>> 記事トピックス一覧 
トップ > 自然科学&技術 > 環境 > 人間と環境・エネルギー

エコロジーな生活って何だろう

発行日: 2004/12/18

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
            
            【人間と環境・エネルギー】
                《第81号》
                                                                    2004.12.18
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《原子力(第4回)》 

 今回は,「国策と原子力の関係」というテーマで考えたいと思います.

 原子力の平和利用に関してはアイゼンハワー(Dwight D. Eisenhower)米大統領が
1953年12月8日の国連総会で「平和のための原子力」(Atoms for Peace)と題する演
説が一つの契機になったと考えられます.実際の演説では平和利用問題は演説の最後の
部分に出てくるだけで,軍事利用(核管理)問題が中心命題であったようです(出典:金
子熊夫氏著,他力本願から自力本願へ 
http://www.eeecom.jp/030929AFP50Kaneko.htm)

 日本では,同演説の本来の意味とは関係なく,この演説を専ら原子力平和利用を提唱
したものとして扱われる傾向が強いようです.ところで,原子力の利用は今日でもエネ
ルギー政策の一環としての「国策」であると考えられていますが,一体,いつごろから
「国策」という位置づけになったのかという素朴な疑問が沸きます.そこで,原子力開発
の歴史的な経緯を簡単に振り返ってみたいと思います.

 1954年3月,自由党,改進党,日本自由党の3派による原子力予算2億5000万円(原
子力平和的利用助成費2億3500万円+ウラン資源調査費1500万円)を盛り込んだ予算
案の国会提出が突然決まりました.原子力研究に慎重だった日本学術会議の方針は,転
換を迫られることになりました.真偽のほどはわかりませんが「学者が居眠りをして怠
けているから,札束でほっぺたを打って目を覚まさせるのだ」と政治家が言い放った,
と伝えられています.

 原子力予算案は,科学者たちの反対があったにもかかわらず成立し,政治主導という
形で日本の原子力開発はスタートがきられました.しかし,この段階では原子力の利用
について一部の政治家とその賛同者が主役となった出来事に過ぎず,「国策」という認識
での原子力の開発という位置づけはできない,と考えます.

 いずれにしてもこのような政治主導の決定が契機となり,1955年に原子力基本法及
び原子力委員会設置法が議員立法として超党派的な支持の下に成立しました.そして,
原子力の開発を平和目的に限定することを基本とし,自主・民主・公開の3原則を基本
方針として開発がスタートしました.ある意味,この時期に「国策」として原子力利用が
認識された,と考えることができるのかもしれません.

 当時は超党派(民主党,自由党,社会党)の有志議員が国会内に原子力合同委員会を組
織して取組んでいることから,国内には原子力利用に対する異論はあまりない状況で
あったと推察され,現在の原子力利用に対する感覚とは隔世の感があります.

 そして,原子力委員会は1956年に設置されると直ちに原子力の開発利用に関する長
期的な計画を策定するための検討に入り,同年中に「原子力開発利用長期基本計画」を定
めました.この時期は,まさに「原子力ブーム」と言っても過言ではない状況であったよ
うです.

 このような「原子力ブーム」の時代を反映してたのか,1952年4月には漫画「鉄腕アト
ム」の連載が始まり,1963年には「鉄腕アトム」のアニメシリーズが始まりました.ア
トムが「科学の子」と呼ばれており,日本で原子力発電が初めて実現したのも1963年で
あることを考えると,当時は「原子力」や「科学」に対してまた「夢」を感じることのできる
時代であった,と想像できます.

 この種の「原子力ブーム」は,日本に限ったことではなく,欧米諸国でも同様な時期が
あったようです.それ以降の原子力の動向は各国各様ですが,世界的な原子力に対する
位置づけは,アメリカの動向が大きく左右したようです.具体的には1950〜60年代に
かけて核兵器拡散の危機に直面したことが一つの契機となりました.

 この時期,核兵器保有国としてアメリカ(1945年),ソ連(1949年),イギリス
(1952年),フランス(1960年),中国(1964年)が名乗りを上げ,世界的な核拡散に対
する不安が高まる一方,増大するエネルギー需要に対する供給源として原子力の利用を
期待する,という二面性の問題が生じてきました.

