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宮崎正弘の国際ニュース・早読み
発行日時: 2008/3/26
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成20年(2008年) 3月26日(水曜日) 弐
通巻第2133号
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馬英九次期政権の何がまだ危険なのか?
彼の「反日」姿勢は是正されたが、中華ナショナリズムは骨の髄まで
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日本における馬英九(次期台湾総統)への危険視は急速に薄れた。当選を聞いたとき、多くの日本人は失望を禁じ得なかった。しかし国民党圧勝の現実を前にすれば、好むと好まざるとに関わらず、それが台湾民衆の選択である以上、受け入れざるを得ないだろう。
当選の翌日に小生は馬英九との記者会見で『反日』に関して直撃した。
http://www.ohmynews.co.jp/news/20080325/22545
台湾人の思考回路は、率直に言って日本人のように短絡的二元的ではない。
論理的でもない。目の前の中国大陸の強大な市場と、軍事的脅威とアメリカへの心理的依存。しかも目先の利益と日常の経済と、日本への依存度がありながらも、しかも日本が好きだが、日本は政治的には何もしてくれないではないかとする失望と焦り。
であるとすれば、当面の現状維持を台湾自らも勝ち取るには、民進党よりも、ベテラン政治を歩むほかの政党でもよい、という輻輳した思考回路から馬英九への期待が醸成された。
60歳代以上の台湾人に強く残る危機感は、わかい台湾人にはない。
台湾人意識が希釈化したのではなく、むしろ台湾人のアイデンティティは、近年ますます強くなりながらも、それをうまく吸収できなかった民進党の選挙戦術のあやまりが、国民党を中華思想の政党と考える前に執権党の復活を許したのだ。
産経新聞は3月26日朝刊トップで李登輝(前台湾総統)への独占インタビューを掲載し、「(統一をいう馬が新政権を担っても)『中国台湾統一』の加速はない」と明確に述べている。
コラム「正論」でも岡崎久彦氏は同様な判断に立って、あの結果は「一種の楽観的見通し」の存在がある、と指摘している(産経、3月26日付け)。
馬英九は中華ナショナリズムの信奉者であるため、危機に遭遇すると大きな判断ができない危険性が残存する。
しかしながら台湾民衆が「台湾人アイデンティティ」と同時に現状維持の選択をするという絶妙なセンスを見せたのも、馬英九が基本的に親米であり、反共という思想基盤のうえに、台湾の若者のあいだに急速に浸透したシビル意識(市民意識)を刺激しつつ、反日姿勢をすくなくともポーズとしては捨て去り、そのうえで北京と協商のみの交渉をしようとしたところにある。
ビジネスマンの強大な支持があったのも、ビジネス志向、株式市場の回復が優先だったからだろう。
国民党の新装なった本部へ行って驚いた。国民党本部は一流企業のオフィスのごとし、熱烈な蒋介石ファンの、独特な愛国的中華主義の雰囲気はなかった。
また国民党の利益は北京の利益と大きく抵触するため、馬の目下の関心は国民党の利益擁護だから、早急なる中台統一はない、むしろ遠のくとみる李登輝、岡崎久彦両氏の分析は、それないに正しい。
台北滞在中に得た、信頼できる台湾筋情報では、馬英九は李登輝を尊敬しているという。李が最後の土壇場になるまで民進党支持を見送った理由のひとつに、馬も粛萬長(次期副総統)も国民党時代の自分の後輩、教え子にあたるからだ。
▲チベットの虐殺は遠い世界の出来事
さて小生にとって最大の衝撃は大差による民進党の惨敗ではなかった。
あのチベットにおける中国共産党の暴虐が行われ、仏教徒への虐殺がおこなわれている最中に、台湾総統選挙の争点が梃子となって、チベット問題が逆風を起こさなかったという、あまりにも現実的な台湾選挙の反応だった。
チベットの血の弾圧は台湾でも大きく報道され、日本には伝わっていない残虐な映像がテレビに流れ、自由広場ではチベット人のハンガーストライキを支援する多くの台湾人の輪ができた。
だが選挙結果にはすこしもチベット問題が影響したという形跡がない。
筆者は考えた。随唐の時代、チベットは杜蕃といい、いまのチベットから青海省、四川省、甘粛省、峡西省などを勢力圏に、つまり当時は随唐とならぶか、版図としては随唐よりも広い帝国、一時は長安を軍事的に陥落させたほどの大国だった。
