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日本初の格闘技総合ポータルサイト『Bout Review』(バウトレビュー)のオフィシャルメールマガジン!!1997年創刊以来、K-1,PRIDEを筆頭に格闘技なら全ジャンルを網羅!試合速報や選手インタビュー以外にUFCなど海外情報も満載!!




[BoutReview EXpress] Weekly - Vol. 009

発行日: 2001/12/29

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■■□■ BoutReview EXpress [Weekly] Vol. 009 (Sat, 29 Dec. 2001) ■□■■
           http://www.boutreview.com/
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-- Contents -------------------------------------------------------------

●自由が丘日報 No.008(特別編)
 「ばうれび空白の3日間」に感じたこと
        Text by 井原 芳徳(本誌編集部員)

●コラム 高慢と偏見
 【格闘技】と言う名の曖昧な領域(3)
 「RINGSの活動停止は『ショー』と『競技』のバランスが崩れた結果である」
        Text by 井田 英登(本誌編集長)

●ニュースヘッドライン 12/22〜12/28
●大会結果・レポート&写真 12/22〜12/28更新分

●年末年始の格闘技カレンダー [12/30〜1/4]
●読者コーナー「今日のヤジ将軍」

※「コラム・Draw the Additional Line」は今週はお休みします。

※23日未明から26日未明にかけ本誌ウェブサイトが停止し、皆様に多大な
ご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。その顛末を「自由が丘日
報」の特別編として掲載するにあたり、面白可笑しく書いている部分もありま
すが、今回のトラブルに関しては十分反省しておりますので、どうかご了承い
ただきたく存じます。


≪自由が丘日報(特別編) 井原芳徳≫─────────────────

        No.008「“ばうれび空白の3日間”に感じたこと」


 年の瀬のBoutReviewにピンチが襲った。
 PRIDE.18福岡大会、DEEP2001有明大会の開催された23日未明から、ばうれ
びの誌面がネット上から見られなくなるというトラブルが発生したのである。
 原因は年内に予定していたサーバ移行にともなうドメインネームの変更が、
新サーバにデータをアップロードしていない段階で行われてしまったことが一
つ。さらに最悪なことに、新サーバ自体がなぜか稼働していないため、新サー
バにデータをアップロードできず、そのためわざわざドメインネームを再度旧
サーバに向け直す作業が必要となったのだ。
 僕はサーバに関する知識が乏しく、何が起こったのか漠然としかわからない
状態(なのでネット用語の使い方が誤っているかもしれない)。さらにはその
日PRIDEとDEEPの二大会の速報もあるため、その時間までになんとかサーバを
復旧させなければならないし、僕は僕で担当のDEEPの取材のためゆりかもめに
乗って有明に向かわないといけない。関係先に復旧を要請しようとしても、三
連休の真っ只中ということもあり電話がつながらなかったり、関係者が出張先
にいて直接の対処を取れないことが判明したりと、二重三重で障害が発生する。

 しかし何もできない状況で一人もがいても仕方ない。復旧がすぐできないの
なら、それなりの対処を取らなければならない。事務所からDEEPの会場に付く
時間を逆算し、先に会場に着いている他の記者に状況を説明、途中までの取材
を任せる。編集長と相談し、ひとまず二大会の速報はメルマガで済ませること
にした。速報を見るために夕方から夜にかけてウェブサイトを訪れる人達にも
状況が伝わるよう、お詫びと状況説明の文章を発信する。もちろんウェブサイ
トの読者全員がメルマガに登録しているわけではない。だからこのお詫び文の
効果がどれほどあるかわからないが、何もしないよりはずっとましだろう。

