどうか自信はなかったけれど、3年前の写真とおぼろげな自分の記憶を頼りにして探し歩くことから始めた。

 ミャンマーでは茶店で働いている少女とその妹に再会した。インモァン13歳。彼女が抱いているのは末の妹トゥトゥ3歳。3年前のインモァンはボーイッシュな印象の少女だったが、今では花柄模様のスカートがよく似合う美しい娘に成長していた。
 インモァンの父親は数年前に酒の飲み過ぎで亡くなっている。それから母親は亡くなった夫の弟と再婚し、間もなく彼との間にトゥトゥが生まれたのだが、2番目の夫もやはり酒の飲み過ぎで死んでしまったという。死んだ兄弟はろくに働きもせず、自分の店で出す酒をあらかた自分で飲んでしまったのだ。もう結婚なんてこりごりよ、と母親は言う。そう言いたくなるのも無理はないと思う。
 そういう家庭の事情もあって、4人姉妹の長女であるインモァンは母親の茶店を手伝ったり、妹たちの面倒を見たりするのに忙しい。そして夜になると働く子供向けの夜間学校へ通う。
 インモァンとトゥトゥは父親の違う姉妹である。にもかかわらず、いやだからこそ二人の間には特別な絆があるように僕には感じられた。インモァンが幼い妹に対して見せる表情は母親の優しさそのものだったし、トゥトゥも母親と一緒にいる時よりも姉の腕に抱かれている時の方がリラックスしているように見えた。3年の時を経ても、二人の間にある強い絆は少しも変わっていなかった。

 シェムリアップの町はアンコールワットという観光名所を擁して大きく発展しつつある。世界各地からやってくる観光客が落としていくお金が観光ガイドやホテルマン、タクシーの運転手や土産物屋といった数多くの雇用を生み出しているのだ。
 しかし町から一歩外に出れば、そこには以前と変わらない農村が広がっている。水田と水牛と椰子の木。日中の暑さを避けるために家の中で休む人々。静かで刺激の少ない日常。
「ここはとても退屈だから、いつかはシェムリアップの町に出て働くつもりなんだ」」と知り合いになった若者達は口を揃えて言った。
 変わりゆく町と変わらない農村。その狭間にいる若者の多くが都会的な生活に憧れを抱いていた。

「君はどうしてこの国を旅しているんだい?」
 外国人旅行者がほとんどいないバングラデシュを旅していると、こういう質問を何度も受けることになる。特に普通の農村や都会のスラム街などを歩き回っていると、「こんなところを歩くのはやめて、俺と一緒に近くの美しいモスクに行こう」と手を引っ張られることさえある。バングラ人の親切さはこちらの思惑を遙かに超えて強烈なのである。
 しかし僕はバングラ人が誇る世界一長い砂浜にも、古い遺跡にもあまり興味がない。そういう特別な場所ではなく、ごく普通の町を歩いて、そこで偶然に出会う人の表情を写真に収めるというのが、僕の好む旅のスタイルなのだ。バングラを歩くこと、そしてアジアを歩くこと。それは僕にとって地図のない宝探しのようなものだった。

 ネパールの少女達はカメラを向けてもリラックスしたありのままの表情を見せてくれた。彼女達は決して撮られ慣れているわけではない。きっと一眼レフカメラを向けられた経験なんて今までに一度もないだろう。それなのに恥ずかしがって逃げ回るわけでもなく、無理に笑顔を作るわけでもなく、実に自然な表情で僕を見つめ返してくるのだ。

 僕は時々旅先で「肩書きは美少女写真家です」なんて冗談めかして言っていたのだけど、ネパールを歩き始めてからは正真正銘の美少女専門写真家になってしまった。他の被写体の存在を忘れてしまうぐらい少女達は美しかった。その瞳の輝きに吸い寄せられるように、僕は少女を撮り歩いた。

 アフガニスタンは美しい空を持つ国だった。
 カブールからバーミヤンに至る山岳地帯の空は異様なほど青く澄んでいた。空には一片の雲も浮かんでいなかったし、細かい塵も水蒸気さえもまったく含まれていないように見えた。それはいつも世界を柔らかく包んでいる半透明の膜を全部剥がした後のよう透明な青空であり、同時に海のように深い色を湛えた青空でもあった。このような色をした空を見たのは初めてだった。
 太陽の輝きも強烈だった。それは鋭利な刃物のような硬質で、地上にあるもの全てを光と影の領域に二分してしまうような強い力を持った光だった。


 結果としてアフガニスタンで撮った写真は、他の国とは明らかに違うものになった。そこには広大で厳しい自然があり、美しく青い空があった。何よりも光の質が他の土地とは全く違っていた。
 僕は今までずっと人を撮り続けてきた。あくまでも人が主役であり、その背景に自然や町がある。そのような写真を撮ってきた。しかしこの国では自然が主役であり、人の営みは自然を構成する一要素にすぎないささやかなものだった。だから僕はそのような自然と人々との関わりを写真に収めたいと願うようになった。アフガニスタンの青空が持つ強い力は、僕が写真を撮ることの意味をも変えてしまったのだ。



・ 「たびそら+写真」は、三井@作者が2001年に10ヶ月かけてユーラシア大陸を一周した旅の記録を綴るメールマガジンです。ホームページもぜひご覧ください。

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