それゆえに漢族はチベットの王に姫君を嫁がせ、宥和をえた。そのときの恐怖心が漢族のDNAに残り、ロシアがいまも「タタールのくびき」を畏怖するように、「チベットのくびき」という歴史上の感覚が残るのではないか。それは漢族としての外省人には、確認するまでもなく顕著である。
しかもチベットは現実に中国共産党の軍事的支配下にあり、そうではない台湾とは根本の感覚が異なる。
▲北京五輪ボイコットを政治利用できるか
たしかに馬英九は「五輪ボイコット」を叫んだ。
精密にかれの発言をトレースすると、馬は次のように発言している。
「もし、チベットにおける情況がさらに悪化し、弾圧が拡大するとすれば、我々は北京五輪ボイコットも選択肢の一つとして考慮の対象にする可能性を残しておく」。
北京五輪ボイコットの選択の可能性を、すでにフランスの外務大臣が述べたが、米国のブッシュ政権は慎重である。
日本政府は考慮にさえいれていない。
馬英九の持つ近未来の危険性は中台統一が究極の目的でありながらも、じつは小生らの質問に答えた次の発言のなかにある。
「次の四年、希望的にはあと八年間で、わたしの政権ができることは限られている。長期的戦略的な基礎を提示できるような努力をわたしは任期中にするが、理想の実現は簡単ではない(つまり中台統一は自分の政権では難しい)。だから当面は(ビジネスがしやすいように)中国との『和平協商協定』の締結を急ぎたい」。
このようにふとした発言に含まれている中華ナショナリズム。なぜ李登輝氏のように「中国が民主化されたあとで、話し合いをすればいい」と言えないのか。つまり馬の価値観のなかでは「民主」の上位に「中華ナショナリズム」があること、それが馬英九にまだ強固に残存する危険性なのである。
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反日馬英九政権で日本は大丈夫か?
(宮崎正弘の台湾報告 ↑)
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(読者の声1) 沖縄問題と教科書で緊急シンポジウムが開催されます
http://www.tsukurukai.com/08_simpo/simpo200329.html
□日時=3月29日(土)午後6時50分開演
□会場=杉並公会堂(荻窪駅北口から徒歩7分)
□登壇者と発言テーマ=櫻井よしこ(台湾総統選後の東アジアと日本の国家戦略)
田久保忠衛(中国に狙われる沖縄と「沖縄独立論」の今昔)
恵隆之介(沖縄戦で日本軍は全力で県民を守った)
松本藤一(3.28集団自決冤罪訴訟大阪地裁判決の論理)
梅澤裕(冤罪訴訟の原告となって)
藤岡信勝(集団自決の真相と教科書検定)
高森明勅(司会・コーディネーター)
□第二部 シンポジウム
□主催=新しい歴史教科書をつくる会 □参加費 2000円
□開催趣旨=今、沖縄は狙われています。台湾総統選での国民党の政権奪取と、沖縄集団自決冤罪訴訟判決を踏まえ、地政学的に重要な沖縄をめぐる問題を、各テーマの第一人者が多角的・総合的に論じます。沖縄を軸にして日本国家のあり方と教育の問題を考える必見のシンポジウムです。
□申込み方法=朝10時以降「つくる会事務所」まで電話(03−5800−8552)にてお申し込み下さい。
(宮崎正弘のコメント)ご盛会を祈ります。櫻井よし子さん、田久保忠衛さんらが本格的にこの問題に挑むのは「見所」というより「聞き所」ですね。
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(読者の声2)台湾の総統選挙は、大方の予測が大幅に狂った。その結果に友人の奥様は号泣して居られました。2.28事件後、「台湾人」の人権を蹂躙する目的で布かれていた「戒厳令」は、表向きでは解れてはいたものの其の影がはまだ色濃く残る中、身の危険を感じながら自由を求めて密に固め積み上げてきた「民進党」結成者達の衝撃は如何ばかりか、と其の衝撃を受止めるとき、込上げてくるものがあります。
「台湾国」の歴史、日本人との拘り等々に付いて話し、何故に我々日本人は「台湾人と『台湾国』」を死守しなければ成らないのか。
中国については、中国と謂う国は無い、中国人と謂う人種もいない、在るのは今にして「侵略」の夢覚めやらぬ「中華人民共和国共産党独裁国家」と称する『侵略国家』が在るだけだ。
