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ぞうさん通信 2003.2.4
はしもと小児科ホームページ http://www.mynet.ne.jp/hasimoto/
<流行している病気>
1.長岡市,見附市,中之島町,栄町,和島村,与板町,下田村などでインフルエンザ
が流行しています.ほとんどがA型インフルエンザで,高熱,倦怠感,咳,鼻汁,関
節痛,寒気が主症状です.わずかにB型も混在していて,高熱,倦怠感,嘔気が主症
状です.今後,流行の拡大が予想されます.十分御注意ください.★★★★,→
2.急性下痢症が流行しています.水様便,白色便が数日続きます.嘔吐,下痢が激し
い場合には入院が必要です.★★,→
3.急性胃腸炎が流行しています.激しい嘔吐,下痢,腹痛が主症状です.★,→
4.水痘が流行しています.★,↓
5.マイコプラズマ感染症が流行しています.頑固な咳が続きます.気管支炎,肺炎,
喘息発作を引き起こします.★,→
6.流行性角結膜炎が流行しています.発熱,眼球結膜の発赤,眼脂,咳,鼻汁などが
主症状です.★★,→
7.急性咽頭炎が流行しています.高熱,咽頭発赤,咽頭痛が主症状です.★★,↑
8.急性扁桃炎が流行しています.高熱が主症状です.★★,↑
★ わずかに流行,★★少し流行,★★★流行,★★★★かなり流行,★★★★★爆
発的流行,↓先週より減少,→先週と同程度,↑先週より増加
<インフルエンザ死を免れるには>
今年もまたインフルエンザが流行しています.毎冬,日本では数百万人が罹患し,抵
抗力の弱いお年寄りや子どもを中心に死者が出ます.人口動態統計を見れば明らかで
すが,インフルエンザが大流行した年には死亡率が上がります.毎冬100-200人のお
子さんが,主にインフルエンザ脳症で死亡しています.
数年前よりインフルエンザ迅速キット,抗インフルエンザ薬のシンメトレル,タミフ
ル,リレンザが使用されるようになりました.インフルエンザか否かを外来で簡単に
検査でき,抗インフルエンザ薬を服用すれば翌日には熱が下がり,以前のように1週
間近くも高熱で寝込むことは少なくなりました.
抗インフルエンザ薬の服用により熱がすぐに下がるため,「インフンエンザワクチン
を接種しなくても,インフルエンザになったら治療薬を服用させすればいいや!」と
思われている方がおられるようですが,これは大きな間違いです.
インフルエンザには,熱性けいれん,脳症,肺炎,中耳炎など多くの合併症がありま
す.これらの合併症が,抗インフルエンザ薬で防げるか否かを考えてみましょう.
熱性けいれんは,インフルエンザ発症直後,すなわち熱の出始めで体温が急激に上昇
する時に起きます.熱が数日続いてから起こるということはあまりありません.脳症
は,多くの場合,インフルエンザ発症後24-48時間以内に突然の痙攣や意識障害で始
まります.インフルエンザ発症後48時間経過すると,むしろ脳症の発症は少なくなり
ます.「熱が続くから頭が馬鹿になる」というのは俗説です.
一方,肺炎や中耳炎は,インフルエンザ発症直後に発症することはそれほど多くはあ
りません.インフルエンザは多くの場合高熱で発症し,その後に咳が始まり,1週間
程度頑固な咳が残ります.インフルエンザでは気管支炎がかなり高率に起こりますが,
インフルエンザウイルスの肺への侵襲の程度が強いと肺炎になります.あるいは,細
菌感染が2次的に起こって肺炎になることもあります.中耳炎は細菌感染により2次的
に起こります.
合併症の時間的経過を考えると,抗インフルエンザ薬はインフルエンザ発症後間もな
く起こる熱性けいれんや脳症の減少には寄与しないと考えられます.熱性けいれんは
インフルエンザ発症とほぼ同時に起こるので予見が不可能です.脳症では脳へのウイ
ルス侵襲が短時間で急激に起こります.抗インフルエンザ薬でその進展を阻止するこ
とは不可能と考えてよいでしょう.実際,抗インフルエンザ薬を服用しても脳症を発
症することはありますし,脳症発症後に抗インフルエンザ薬を投与しても神経症状の
回復に大きな効果は期待できません.一方,肺炎や中耳炎のように,数日の経過の後
に起こるものや細菌の2次感染により起こるものは,インフルエンザウイルスの増殖
を抗インフルエンザ薬により抑えることで,減少させることが可能です.
インフルエンザワクチンが脳症を減少させる効果があるか否かについての疫学的デー
タは現時点ではありません.これは,インフルエンザ脳症にはさまざまな病型がある
こと,それぞれの病型には発症機序に違いがあること,インフルエンザには数百万人
が罹患するが脳症を発病するのは数百人以下と頻度が少ないことなどにより,疫学研
究をすることが事実上不可能だからです.
しかし,インフルエンザワクチンを接種していれば,初診時の最高体温が40℃は越え
ないこと(=生体防御反応が過剰に働かなくて済む),全身状態が侵させることが少
ないこと(=からだのダメージが少ない)を考えると,インフルエンザワクチンがイ
ンフルエンザ発症後間もなく起こる合併症を減少させる可能性は十分にあると思われ
ます.現に,インフルエンザワクチンを接種した場合には熱性けいれんが少なくなる
ようです.
子どもの場合,インフルエンザ死の多くは脳症によりもたらされます.抗インフルエ
ンザ薬では脳症への進展阻止効果が確認されていないことを考えると,現時点でイン
フルエンザ死を免れるためにはインフルエンザワクチンを接種する以外に方法はあり
ません.
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橋本尚士(はしもとなおし)
はしもと小児科
〒954-0112 新潟県見附市上新田町449-7
TEL 0258-61-2400, FAX 0258-61-2402
naoshi@po.next.ne.jp
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