 僕が取材の荷支度を済まし編集部を出たのはDEEPの前座戦が始まるころだっ
た。しかし腹が減っては戦はできぬ。取材する側にも体力が必要だ。先に会場
に着いている記者に取材を任せているので簡単な飯を食うぐらいの時間はある。
自由が丘で一度途中下車し、立ち食いソバ屋ですませるか? いや、めん類は
消化が早いから大会の終盤に腹が減って困るだろう。しかもあそこのソバ屋は
関東風の濃いダシなのであんまり食べたくない。じゃあ電車に乗る前にコンビ
ニでオニギリでも買っていくか? いや、どうせオニギリを買うのならもうち
ょっと美味しい物を売っている店が途中にあったはず。そうだ! 大井町で下
車したところに阪急(元百貨店で今はショッピングモール)の1階に食料品売
り場があった。そこに気の利いたオニギリを売っている店が二軒や三軒はある
はずだ。そう思い付き僕は東急大井町駅からJR大井町駅に直行せず、阪急の食
料品売り場に寄り道する。すると過去に東急渋谷駅の食料品売り場でも試した
ことのあるオコワ屋さんを発見。ここなら味は間違いない。非常事態にこそ味
気ない食事ではなく、うまい物を喰って味覚から五感を刺激すれば、充実した
取材もできるだろうし、このイライラした気分を抑えることができるだろう、
などと都合のいい解釈を自分に言い聞かせながら300円のオコワおにぎりセ
ットとお茶を購入する。JRで新橋に移動し、お台場に遊びに行く観光客でごっ
た返すゆりかもめに乗り込み、ようやく有明駅に到着。潮風吹き荒び人影まば
ら、人工的な有明の街並みの中で一人オコワおにぎりをほお張る姿は、端から
見れば異様な光景だったに違いない。

 DEEPの会場入りしたのはちょうど中盤に差しかかる頃、美濃輪育久の試合が
始まる直前だった。美濃輪の豪快なリフトが見られ、気分はすぐに取材モード
に入る。エル・カネックの予想外の健闘、ランバー・ソムデート吉沢の大活躍
なども重なり、取材の忙しさも相まってか、サーバトラブルのイライラはすっ
かり吹っ飛ぶ。最後は村浜武洋が一本勝ちでしっかり締めくくり、非常に満足
感の高い大会に終わった。特にランバーのポテンシャルの高さには驚いた。前
日会見では試合に向け緊張感が伝わってきたランバーと吉沢紀子夫人だが、終
わってからのパーティーではすっかりリラックスした様子。二人とも言葉少な
ながら、喜びに満ちた気持ちが伝わってきたのが印象的だ。
 だが記者の仕事は大会が終わってからも続く。PRIDEの速報もあるため、編
集部直属の僕はそっちの手伝いもしなくてはいけない。結局その日はサーバは
復旧せず。PRIDE側でもひとまず大事件の発生しなかったことに安堵する。

 翌日24日のクリスマスイブは、横浜の郊外の山中にある木口道場の納会の
取材だった。木口道場の長い歴史の中で、納会の取材をしたのはおそらく初め
てと道場の関係者の方はいう。本来は修斗のチャンピオンになったばかりの五
味隆典の撮影のためにスケジュールを設定していただいたのだが、たまたまそ
の日しか撮影の日程が確保できなかったため、納会にお邪魔したという経緯だ。
しかしこの日にお伺いできたことは本当にラッキーだったと思う。木口宣昭先
生を頂点に、大人のコーチ陣、ちびっこレスリング教室の子供たち、そして近
所の方、レスリング関係者など大勢の人々が道場に集まった。道場の大掃除に
始まり、火をくべて餅つきの準備をし、みんなでお雑煮や焼き芋を食べ、「き
よしこの夜」を木口先生のリードで英語で唄い、子供たちが道場訓を唱和する。
詳細は来年公開の記事に譲るとして、この大家族的な雰囲気の中で五味隆典と
いう選手が強くなったことを実感できた。この日のできごとは僕の今後の取材
の考え方や方法に大きな影響を及ぼすことになるだろう。

