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こいずみホイホイ:週刊アカシックレコード020903

発行日時: 2002/9/3

■生け贄のヨルダン〜週刊アカシックレコード020903■
もしも北朝鮮の金正日が「わが国はイラクに大量破壊兵器を輸出した」と証言すれば、米国は(国連査察抜きでも)堂々とイラク攻撃を開始できる。が、イスラエルは、イラクがヨルダンを「侵略してくれる」のを待つほうがよい。

【こいずみホイホイ】
小泉首相と金正日総書記の権力(国家)基盤はともに弱く、どちらも譲歩し難い中「相手が譲歩してくれる」との期待で小泉訪朝が決定。が、国家としては(すでに崩壊過程にはいった北朝鮮より)日本側が有利なので、2002年9月17日の日朝首脳会談では小泉首相が譲る、つまり「有本恵子さんに面会させてもらうだけで満足」して、他の拉致被害者の問題を当面棚上げして対北コメ支援や朝銀(在日朝鮮人の金融機関で「北」の資金源)への公的資金投入を約束させられる恐れが大。
でも、その5日前の日米首脳会談で首相は米大統領から「譲歩しすぎるな」とタガをはめられるはずで、下手をすれば日朝ともに政権交代への導火線になるでしょう(なんとなく、今回の訪朝は、現ブッシュ米共和党政権が小泉と金正日の、両方またはどちらかを追い落とすために仕掛けた「罠」という気がします。だって、この訪朝が成功すれば、これを根回しした外務省の田中均・アジア大洋州局長、すなわち米共和党の天敵「チャイナスクール」の手柄になってしまうではありませんか)。

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■生け贄のヨルダン〜特集「米イラク攻撃と日本」(4)■
【前回の「きたない爆弾」 < http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/y2002/iraq.html#03 > から続く。】

米国がイラクを攻撃するときイスラエルもそれに参加する、という説がある。イスラエルは、イラク攻撃に(ほぼ無条件で)賛成している世界で唯一の国で、かつ中東最大の軍事大国なので、その限りではいかにも妥当な説に見える。

が、イスラエルとイラクは国境を接しておらず、両国の間にはヨルダン王国があるので、イスラエルが単に「参加」するつもりでも、それにはヨルダン領内の「通過」……はっきり言えば、陸軍による侵略か空軍による領空侵犯が不可欠だ。

となると、米国がイラク攻撃を始めた場合、イスラエルが、いくらそれに賛成だからといって、軽々しく参加することはできない。「参加」はすなわちアラブ国家ヨルダンへの「侵略」であり、それをすれば、全アラブ諸国の反発を招き、「イスラエル対アラブ」という、米国のイラク攻撃とは別の「第2戦線」ができ、欧州など国際社会からも非難を浴び、厳しい制裁を受けるはずだ。

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●「ヨルダン犠牲」のメリット●
が、イスラエルにとって、どんな形にせよヨルダンを軍事的に「制圧」することには捨て難い魅力がある。それは、パレスチナ問題の「最終解決」につながるからだ。

パレスチナ人(アラブ民族の一員)が「パレスチナ(イスラエル)の地に『パレスチナ国家』を築かない限り、ほかに住むべき国はない」と主張すると、それに対するイスラエルのお決まりの反論は

「アラブ国家は20もある」
「そのうちの1つヨルダンは大勢のパレスチナ難民を受け入れており、パレスチナ国家はすでにある」

といったもので、これらの考えはイスラエルでは学校教育の中で教えられている。とくに注目すべきは後者で、これは「ヨルダンをパレスチナ国家とみなす」考えであり、イスラエルのタカ派の主張そのものだ。

イスラエル(領内のパレスチナ人自治領)は「ヨルダン川西岸」にあるが、ヨルダン王国はその対岸、つまりヨルダン川東岸にあり、両者はイスラエル建国以前はともにイギリス領で、1967年の第三次中東戦争でイスラエルが西岸地区を占領するまでそこはヨルダン王国の支配下にあったから、東岸と西岸の、地理的、民族的(血縁的)一体感は極めて強い(から、ヨルダン国民のパレスチナ人への同情は強い)。

