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バカの枢軸:週刊アカシックレコード021023

発行日時: 2002/10/23

■バカの枢軸〜週刊アカシックレコード021023■
小誌2002年9月24日配信号で既報のとおり、日朝国交交渉は頓挫しそうな雲行きになった。元々、社交辞令でしか小泉訪朝を評価していなかったブッシュ米政権が本心を表して(北朝鮮との軍事問題を徹底追及して)交渉を潰しにかかったからだ。

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■バカの枢軸〜金正日と小泉の断末魔■
【前回「北朝鮮を孤立させろ」 < http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/y2002/nk.html#07 > から続く。】

●またしても場当たり的対応●
前々回の「帰国者の亡命」( < http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/y2002/nk.html#06 > )で、北朝鮮の政府高官は(脱税常習者を経済特区の長官に起用するなど)経済運営や人事のイロハもわからない「バカぞろい」ではないか、と述べた。日本人拉致問題でも、なんの計算もなく場当たり的な対応をしている、とも評した。

筆者の評価を裏書きするかのように、02年10月4日、平壌で行われた米朝高官協議でケリー米国務次官補から偵察衛星の写真などの「証拠」を突きつけられた北朝鮮の姜錫柱(カン・ソクジュ)第一外務次官は、北朝鮮が核兵器に使う濃縮ウランの開発をしていることを「自白」した。

これは、核拡散防止条約(NPT)や94年の「米朝枠組み合意」はもちろん、これらすべての国際条約を守るとうたって、9月17日の日朝首脳会談で合意した「平壌宣言」にも違反する、国際的背信行為だ。北朝鮮は90年代、自国の核兵器を「開発してるともしてないともとれるグレーゾーン」に置くことで世界を疑心暗鬼に追い込み、94年には「枠組み合意」を締結して、見返りに軽水炉支援(軽水炉完成までは毎年50万トンの重油を米が供与)を「ゆすりとる」など、成果をあげていた。が、今回の「告白」は「グレー路線」からの脱却を意味する。

世界はあわてふためき「朝鮮半島情勢が緊迫する」だの「当事者の片方(北朝鮮)が(枠組み合意は)無効と言っているときに、そのような合意をどう扱えばよいのかは非常に難しい」(パウエル米国務長官 < http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20021021-00000102-yom-int > )だの「それ(北朝鮮の条約違反)が原因で交渉が決裂したら、最重要課題である拉致問題解決の糸口まで逃してしまう…『最悪のシナリオ』も考えられる」(朝日新聞02年10月17日付朝刊 < http://www.asahi.com/politics/update/1017/009.html > )といった悲観的な見方が日米など西側自由世界(文明諸国)では台頭している。

が、これはそんなに悲観する事態だろうか。文明諸国にとって悲観的な事態は、それと敵対する野蛮国(北朝鮮)にとっては楽観できる事態のはずだが、どう見てもそんな要素はない。

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●まだ脅威ではない●
北朝鮮側から見ると、この「告白」は「核兵器を交渉のカードにした」というような高尚なテクニックにはほど遠い。

「告白」によると、この核兵器は濃縮ウランを利用したものだが、濃縮作業には電力など膨大なコストがかかり、施設も大規模なものが必要で、IAEAが査察すればすぐ所在がバレる。当然、米軍が空爆して破壊するのも(イラクが保有する秘密の生物化学兵器製造施設などより)容易だ。しかも、狭い北朝鮮の国土、領海には核実験に適した場所(砂漠や大海)がないので、核実験もできないから「爆発させてみないと使えるかどうかわからない粗悪品」(下手をすると、ただの鉛の塊)かもしれない。

自前での濃縮はせず、パキスタンやイランから「出来合い」の濃縮ウランを買って核爆弾を作ったという説もある。それなら核実験は不要だが、核爆弾を小型化して核弾頭として弾道ミサイルに搭載する技術はそう簡単に手にはいるものではないので、北朝鮮は「核爆弾はあるが、核ミサイルはない」状態と思われる。

となると、日本(韓国)を核攻撃するには、飛行機で運んで上空から落とすか、工作船(不審船)や潜水艦に積んで日本領海に持ち込むか、いずれにせよ、かなりスピードの遅い運搬手段で運ぶしかない。

北朝鮮の持つ「ノドン」などの弾道ミサイルは猛スピードで飛んでくるので、それを迎撃するには、米国が主導する、レーダー網と迎撃ミサイルを組み合せた兵器体系、ミサイル防衛網(MD)が必要だが、これはまだ開発中で、早くても04年にならないと実戦配備されない。