 長くなってきたので25日の出来事は割愛させていただくが(オコワの話が
長すぎた)、そういった一個一個の出来事や発見があったため、不思議とこの
サーバトラブルの期間を落ち着いて乗り切ることができた。もちろん腹の立つ
こともあった。そして会社としてもこのようなことが今後起こらないよう色々
反省しないといけない。だが、単なるイライラは何も解決してくれない。トラ
ブルに対し真正面に取り組んでも、それだけで何か事が良い方向に進むとは限
らない。こういう時、僕はいつも「少しだけやり方を変えてみるのさ」という、
とある歌手の唄の中の一フレーズを思い浮かべる。すると、見えなかった物が
見えるようになり、結果として物事がいい方向に進んでいる。今回のトラブル
の過程では、食べたり、笑ったり、驚いたり、動いたり、休んだり、直接関係
ない色んな良い出来事が周りで発生し僕を勇気づけてくれた。いつもこんなに
うまくいくとは限らないのだが、たまにツイているとこういうことも書いてみ
たくなる。◆◆◆


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 ■ コラム 高慢と偏見 ■
 【格闘技】と言う名の曖昧な領域 (3)

 「RINGSの活動停止は、『ショー』と『競技』のバランスが崩れた結果である」

                 Text by 井田 英登(本誌編集長)
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 <BackNumber>
 (1)Vol. 007掲載
  http://www.melma.com/mag/20/m00049820/a00000011.html
 (2)Vol. 008掲載
  http://www.melma.com/mag/20/m00049820/a00000013.html


 当初今週号では、「【格闘技】と言う名の曖昧な領域」の最終回ということ
で、 K-1 WORLD GP と大みそかの「猪木ボンバイエ」の比較を中心に、格闘技
における「競技」と「ショー」の縦横軸を分析していこうと思っていた。だが
EXpressの発行二日前になって、驚くべきニュースが舞い込んできた。
 皆さんもすでに御存知の通り、RINGSが活動停止を発表したのである。まだ
RINGS自体は来年2月15日の横浜文体大会を残しており、活動停止後もショット
契約の選手を集めてのプロモーション形式で運営を存続するという噂もある。
少なくとも来年4月までは所属選手との契約もTV放映も残しているわけで、
団体崩壊という言い方はまだ早計かもしれない。

<関連記事> 前田社長がリングス活動休止宣言 [12/27]
 http://www.boutreview.com/news/data/grappling/1009461010.html

 ただ実際、エース前田日明の引退後、動員の減少、大会規模の縮小は目に見
えて明らかだったし、所属日本人選手の離脱あるいは前田代表を巡る個人的な
トラブルなどネガティブな話題が相次いだ。そうした過程で、かつて時代のリ
ードオフマンとして格闘技人気拡大の一翼を担ったこの団体が、無残なほどフ
ァンの求心力を失うのを我々は見てきた。僕はこの現象の中にも、「競技」と
「ショー」の縦横軸の問題が大きく関係していたのではないかという気がして
ならないのである。そこで今週は予定を大幅に変更して、RINGS活動停止問題
を中心に「競技」と「ショー」のバランスを考えていきたいと思う。当初予定
していたテーマは次号以降に持ち越しとしたい。

■第二次UWF〜初期リングスにファンが見た夢

 RINGSの直接の母体は、1988年に旗揚げされた第二次UWFといっていいだろう。
新日本プロレスに所属していた前田日明、高田延彦、藤原喜明、船木誠勝、鈴
木みのるらが集結し「格闘技としてのプロレス」を追及した彼らの活動は、
“Uイズム”なる言葉を生み、当時、プロレスから失われつつあった格闘の迫
真性、勝負論を正面に打ち出すことで多くのファンの支持を集めた。しかし実
際のところ、彼らの中にも明快なスポーツ的格闘技へのアプローチはなかった
ようで、旧来のプロレス技術と興業論との相克の中から、泥縄式にひな形を作
り試合を行っていた観がある。
 そんな彼らが会社運営などの問題から1991年三派に分裂。高田をエースに旧
来のプロレス最強神話への回帰を打ち出したUWFインターナショナル、船木・
鈴木・シャムロックを中心にマニアックな関節技合戦を売りにした藤原組が早々
に設立された。一人残された前田日明は、Uイズムの中核にあった格闘技色を
より明快にした形で、世界的な格闘技選手のネットワークを提唱しRINGSを設
立。UWFルールを軸にした異種格闘技戦路線で、U系プロレスファンに「総合格
闘技」という呼称を流行させることになった。