そこで、それを逆手にとって、西岸のパレスチナ人を残らず東岸に追い出してしまい、「東岸にはおまえらの国がすでにあるのだから、そっちで暮らせ」という論理でパレスチナ問題を「解決」したいという潜在的願望がイスラエルには常にあった。

これは一見すると、特定地域から異民族を追い出す「民族浄化」であり、「人種的、宗教的、政治的な理由による大量虐殺、強制連行、強制移住」を「人道に対する罪」として禁じた戦後国際法に抵触する考えだ(イスラエルはこの「人道に対する罪」を使ってナチスドイツのユダヤ人抑圧政策を糾弾してきた)。

が、ドイツが「人道に対する罪」で裁かれたのは第二次大戦の敗戦国だからだ。実は、戦勝国もこの種の罪を堂々と犯しており、たとえば、米国政府による戦時中の日系人強制収容がまさにそれだが、この悪行は戦後国際法によっては一度も裁かれなかった。

もっと露骨なのがソ連によるポーランド、ドイツ両国民への「強制退去命令」だ。第二次大戦で隣国ポーランド全土とドイツの東半分を占領したソ連は、戦後、自国の領土拡大のため、ポーランドの領土を「西へずらす」、つまり自国領土を西へ広げることを希望した。

ただ、形式上ポーランドはドイツに侵略された被害者であり、敗戦国ドイツの敵なので戦勝国の一員であり、粗末には扱えない。戦勝国が戦勝国の領土を取るわけにはいかないのだ。

そこで、ソ連はポーランド領の東の1/3をソ連に割譲させる見返りに、敗戦国ドイツの東の端のポーランドに隣接した領土をポーランドに割譲させ、まさに「玉突き」で、ドイツに貧乏籤を引かせる形で「戦後の侵略」を成功させた。

これに伴い、多くのポーランド国民、ドイツ国民が土地を失って流浪の民となり、「西」への移住を余儀なくされたから、これも正真正銘の「民族浄化」であり、「人道に対する罪」のはずだが、ソ連は戦勝国なので、とくに問題視されなかった。

イスラエル(タカ派)のねらいは、まさにこれで、パレスチナ人とヨルダン人を一体化して扱い( < http://www.jpost.com/servlet/Satellite?pagename=JPost/A/JPArticle/Full&cid=1023716558425 > )彼らの領土(居住地)を、現状の「ヨルダン川の東西両岸」から「東岸のみ」(ヨルダン王国内のみ)にずらして(ソ連がポーランドから土地を奪ったように)彼らの土地の西半分を奪ってしまおう、というものだ。

もちろん、この「民族浄化」の実現には、対イラク戦争でイスラエルが「戦勝国」になること、そして(第二次大戦後のソ連のように)戦後処理の課程で発言力を持ち、戦争中に「占領」した領土(ヨルダン)の国境線の引き方を決められることが不可欠だ。

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●ヨルダン分割●
イスラエルにとってこれほどメリットのあるヨルダン占領はどうすれば実現するか?……第二次大戦開戦時の、独ソによるポーランド2分割を思い出そう……イラクがヨルダンに侵攻すればいいのだ。

イラクのサダム・フセイン政権がある日突然発狂して、軍をヨルダン(北東部)に侵攻させれば、イスラエルは「隣国ヨルダンの次はわが国が危ない」という国防上の大義名分を得て「ヨルダン全土がサダムの手に落ちるのを防ぐために」ヨルダン(南西部)に予防的に侵攻することを正当化できる。だから、イスラエルには、サダムが「発狂」したほうが都合がいい。

イスラエルは現にいまシリア領のゴラン高原を国防上の理由で占領しているので、新たな「国防上の措置」をとっても、ヨルダン川東岸(ヨルダン王国南西部)という新たな占領地が加わるだけで、イデオロギー(道義)的には、とくに変化はない(いままでやってたことをやるだけ)。

