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小泉&青木と暴力団:週刊アカシックレコード031016

発行日時: 2003/10/16

■小泉&青木と暴力団〜週刊アカシックレコード031016■
03年10月、石原国交相が藤井道路公団総裁を更迭しようとして本人の抵抗に遭い、解任劇は泥沼化の様相を呈してきたが、混乱の最大の原因は、後任のまともな総裁候補がいないことにある。
後任の人材を提供すべき財界は、政府(小泉内閣)の道路改革に反対し小泉内閣が潰れてもいい、と思っているフシがあり、財界に見捨てられた小泉は、自民党(青木参院幹事長)と暴力団の癒着を追及されて03年11月の衆議院総選挙で敗北する可能性が高い。

【おわび】
前回の小誌03年10月06日配信号「シュワ知事の権限:週刊アカシックレコード031006」において、編集作業上のミスにより、ほぼ同じ文章が二重に連なった原稿が記事になり、配信されてしまいました。記事の内容は(前半に)すべて言い尽くされていて「脱字」はないとはいえ、誠に申し訳ございませんでした。
m(_ _)m
以後、編集・チェック態勢を改め、再発防止に努めて参りたいと存じます。

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■小泉と青木と暴力団〜「小泉内閣vs.藤井道路公団総裁」の泥沼■
【前回の「シュワ知事の権限」はこちら → < http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/y2003/ca.html > 

03年9月に発足した、小泉改造内閣の「目玉」閣僚の1人である石原伸晃(のぶてる)国交相が、03年10月5日、藤井治芳(はるほ)道路公団(JH)総裁に翌6日に辞表を出すよう促したが藤井はそれを固持し、石原と国交省は藤井の解任を決めた。

が、国家公務員であるJH総裁の身分は法律で保証されているため、解任には解任される側の言い分を聞く「聴聞」などの手続きが要る。
国交省はこれを03年10月17日に設定したが、藤井はこの聴聞を(人事問題なので「原則非公開」なのに)マスコミに公開してほしいと公言した。マスコミ不在の「密室劇」では、石原と国交省が人権無視の不当な扱いをする恐れがあるというのが藤井側の主張だ。石原は03年10月12日放送のテレビ朝日『サンデープロジェクト』で「(5日に藤井は、旧建設省と不正に癒着していた自民党の政治家の名前をばらすぞと石原を脅したので)そんなことは、聴聞会でもメディアの前でも明らかにされたらどうですか、と(その場で藤井に)二度言った」と言ってしまったので、藤井側の公開要求を呑まざるをえず、結局17日の聴聞にはマスコミがはいることになった。

が、これにあわてたのが自民党だ。
上記の『サンデープロジェクト』で石原は「藤井はイニシャルで政治家の名前を出して『死人が出るぞ』と脅した」と言い放ち、司会の田原総一朗も「(そういう、自民党の道路族の政治家は官僚や業界だけでなく)暴力団とも癒着してる」「ぜんぶばらせば、自民党政治の真の構造改革になる」と応じたが、生中継で地方のスタジオから遠隔出演していた安倍晋三・自民党幹事長の声は急に小さくなった。安倍曰く

「(藤井総裁は)総裁を辞任されたあとに、おおやけにお話しになったほうがよろしい」。

藤井の辞表提出拒否と、法廷闘争も辞さない「徹底抗戦」の姿勢から、正式の解任には1か月以上かかることがこの時点で予想されたから(産経新聞03年10月7日付朝刊3面)「総裁を辞任されたあとに」話せ、ということは「総選挙が終わってから話せ」というのと同じことだ。つまり、安倍は投票日までは自民党のスキャンダルを隠蔽しておきたいのだ。

安倍個人は人格者なのかもしれず、JH改革にも「政・官・業」の癒着を断つことにも高いこころざしを持っているのかもしれないが、いまはそんなことは関係ない。安倍が現在「自民党幹事長」というペルソナ(この言葉については拙著『龍の仮面(ペルソナ)』を参照)を身に着けている以上、それに基づいて行動するのだから。

自民党員、とくに幹事長のペルソナは、義務として来たるべき衆議院の総選挙に勝つことを要求される。であるならば、幹事長としては、選挙に不利になるようなスキャンダルが投票日前に暴露されることは避けたい。かくして、安倍がどんなに優れた人格者であろうとも、当面は「スキャンダルの隠蔽」という卑劣な行動に出ざるをえない。それがペルソナだ。