 正直いって、当時の彼らのスタイルは今でいう「総合格闘技」から程遠い。
現在の柔術やレスリングを基礎にした競技デザインはまだ生まれていなかった
からだ。当時のRINGSにあったのは、個々の選手がそれまで修練してきた「打
/投/極」のばらばらの技術を、統一ルールの元にただぶつけあうだけの原初
的光景であった。洗練には程遠く粗削りな技のぶつかりあいは、今となっては
失笑ものかもしれない。それに前田の基板となったプロレスの技もまだまだ当
時のRINGSでは有効な技術とされており、大味な逆エビ固めで勝負が決まって
しまったりするシーンは、今のファンが見ると説得力に欠けるものに感じるだ
ろう。
 ただ技術的には泥縄であっても、RINGS ルールには大きな見せ場があった。
それは試合が一発のダウンや一回の極めで終わってしまわないポイントシステ
ムだ。いわばワンチャンスで勝負する今の総合格闘技と違って、ミスを犯した
選手が生き残って逆転を狙えるというゲーム感覚の面白さがあった。他団体で
も採用されていたが、出場する選手のジャンルの幅が広いRINGSマットでは、
ポイントシステムの良さが大いに引き出された。今となっては決着を遅延する
だけのシステムとして退屈なものに受け取られるかもしれない。しかしすぐに
決着を目指さず、漫然と技の展覧会が繰り広げられるプロレスを見慣れた当時
のファンにとって、ダメージの指標が目に見える形で示されるこのシステムに
は、目からウロコの面白さがあったのだ。いわばこのルールに隠された大衆的
なゲーム感覚が、そのまま「ショー」としての楽しさを生み出していたわけで
ある。
 加えて当時のRINGSは、コマンドサンボをはじめとした世界の格闘技全体へ
敷延させる「RINGSネットワーク」と呼ばれるビジョンを提示。さらには通常
ルール以外での試合を実現する「実験リーグ」がマニアックなファンの嗜好を
そそった。ファンとしても、時代の変化の最先端で同じ理念を抱えた “運動
体”に参加している気分を味わえた。「世界最強の男はRINGSが決める」とい
うキャッチフレーズがその気分を象徴していると思う。

■「93年革命」の追撃

 だがその栄華は長くは続かなかった。1993年、RINGSは突如3つの新興団体
から時代の最先端の地位を脅かされるようになる。
 まず5月、RINGSネットワークの一部に取り込んでいたはずの正道会館が離脱
し、 K-1グランプリをスタートした。立ち技オンリーながらワンデイトーナメ
ントで“世界最強の男を決める”この大会は、RINGSの内包していたスター主
義や世界構想を具現化。素人目にもわかりやすいノックアウト至上主義の決着
や、地上波ナンバー1の視聴率を誇ったフジテレビの全面的なバックアップも
あり、シビアな「競技」としての認知をお茶の間の観客にまで広げるとともに、
「ショー」としても大成功をおさめ、 RINGSを凌駕する存在にのし上がった。
 続いて9月には藤原組の船木・鈴木ら若手が中心となりPANCRASEを旗揚げ。
当時1ダウン=3エスケープと設定されていたRINGSのルールに対して、
PANCRASEは1ダウン=1エスケープという過酷なポイント削減をはかった。さ
らにチョークスリーパー、グラウンドでの掌底での顔面攻撃も解禁、UWFから
の「競技」性を先鋭化した世界を提示してみせた。特に旗揚げ戦では、勝負が
1分以内で決着する「秒殺」が続出、それがそのまま流行語となるほどの勢い
を見せ、勝負論の点でRINGSを剣が峰に追い込んだ。
 さらに追い打ちをかけるように12月、UFC(アルティメット・ファイティン
グ・チャンピオンシップ)の第1回大会がアメリカで開催された。過激さは
PANCRASEの比ではない。いわゆる「なんでもあり」と呼ばれる「バーリ・トゥ
ード(VT)」ルールの登場である。その衝撃的なルール設定は、格闘技という
より武道、スポーツというより決闘という地平から発想されたものであり、あ
る意味K-1やPANCRASE以上に「競技」の輪郭を明確にしたものだった。一方で
マウントパンチやオクタゴンに象徴される生々しいヴァイオレンス映像がノー
カットでTV放映され、その「ショー」的要素が格闘技界のみならず世間一般
にも大きな反響を呼び起こした。

