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欧州勢の無気力:週刊アカシックレコード020530
発行日時: 2002/5/30■トルシエ「準決勝に進むな」の真意(2)〜週刊アカシックレコード020530■
サッカー日本代表のトルシエ監督の「日本が(2002年)W杯準決勝に進出することは大会の価値を下げる」という発言の背景には(大きな声では言えないが)組分け抽選の「不正」と、欧州勢の「無気力」があるに相違ない。
【W杯特集】
W杯(ワールドカップ)開幕後だと書きにくいテーマを先に書く必要が生じましたので、先週予告した、シリーズ「やらせ亡命事件を検証する(3)」の「『国家消滅』担当補佐官」は、この後にまわしました。
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■トルシエ暴言「日本は準決勝に進むな」の深層(2)〜欧州勢、やる気なし■
【前回の記事 < http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/y2002/wcup.html > から続く。】
●欧州勢、やる気なし●
日本は準決勝に進むのではないか、とトルシエが「懸念」する理由は、前回述べた日本の異常に有利な組分け(ナイジェリアの異常に不利な組分け)だけではない。西欧勢が額面どおりの実力を発揮しない(はっきり言えば「やる気がない」)ことが最大の問題なのだ。
実は、欧州勢にとって、最高の大会はW杯ではない。ソ連の崩壊で社会主義の悪夢から脱した東欧諸国がこぞって(全世界的、全人種的組織である経済協力開発機構OECDなどよりも)白人、西洋人だけの国際機構であるNATO(北大西洋条約機構)とEU(欧州連合)への加盟を国家の至上命題とすることでもわかるように、欧州の白人たちは、西洋または欧州の一員であることに唯一絶対の価値を置き、欧州の外の世界や非白人からどう見られるか、などはほとんど考えない。だから、彼らはW杯よりも欧州選手権のほうを最高の大会とみなしているのだ。
「欧州人にとってサッカーは自分たち(だけ)のもので、欧州選手権は『余計な国』が出てくるW杯よりはるかに重要」(作家・村上龍の、2000年の欧州選手権についてのWOWOWでの発言)なのだ。
英独仏伊西など西欧先進諸国の一流クラブに所属し、高い年俸を取ってリッチな生活をしている選手たちにとって、いちばん重要なのは、秋から春にかけて行われる所属クラブのリーグ戦とカップ戦であり、W杯の開かれる6月は本来なら「シーズンオフ」である。もちろん欧州選手権はシーズンオフに行われるが「欧州の一員として認められたい」「欧州の一流クラブにスカウトされたい」という「死活問題」があるので、彼らは燃える。W杯本大会が地元欧州で開催される場合もある程度は同様である。
が、欧州をはるか離れた極東(や南米、北米)の地でW杯が開催される場合、欧州の一流選手たちは、何を励みに戦うのだろう?
彼らの評価や所得は、欧州選手権やリーグ戦で決まる。2002年現在は、欧州統合の進展と衛星放送の普及により、欧州サッカーの一流クラブの試合は国境を越えて広範な地域の視聴者を獲得できる巨大ビジネスになったため、欧州の一流選手は(W杯に出なくとも?)クラブのレギュラーシーズンの年俸だけで、10年前には想像もできなかったほどの、巨万の富を得られるようになってしまった。
すでに欧州で地位を確立しているスター選手の場合、極東でいくら頑張っても評価はさして得られず、欧州人のファンの声援(叱責)もない。にもかかわらず、W杯大会期間中、決勝まで進むと、直前合宿を含めて1か月半も、選手たちは家族と離れて異国のホテルで過ごすことになる。
それじゃあ気の毒だ、と監督が選手に同情して、大会期間中に家族や恋人との面会を許したチームはたいてい負けるので(産経新聞2002年5月27日付朝刊17面、ラザロニ横浜マリノス監督の談話)いまでは期間中は「セックス禁止」が当たり前だ(つまり、勝てば勝つほど妻や恋人とのベッドから遠ざかることになるから「早く負けたい」と考える選手がいても不思議ではない)。これがたたって、W杯期間中に妻に浮気された一流選手(優勝国のGK)もいるほどだ(『ニューズウィーク日本版』2002年5月1日&8日合併号、p.99「もうW杯なんて行きたくない」)。
オランダの一流選手、ヨハン・クライフは妻に言われて78年のW杯を辞退し、旧西ドイツのベルント・シュスターはW杯に一度も出なかった。何より欧州の強豪オランダは、2002年W杯の出場を決める大事な試合で無気力になり「オランダは代表ごと辞退したといえなくもない」醜態を見せ、不参加に甘んじている(『ニューズウィーク日本版』前掲記事)。欧州からはるか離れたアメリカで開催された94年W杯に出場するための、欧州地区最終予選の最終戦で、フランスがブルガリアに(わざと?)惜敗して本大会出場を逃したのも、フランス代表の中に妻の浮気を心配するリッチな選手が多かったからかもしれない。
2002年の本大会直前になって、フランスのジダン、イタリアのインザギ、ドイツのノボトニー、イングランドのネビルなど西欧諸国の大物選手の怪我が相次いでいる(サンケイスポーツ2002年5月27日、 < http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020527-00000002-sks-spo > )が、これは彼らが、真剣勝負のリーグ戦が終わってホっとして気が緩んでいるからに相違ない。W杯が(欧州選手権よりも)重要な大会なら、彼らは国の名誉のために(日本のDF森岡がやったように)リーグ戦をさぼってでも、W杯に出られるように調整するはずだ。が、彼らはそうはしなかったのだ。
