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北は小泉再選支持:週刊アカシックレコード030904

発行日時: 2003/9/4

■炭疽菌ビジネス〜週刊アカシックレコード030904■
90年代に米軍は秘密裏に炭疽菌兵器を開発し、それを隠すために、生物兵器禁止条約(BWC)の強化案(査察制度創設のための検証議定書)に反対した、と米紙が報道したことで、真の巨悪(製薬企業による生物兵器の商業利用)が隠蔽された。

【北朝鮮は小泉再選支持?】
03年9月の自民党総裁選は、小泉首相(現総裁)が優勢で、再選されそうな形勢ですが、前回01年のときとは投開票のルールが違うので圧勝は難しく、「反小泉勢力」の候補者が「2、3、4位連合」を組めば、決選投票で逆転する可能性も、わずかながらあります。
ところで北朝鮮は、だれが総裁(首相)なら日朝交渉がしやすいと考えるでしょうか?……国民の支持率が高く、すでに02年の平壌会談以降の態度で「手の内」のわかっている小泉首相のほうが、「未知数」の他候補(亀井静香元政調会長、高村正彦元外相)より譲歩させやすいのは間違いなし。総裁選の投開票は20日ですが、その3日前の17日は「平壌会談1周年」なので、その前後に「拉致被害者(蓮池夫妻、地村夫妻)の子供計5人の帰国」というプレゼント(賄賂?)を小泉政権に贈れば、小泉再選は確実。しかもワイドショーは以後この計5人の子供の報道に集中するので、他の被害者やその家族の帰国・安否確認は二の次になり、拉致問題は事実上「過去の問題」となり、拉致問題解決が前提だった「日朝交渉」も国交回復(日本からの経済援助決定)に向けて大きく前進する(と北朝鮮側が勝手に期待する)でしょうから、小泉政権と平壌の金正日政権がすでに「裏取引」をしている疑いは濃厚。
但し、被害者家族(子供5人)の帰国後、日本国民の対北朝鮮世論が「軟化」するという保証はありません。北朝鮮は01年9月の「拉致謝罪」、10月の(蓮池夫妻ら5人の)「一時帰国」で、世論の軟化を期待したものの、二度とも読み違えているので、「二度あることは三度ある」でしょう(が、政権交代で政局が混乱すると日朝交渉の再開は遅れ、日本から経済援助をもらえる日も遠のくので、北朝鮮は小泉政権に賭けるしかないんですわ)。

【プラカード出現】
筆者のデビュー小説『ゲノムの方舟』が文庫になって再登場し、紀伊國屋書店・新宿本店のベストセラーランキングをジャックする「桶狭間の奇襲戦」の結果、発売第1〜2週に新宿本店の文庫部門で20位前後(文庫のフィクションだけならベスト10)にはいったようです。
この実績により第2週には、新宿本店2F文庫売り場では、入り口の、いちばん目立つコーナーでの平積み12面を含む「17面取り」を達成。さらに第3週にはその「12面」の上に天上から吊るす大きなプラカードまで出現し、この店頭効果で「いちげんさん」にも次々にお買い求め頂いております。
これも「桶狭間」にご協力下さった皆様のお陰と存じます。有り難うございました。
m(_ _)m
引き続き「桶狭間」を展開中ですので、新宿周辺においでの方と、宅配便で購入される方は、御協力下さいませ。尚、新宿本店においでになる方はあらかじめ

Tel: 03-3354-0131 

に(単行本でなく)『ゲノムの方舟・文庫版』の在庫の有無を御確認下さい。
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■炭疽菌ビジネス〜シリーズ「SARSの方舟?・だれがSARSを作ったか」(6)■
【前回 < http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/genome/sars_r.html#05 > より続く。「シリーズ・SARSの方舟」全体では12回目。】

03年7月15日、東京医科歯科大学と京都大学の研究グループは、欧州の某巨大製薬企業(R社とする)が、日本の大企業(J社とする)、米国企業(A社)と共同で開発したエイズ治療薬ネルフィナビル(商品名は別にあるが、Vとする)が、SARS(重症急性呼吸器症候群、新型肺炎)の治療に「すぐに」使える可能性があることを発見した。同日、R社は、SARS患者がSARSを発症する前の潜伏期間中でも感染の有無を検査できる画期的な検査キットを出荷すると発表。突如R社は、治療、検査の両面でSARS関連ビジネスのトップに立つ可能性を示した。
このシリーズでは、SARSウイルスがR社によって人工的に作られたかどうかを検証している。