 「93年革命」とも呼ぶべきこの三団体の追撃によって、「競技」と「ショー」
の両面から挟撃を浴びたRINGSは、否応無しに方針転換を迫られる。従来のプ
ロレスを追撃することで倍々ゲームのようにシェアを延ばしてきた“Uイズム”
だが、すでに時代はそれを越える新しい局面を迎えていたのである。確かに
RINGSは限りなくプロレスの極北を目指して進撃をすすめてきた団体ではあっ
たのだが、その端々にはプロレスから受け継いだ悪弊が色濃く影を落としてい
たのも事実である。完全実力主義を標榜しながらも、メインイベンターを中心
にしたスター主義が幅を利かせ、試合展開においてもロープエスケープに代表
されるように、勝負論よりゲーム性を重視する“遊び”が残っていた。これら
はプロレスから格闘技への過渡期には有効なクッションとなったのだろうが、
「93年革命」を経て「競技」としてのシビアさを求められる時代を迎えると、
古色蒼然としたものに映ってしまう。結局最後までこれらを捨てきれなかった
ことが、この団体の首を絞め続けた感は否めない。

 翌 94年1月、RINGSのメガバトルトーナメントを制覇した前田日明は、Uイン
ターや PANCRASEとの対抗戦をぶちあげることで「ショー」としての充実を模
索したが、結局両団体との交渉は実らなかった。また「競技」性の権化である
VTへのアプローチも、シューティング(修斗)が開催したVTJ '95で愛弟子・
山本宜久(現・憲尚)がヒクソン・グレイシーに敗れたことで大きく停滞した。

 かくして「ショー」としての拡大もならず、また「競技」としての練り直し
もならず、RINGSは結局93年生まれの後発団体にトップランナーの座を譲り渡
すことになる。さらに97年のPRIDEの勃興を期に斜陽の度を増し、99年の前田
の引退で顕著となった。すでにVTベースのリアルな総合格闘競技が、NHB(ノ
ー・ホールズ・バード)あるいはMMA(ミックスド・マーシャル・アーツ)と
呼ばれ世界標準として普及しつつあった当時、RINGSのルールデザインは、
「競技」としては詰めが甘く、「ショー」としても刺激に欠けるものとして時
代に取り残されてしまった。
 観客動員の低下は明らかだった。前田日明という「ショー」の目玉を失った
RINGSは98〜99年、Uインターを離脱した田村潔司を入団させ、RINGS生え抜き
の日本人との対決で活性化を図った。しかしちょうどその頃、高田延彦がUイ
ズムの代表としてヒクソンとの対決に乗り出したが、二度とも無残に完敗。リ
ングスの選んだ路線は、すでに伝説の崩壊したUイズムというコップの中の嵐
に過ぎなくなってしまい、かつてのファンの興奮を呼び戻すことはできなかっ
た。

 そしてようやくRINGSは93年以来の「宿題」に本格的に手を付けざるを得な
くなる。要するに総合格闘技の世界標準であるNHBの導入である。それはこれ
までかたくなに鎖国を押し通してきた“Uイズムの牙城”RINGSが、自由な選手
市場へも乗り出すきっかけとなった。99年秋、ネットワーク外の選手をも含め
たオープントーナメント・KING OF KINGS(KOK)を開催。ついにエスケープを
廃止し、オープンフィンガーグローブの採用、スタンドでの顔面パンチ解禁で
一気に「競技」としての先鋭化を図ったこのトーナメントは、ヘンゾ・グレイ
シー、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ、ヒカルド・アローナなど、これまで
鬼門であったブラジル人ファイターを大量にリングに上げたことで、停滞して
いたRINGSマットに一気に追い風を吹かせたように見えた。しかし、結局PRIDE
やUFCを通して標準的なNHBを見慣れた日本の多くの格闘技ファンにとって、グ
ラウンドでの顔面パンチを認めないKOKルールは、やはり「競技」としても「シ
ョー」としても中途半端なルールとして、十分評価されることなく終わってし
まった。

