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 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析




宮崎正弘の国際ニュース・早読み

発行日: 2006/1/4

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成18年(2006年)1月5日(木曜日)
         通巻第1346号 
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石油利権の前には外交原則もなんのその
 中国、イラク北部のクルド自治区で石油利権を確保
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 クルド自治区の最高幹部が北京を訪問するという椿事がおきたのは2003年8月のことである。クルド自治区とは言うまでもなく、イラク北方に居住するクルド人居住区で、大幅な自治が許されているのが現状。

タラバニ「クルド愛国連盟」議長(その後、サダム崩壊。最初のイラク大統領)の訪問を北京が受け入れたこと自体、異例中の異例である。

 直後、唐家旋(当時外相)が答礼訪問をなし、「地域の平和と復興に中国も貢献する」とのたまわった。 ただし双方は「クルド愛国連盟と中国共産党の友誼」を謳い、政党間の協定に固執して国名を連記しなかったが。。

 つづいて中国はタラバニのライバルでもある「クルド民主党」に急接近した。マスード・バルザニ党首とも突如として友好関係を結んだのだ。

「クルドの言いしれぬ過去の艱難に同情し、今後の“イラク連邦”の再建は重要である」と発言し、他方、バルザニは中国に対して、「クルドスタンとして独立することに中国が前向きの努力をかたむけることを望みたい」と発言している(05年五月16日)。

 中国は「独立分子」を「分離主義者」として一括して批判しつつ、過去にクルド独立に一貫して反対してきた。
もし少数民族の分離独立を認めると、中国は台湾問題ばかりか、チベット、ウィグル、蒙古族の独立を弾圧してきたことに整合性を失い、外交原則の基盤を自ら崩しかねないからだ。
 それが分離独立運動の親玉をニコニコ薄ら笑いを浮かべながら受け入れたのだから矛盾も甚だしいのである。

「クルドの主張を尊重し、自治は保護されるべきである」と言いだし、クルドのナショナリズムを前向きに評価し始めた。これまでのアジアアフリカ運動の主導権をとってきた中国は口を開けば「民族自決」を標榜してきてはいたが、これにくわえてクルドには「地域の安定が重要である」とも言ったのである。
 まさに鵺のごとく振る舞う北京。


 ▲そこにある石油の利権

 変心の理由は極めて簡単かつ明瞭である。
 石油利権が目の前にあるからだ。

 1966年のクルドの叛乱を中国はバグダッドへの独立の闘いと言ってのけ、イラク政府との間が冷却してきた。ところが1975年の叛乱では一転してバグダッドについた。理由はサダムのイラクが膨大な中国製武器を買ってくれる巨大マーケット、フセイン前大統領は大事な顧客だったからだ。
 中国はクルド独立の闘いを真剣に理解したり、同情を寄せたりした証拠は、これまで一度もなかった。

 サダム・フセイン独裁政権は嘗てクルド族自治区の叛乱に手を焼いて、毒ガスをドラム缶ごと、当該居住区に空から投下し、五千人を殺した。
この残虐行為は世界中からの非難を浴びた。
トルコも、クルド族との長年に亘るゲリア戦争に手こずり、国内クルドを弾圧してきた。シリア、イランしかり。

 クルドは世界中に散らばるが、とくにドイツの外国人労働者のなかにも多くのクルド族がいる。
トルコに1450万人、イランに460万人、イラクに430万人。そしてシリアに100万人。そのほかを加算すると世界中で2300万ものクルド族が居て(ユダヤ人より多い)、しかも自分の国がないのだ。
サラディンはクルド族出身で、アラビア大帝国を築いた。
 クルド族は誇り高く勇猛果敢な砂漠の民である。

 中国が手のひらを返すようにクルドへ猛接近をはじめた理由は露骨すぎるほどに現実的である。

 イラク北方、クルド自治区は91年の湾岸戦争以来、事実上の独立を達成しており、いまや石油開発は自治区の権限である。
「イラク連邦」なるアメリカ傀儡政府は、まだ十全には機能していない。05年10月15日に制定された新憲法は石油権益がだれに所属するのか、曖昧な文章を並べているだけである。
しかも、この高原砂漠地帯にイラク石油の半分近く、およそ1300億バーレルが眠っているのだ。
 

 ▲ウィグル独立を援助するトルコを牽制

 第二の理由はトルコへの牽制である。
 トルコ国内にはウィグル独立を唱える分離独立グループが十数、アンカラやイスタンブールに本部を置いている。
 中国のアキレス腱である。

かれらの代表は昨年、ワシントンに集合してウィグル独立憲法を制定している。
 ウィグル独立を目指すイスラム教徒過激派は、中国国内でいくつかのテロをおこない、北京を震え上がらせた。

 ウィグル人の悲願である「東トルキスタン独立」(現在の新彊ウィグル自治区)を武力で封じ込める北京は、血の弾圧をつよめる一方で後方支援ルートの根源がトルコ国内の独立派諸団体にあると見ており、トルコとの外交には激甚なるすきま風。

従前はクルド弾圧のための武器を当該諸国に輸出してきたのも中国だったが、それはそれ、これはこれ。外交原則なるものは朝令暮改のくにであるだけにトップの鶴の一声で、いかようにも変わるのだ。