この場合、イラクとイスラエルは直接真剣勝負で戦う必要はない。(独ソのポーランド分割のように)裏で密約を結んで「半分ずつ占領」とあらかじめ決めておけばよい。イスラエルにとって重要なのはヨルダン王国全土の占領などではなく、ヨルダン川の「両岸」に軍を駐留させることで、西岸のパレスチナ住民を東岸に強制移住させることのできる「力」を手に入れることだ。

イスラエルは戦争中「一時的に」ヨルダンを占領し、移住手続きさえ終われば、あとは「パレスチナ人だらけ」になったヨルダン(川東岸)からは撤兵し、ヨルダンを元の独立国に戻す(放り出す)だろう。その場合イスラエルにとっては、ヨルダン王国の南西部と北東部は1つの国になってもいいし、ならなくても(アラブの脅威が分断さfれるので)かまわない。

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●イラクの「口実」●
もちろん、ヨルダン王国はこんな分割など望まないから、米国の対イラク攻撃に反対だ。また、イラクのサダムに「発狂」されるのも困るのでイラクとは友好関係を保ち、石油などはイラクから輸入し、かつイスラエルの生存権を認めることで西側諸国の支持と援助も得て「中立国」のように振る舞っている。

が、米軍関係者がイラク攻撃に使える滑走路があるかどうか調べるためにヨルダン王国内を視察したという情報(『ニューズウィーク日本版』2002年8月14-21日合併号p.23)もあるので、それを聞いたサダムが「発狂」すれば、イラクのヨルダン侵攻が始まる恐れがあり、始まれば、あとはすべてイスラエル(タカ派)の思惑通りになる。

だから、イスラエルの現シャロン政権(タカ派)は「発狂」を望んでいるはずだ。
米国が「大量破壊兵器(WMD)を保有し、使用する恐れのある」イラクを先制攻撃することには、欧州・アラブ諸国のみならず、米国内、とくに最近では、米ブッシュ政権の周辺でも、父ブッシュに仕えたジェームズ・ベーカー元国務長官( < http://story.news.yahoo.com/news?tmpl=story&u=/nm/20020825/ts_nm/iraq_usa_baker_dc_2 > )やスコウクロフト元大統領顧問( < http://www.opinionjournal.com/editorial/feature.html?id=110002133 > )らが慎重論を唱えるなど世論の分裂が目立つが、「先にサダムが(ヨルダンに)手を出した」となれば情勢は一変する。

ヨルダンやイスラエルの(予防的な)防衛のためなら、イラク攻撃は正当化され、ブッシュ政権もシャロン政権も国際世論のほぼ一致した「支持」のもとにイラク攻撃を開始できる。

だから、おそらくイスラエルや米国の諜報機関員がヨルダンやイラクに潜入し、サダムが「発狂」しやすくなるように工作(ヨルダンにおける米軍のための滑走路拡張工事や調査など)を行うか、あるいは、サダムを買収して(第二次大戦後のヒトラーのように、最後は自殺に見せかけて逃がしてやるから?)「開戦当初だけ好きなようにヨルダンであばれろ」と密約を結ぶか……どちらかの方向で工作が進行中のはずだ。筆者は依然として、米国がイラク攻撃を行うにあたって「先制攻撃も辞さず」と言っているのは、「先制攻撃をするぞするぞ」と脅して先にイラクに手を出させるため、という考えを捨てていない。

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●北朝鮮の「証言」●
しかし、1つだけ、先制攻撃が正当化され、米国内外の世論の十分な支持を得られる場合がある。

それはもちろん、イラクのWMD開発、保有、輸出、使用の意図が明確に「証明」された場合だ。
それには、まずイラクが国連査察団を受け入れ、無条件で十分な査察をする必要があるが、過去10年の歴史を見れば、イラクが無条件で査察を許すことはなく、査察はずるずると引き延ばされ、さまざまな条件が付けられて骨抜きにされ、単なる時間稼ぎの手段になる恐れがある。

あるいは査察結果をめぐって欧州・アラブ諸国などから「いちおうWMDは(きたない爆弾を除いて)保有していないと思われる」「保有はしているが廃棄を約束したから攻撃は無用」「保有はしても使用も輸出もしないだろう」といった「解釈」が出てくれば、かえって米国のイラク攻撃はやりにくくなる。