■そして再び前田は一人になった

 加えて、マーケティング能力や資金力に優れ、「ショー」としての性格を明
確に打ちだしたPRIDEという巨大プロモーションの成功が致命傷となった。PRIDE
には既存の「所属選手」という概念が存在せず、選手寿命への道義的責任を持
たない。そのルールで戦うかどうかは選手の覚悟に任せられ、過酷な条件を設
定する代わりにギャラは弾む。むしろ選手の覚悟や危険への挑戦が、試合の中
に生死を賭けた緊張感を生み、「ショー」の演出装置にもなる。
 一方のリングスは前田自身が現役選手を経て経営者になったせいもあり、選
手寿命への道義的責任に敏感だった。だが選手層の固定はイベントをマンネリ
化させ、旬の選手を見たいファンのニーズに反することとなる。さらには所属
選手の安定した生活を保証するための固定給が、団体経営を徐々に圧迫。この
春に相次いだ選手大量離脱も、この経営方針が維持しきれなかった結果であろ
う。

 団体経営の動脈硬化が進んだのは、前田日明のトップダウンでしか方針を決
められなかったという「個人商店」的な構造にも原因がある。対するPRIDEは
DSE(ドリームステージエンターテイメント)に経営移管した前後から、ブッ
キング(選手招へい)、広報、営業、会場演出など、それぞれのスペシャリス
トが分業方式でビジネス展開していく「近代組織」となった。森下直人社長は
絶対的なリーダーではなく、スタッフをとりまとめる調整役でしかない。
 新日本プロレス時代、ワンマンリーダーのアントニオ猪木の背中を見て育っ
た前田には、PRIDE型の組織をイメージできなかったのかもしれない。だがも
しマット上で追及された「RINGSネットワーク」が、団体経営にも似たような
形で反映されていたならば、今の惨状には至らなかったのではないだろうか?
 何しろ選手に限らず RINGSのフロント陣・社員には優秀な人材が多数いた。
例えば前田の高校時代の空手の師匠・田中正吾氏は、新日本プロレスからRINGS
に至るまで独自の格闘技観で前田の理論武装を助け、 TV中継では解説も務
めるなどファンの信頼も厚かった。社長を務めた黒田耕二氏は 興行界へのル
ートも太く、興行団体としての基礎を築くのに欠かせない存在だった。 そし
て日本サンボ連盟理事長の堀米奉文氏はRINGSのスポーツ団体としての権威の
後見人の役割を果たしていた。
 またその下で働いていた社員達も、今や格闘技界の中枢を占める人材にのし
上がっている。PRIDEを始め各団体に優秀な選手をブッキングすることで知ら
れる“ブッカーK”こと川崎浩市氏、DSEの広報・石黒雅史氏、日本修斗協会事
務局長の若林太郎氏、さらに前田の個人マネージャーを務めた内田統子女史も
現在はノゲイラ、スぺーヒーらをブッキングする立場となっている。
 しかしRINGSが活動休止を迎えた今、その屋台骨を支えた彼らの姿は、全て
南平台の事務所から消えている。第2次UWFの解散の時と同じく、前田はまた
も一人になっていた。それぞれの理由はあるだろうが、結局リーダー前田の示
す方向の中に己の居場所を見いだすことができなくなったため、彼らはRINGS
という船を降り、自ら新天地を求めることになったのだろう。皮肉にも彼らの
離散が結果として格闘技界全体の発展をもたらしたというのは言い過ぎだろう
か。「格闘技界の梁山泊」とも言うべきこの陣容を見るにつけ、もし彼らがそ
のままRINGSに残っていれば、RINGSは今のPRIDEどころではない成功を手にし
ていたのではないかという気がする。

