書の海で発見した宝の本を記録しました。長めですが深い(?)感想が特徴。ジャンルは、政治、法、宗教、小説、神秘、戦争、文章論、読書論とさまざま。好きな作家は遠藤周作です。
- 最新号:2006-01-17
- 発行周期:週刊不定期
- 読んでる人:66人
- 創刊日:2001-09-19
- Score!:-点
- コメント数 : 0
- メルマガID:47768
- バックナンバー:全て公開
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読書録174(2001.12.30) ピーター・フランクル『ピーター流外国語習得術』(岩波ジュニア文庫、1999年)
発行日: 2001/12/30-----------------------------------------------------------------------
◆◆◆ トート号航海日誌(読書録) ◆◆◆
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○日記
東京ミレナリオを見に行きました。夕方5時半頃だったのですが、ものすごい混雑。
肝心のパラトゥールにたどり着くのに30分以上かかってしまいました。綺麗には綺
麗だったのですがあれだけ待たされると・・・。最近は新宿南口、恵比寿ガーデンプ
レイスをはじめ、綺麗にライトアップしているところが増えましたね。
トート号航海日誌(読書録)は今年はこの号が最後になります。読書録をつけはじめ
て一年弱、メルマガをはじめて約三ヶ月。三日坊主の僕がこれだけ続けて来られたの
も読者の方をはじめ、いろいろな人に支えられてきたからだと思ってます。これを機
会にお礼を申し上げます。
来年も月10冊を目安に読書ができたら良いなあと考えています。また来年もよろし
くお願いします。
それでは良いお年を!
船長ハリー
○一等航海士からのご挨拶
トート号航海日誌、いつもご愛読ありがとうございます。ハリー船長が書海で出会い
獲得した本たちの記録をHPにて管理しているufuです。
航海は何に出会うかわからない旅です。だからこそ、わくわくもするし、時には方向
が分からず立ち往生もします。でも少しずつでも船は進んでいき、いつかはどこかに
着くのでしょう。
船長のもと、これからもトート号を広大な書海の中、走らせていきたいです。
希望の光を感じるこの言葉を口ずさみながら。
「もしも世界の終わりが明日だとしても、私は今日、林檎の種子を蒔くだろう」
一等航海士ウーフ
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読書録174(2001.12.30)
ピーター・フランクル『ピーター流外国語習得術』(岩波ジュニア文庫、1999年)
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▼本書の内容
読書録172、173に次いでピーター・フランクルの本である。
単語の記憶法、具体的な時間の使い方など、ピーター・フランクルが外国語習得する
のに効果的な方法を伝授する。全8章からなる。
1.僕の外国語遍歴
ドイツ語、ロシア語、スウェーデン語、フランス語、スペイン語の習得体験を基
に、外国語を学ぶコツを説く。短期集中型で勉強すること、すべての機会を用いてそ
の国の人と話すこと、その国の言語で独り言を言うこと、文章を読むこと、単語は丸
暗記ではなく諺や詩で覚えること、英英辞典などその国の言語で書かれた辞書を使う
こと、達成しやすい目標を立てること、そしてもっとも大きいのが、強い目的意識を
持つことである。
2.外国語を学ぶとは?
外国語を学ぶことによって情報源を増やすことができる。これによって情報の偏り
がなくせる。その他にも外国語学習のメリットは以下のような点にある。自己改良、
自己アイデンティティの確立、自分を知ること。
3.語学の才能って何?
才能は実はあまり関係ないと思われる。むしろ、旺盛な好奇心と大変な努力が重要
だ。好奇心としては、コミュニケーションが好きである必要がある。努力としては、
母語を勉強すること(外国語は母語よりうまくなれないから)、集中力を高める工夫
をすること、などが挙げられる。
4.ぼくの体験的記憶術
単語を覚えるためには、まず、すぐ使うこと。次に、単語帳作りも役立つ。また、
諺で覚えたり、自分でイメージ化して覚えたり、状況と一緒にまとめて覚えたり、同
じグループの単語はまとめて覚えたりするのも効果的だ。
5.時間の有効活用法
日本人は忙しいというが、時間は工夫次第でまだまだ活用できる。外国語のテープ
を流すなど潜在的記憶を利用する環境を作る、外国語で独り言を言う、外国語で日記
を書く、同志を探し切磋琢磨する、テレビなど無駄な時間を減らす、留学を利用する
など。
6.やめてほしい日本人のまちがい
会話では直訳調の翻訳はやめるべきだ。文法偏重も良くない。「文法は目的ではな
く、あくまでも手段」(151頁)である。発音はカタカナに直さない方が良い。日本
人だけで固まるな。まちがいを恐れるべきでない。また、無理してむずかしいことを
言うのも良くない。
7.日本語を磨こう
外国語は母語を超えられない。そのため、外国語を上達させるためにも日本語を磨
く必要がある。具体的には、自分の意見をもち、討論し、疑問を抱くように心がける
べきだ。
8.国際人になるために
国家と国民は異なる。国際人とは、国家単位ではなく、個人単位でものごとを考え
る人のことだ。したがって英語は国際人になるためのひとつの手段でしかない。国際
人になるためには、留学をして視野を広げるのも有効だ。
▼外国語を学ぶ目的は何か
本書にはさまざまな外国語習得法が紹介されている。日本語を磨く、まちがいをおそ
れない、その国の言葉で独り言を言う、その国の言葉で書かれた辞書を使う、単語は
諺や詩で覚える、日記を書く、などなど。読書録172、173で読んだ著書と重なる部分