 この問題は,原子力平和利用計画と核拡散防止条約の両立という立場で何とか対処さ
れてきましたが1970年代に入り,インドが自国原子炉から得たプルトニウムを用いた
核兵器開発に成功する(1974年)と,にわかに核拡散への抑止が政治問題として再燃す
ることになります.

 1977年4月にカーター政権(1977〜1981年)が打ち出したプルトニウムモラトリア
ム政策によって,バーンウエル再処理工場(商業用),クリンチリバー高速増殖炉,民
間のプルトニウム燃料加工工場など,アメリカ国内のバックエンド関連事業は全て中止
となりました.この時期がある意味,世界の原子力にとっての一つの大きな転換期に
なったと考えられます.

 アメリカの原子力政策の転換が契機となって,国際的グループである国際核燃料サイ
クル評価グループ(INFCE)の3年にわたる検討の末,従来の原子力発電とプルトニウム
を燃料として活用する高速増殖炉は,核拡散の可能性を高めることにはならない,とい
う結論で議論が収束しました.

 いずれにしても,原子力を平和利用という目的に限定しても,常に核拡散,すなわち
核兵器への転用可能性が問題となり,「政治的」な影響を免れないことが明らかになりま
した.現在のイランや北朝鮮の核兵器開発疑惑も,同一線上にある問題と考えることが
できます.

 アメリカでは1974年以降,原子力発電所の新規建設はありません.これは,カー
ター政権誕生前からの状況で,1970年代の2度にわたる石油危機による経済成長の減
速および電力需要の伸びの低下が主な原因と考えることができます.さらに1979年に
起こったスリーマイルアイランド原子力発電所の事故以降は原子力に対する社会的な反
対が高まりました.

 このような世界的な動向とは裏腹に,日本では1970年代の2度の石油危機を経て,
エネルギー資源最貧国としてのエネルギー安全保障上の必要から一貫して,準国産エネ
ルギーである原子力重視政策が進められてきました.

 日本における「国策」としての原子力利用に関する基本的な方針を具体化したのが,原
子力委員会が策定した原子力開発利用長期計画(正式名称:「原子力の研究、開発及び利
用に関する長期計画」)と捉えることができます.

 長期計画は,日本における原子力開発利用の基本的政策を定めたもので昭和31年
(1956年)に初めて策定されて以来,5年程度を目安にその時々の情勢を踏まえて改定
されています.最新の原子力長期計画は平成12年(2000年)11月に策定されたもの
で,さらに新しい計画が平成17年(2005年)中にまとめられることになっています.

 これらの経緯を踏まえると,「国策」としての原子力がスタートして,ちょうど50年
が経過した言えます.この間,社会情勢も大きく変化し,「原子力」に対する認識も大き
く変化しました.

 そして,既存エネルギーおよび新エネルギーを含むエネルギー全般に関する基本政策
となる「エネルギー政策基本法」が議員立法として国会に提出され,2002年年6月7日に
成立,同月14日に公布・施行となりました.

 しかし,エネルギー情勢を客観的に捉えることは容易ではなく,今後のエネルギー資
源の確保策として一体どのような選択肢があるのかは霧の中という感じがします.例え
ば,エネルギー政策全体の中で「原子力」や「新エネルギー」が受けている支援措置の現状
もあまり理解できません.

 「国策」である原子力に様々な「利権」が伴うのも確かです.したがって,「国策」ができ
るだけ特定の利権と結びつかないような方策を確立することも重要です.本来,エネル
ギーの「国策」とは,将来的に安定して「エネルギー源」を確保するための政策である,と
考える必要があります.

 「化石燃料」,「原子力」や「新エネルギー」の区別なく,できるだけ主観を排してエネル
ギー源を扱い,理想論ではなく,現実を踏まえたエネルギー政策としての取り組みが将
来のためにも必須と感じています.