■時代に追い越された前田日明の夢

 こうして分析してみると、RINGSの10年は「競技」と「ショー」の軸の間を
揺れ動き、定まる場所を持たなかった歴史といえるのではないだろうか。
 ファンは試合内容やスター選手を見るためだけに高い入場料を払うのではな
い。その向こうにある団体のポリシーや、観客に提供しようとするビジョンに
共感することで、初めて会場に足を運ぶのである。その意味で、ファンを巻き
込んだ形でUWFを“運動体”と呼ばれる存在として成功させ、RINGSの初期に至
るまで「格闘技の時代」の礎を築いた前田日明の功績は大きく評価すべきであ
る。現に各団体で活躍する選手に「ヴォルク・ハンの関節技に魅了されて格闘
家を目指した」「リングス○○という支部を学校に作った」という過去を持つ
者も多い。RINGSの蒔いた種は、確実に格闘技界に鮮やかな花々を咲き誇らせ
ている。

 だがRINGSは時に「ショー」的な価値観を重視しすぎるがゆえに「競技」と
しての先鋭性を失い、また「競技」としての世界観にこだわりすぎて「ショー」
としてのダイナミズムを失った。この繰り返しでRINGSは運動体の軸が定まら
ず、結果ファンも離れていった。そしてRINGSの掲げた“世界最強の男を決め
る”コンセプトは、いつの間にかPRIDEが具現化させていた。こうした形でRINGS
が徐々にその運動エネルギーを使い果たした末、ついに再点火できないまま「活
動停止」してしまうことは、かつて一ファンとして夢を膨らませた身として非
常に辛いものがある。また一格闘技メディアを主宰する立場としても、ファン
とリングをつなぐ一本の道になることができなかった事に大きな悔いが残る。

 「こないだのPRIDEの大会なんか、RINGSの大阪大会やんけ」

 今年9月24日に大阪城ホールで開催されたPRIDE.16を指して、前田日明はそ
う発言したと聞く。確かにKOK王者ノゲイラ、無差別級王者アイブル、ミドル
級王者アローナ、そして愛弟子の山本憲尚といったRINGS離脱組が集まり大成
功をおさめたこの大会を、彼がそう表現したくなる気持ちはわからないでもな
い。RINGSが同じ人材をそろえていた数年前、その栄華を達成できなかった事
への悔しさの素直なあらわれだろう。だがその言葉を聞いた時点で、そのわず
か3ケ月後に前田の口から活動停止が発表されるとは僕は思いもしなかった。
今から思えばあの言葉は、前田が活動停止を暗示した事実上の「敗北宣言」だ
ったのかもしれないと思うと、胸が痛む。

 思えば前田日明という人は「ファンの意識改革」を常に語ってきた人でもあ
る。「理想と現実は違う。何かを変えていくんやったらリング上の現実を検証
してからや」というのが、 93年以降の前田の口癖でもあった。先鋭である事よ
りも、ゆるやかな「草の根活動」でファンを巻き込み、運動体としての前進を
イメージし続けたこの人のビジョンは、ある意味70年代前後に社会変革を夢見
た若者たちの方法論にも重ね合わせることができるだろう。しかし時代は、個
々人のばらばらな欲望のベクトルを「マーケティング」という形で統合する時
代へと変化していたのである。イズムよりも、もっと直接的な需要を満たす、
フットワークの軽いプロモーションこそが、「時代の気分」を捉え支持される。
そのトレンドを読み切れなかったことこそが、RINGSの、そして前田日明の最
大の誤算だったのではないだろうか。◆◆◆

【リングス活動休止についての皆さんの感じることを掲示板で募集しています】
 http://www.boutreview.com/cgi-bin/hyperbbs/hyperbbs.cgi?mode=view;Code=48
 

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         ◆ 見逃したニュースはないですか? ◆

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★★☆★☆★ この1週間のニュースヘッドライン [12/22〜12/28] ★☆★☆★★
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【総合 / 組み技系】
 
● [DEEP2001] 次回は3.30愛知県体育館。ドス×謙吾再戦決定 [12/26] 
 http://www.boutreview.com/news/data/grappling/1009343724.html

● [PRIDE] PRIDE.18 地上波放送スケジュール [12/26]
 http://www.boutreview.com/news/data/grappling/1009345408.html
 
● [PRIDE] PRIDE.19は2.24さいたまスーパーアリーナで開催 [12/26]
 http://www.boutreview.com/news/data/grappling/1009345269.html
 