筆者は断言する。欧州以外で開催されるW杯では、英独仏伊などの西欧先進諸国は優勝しない(これは、過去の実績から見てもほぼ間違いない)。優勝しないどころか予想外の惨敗を随所で見せるであろう。優勝するのは、ブラジル、アルゼンチン、ナイジェリア、カメルーンなど、非欧州勢の強豪のうちのどれかである。あるいは、欧州域内「辺境」の新興勢力、トルコ、ロシア、東欧諸国なども、アフリカ、南米勢とともに(これらの国の若手選手にとっては、自身をW杯を偵察している欧州一流クラブのスカウトに売り込む「金儲けの機会」なので)それなりに健闘するだろう。
いわゆる「サッカー通」の方々は、欧州各国の戦力や戦術を技術的に評価することにかけては、筆者より数段上だろう。が、「セックス禁止令」に苦しむ選手の心理や、露骨に不正な組分け抽選のことは考慮していない。
筆者は、ジダンが怪我をしたフランスはもちろん、主力が怪我をしない他の西欧諸国も優勝できないと予言(でなくて科学的に予測)し、「サッカー通」の方々に(予言者としての)「勝負」を挑みたい。
【もっとも、筆者がここで述べたことは、W杯で儲けたいスポーツビジネス界やマスコミ界では「タブー」なので、「真のサッカー通」の方々はたとえ筆者と同じ考えを持っていたとしても、マスコミで(大きな声で)言うことはできない。言ってしまえば、W杯のムードは一気に「盛り下がる」のだから。】
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●ベルギーの苦戦とロシアの「ハングリー精神」●
欧州域外で開催されるW杯の場合、欧州勢の実力は2割引き、欧州以外の国の実力は2割増しになると見てよかろう。
もちろん、日本の初戦の相手ベルギーは欧州勢で、日本は非欧州勢だから、両国の力の差は(欧州本土で戦えばベルギーがかなり上であろうが)2002年6月4日の埼玉スタジアムではかなり縮まっているはずだ(ベルギーは欧州域外のアメリカで開催された94年W杯本大会予選リーグで、日本と同レベルのアジアのサウジアラビアに惜敗し、勝ち点、得失点差ではオランダ、サウジと並んだものの、総得点で両国におよばず、決勝T(トーナメント)に進めなかった)。
筆者は「必ず日本が勝つ」とは言わないが、初戦の相手が、経済的に恵まれていないためハングリー精神旺盛なカメルーンやトルコやクロアチアやロシアでなかったことは、日本にとって「幸運」だったと考える。たしかにベルギーは2002年5月に前回優勝のフランスとのテストマッチに完勝したが、場所が「欧州域内」なので、ベルギーの欧州域外(日本)での実力を推し量るうえでは参考にならない(ベルギーのリッチな選手には「決勝Tに進みたくない」と願う明確な動機、つまり「早く負けて奥さんのところに戻りたい」という気持ちがあるだけに、筆者はH組から決勝Tに進むのは、日本とロシアではないかと「疑っている」)。
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●W杯を愛すればこそ●
しかし、欧州人にとって、これはなんとも嘆かわしい事態ではないか。とくに、英米への対抗意識から徹底した愛国心教育をすることで知られるフランスで生まれ育ったトルシエにとって、ほかならぬ欧州人が(本来格好の愛国心高揚の舞台であるはずの)W杯で無気力に陥ることによって、日本が上位進出を果たすことは、W杯の権威の低下を決定的に印象付ける、最悪の事態だ。トルシエのためにも、サッカーの歴史のためにも、決勝Tで日本と対戦する欧州勢には、ぜひ健闘してもらいたい(と言いたいところだが、あまり多くは「期待」できない)。
(>_<;)
日本の「にわかサッカー通」(失礼)と違って、トルシエは「組分け抽選の不正」も「欧州勢の無気力」も当然知っている。知っていればこそ、そんな理由で日本が準決勝まで進んでしまうことが、世界最高の大会であったはずのW杯の変質を意味することを理解し、憂えているのだ。
したがって筆者は、トルシエの暴言を暴言ではなく、サッカー人の良心もしくはサッカーへの愛情の発露と理解する。
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●監督のペルソナ●
そもそも「準決勝に進むべきでない」とは、なんとも頼もしい言葉ではないか。
98年フランス大会の日本代表監督、岡田武史は組分け抽選会のあと予選リーグの目標を記者に聞かれて「1勝1敗1分」などと負け犬根性丸出しの、予選リーグを通過できなくても仕方がないと言わんばかりの受け答えをし、案の定そうなった(0勝3敗で予選リーグ最下位で不通過)。
それに比べれば、トルシエは「日本は(準決勝に進めるかもしれないが)進むべきでない」と言っているのだ。日本サッカー史上、これほど強気な発言をまじめにした代表監督は過去にいないだろう。
しかし「サッカー通?」の方々は、「じっさいに日本が準決勝に進みそうになったら(準々決勝で勝ちそうになったら)どうなるか」(トルシエは勝つための合理的な采配をしないのではないのか)と心配されるかもしれない。
心配御無用。彼には監督のペルソナがある。
(田中真紀子前外相 < http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/dragon/psycho.html#03 > を除く(^^;) )すべてのにんげんはペルソナを身に付けて社会的に生きている。トルシエだって、監督としてグランドに立てば、勝つのが仕事だ。わざと負けることはありえない。
この「ペルソナ」という心理学用語の意味がわらからない方は、拙著『龍の仮面(ペルソナ)』(本体価格\2500、徳間書店刊)をお読み頂きたい。ご購入は → < http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/dragon/okehaz.html#mail > または < http://www.kinokuniya.co.jp/04f/d01/sinjyuku.htm > まで)。
ペルソナは「タテマエ」と同義ではない。
【今後もW杯期間中は"event-driven"で、つまり「何かあれば随時」本記事に関連する問題を取り上げます。】
(敬称略)
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