案の定、自民党側は政府、国交省に圧力をかけ、17日の聴聞の公開を形骸化してしまった。「公開」といっても、TVカメラもテープレコーダーも持ち込み禁止で、記者がメモを取ることを許すだけ、というから、聴聞の席で藤井の口から自民党のスキャンダルが暴露された場合に、有権者が受け取る悪い印象を薄めようとする魂胆がミエミエだ。

安倍は「道路族」議員ではないし、小泉のJH民営化の構造改革路線に反対でもない。北朝鮮による日本人拉致問題では、一貫して被害者家族の立場に立った愛国的な姿勢を取っており、もしかすると民主党の菅直人代表より人格的にはよほど優れているのかもしれない……が、そういうことは「自民党幹事長のペルソナ」を身に着けた瞬間に全部消えてしまう。彼はペルソナに基づいて「スキャンダル隠蔽側」にまわったのだ。

このことは、自民党がいかに人材を投入して構造改革に努力しようとも(自民党が組織として存続する限り)構造改革はできない、ということを意味している。

【逆に民主党員の場合は、この問題の処理は簡単だ。たとえ民主党員がバカぞろいでも、彼らが政権をとれば「政・官・業(・暴)」の癒着は自動的に終わる。理由は、ずっと野党だった民主党内には「スキャンダルを隠蔽」してやらなければならないような「与党政治家」がいないからだ。
だいじなのは、この「自動的に」というところだ。有権者は政治家の人柄に基づいて投票すべきでない。有権者は政治を変えたかったから「どんなバカが権力を握っても自動的に変わる」ような選択をすべきだ。筆者は次期衆院選では民主党を支持しているが、支持の理由は彼らのペルソナであって、人柄ではない(だいたい政治家の人柄なんて、どの党だろうと、みんな悪いに決まってるんだから、期待するほうが間違っている)。
(^_^;)】

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●石原vs.藤井●
そもそもなぜ、石原国交相(と彼を任命した小泉首相)は、藤井を更迭しようとしたのか?
発端は財務諸表をめぐる混乱だ。『文藝春秋』03年8月号で、当時の片桐幸雄・JH四国支社副支社長が、藤井の「国会答弁の嘘」を告発する中で、「公団には2通りの財務諸表があり、藤井は都合の悪いほうを隠蔽し、真相を知る幹部を左遷した」と述べたのだ。

公団は03年6月に、内部に設置した財務諸表検討委員会の定めた会計基準に基づき財務諸表を作成して発表した。が、02年の時点で公団ではひそかに(非公式の)財務諸表を作ってみたところ、公団財政が深刻な債務超過で、とても今後新規の高速道路を造れるような状態ではなかったので、藤井が(道路族の政治家や業者と癒着して無駄な道路を造り続けるために)その非公式の財務諸表を葬った、と『文藝春秋』前掲記事は言う。

ところが、この問題は、石原の前任者の扇千景・国交相の時代に決着がついている。
真相はともかく、当時の国交省は調査の結果「問題の非公式財務諸表は債務超過でなく資産超過」で、したがって「藤井が隠蔽を指示した事実はない」との結論に達し、この調査結果を扇国交相は了承した……ということは彼女の任命権者である小泉首相が了承した、ということだ。それを、国交相が扇から石原に替わったから急に方針を変えて「やっぱり藤井はウソつきだからクビだ」というのは奇妙な話だ。

藤井が「公団職員や扇前国交相の名誉のためにも、辞表は出さない」と言っているのは、法理論上は、実は正しいのだ(小泉内閣が、どうしても「藤井は間違ってるから解任だ」と言うのなら、その前に小泉首相自身を解任する必要がある)。
(^o^)/
となると、藤井が「徹底抗戦」するのは、ある意味で当然だ。
石原や政府・自民党の幹部は、聴聞は10月17日の1回で十分だから、20日には解任だ、と決め付けているが、藤井はさらなる聴聞を求め、解任されれば行政訴訟も起こすだろう。となると、安倍にとっては最悪なことに、11月の総選挙の投票日に向かって、マスコミがこの問題を報じる量はどんどん増えることになる。その間、解任も後任人事も決まらずに事態は「泥沼化」し、有権者は「小泉改革は行き詰まった」「小泉は道路族議員をかばっている」という印象を受けることになるから、この問題は、自民党が選挙に敗れて政権を失う最大の要因となろう。