 2000年四月にアンカラを訪問した江沢民は「中国とトルコ両国は領内に互いに分離主義者を抱え、安定を欠いているが、国家の統一、テロリストとの闘いは共通している」と発言してアンカラ政府に牽制球をなげた。

 イラク北方クルド自治区の北部、山岳地帯を支配するのはバルザニ率いるクルド民主党。
 04年にノルウェイのDNO社と発掘リグの試掘契約に同意しており、しかもその発掘リグ操業の下請け企業は、な、なんと「長城発掘石油公司」なる中国のコングロマリットだった。
 同社は僅か90日間で、6000メートルの地下まで試掘できるリグを当該地域に建てた。

 またアルアダブ開発地区では、すでに中国のCNPCとノリンコ(中国北方工業集団)が一日8万バーレル、22年もの長期契約を12億ドル余で締結済みである。

 米国が後ろ盾の新生イラクは、クルド、スンニ、シーアの三つ巴で泥沼化したままだが、クルドが事実上の独立国家となっていることは既成事実であり、リアリスティックな計算を得意とする中国が、電光石火の早業でクルドに接近し利権を獲得したことを米国は苦虫をかみつぶしたような風情で見ているにすぎない。

 まして善意と米国への交際費で、サマワに駐屯してきた日本は、石油利権のセの字も聞かれない地点にいる。
           ☆ ☆ ☆
〔注 文中「唐家旋」の「旋」は王扁。「新彊」の弓扁の下部に「土」〕。
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   ♪
(読者の声1)上海総領事館の件、最大の問題は外務省の機密保持教育の杜撰さ。中国側のウイーン条約違反を論う方々も見受けられますが、やはり国益と密接に結びついた機密管理のルーズさ、下世話な表現でいう「ノーズロ」(すでに”死語”でしょうか)こそが問題。
在外公館職員としては最底辺とみられている電信官であったとしても、彼に確固とした機密保持教育が施されていたなら、上海式美人局には乗らなかったのでは。
いかな手練手管を駆使されようと、彼は断固として”先方の要求”を撥ね退けえたはず。今回の事件は、外務省のヘンテコ体質が齎したものと思います
        (KH生、所沢)


(宮崎正弘のコメント)悪いジョークですが、日本には機密にするほどの情報がない、という恐るべき事実の裏返しでもあるかも。
敵国がせっかく苦労して暗合を解いても、それは公開されている情報と似たり寄ったりの中味だったりして。或る国の日本大使館においてある機密ファイルを或る職員がそっと開けたら、当時の首相の好物が鰻と書いてあったとか。


   ♪
(読者の声2)あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。 さて貴誌4日付けだったかの藤井厳喜『這い上がれない未来』 にある、「一方で無能なひとびとが依然として高給をはむ、という異常な無差別階級社会主義をもたらした。この先は弱肉強肉時代、その次は何が待ちかまえているのか?」という宮崎さんの書評を拝見しました。
背景にはグローバル競争があります。
宮崎先生の紀行文にもあった様に、最適要素を持つ土地や企業には資本他経営資源がおしみなくつぎ込まれます。ベトナムやモンゴルの都市の富裕層が豊かになり、ウランバートルですら不動産価格が高騰しています。そして、日本の地方はご存知のようにいずれも立ち枯れてもはや未来はありません。 
無能な高給人は、まず公務員か、少子高齢化で誰もが富を生まなくてはならないのに公務員なんか労働資源の浪費だと思いつつ。 
所得格差が教育の二極化を齎し、階級格差を固定させていくとありますが、学歴=技能のみならず、チャンスをものにしていくストリートスマートとバイタリティに加え、「資本の有無」、つまりこいつは税制上の優遇を受けられる層か搾取される層の出身かどうかが人生の決定要素になり、生きる意欲そのものを失わせるのではないかと思います。
それはどんな家庭に生まれたかで決まっています。 
例えば、親が自営業、株式会社主ならば、手元に残る金は多くなります。学歴獲得に努力せず(高い学費も要らない)とも経営者になれます。フリータや無業者への転落はありません。会社の経費で食ったり遊んだりできます(リゾート会員権〜車・電話〜年賀状・香典に至るまで)。配当もあり。人脈も受け継いで同じ仕事をするにも経営者マインド獲得の機会があるか、それともただ雇われ者マインドのままかで辿っていく道は違います。そして定年制の有無と相続税が決め手でしょう! すべて会社名義にしてしまえばよいのです。 
 格差社会の行き着く先は古代ギリシアやローマの歴史を読めば分かります。
競争社会の悪い典型が米国とありますが、むしろ恐れなければならないのは中国型ではないでしょうか? 格差が広がるのは自明と受け止めつつも、富裕者は一層の責任を感じて富を還元していかなければならないでしょう。紳士道も武士道も富裕層による高いモラルの確立と獲得が庶民と支配階級とを分け、支配の正当化に役立ってきました。とそれをせずに貪欲をとどめることも知らず、もてあそぶように喰らいつくことに飽きない。
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http://www.peta.org/
  (X生)
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  • 文豪三島由紀夫は「死後も成長する作家」といわれ、今日も文学、芸術、思想のあらゆる分野に亘っての研究成果が紹介される

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