● [猪木ボンバイエ] 対戦カード全7試合ついに決定! [12/27]
 http://www.boutreview.com/news/data/grappling/1008671389.html
 
● [リングス] 前田社長がリングス活動休止宣言 [12/27]
 http://www.boutreview.com/news/data/grappling/1009461010.html
 
● [パンクラス] 1.27後楽園全カード決定。“寝技世界一”菊田が“極真日本一”
 岩崎とエキシビジョン [12/27]
 http://www.boutreview.com/news/data/grappling/1006152800.html
 
【打撃系】  今週のニュースはありません
 
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★★☆★☆★ 大会結果・レポート&写真 [12/22〜12/28更新]  ★☆★☆★★
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● [DEEP2001] ランバー、総合デビュー戦でまさかの勝利! /12.23 有明 レポ
 http://www.boutreview.com/news/data/grappling/1009343724.html
 
● [PRIDE] シュルト&シウバ余裕の勝利/12.23 PRIDE.18レポ
 http://www.boutreview.com/news/data/grappling/1009345666.html
 
● [AX] 星野育蒔、ついに敗れる/12.26 六本木大会 レポ
 http://www.boutreview.com/news/data/grappling/1009428257.html
 
(これらの大会の写真は正月休みの間に掲載する予定です)

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       ◆ 今週は何を見る? あの大会のカードは? ◆

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★★☆★☆★ 年末年始の格闘技カレンダー [12/23〜1/4] ★☆★☆★★
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▼12/31(月) 猪木ボンバイエ [さいたまスーパーアリーナ] 
 いよいよ激突! 猪木軍 vs K-1
 http://www.boutreview.com/news/data/grappling/1008671389.html

▼1/4(金) 全日本キック [後楽園] 
 小林聡×金沢久幸、ついに頂上決戦!!
 http://www.boutreview.com/news/data/striking/1006357769.html
 
(以降の大会についてはこちら → http://www.boutreview.com/calendar.html

      ─────────────────────────

       ◆ 激動の2001年は将軍が締めくくります ◆

      ─────────────────────────

── 【今日のヤジ将軍・六代目】 ──────────────────────
 
 ※ 今週は井田編集長がPRIDE取材中に聞いたヤジを。

▼▽ PRIDE.18 12.23マリンメッセ福岡大会
 http://www.boutreview.com/news/data/grappling/1009345666.html

第7試合       
○ ヴァンダレイ・シウバ[3R 2'22" ドクターストップ]アレクサンダー大塚 ×

二人揃って白い肌に坊主頭、ほぼ同体格、おまけにタイツの色まで白黒でそっくり
スタンドでの取っ組み合いでクルクル回るシウバとアレクを見たお客さんが...

  「どっちがシウバだよ!」

...意外とこの二人似てたんですね。盲点でした。
来年あたりシュートボクセから「アレクサンダー・シウバ」とかいう選手が
デビューしててもおかしくなかったりして。

◆◆◆

<投稿はこちら!>
 「今日のヤジ将軍」は会場で実際に聞いた面白ヤジを集めるコーナー。
 ヤジに限らずセコンドのアドバイス等でも構いません。
 投稿をお待ちししております!

 編集部へのメール mailto:ed@boutreview.com または
 掲示板のスレッドへ
 http://www.boutreview.com/cgi-bin/hyperbbs/hyperbbs.cgi?mode=view;Code=44
 

────────────────────────────────────────
         ◆◆◆◆ 編集部からのお知らせ ◆◆◆◆
────────────────────────────────────────
 次週1/5(土)号は休刊します。次々週1/12(土)号は予定より早い1/10(木)に
配信の予定です。
 今年1年間の皆様のご愛顧に感謝します。
 2002年もBoutReviewをよろしくお願いします!

────
 BoutReview EXpress  [melma! ID = 00049820]
 http://www.boutreview.com/
 【編集部代表メールアドレス】(ご意見ご感想はこちらまで)
 mailto:ed@boutreview.com
 【バックナンバーはこちら!】
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※BoutReviewに掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
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