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●青木vs.藤井●
そもそも、なぜ03年10月5日に、石原は藤井と会見し、辞任を求めたのか……それはもちろん、翌6日の朝刊のトップに、5日に行われた、自由と合併した新生民主党の党大会の記事ではなく、「藤井辞任」の記事を載せたかったからだ。
新生民主党は、合併によって政権交代可能な巨大野党になったため、マスコミの扱いは大きい。その党大会の日にぶつけて、「JH改革の悪玉」である藤井のクビを切れば、有権者の関心を民主党から奪い、小泉内閣が(民主党より)確実に改革を進めているという印象を与えられると読んだからにほかなるまい……と大手誌紙は言っている(『週刊文春』03年10月23日号p.28)。
が、民主党の党大会にぶつけるパフォーマンスが「クビ切り」しかない、というのは不思議な話だ。

そもそも、小泉と石原は、藤井を更迭したあと、だれを後継総裁にするつもりなのか?
もし、それが内定しているのなら、さっさと藤井のクビなど9月中に切ればいい。たとえ藤井が辞表を出さずとも、後継総裁を、それこそ10月5日にマスコミに「お披露目」すれば、石原は「(新生民主党はマニフェストで、高速道路無料化などと暴論を言っているが)小泉内閣はりっぱな人を総裁に据えて着実にJH民営化を進めます」とアピールできる。その人事構想に国民世論の支持が集まれば、藤井はゴネても勝ち目はなく、結局早晩辞任に追い込まれるはずだ。

いったいだれが次期総裁なのか?
JHと並んで小泉が「民営化する」と公約している郵政公社の総裁には、小泉は03年4月、商船三井会長の生田正治を就任させた。「民営化」とは公営企業を民間企業に変えることだから、民間企業経営のベテラン、つまり財界人に舵取りを任せないとJHの民営化もうまく行くまい。

そこで財界の重鎮、日本経団連の奥田碩会長(トヨタ自動車会長)には、03年10月6日の定例記者会見の席で、後任人事についての質問が相次いだ。が、奥田は現段階で政府から相談を受けていないことを明らかににしたうえで、今後相談があれば協力するか、という記者の問いに答えて「ない」と断言した(産経新聞03年10月7日付朝刊3面)。

ただ、協力しない、だけではない。
奥田はこの席で「(後継)総裁はものごとを公平に判断し、数字に強く、指導性を持った人がふさわしい」ので「(鉄、セメント、自動車など道路に関連する企業の出身者は)できたらはずしたほうがいい」とまで言い、某有力候補を念頭に置いて総裁就任を「妨害」する趣旨の発言までしているのだ(朝日新聞Web版03年10月6日 < http://www.asahi.com/special/jh/TKY200310060248.html > )

10月5日の石原との会見でも藤井が述べたことだが、藤井は、扇国交相在任中の03年8月に、諸井虔・太平洋セメント相談役を本部長とする改革本部を設け、藤井なりの改革をするつもりで「新日鉄や富士通総研など約10名の方々に改革への協力を頂いている」(『週刊文春』03年10月23日号p.29)。上記の奥田の、わざわざ「鉄」「セメント」と列挙した発言は、新日鉄関係者や諸井が次期総裁に就任することはない、という財界の意思表示にほかなるまい。

となると、たとえ藤井の解任が成立しても、次期総裁には財界人ではなく、官僚が就任する可能性が高い。
新総裁が民間人の場合は、解任劇の泥沼化は致命傷だ。政府は04年1月からの通常国会にJH民営化法案を提出する予定だが、総裁は、JHの組織分割や債務償還などの問題を通常国会開会前によく勉強しておく必要がある。そうでないと、とても法案は国会審議に耐えられない。が、11月の総選挙が終わると新総裁は国会(総選挙後に首相を選び直す特別国会。予算を審議する通常国会とは別)への対応に追われて「勉強の時間がほとんどとれない」というのが国交省幹部の見方だ(産経新聞03年10月7日付朝刊3面)。
しかし、新総裁が国交省(の前身の建設省)の官僚(OB)なら話は別だ。彼らはいまさら資料を読んで勉強などしなくても、元々「公団を形式上民営化しても、事実上公的資金を投入して無駄な道路を造り続けるための、国会対応のごまかし方」などを知り尽くしているので、問題ない。

その官僚とはだれなのか?
実はもうわかっている。元建設省事務次官の小野邦久・不動産適正取引推進機構理事長だ。
彼は、道路族の超大物、故・竹下登元首相に寵愛され、竹下亡きあとその権力基盤(と道路利権)、すなわち小野と政界との人脈は青木幹雄・自民党参院幹事長(2人とも選挙区は島根県)に相続された(『週刊文春』03年10月23日号p.31)。