この『侵略国家』の現状を批難するが、五千年来、力を付けた豪族の頭目が『天命』と 称して『皇帝』に成り、其の都度捏造で塗り固めてきた嘘吐きの民族達が造った『捏造国家』である、と謂うことを日本人が知ろうとしてこなかった事が問題であって、批難、軽蔑されるべきは寧ろ愚かな日本人にある。又、「共産党独裁国家」に媚びている連中は、政・財界・マス塵を問わず皆手先と思って間違いない。
(TK生、佐賀)
(宮崎正弘のコメント)『天命』思想の根源が炎黄帝信仰、その総本山を峡西省の奥地で見学したとき、人と猿とのあいだのような想像上の帝王の像がなぜ、コンクリート造りなのか不思議に思ったものでした。
炎黄帝を飾る公園に、なぜか観覧車や土産屋や観光用のリキシャがあるのか、わが天皇陵の壮麗で静寂なたたずまいと百八十どことなる帝王観です。
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「北京五輪にNOを!」
緊急国民集会 4月10日豊島公会堂(午後六時)詳しくは下記へ
http://miyazaki.xii.jp/sina/index.html
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宮崎正弘・黄文雄共著
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『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』 (KKベストセラーズ、1680円)
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『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』 (徳間書店、1680円)
http://www.business-i.jp/news/book-page/debut/200710130007o.nwc
(書評と申し込み方法 ↑)
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『2008年 世界大動乱』 (改訂最新版、1680円。並木書房)
『世界“新”資源戦争』 (阪急コミュニケーションズ刊、1680円)。
『中国から日本企業は撤退せよ!』 (阪急コミュニケーションズ刊)
『出身地でわかる中国人』 (PHP新書)
『三島由紀夫の現場』 (並木書房)
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宮崎正弘全著作一覧 (これまでの127冊の著作リストを閲覧できます)
http://miyazaki.xii.jp/tyosyo/index.html
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宮崎正弘のホームページ http://miyazaki.xii.jp/
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この記事へのコメント
全3件表示といっても馬英九次期総統が協議の
前提としている大陸における台湾
向けミサイルの除去を中共軍が
行う見通しは立っていません。
つまり協議開始の見通しすら
立っていません。
陳水扁政権は、中国との統合を
謳った「強本西進」政策の頓挫に
追い込まれました。
馬英九が中共当局に要求する
国際社会における台湾アイデンティ
ティの尊重を中共当局が考慮する
見通しが立たない以上、陳水扁政権
の「強本西進」政策同様、「中台共
同市場」政策も頓挫に追い込まれる
ものと思われます。日時:2008年3月26日
>だから当面は(ビジネスがしやすいように)
やはり一国の国力、外交力の基本はその国の経済力なんでしょうね。日本が米国追随と揶揄されるほど米国べったりでいるのも根本には米国の巨大な経済力があるため(付き合っていれば得になる)。
日本が台湾と友好な関係を続けていくためには日本の経済を立て直し台湾にとって日本を経済的に魅力のある国にしていくことが正道ではないでしょうか?
日時:2008年3月26日
中国はあくまで中国、日本人も中国より日本を考えた方が良いと思います、日本の国益第一、経済も一応一流・軍事も武器の不足は有りますが台湾より上・政治は5流・気力も3流、今は「日本人」を取り戻す事が一番必要だと思います。日時:2008年3月26日
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