宮崎正弘の国際ニュース・早読み
発行日時: 2008/5/12
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成20年(2008年)5月13日(火曜日) 弐
通巻第2183号 臨時増刊号
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なぜ独裁政権の末裔=国民党が執権党に復活できたのか
96年「民主化」以降の台湾政治を丹念に検証、台北ウォッチャーの面目躍如
近藤伸二『反中 vs 親中の台湾』(光文社新書)
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近藤さんは毎日新聞初代台北支局長である。
経済が得意の分野で、それゆえ台湾分析にも企業分析動向が加わり、本書の中味を濃くしている。
戦後、蒋介石が台湾へ乗り込んできて、日本の政府と民間の財産をごっそりと差し押さえ、蒋介石政府と国民党の財産とした。
台湾本省人の不満が爆発し、二二八事件が起きた。台湾人インテリが殆ど殺された。
そして半世紀、台湾は民主化され、自由な選挙がおこなわれ、あの恐怖政治、独裁政治の元凶だった国民党が下野し、八年後に変身して復権した。
国民党の馬英九が、なぜ民主主義・台湾で蘇ったのか?
陳水扁政権があまりにも無能であったからか? 原因はどうやらそんな短絡的な現象ではないらしい。
近藤氏は、懇切丁寧に戦後台湾史の概略を述べながら、どう統計をとっても統一派のいう中華主義意識の前に「台湾人アイデンティティ」が深まり、一方で政治意識の国際化が進み、むしろ国民党が民主化され、近代化され、スリム化したうえで、馬自身が台湾南部の、従来民進党が圧倒的な地域にロングスティと称して回り、たどたどしい台湾語を必死で喋り、ついに選挙に勝利できた過程を解きほぐしてゆく。
社会構造の変化と景気対策、大陸政策で与野党が激突するのは当然にしても、原発や防衛予算でも与野党は鮮明に対立する反面、尖閣諸島の帰属では「あれは台湾領(つまり中華民国領土)」という意味で与野党は一致する。
この台湾には労働力不足と嫁不足で、夥しい外国人が流入している。
第一は大陸からの花嫁。およそ26万人。これにベトナム花嫁など加えると、じつに40万が外国からの花嫁である。
第二は3k労働を嫌う台湾の若者を代替し、インドネシアから12万人、タイから8万六千人、フィリピンから8万四千人、そしてベトナムから7万人が労働者として台湾社会にとけ込んでしまったが、多くの台湾人は、これを深刻な問題と考えていない事実。
以下は小生の感想。
李登輝前総統は、選挙直前に『私の一票は謝さんに入れるが』としつつも、国民党の勝利の翌日に馬英九が訪問するや、かれを支持した。
もっとも李政権下で、馬は法務大臣をつとめ、李登輝の教え子でもある。その後、日本外交に関しては舞台裏で多くのサインを出している様子である。
馬英九は評者(宮崎)の質問(3月23日、当選翌日)に答え、「私が反日活動家ですって? そういう誤解を解きたい。日本重視路線に変わりはない」(詳しくは週刊朝日に寄稿した)と明言した。
これも李登輝の示唆<?>に従ってか、5月初頭には台南へ向かい八田與一の記念碑に詣でるという挙に出た。八田與一は日本人技師で台湾南部の灌漑に尽くした。
五月20日の馬英九、台湾第十二代総統就任式には石原慎太郎都知事らが参列する。
なにかが変わりつつある。
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無償の行為、代償さえ求めずに散った日本の若者はそこに何を求めたのか?
カレン族独立戦争義勇兵らの孤独と勇気を描くノンフィクション
高部正樹『戦友 名もなき勇者たち』(並木書房)
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見返りもない自己犠牲。映画ランボーで、ベトナムの未帰還兵士を奪回に行く主人公(シルベスタ・スタローン)は寡黙で、無言の兵士は決してワシントンの華やかなパーティには呼ばれない。
政治の晴れ舞台にお呼びでないのに戦線へは突出し、正義の大儀を信じて戦う。
正義は、しかし本当にこの世にあるのか?
ベトナム戦争は「反共の正義」を標榜して、夥しいアメリカ兵が投入され、逆に残留日本軍が鍛えたベトコンは強く、五万人強が犠牲となった。
あの頃、韓国もフィリピンもベトナムに派兵して米国に協力したが、日本は基地の提供と娯楽と、そしてじつは死体処理のセンターとなった。
日本でベトナムからの遺体は洗浄され、脱臭され、ドライアイスをつめて特殊梱包し、米軍輸送機で本国へ運ばれた。
往時、日本で職業左翼いがいの日本人も米国の戦争を支援しなかった。その理由は、ベトコンが大東亜戦争における日本の恨みを晴らしてくれているという認識が潜在したからだ。
泥沼となってベトナム戦争は長期化し、米兵は本国へ帰還できても、米国内でよそよそしく扱われた。
「我々は大儀のために死を賭して闘い、ジャングルに傷つき、そして祖国では栄誉を与えられなかった」と多くの兵士が不満を持った。
遠い話ではない、次期米国大統領(に最も近い)、ジョン・マケイン上院議員はベトナムで果敢に戦い捕虜になり、帰国後「負け犬」呼ばわりされた。
本書はランバー的人生の日本人版である。
まさに無償の行為のために、カレン族の正義を信じ、カレンの独立を夢見てビルマ国境で闘い、そして死んでいった日本の若者がいた。
本書は、その知られざる史実を淡々と書いた記録でもあり、三人の戦死者へのレクイエムである。
しかしなぜ? カレン独立と彼ら日本人の人生とはいかなる相関関係にあるのか。
小生はこの本が少数ではあれ、いまの日本のように全てが停滞し、だれて、大和精神を失った日本人に読まれることを不思議な感動をもって見ている。
泰平のぬるま湯に浸かりきり、いや沈みかけ、自衛隊が戦争を知らず、いや、軍人の名誉がなくなってしまったこの国で、国家をまもるという国防議論さえが壮大な無駄となりつつある。
そうした環境に生まれて育った若者が、何の衝動を駆られ、いったい何を求めてビルマはアフガニスタンへ行って戦うのか?