 「国策」に限らず物事に無関心であることが,特定の「利権」に有利となることは間違い
ありません.「原子力」の利権が衰退すれば,別なところに「利権」が生まれます.「新エ
ネルギー」と言えども例外ではない,と考えます.

 好意的に見られている種々の「リサイクル」政策にしても,とても「利権」と無縁とは思
えません.「利権」はいたるところに存在し,完全になくすことは困難ですが,ある程度
抑止することは可能,と思います.

 そのための唯一の対抗策は,私たち一人一人があらゆる問題に関心を払い,他人の見
解を鵜呑みにすることなく,時には自らの手で徹底的に調べ,考えてみることにあると
思います.このメルマガも,読者の皆様にとっては「他人の見解」に過ぎません.あくま
でもご参考程度,とお考えいただければと思います.

お願い:ご意見等がございましたら是非メールにてご連絡下さい。頂いたメールは
サイトやメール配信記事に掲載することもありますので、あらかじめご了承くださ
い。掲載時に匿名もしくはペンネームを希望の方はその旨を明記してください。

***  お知らせ   *****************************************************
 本メールマガジンのバックナンバー(PDF版)を以下の弊社ホームページからダウン
ロードいただけます。何かの折にご利用いただければ大変嬉しく思います。
http://www.3r-net.com/html/merumaga.htm
**************************************************************************

━ 筆者への質問・コメント ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<sugai@3r-net.com>
━ 登録・解除 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<http://www.3r-net.com/mm.html>
━ バックナンバー ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<http://www.melma.com/mag/87/m00046087/index_bn.html>
━ 発行者 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
有限会社 スリー・アール
文責 代表 菅井 弘
ホームページ <http://www.3r-net.com/>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 
このメルマガの読者になる
規約 
>> メルマ!の会報誌もお届けします
ブックマーク: はてなブックマークに追加del.icio.usに追加Buzzurlにブックマークニフティクリップに追加ライブドアクリップに追加Yahoo!ブックマークに登録My Yahoo!に追加Add to GoogleRSS

このメルマガを読んでいる人はこんなメルマガも読んでいます

水処理倶楽部通信
楽しくて奥が深い汚水処理の世界。水処理とトイレの交流誌。観光地の公衆トイレから、農村、養豚(畜産)排水まで、下水道、浄化槽、土壌、山と川、自然環境の...
Green Earth Express
国際環境NGO FoE Japanは、広く一般の皆様にその活動を知っていただくために、ニュースや活動報告などを本メールマガジンにてお届けしてまいりま...
ネットワーク『地球村』えこめーる”ONE”
NPO法人ネットワーク『地球村』発行のメールマガジンです。地球温暖化、地球環境問題、最新の環境情報やグリーンコンシューマとしてすぐに取り組めることな...
燃料電池ワールド
燃料電池をご存じですか?水素から電気を取り出す燃料電池は、21世紀には化石燃料に替わるエネルギー源として、世界中でし烈な開発競争が展開されています。...
使える環境雑学
日本で唯一の環境技術の専門家を養成する国際環境専門学校がお送りするマガジン。地球環境問題をはじめ、エコロジー、自然、生物、化学、資源、生態、バイオ、...


この記事へのコメント


コメントを書く
コメントはありません。

おすすめキャンペーン

利息が気になるあなたへ
オリックスVIPローンカードなら
<<年率5.9%〜15.0%、利用可能枠最高500万円>>
ゆとりのカードローンです。
←お申込みはこちら

スポーツNEWS速報!

その他ニュース 相次ぐ食品偽装 消えた年金達

メルマガデータ

  • メルマガID : 46087
  • 創刊日 : 2001-08-29
  • 最新号 : 2008-03-19
  • 発行周期 : 隔週
  • バックナンバー: 全て公開
  • 発行者サイト: あり
  • 読んでる人 : 841人
  • コメント数 : 1
  • Score! : 100点
  • >> 月間ランキング

発行者プロフィール

ペンネーム :


このメルマガの読者になる

規約に同意する



このメルマガの最近の記事


このメルマガの最近のコメント


このメルマガのバックナンバー


注目情報


新着記事トピックス