が多い。これらは僕も外国語を習得する際の参考にしたいと考えている。
しかし、上に挙げた例はあくまでも技術的な方法に過ぎない。ピーター・フランクル
は外国語の習得にはまず目的・誘因が必要だと強調する。彼の場合、若い頃は美しい
外国の女性と話したいという欲求が誘因だったと告白している。
僕はこういう本を読むたびに、言語習得にあたっては目的・誘因(または、必要)が
重要な要素であると再確認する。荒俣宏は海外幻想小説が読みたい一心で英語を必死
に勉強した(読書録139)。また、シュリーマンもトロイヤ発見という夢があったた
めあれだけ多くの言語をほとんど独学で習得できたのだと思う(読書録125)。「好
きこそものの上手なれ」。結局、目的・誘因・必要が強ければ上達は早いのだ。
そう考えると、多くの日本人が英語が苦手なのは不思議でも何でもない。それは必要
がないと感じているからだ。必要ならば目の色を変えて取り組み、上達するであろ
う。明治維新後、戦後復興で日本人はそれを証明している。
だから僕は英語義務教育の強化には必ずしも賛成ではない。英語公用語化論はもって
のほかだと思っている。もし外交官や商社の人などが英語がどうしても必要なのであ
れば、そういう人だけが英語を勉強すれば良い。日本人全員が英語を話せるようにな
る必要はないのである。
▼文法偏重主義
僕は現在、中高生に家庭教師で英語を教えているのだが、今の学校英語教育には疑問
を感じることが少なくない。最もおかしいと思うのは、ピーター・フランクルも本書
で指摘している「文法偏重」である。文法は最低限絶対必要だとは思う。しかしその
教える文法があまりにも細かすぎるのだ。例えば、「以下の1から10までのto不定
詞の例文を読み、形容詞的用法か名詞的用法か副詞的用法か答えよ」などという問題
が出たりする。
本来文法は、意味を明確に把握するための手段にすぎない。事実、われわれは文法な
んて知らなくても母語でコミュニケーションをとっている。意志伝達ができれば文法
は知らなくても良いのだ。そうだとすれば、to不定詞の文も、意味内容が理解できれ
ば良いはずであって、それが名詞的用法であろうが、形容詞的用法であろうがどうで
もよい。理解を測るのであれば、英文和訳で十分だ。それ以上の用法の名前など、言
語学者にでもならない限り不必要である。
このことは英語教育の制度の問題でもある。英語は他の教科と違って、目的というよ
りは手段という側面が強い。そうであれば、教える教師も手段として英語を用いる能
力が求められる。ところが実態としては、英語を勉強したのは英語を教えるため、と
いう教師が多いのではないか。そういう人は英語を目的として勉強してきたので、ど
うしても同じことを生徒に求める。それが現在の文法偏重主義につながっているので
はないか。そんな気がする。
大部分の日本人が求めている英語力は、英語の先生や言語学者になるためのそれでは
ない。「文法は目的ではなく、あくまでも手段」(151頁)なのである。
▼社会問題に対する反論
ピーター・フランクルの外国語学習に関する話には納得する部分が多い。しかし、ひ
とたび話が社会問題にまで広がると、疑問を感じることがたびたびある。例えば、8
章で、国家と国民は異なる、と主張する箇所だ。「私は日本人だから・・・」とか、
「あの人は○○人だから・・・」と国単位で捉えず、個人単位として捉えろ、という
のがここでの要点であり、この点は同感だ。
しかし、ピーター・フランクルは、このことを説明するために、国家と国民の違いを
羅列する。国家にとって戦争があることは都合がよく、個人にとっては戦争がないこ
とが都合がよい。国家にとって情報の独占は有利で、国民にとってはそうでない。国
家にとって一党独裁、官僚主義は都合がよく、国民にとっては市民社会が都合がよ
い。などなど。簡単に言えば、「国は悪い、国民は良い」と述べているのだ。
そもそも、ピーター・フランクルが言いたいことは、個人的印象を国という集団に帰
属させるな、ということだ。つまり集団としての国家を問題としている。それなの
に、例での批判対象は、制度としての国、もっと言えば国家機関である。同じ「国」
でも意味が違うのだ。
また、国家=悪、国民=善、とうい図式も安易だ。民主主義国家において、国家は少
なからず個人個人の意見を反映する。かつての君主制のように国家と国民を判然と区
別するのは適切ではないだろう。
個別の例についても一言付しておこう。国家=戦争が好ましい、国民=戦争は好まし
くない、という対比が安易なことは、読書録168で見た。情報の独占は別に国家だけ
でなく、誰にとっても有利である。一党独裁は、読書録168、151でみたように、民主
制から生じる。官僚主義と市民社会はそもそも対語的概念ではない。
このように、ピーター・フランクルの社会認識はかなり甘い、あるいは偏っている気
がする。国家=悪、国民=善という図式は岩波らしくはあるのだが。
2001.12.30.
●関連読書録
・読書録173 ピーター・フランクル『ピーター流らくらく学習術』
http://www6.plala.or.jp/Djehuti/20011228.htm
・読書録172 ピーター・フランクル『日本人のための英語術』
http://www6.plala.or.jp/Djehuti/20011227.htm
・読書録139 荒俣宏『稀書自慢 紙の極楽』
http://www6.plala.or.jp/Djehuti/2001107.htm
・読書録125 ハインリッヒ・シュリーマン『古代への情熱』
http://www6.plala.or.jp/Djehuti/200195.htm
・読書録066 阿部謹也編『私の外国語修得法』
http://www6.plala.or.jp/Djehuti/200164.htm
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