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●米軍には「動機」がない●
前回の記事を配信したあと、一部の読者から「おまえは米軍や共和党をかばっている」という批判のメールを頂いた。「米ニューヨークタイムズ紙(NYT)が米軍の秘密の炭疽(たんそ)菌製造を暴露しても議会が政権担当者の責任を追求しないのは、野党の大物政治家(ダシュル米民主党上院院内総務)やNYTの記者に『米軍製の炭疽菌』が送り付けられ、彼らが怖くなって追求をやめたからだ」というメールもあった。

が、上記の批判が成り立つためには、NYTが米軍の炭疽菌製造(の違法性)を明確に非難する必要がある。米軍がNYTに対して「この野郎、よくもオレたちの計画を妨害したな」と怒って炭疽菌を送って恫喝した、というのなら、筆者の見解ははずれで、問題のNYTの記事を書いたJ・ミラー (Judith Miller) ら3人の記者は、邪悪な国家権力(米軍)と戦う民主主義の英雄だ。

ところが、前回述べたように、NYTのその記事(01年9月4日付「U.S. Germ Warfare Research Pushes Treaty Limits」 < http://www.commondreams.org/headlines01/0904-02.htm > )は「違法ではない」と述べている。それどころかミラーらは、軍・政府関係者の主要な発言をほとんど鵜呑みにし、まったく「戦って」いない。

まず彼ら3人は「複数の米国政府当局者が『01年7月に米国が、生物兵器研究の情報公開を含む同条約(BWC)の議定書案(国連による生物兵器査察を初めて盛り込むための検証議定書案)の拒否を決めたのは、この秘密研究の(秘密を守る)ためだったことを明らかにした』」と「当局者」の言い分を、裏付けなしに記事にしている。

次に彼らは、米国政府の、BWC交渉団の責任者だったジェームズ・F・レオナルドの、米軍(国防総省)がクリントン大統領に報告せずに行った炭疽菌研究(製造計画)は「愚かだが、違法ではない」という、これまた政府当局者の言い分をそのまま紹介することで、問題の炭疽菌研究に「合法性」の太鼓判を押している。

さらに彼らは、米軍と契約している研究機関(the Battelle Memorial Institute)がオハイオ州に持つ施設(ウェストジェファーソン研究所)が、米軍の依頼でネバダ砂漠に炭疽菌製造のための「秘密の」細菌工場を(必要に迫られて?)「新たに」建設した、という(製造計画が秘密であった以上)米軍関係者(当局者)からリークされたとしか思えない情報を、これまた無批判に、裏付けを取らずに紹介している。

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●生物兵器への「誤った常識」●
「当局者」の主張のうち、彼らが同意しなかった唯一のものは、ボルトン米国務次官らが明言した「米国政府が検証議定書を拒否する理由は『国家安全保障上の機密や米国のバイオ産業の企業秘密が漏洩する恐れがあるから』という米国政府(国務省)の公式見解だ( < http://usinfo.state.gov/regional/ea/easec/bolton827.htm > )。が、これは上記の「複数の米国政府当局者」の言い分と矛盾するので、否定しないわけにはいなかったのだろう。

さて、NYTが裏付けなしに肯定的に紹介した上記の「当局者」の言い分を総合すると、読者は次のような印象(偏見)を抱くようになるはずだ:

#1: 生物兵器(新たな病原体)の製造は軍事目的でのみ行われる。
#2: 強力な生物兵器の製造は必ず、軍がいわゆる軍需産業(伝統的な産軍複合体)に発注して行う。
#3: 米軍がオハイオの研究所に発注するまで、米国内(外)には「世界一強力な炭疽菌兵器」を製造できる施設(秘密の細菌工場)はなかった。
#4: 軍関係の仕事をしない民間起業には元々強力な生物兵器(新たな病原体)を製造する能力はないので、「米国のバイオ産業の企業秘密が(国連の査察によって)漏洩するのを防ぐため、01年7月にBWC検証議定書の拒否を米国政府が決めた」というのはウソだ。