が、弾道ミサイルは(巡航ミサイルや精密誘導兵器と違って)命中精度が悪いので、核兵器などの大量破壊兵器(WMD)を弾頭に付けないと軍事的にはほとんど意味がない。つまり、いまの北朝鮮は「核」と「ミサイル」はあっても「核ミサイル」はなく「明日にも東京に核ミサイルが飛んで来るかも知れない」という脅威は存在しない。北朝鮮が「遅い」運搬手段で日本を核攻撃しても、既存の自衛隊の装備でいちおう対処できる。

つまり、北朝鮮の今回の「告白」は、核保有を認めて日本(米国や韓国)を脅して外交的譲歩を引き出す「カード」としては直接は役に立たないのだ。

もちろん、ひそかに弾頭の小型化を北朝鮮が達成している可能性はある。「フフフ、われわれは核弾頭をノドンに載せたかもしれないぞ」とほのめかして日本をゆする手(グレー路線)もないわけではない。現に、ケリー米国務次官補は10月20-21日の来日の際、日本政府高官に「北朝鮮の核ミサイルの標的は日本しかありえない」と警告している。

が、これはあくまで米国の推測で、北朝鮮は弾頭小型化技術については「告白」していないので、この点は「グレー路線」のままだ。

となると、どうせ「グレー」なら、核開発自体も「してるかもしれない」に留めたほうが得策だ。

なぜなら、核開発を明白に認めてしまうと、条約違反なので、日米韓はいやでも北朝鮮に厳しい態度を取らざるをえないからだ。いままで、韓国は南北鉄道連結や金銭的援助、日本は人道コメ支援を与え、米国(と日韓、EU)は朝鮮半島エネルギー機構(KEDO)を通じて北朝鮮に軍事転用しにくい原子炉(軽水炉)を作ってやって、その見返りに北朝鮮は核兵器開発をしないことになっていたのに「してた」と告白したのだから、当然関係各国は支援を見直さざるをえない。

北朝鮮に残された道は「核開発をやめてやるから援助をよこせ」と日本(米韓)などを脅すことだが、現時点ではまだ脅威でないから、こちらは焦る必要はない。

ブッシュ米政権は発足以来、北朝鮮などの「無法国家」には厳しい警戒姿勢をとり続けているから、北朝鮮の核こわさに米朝枠組み合意を締結しKEDOを設立した臆病者(親北朝鮮・原子力利権派)のクリントン前政権とは大違いだ。当然、米国の同盟国、日韓もブッシュに同調して「核開発を認めた北朝鮮」には厳しい態度を取らざるをえないから、北朝鮮の「核カード」は結局カードとして機能せず、北朝鮮は見返りもないのに「先に服だけ脱いでしまった格好になった」(韓国の中央日報 < http://japanese.joins.com/html/2002/1017/20021017200340100.html > )。 

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●メンツ丸つぶれの日●
となると、北朝鮮はいったいなぜ日朝交渉が始まろうとするこの大事な時期に、焦って役にも立たないカードを切ったのだろう?

実は「告白」の日は、北朝鮮が世界を相手に大恥をかいた日だった。どうも金正日はこの恥をすすぐために「オレだってすごいんだ」と無理に核カードを「切ってみせた」のではないか。

北朝鮮は02年9月下旬、中朝国境に近い新義州特別行政区に経済特区を設けて日本など西側諸国からの投資を呼び込んで「社会主義市場経済」を実施する計画を発表し、市場経済のわかる人物として、中国国内で事業を営む華僑のヤン・ビン(楊斌)を、新義州特区の長官に雇うことにした。 

ところが、計画発表から2週間も経たない10月4日、中国政府は楊斌の身柄を脱税などの容疑で拘束して自宅軟禁にし、事実上、特区長官への就任を不可能にした。 

これで、中国政府は「あんなロクでなしを長官にするとは…人を見る目がない」と北朝鮮をコケにして恥をかかせたことになるし、日本などの第三国には「北朝鮮のバカどもにカネ(経済協力)をやるのはカネをどぶに捨てるようなもの」と言ったことになる。 

10月4日の「告白」と楊斌の身柄拘束と、どっちが先だったかは定かでない。が、中国の「脱税批判」は事前にあったから、楊斌は前日までには「身の危険」を察知して北朝鮮外交官に保護を求めるなどしていたと思われる。そこで「告白」前後の日程を再検討してみよう。