が、米国にとって誠に都合のいい「証明」方法が1つある。
それは、イラク、イランと並ぶ「悪の枢軸」の一員、WMDの保有・輸出国である北朝鮮が「わが国はイラクにミサイルなどWMDの技術を輸出した」「近々使用してもらう前提で、サポートサービス要員も派遣した」などと証言することだ。

北朝鮮は中東へのWMD輸出国として知られているので、その証言はたとえウソでも信憑性がある。そして、これを口実に米国がイラク攻撃を始めれば、開始後に北朝鮮の「偽証」をあばく証拠が出ないうちに、イラクの重要施設を空爆してすべて吹き飛ばして「証拠隠滅」をすることもできる。

これは、筆者の「予測」というより、北朝鮮への「提案」である。
だれでも、いじめられる側にまわるよりは、いじめる側にまわったほうがよい。米国のイラク攻撃という「『悪の枢軸』制裁戦争 第1段」が成功してしまえば、「第2段」の標的は北朝鮮だ。北朝鮮が崩壊しても、隣接する中国や韓国には難民問題などで混乱がおよぶものの、米国はまったく影響を受けないので、米国の現ブッシュ共和党政権には北朝鮮をつぶす意志がある(これは、日本にとっても悪い選択ではない。韓国が「崩壊した北朝鮮」というお荷物を抱え込んで国力を落とすことは、台頭しつつあるライバルの弱体化につながる)。

そこで、北朝鮮は「米国と一緒に」イラクをいじめる側にまわることで、米国の対北朝鮮攻撃を回避しようと考えてもよいのではないか。

2002年9月17日、小泉純一郎は日本の首相として初めて北朝鮮を訪問して金正日総書記と会談することになった(8月30日発表)が、その5日前の9月12日には日米首脳会談があるので、17日の会談では必ず、金正日は小泉に「ブッシュ米大統領はわが国(北)について何か言ったか」「わが国のことは(ブッシュに)こう伝えてほしい」などと言うはずだ。その際、金正日が

「わが国(北)は貴国(米)のイラク攻撃を支持しますから、わが国を『悪の枢軸』のリストからはずして下さい」

と頼むことは不自然ではあるまい。
北朝鮮はこの夏、食糧配給制を停止するなど、経済が壊滅状態だ。北朝鮮を脱出して中国やモンゴルを経由して日韓をめざす「脱北者」も急増中で、まるで「ベルリンの壁」崩壊直前の東ドイツのようだ。

米議会(上院外交委員会)では、北朝鮮の崩壊は時間の問題と見て、大量の脱北者をモンゴルに残る旧ソ連軍の兵舎で数万人規模で収容すべき、との意見も出ているほどだ(産経新聞2002年8月30日付朝刊1面「さまよえる脱北者たち(6)モンゴル難民キャンプ構想」)。

もちろん、金正日が小泉に「北朝鮮がイラクにWMDを輸出した」と認めてしまうと、次は「北朝鮮も厳しい査察を受けろ」という話にはなるが「イラク攻撃に協力したごほうび」に「お目こぼし」と援助が得られれば、少なくとも数年間は北朝鮮の崩壊を遅らせることはできよう。

【人類史上「すべての人の幸福」を公約(安請け合い)した思想や体制は多々あれど、社会主義を含めてすべて失敗。保守政治とは、この現実を踏まえて自分の国や仲間が「ババ抜きのババ」を引かないようにすること(できもしない理想論で一時的に人をだます「一服の清涼剤」が革新政治)。
イラクや中国にババを引かせないなら、たぶん日本が引くでしょう。生き残るには、たとえ不道徳な国(米国)と同盟してでも勝ち馬に乗るべきで、正義を唱えて「負け馬」に乗るのは背任罪……さて、米国が勝ち馬かどうかの検討は本誌ではまだしておりませんが(イラク攻撃やそれに先立つ「事前テロ」については開戦前に検討しておきたいので)この件の「立証」は、先送り(9月半ば以降に)してきましたが、そろそろやらないといけませんね。】
(敬称略)

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