しかも著者はビルマで三名の日本人戦友を失いながらも、数年を経ずして、果てはバルカン半島のボスニア&ヘルツェゴビナまで出かけてクロアチア義勇軍に入り、また戦った。
何のために?
これは文学の重要なテーマでもある。ヘミングウェイ「キリマンジャロの雪」の冒頭場面を思い出す。
キリマンジャロの突こつたる頂上付近に一匹の豹の死骸がある。
「いったいなんのために何をもとめて豹がその高みにまでやってきたのか誰も知らない」。
ビルマ戦後、アフガニスタンからボスニアを経て、戦い続けてきた著者の高部正樹氏は、貴重な証言者である。
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(以下に短評を二つ)
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川本敏郎『こころみ学園 奇跡のワイン』(NHK出版)
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いつも変わった本を出す川本敏郎さんだが、アイディア発想法からジャガイモ料理本、こんどは葡萄の話に挑んだ。
ところが、この本は葡萄ストーリィとソムリエの話かと思いきや、まったく趣きが異なる。
知的障害者たちが足利の地にある「こころみ学園」で、懸命に葡萄を育て、それがいつしか極上のワインとなって、ついには沖縄サミットの首脳晩餐会「乾杯」御用達となった。
足利の急斜面にこのぶどう園が広がり、ここで多くのドラマが誕生した。それは足利学校の伝統ゆえのことなのか?
川本さんは足を棒にして足利に通い、関係者を取材して、一風変わった感動のメルヘンをノンフィクションに仕上げた。
テレビドラマの原作になりそう。
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伊藤公紀、渡部正『地球温暖化論のウソとワナ』(KKベストセラーズ)
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環境サミットは茶番である。
小生に言わせれば、その前に偽善である。環境を商売に使っている人もたくさん出てきた。
しかし地球の温暖化シナリオはウソのデータを怪しい数字に満ちている。
胡錦濤来日時に日本側が示した「環境地球儀」って怪しくないか? 「地球温暖化」を言いふらすと誰が得をするのか?
本当にこんなウソを信じているとどうなるのか、わずか二十年前には地球に氷河期がくるという説が強くなかったか。あれはどうなったのだろう?
前の米国副大統領ゴアの書いた『不都合な真実』は、ゴアたちの不都合な真実をはぐらかしている。
このように本書は環境問題の裏側を正反対のデータを挙げて鋭くえぐる問題作である。
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(読者の声1)貴誌に紹介された「資料」としての「北国新聞」(5月10日付)の李登輝、馬英九に関する紹介記事から連想したこと。
当選直後の馬に会って、その反日性についていち早く指摘したのは宮崎正弘氏でした。その影響もあってか、その後の馬の変貌振りはすごいですね。新手の和平応変ともいえます。
米中日を視野に入れた多面的な含みで、それに同調する李登輝元総統の老獪さもさすがさすが。いい意味で実に食えない爺さんです。
貴台はそのあたりを充分に承知の上で、今後も馬の二面性をその都度的確に指摘されることを願います。
(SJ性)
(宮崎正弘のコメント)馬英九・新台湾総統に残る唯一の危険性とは、彼の世界観が中国の「民主化」の前に「中華思想」があることです。
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(読者の声2)「国民文化講座」のお知らせ、です。
明石 元紹先生(明石元二郎大将ご令孫)
演 題:祖父、明石元二郎の生涯を語る
―日露戦争後方撹乱工作と朝鮮・台湾での足跡―
日 時:平成20年5月17日(土)
午後1時30分開演(午後1時開場)
場 所:靖国神社「靖国会館」偕行の間
(半蔵門線・東西線・都営新宿線「九段下」より徒歩5分、JR「飯田橋」(又は「市ヶ谷」)より徒歩10分)
http://www.yasukuni.or.jp/annai/keidai3.html
会 費:1,500円 (学生500円)支払は当日受付にて
定 員:150名
主 催:社団法人 国民文化研究会
後 援:産経新聞社
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< 宮崎正弘の新刊予告 >
『北京五輪後、中国はどうなる?』(五月下旬刊。並木書房、予価1680円)。
20日過ぎに予約特典の募集をおこないます
(1)著者サイン入り、(2)送料無料、(3)振り込み手数料無料。(4)発売前日までに到着の四大特典。応募要領は「並木書房」から本欄に月末に告示されます。
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(( 最新刊 ))
宮崎正弘・黄文雄共著
『世界が仰天する中国人の野蛮』(徳間書店、1500円プラス税)
http://miyazaki.xii.jp/saisinkan/index.html
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((( 宮崎正弘のロングセラーズ )))
http://www.amazon.co.jp/s/ref=sr_st?__mk_ja_JP=%83J%83%5E%83J%83i&rs=465610&page=1&rh=n%3A465610%2Cp_27%3A%8B%7B%8D%E8+%90%B3%8DO&sort=-pubdate
『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』 (KKベストセラーズ、1680円)
『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』 (徳間書店、1680円)
『世界“新”資源戦争』 阪急コミュニケーションズ刊、1680円)。
『出身地でわかる中国人』 (PHP新書)
『三島由紀夫の現場』 (並木書房)
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宮崎正弘 全著作一覧 (これまでの128冊の著作リストを閲覧できます)
http://miyazaki.xii.jp/tyosyo/index.html
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宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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