09/29-10/01 日本政府「拉致調査団」訪朝(北朝鮮側、日本人拉致被害者の帰国を事実上拒否)
10/03 米朝高官協議で、米側は核開発の証拠を北朝鮮側に突きつけるが、北側は否定
10/04 楊斌、身柄拘束
米朝高官協議で、北朝鮮側、核開発を認める(米朝とも公表せず)
10/09 拉致被害者のうち、北朝鮮が自ら「生存」と認める5人の一時帰国(15日から約2週間)を発表
10/11 米議会上下両院、対イラク攻撃容認決議 可決(米国時間10〜11日未明)

3日には米側提示の証拠をつっぱねていた北側(姜錫柱)が、翌4日に一転して証拠を認めて「自白」したのは、楊斌の「逮捕」が避けられないと3日の夜に判断したからに相違ない。

【尚、4日に「告白」しても、少なくとも1週間ぐらいは米国側が秘密にしてくれることは、北朝鮮にはわかっていたので、北朝鮮はその間を利用して拉致問題での方針を(拉致被害者の帰国拒否から、一転容認へ)転換した。
 なぜ「わかっていた」かというと、当時米議会では、対イラク攻撃の権限を米大統領に認める決議を審議中だったからだ。この決議は、イラクは「近い将来核兵器を開発するだろうから」攻撃しなければならないという論理に基づくが、もしこの可決成立の前に「北朝鮮は(イラクと違って、将来でなく現在)すでに開発していると自ら認めた」という情報が流れると、同じ理屈で北朝鮮をも攻撃しなければならず、議員たちが北朝鮮とのバランスを考慮して対イラク決議を再検討し、審議が長引く恐れがあった。
 「告白」が世界中に知られ、全世界の非難を浴びたあと、北朝鮮が拉致被害者5人の「一時帰国」を認めると発表しても、北朝鮮が善良な国になったと錯覚する日本人はほとんどおらず、日朝交渉は進展しない。これは、拉致問題を早々に「幕引き」にして日本国民に忘れてもらって国交交渉を進めて、国交回復後の経済協力(1兆円?)がほしい北朝鮮にとっては最悪だ。だから「告白」が米国政府によって伏せられている間に、拉致被害者の帰国というイメージアップ作戦に打って出たのだ。】

●弱小企業のワンマン経営者●
筆者は昔、社長が(北朝鮮と同じく)世襲制の同族会社に勤めていた。筆者が就職したとき、その会社はすでに借金漬けの危険な状態だったが、(金正日と同じ)「二代目」の社長は「国際的ビジネスを!」などと大金を投じて派手な構想をぶちあげ続けた……当然すぐに倒産した。
この社長が採算を度外視して派手に振舞い、自分の会社を国際的企業のように見せかけようとしたのには理由がある。彼の大学の同級生のなかに、それこそほんとうの国際的大企業の社長の子女がおり「彼らにばかにされないために」二代目社長は見栄を張る必要があったのだ。筆者は、最近北朝鮮のニュースを聞くたびに、この「二代目」を思い出す。

劣等感に苛まれた者は(はたから見ているとさして重要とも思えないことにこだわり)張っても無駄な見栄を張りたがる。
北朝鮮は報道の自由のない独裁国家なので、楊斌が捕まったからといって、金正日は国内で国民から非難されて「恥をかく」ことはない。だから彼は国民からどう見られるかは気にしない。

が、自分の同級生……交際相手(となるべき各国の首脳やマスコミ)からどう見られるかは相当に気にしている(なんといっても、小学館2000年刊のSAPIO別冊『金正日大図鑑』を「本人が読んでる」ほどだから)。楊斌の一件は、日本では拉致問題、米国ではイラク問題、韓国ではアジア大会( < http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/y2002/nk.html#ag > )が国民の関心を集めているときに起きたので、日米韓いずれの首脳、マスコミにとっても大した問題ではなかった。江沢民・中国主席もプーチン露大統領も、北朝鮮初の特区の長官が捕まったと聞いても「人事でミスったか」ぐらいの感慨しか持たないだろう。日本などと違い、北朝鮮には元々「経済運営がうまい」などのイメージは皆無なのだから、こんなものはイメージダウンのうちにもはいるまい。

が、ご本人にとっては深刻だ。
「このオレ様が満を持して作った特区の初代長官を、脱税常習犯のゴロツキのように扱うのか!」
「せっかくオレも?小平みたいに『社会主義市場経済の国際的ビジネスができるぞ』と見せるチャンスだったのに……」

だれも「?小平みたい」と思うはずはないのだが (^_^;) めったにない機会だっただけに金正日本人の事前の期待と事後の落胆は察してあまりある。こういうぶざまな想いをした「弱小企業のワンマン社長」は、残されたわずかな権力と資金を使って見栄を張るものだ。金正日の場合、それは「核で脅す」ことだった。