拙著『ゲノムの方舟』を読んだ方はおわかりだろう。上記の#1〜#4はすべて誤りだ。
バイオだけでなく、IT技術の分野でもそうだが、軍事技術のほうが常に民間技術より進んでいるという「法則」はない。たとえば米軍の装備に使われている半導体は64ビットが多いが、日本製ゲーム機「プレステ(PS)2」の半導体は128ビットで、軍用より高性能だ(産経新聞03年8月31日付朝刊、唐津一「正論」 < http://www.ichimy.com/cgi-win/kiji/kiji.dll/show?kijicd=kiji-20030831040007-FFDNVIQOSS&uid= > )。だから、イラクが00年12月に大量のPS2を輸入した際には「PS2から半導体を取り出して、自前のミサイルの開発に流用するのではないか」と懸念されたほどだ(朝日新聞00年12月24日付朝刊「プレステ2をイラクが大量購入」 < http://www.asahi.com/tech/ec/20001224a.html > )

感染力の強い病原体を研究するには、密閉性の高いBL-4(生物学的封じ込めレベル4)の施設が必要で、米陸軍のフォート・ディートリック基地にそれに該当する施設があるにはあるが、米国の場合、私立大学など民間機関にもそういう施設は(公表されているだけで)複数ある。ロックフェラー一族などの大富豪の資力は、アフリカや中東の中小国の国家財政をも上回るので、政府がまったく関与しない形で、たとえばロックフェラー大学医学部のような純粋な民間機関でも新たな病原体(生物兵器)を開発することは現実に可能である。

したがって上記の#2、#3は誤りだ。
もちろん「民間機関には『大量殺戮』(の対策、研究)という軍事目的がないのに、なぜ生物兵器など造る必要があるのか、と疑問を抱く方もおられよう。本来、大学や製薬企業は、病原体の治療薬を開発してこそ利益が上がるのだから、当然である。
が、この疑問の答えは、すでに本シリーズ「SARSの方舟?」( < http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/genome/sars_r.html > )で述べているとおり「ネガティブ・ウォー」(消極的生物兵器戦争、消極戦)だ(#01への反論)。製薬企業は、最先端技術で開発した薬品に特許の網をかけて、特許料に基づく高い薬価を設定して患者から利益を得ようとする。が、エイズなどの新しい感染症の場合、患者は貧しい途上国に集中しているので、彼らは高価な薬品は容易には買えず、その結果薬が買えれば助かるはずの患者がどんどん死んで行く。いわば製薬企業は、高い薬価によって貧しい患者に先端バイオ技術を「使わせない」ことで人を殺す「消極戦」を戦っているのだ。

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●ネガティブ・ウォーへの返り討ち●
この「消極戦」をもっとも「積極的に」やりすぎたのが、R社などのエイズ治療薬メーカーだ。01年春、エイズ患者を多数抱えるブラジル政府は「R社のエイズ治療薬Vに対する特許を無視して類似商品(コピー薬)を製造することを国内の製薬企業に認可する」と宣言。インドなど他の「エイズ大国」もこれに倣うと予想されたから、この時点で、R社がVの収益計画(開発に投じた莫大な資本金の回収見通し)を大幅に修正せざるをえなくなったのは間違いない(じっさいに1年後に、R社はブラジル政府にVの大幅値引きを確約させられる。 < http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/genome/sars_r.html#02 > )

その約3か月後の01年7月、米国政府はBWCの検証議定書を「米国のバイオ産業の企業秘密が漏洩する恐れがあるから」(ボルトン国務次官)という理由で拒否する。

その後、01年9月下旬になると、米民主党の政治家やマスコミに炭疽菌が郵送される「炭疽菌テロ」が始まる(9月の消印の郵便物から炭疽菌が検出されたと報じる毎日新聞Web版01年11月17日 < http://www.mainichi.co.jp/eye/feature/nybomb/tansokin/200111/17-01.html > )。9月11日の米中枢同時テロの直後だけに、アルカイダなどのテロ組織による「生物兵器」への懸念が高まり、米軍は炭疽菌や天然痘のワクチンや治療薬、検査キットなどを大量に製薬業界(バイオ産業)に発注する。