青木が03年9月の自民党総裁選で小泉再選を強く支持したことは周知の事実だ。つまり総裁再選後の小泉が、急に藤井をクビにすると言い出したのは、青木のせいなのだ。
小泉は(表面上は)JHに民間経営のセンスを入れてその経営を立て直すために藤井の更迭を望んだが、青木は民営化されたあとのJHを自分の利権の金城湯池にするために(自分と親しい小野を総裁にするために)折り合いの悪い藤井を更迭したかったのだ。

【82年に火災で焼失したホテルニュージャパンの跡地は90年代半ばには、バブルの崩壊で所有者の千代田生命にとって最大の不良債権になっていた。竹下は、自身の有力後援者である当時の神崎安太郎・千代田生命社長に泣きつかれ、跡地を建設省傘下の財団法人・民間都市開発推進機構に高値で買わせたうえで、在日韓国人フィクサー許永中らのアジア系資本に転売し高層ビルを建てさせて跡地の(実質的な)資産価値を補填する、という計画を立てた(おそらく、田原が『サンデープロジェクト』で言及した暴力団関係者とは、イトマン事件の特別背任で有罪になった、許永中被告に違いない。毎日新聞Web版01年3月29日 < http://www.mainichi.co.jp/news/selection/archive/200103/29/0329e034-400.html > を参照)。
が、建設事務次官時代の藤井は「民都機構を一企業のために使うな」とこれを潰した。建設省には技官系と文官系の2つの派閥の対立があり、竹下(青木)が寵愛してきたのは文官系だが、藤井は技官出身だった(『週刊ポスト』00年11月24日号 < http://www.weeklypost.com/jp/001124jp/news/news_7.html > )。】

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●小泉vs.財界●
ただ、官僚の藤井には民営化はできない、ということで更迭しておきながら、その後任も(民間人でなく)官僚(OB)、というのでは筋が通らない。だから、小泉は総選挙の投票日(03年11月9日)までは、石原を善玉、藤井を悪玉と印象付ける茶番劇で有権者を欺き、投票日のあとに「小野新総裁」を発表する算段だろう。

小泉は当初は民間人の後継総裁候補を探しただろうが、財界が(構造改革に反対する青木ら「抵抗勢力」の支持がないと権力を維持できない小泉の足元を見透かして)人材提供を渋ったので、仕方なく官僚OBの新総裁を容認したに相違ない。

しかし、これで財界が小泉を支持していないことがはっきりした。奥田らは、かけ声ばかりで実施的な改革をまったく進められない小泉の政権など潰れてもいいと思っているのだ。だから、選挙前に小泉が「魅力的な民間人の次期総裁を紹介して、有権者に改革の進展を印象付ける」機会を、財界は奪ったのだ(総裁が民間人なら小野は副総裁になる、という妥協案もあったが、それもほぼ不可能となった。『週刊文春』03年10月23日号p.31)。

藤井が、あっさり辞任していれば受け取れたはずの退職金2600万円を解任によって失う危険を冒してまで、辞任を拒んだ理由は2つ考えられる。1つは、藤井が小泉のJH改革を、改革とは名ばかりの、青木に利権を与えるためのごまかしと見抜き、旧建設省時代から大嫌いな青木のために自分が犠牲になるのはイヤだと反発したこと。もう1つは、財界が、退職後の就職先と引き替えに、藤井を「小泉潰し」に協力させた可能性だ。

●民主党vs.青木●
これで、次期総選挙における民主党の攻め手は決まった。
まず、小泉の口から、次期JH総裁候補の名を言わせることだ。官僚(OB)の名が出れば、その瞬間に小泉のJH改革が茶番であることがはっきりする。
次に、青木と許永中のスキャンダルを暴くことだ。暴力団がらみの暗い疑惑報道が選挙前に沸騰すれば、自民党は惨敗する。すでに岡田克也・民主党幹事長は「(藤井が5日の石原との会見で不正を行った政治家を指摘したが)そのなかに小泉首相が自民党総裁選でお世話になった人も含まれているかもしれない」と、明らかに青木を念頭に置いた発言をしている(時事通信Web版03年10月15日)。

10月17日の聴聞で藤井が青木の名前を、それ以降の報道でマスコミが許永中の名前を出すのを、筆者は楽しみに待っている。
【来週はたぶん配信を休みます。】
(敬称略)

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  • 小説家。00年『ゲノムの方舟』(徳間書店)でデビューし朝日新聞など17紙誌が絶賛。ほかに産経抄が紹介した『龍の仮面』、NHK-BS『週刊ブックレビュー』で笑賛された『中途採用捜査官@ネット上の密室』など。

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