現に、彼の父、「創業社長」の金日成は、核で脅したために米国政府(クリントン大統領)からばかにされず、軽水炉建設を引き出したではないか。それならばオレも、と「二代目」は未完成の核カードに手を出した。

が、焦りとは悲しいものだ。相手の米国は「えせ平和主義者」のクリントンから、反テロ主義者のブッシュの政権に替わっていた。クリントンが脅しに屈したのは、彼が原子力利権にべったり漬かっていて「業界」から北朝鮮で原子炉を造らせろと突き上げられていたからにすぎない。その点ブッシュは「石油派」なので、軽水炉支援をやめることに、なんの躊躇もない。

北朝鮮を「(イラン、イラクと並ぶ)悪の枢軸」(ブッシュ大統領)と呼ぶのもいいが、北朝鮮の指導者・金正日を、ドジな「対北朝鮮弱腰外交」を繰り返す小泉首相や外務省アジア大洋州局の田中均局長と並べて「バカの枢軸」と呼ぶほうがふさわしいのではないか。

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●小泉内閣のつぶれ方●
もう1人のバカ、小泉首相はどうなるだろう。
10月26日のメキシコでの日米首脳会談の議題は当然「北朝鮮」とだれもが思う……が、意外にも、それ以外の議題があるのではないか。

たとえば、ブッシュが小泉に以下のことを求める「外圧」をかけるとどうなるか:

#1
アフガンに残留しているタリバンやアルカイダの掃討のために活動する米英軍を支援するため、インド洋に派遣している海上自衛隊の補給艦隊に、イージス艦を加える(テロ特措法で可能。新規立法や憲法解釈の変更不要)
#2
そのイージス艦がインド洋のディエゴガルシア島の米軍基地を防衛。イージス艦は米英艦とデータリンクをつないで索敵情報等を共有(「集団自衛権は行使できない」とする憲法解釈に触れる恐れがあるが、実はイージス艦以外の海自艦船はすでに実行)
#3
アルカイダやイラクの「船による自爆テロ」で米英艦が危機に瀕し、イージス艦が策敵した場合、日米英で迎撃(上記憲法解釈に触れるとの印象大)
#4
米のイラク攻撃支持表明(ディエゴガルシアから出撃する米英艦は、海自の補給を受けながらイラク攻撃にも参加)

02年9月12日の日米首脳会談で、ブッシュは小泉に北朝鮮の核開発継続の可能性を警告したが、それを軽視した小泉は5日後の9月17日に完全に金正日にだまされて「平壌宣言」に署名した。そして10月16日に北朝鮮の核開発が暴露されて、小泉外交はみごとに挫折した。これは、軍事音痴のくせに重大な問題を無神経に扱った小泉への当然の報いだ。

小泉は、日朝交渉の失敗に続いて、対米関係の悪化は避けたいはずだ。しかもブッシュは(北朝鮮がまだ核弾頭をミサイルに載せることに成功していないというCIA情報を握っていても、それを見せずに)ノドン核ミサイルが東京に飛来するのを防ぐには「米国の核兵器で反撃する」と北朝鮮を脅すしかないが、それにはゆるぎない日米の信頼関係が必要、と迫るだろう。つまり、北朝鮮のことでは日本に協力するから、日本もイラク戦では米国に協力しろ、と「バーター取引」を迫るのだ。小泉は断れまい。

以上の#1〜#4を実行すると、小泉内閣の支持率は確実に20%ほど下がる。理由は02年10月5日配信の「石原訪米の謎」( < http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/y2002/isihar.html#04 > )で述べたとおり、訪朝決定以来の小泉内閣の支持率上昇は、02年1月の田中真紀子外相の解任で離れた左翼系浮動票がで戻ったことによるからだ。#1〜#4をやればこれがまた離れるし、自民党の一部や自由党などの保守勢力も「憲法解釈の変更や日米同盟強化には賛成だが、国民にきちんと説明しないで、なし崩し的に進めるのはよくない」と批判するので、結局小泉は左右両方の支持を失う。これに、竹中金融相のもとで不良債権処理が進むことによる、一時的(あるいは決定的)な景気悪化が加わるので、小泉内閣の支持率は最悪、今年02年中に30〜50%台にまで落ちるだろう。

イージス艦がインド洋で集団自衛権を行使するのは11月19日からの派遣期間の「第3期」(半年ごとに閣議決定で更新。すでに第3期突入は決定済み)の中だろうから、それ以降は軍事情勢次第でいつでも小泉内閣崩壊への「短い導火線」に火が着く可能性がある。
(敬称略)

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