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●炭疽菌検査ビジネス●
その2か後の11月、それまで24〜48時間かかっていた炭疽菌の検出をわずか1時間で実現する画期的な検査キットが開発された……この開発企業が、なんとまたR社なのだ( < http://www.mayo.edu/comm/mcr/news_1816.html > 尚、R社は炭疽菌検査でも、SARS検査キットと同じ「PCR検査法」を使っている。同社ホームページ日本語版も参照)。つまり、R社は、03年にSARSがはやったときに画期的な検査キットを開発しただけでなく、01年に炭疽菌がはやった(?)ときにも、すぐに検査キットを開発して「検査・治療ビジネス」でトップに立っていた。ブラジル政府の「返り討ち」からわずか半年後、まるでVの販売で得られるはずだった利益が途上国政府の圧力で失われるのを補うかのように、R社は「炭疽菌テロのおかげで」新たな利益獲得の道を見出していたのだ。

もしNYTの01年9月4日の記事がなければ、01年11月の時点で、炭疽菌テロの犯人としては真っ先に、米軍ではなくR社が疑われていたはずだ。そして、もし01年7月の、米国政府によるBWC検証議定書拒否がなければ、R社は国連の査察を受けていたはずだ。査察されれば、R社は炭疽菌検査ビジネスを展開できず、ブラジル政府らの圧力で失ったVの利益はそのまま巨額の損失(逸失利益)として残ったはずだし、また、それを取り返すために、Vを別の病気の治療薬として売り直す「一粒で二度おいしい」戦略のために、SARSを人為的に流行させることもできなかったはずだ。

NYTが低俗な三流紙であることがはっきりするのは、03年5月の、記事捏造・盗用事件の発覚後だ。01年9月4日の「炭疽菌記事」の時点ではまだ「世界の一流紙」であり、しかも内容が「反国家権力」だったので、生物兵器に詳しい(と称する)市民運動家のローゼンバーグら多くの「識者」がNYTの記事にまんまと引っかかって「炭疽菌は米軍が関与しないと作れない」などと無知蒙昧なコメントを発し(田中宇「炭疽菌とアメリカの報道」 < http://tanakanews.com/b1213anthrax.htm > )米民主党支持者らリベラル(左翼)勢力の「反テロ」の視線をバイオ産業からそらすことに一役買った。

上記のボルトン国務次官の発言はたぶん正しい。それがウソだ(#04)と言っているのは、ローゼンバーグや田中宇のような「ネガティブ・ウォー」(拙著『ゲノムの方舟・文庫版』を参照)もろくに知らない素人たちだ。バイオ産業に関するボルトン発言を否定する根拠は存在しない。米軍には「炭疽菌テロ」を起こす動機がなく、逆にR社には明確な「動機」があるのだから。

R社は米国にも現地法人を持つ欧州企業で、Vの開発では日米のバイオ企業と提携している。したがって、01年7月の米国政府の検証議定書拒否は、たんに米国のバイオ産業を守るためではなく、日米欧先進各国すべてのバイオ産業界の(ネガティブ・ウォーによる)利益を守るため、日米欧各国政府を代表して行ったもの、と解釈するほうが自然だろう。

いま、先進各国のバイオ産業界にとっていちばん重要なことは「生物兵器は必ず、国家またはそれに準じる(テロ組織などの)武装集団によって、軍事目的で使われる」という根拠不明の「常識」を維持することだ。間違っても「製薬企業が自社製品を売る口実を作るために『商業的に』生物兵器を利用する」などと思われてはならない。産業界はその巨大な利権を守るためなら、平気で米軍に濡れ衣を着せるだろうし、新聞記者も買収するだろう。

「巨悪」とは、こういうのを言うのだ。

●巨悪を助けた「反国家権力」●
NYTの不祥事として公表されているのは捏造と盗用だけだ。が、前回取り上げた例だけでも明らかなように、あれだけ無責任で知的レベルの低い記事を何度も書いてきたNYTだ。01年当時、功名心にはやるNYTの記者たちをR社(やR社に雇われた「自称米国政府当局者」)が買収し、あるいはだまして「炭疽菌記事」を書かせた、と考えることは至極当然ではないか。

本件に関する限り、米軍は「第三者」であり、少なくとも主犯ではない。もしかすると被害者かもしれない。
「なんでも軍が悪い」式の単細胞な発想では真の巨悪は追求できないことを、「反国家権力」志向の記者たちは知るべきだ。

【来週はたぶん配信を休みます。】
(敬称略)

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