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6位:週刊アカシックレコード020521

発行日時: 2002/5/21

■「やらせ亡命」事件の検証〜週刊アカシックレコード020521■
中国・瀋陽の日本総領事館に北朝鮮住民5名が駆け込み、それを中国警備当局が強制連行した事件は……さして驚くに値しない「毎度おなじみ」の事件だが「たまたま」現場にテレビカメラがあったので大事件になったにすぎない。

【6位:「桶狭間」の大勝利!】
拙著『龍の仮面(ペルソナ)』は、先週2002年5月13〜19日の紀伊國屋書店新宿本店「週間ベストセラーズ・フィクション部門」売上げ部数ランキングで6位になりました(下の表の☆は初登場)。他の本と違って拙著は16日発売で、たった4日間の数字ですので、これは大健闘です。ご協力 < http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/dragon/okehaz.html#okehaz > 有り難うございました(順位表は新宿本店1Fで配布中):
 1 ☆『沙高樓綺譚』 (浅田次郎 徳間書店02/05刊 \1600) 
 2  『悪魔のパス天使のゴ−ル』 (村上龍 幻冬舎02/05刊 \1600) 
 3  『マレー鉄道の謎』 (有栖川有栖 講談社02/05刊 \940) 
 4 ☆『初夜』 (林真理子 文藝春秋02/05刊 \1333) 
 5  『ライオンは眠れない』 (S・ライダ− 実業之日本社01/11刊 \857) 
 6 ☆『龍の仮面(ペルソナ)』 (佐々木敏 徳間書店02/05刊 \2500)
 7  『朽ちる散る落ちる』 (森博嗣 講談社02/05刊 \840) 
 8 ☆『バカラ』 (服部真澄 文藝春秋02/05刊 \1905)
 9  『溝鼠』 (新堂冬樹 徳間書店02/04刊 \1800) 
10  『虹』 (吉本ばなな 幻冬舎02/05刊 \1400) 

【第三章まで読めば楽勝?】
拙著発売記念「お宝」プレゼントクイズ(賞品の簡易装丁本は「2組6人+α」に)の「正解」の女優さんは、ハリウッドで活躍している有名な方数十人のうち1人ですが、拙著を第三章まで読めば数人に絞られるはずで、正解に達する確率は数分の1です。だいじなのは(「3人1組」でしか応募できないのですから)3人組を編成することで、それさえできれば、あまり難しくないはずです。

「お宝」プレゼントQ → < http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/dragon/quiz.html > 
■「やらせ亡命」事件を検証する〜テレビ映像「感動の法則」■

1990年1月、キッシンジャー元米国務長官は、NHKの番組に出演して、国際情勢について89年の回顧と90年の展望を述べた。この中で彼は、89年の6月4日の「天安門事件」(欧米では「天安門虐殺」)について思わず以下のようなことを口走った:

「中国(の地方、農村)ではあのような事件(暴動と鎮圧)はしょっちゅう起こっており、べつに大したことではない。ただ、あの(89年6月の)事件の場合は、直前(89年5月)に行われた歴史的な中ソ首脳会談(ゴルバチョフ訪中)の取材のために『たまたま』世界中からテレビカメラが集まっていて、その目の前で事件が起きたために、中国当局の鎮圧の模様が全世界にテレビ中継されて、大騒ぎになっただけだ」

さすがに、こりゃまずい!と思ったのだろう。キッシンジャーはすぐに「あれは悲惨な事件であり、中国の友人として深く憂慮している」と言い直した……が、もう「後の祭り」だ。メディアリテラシーに長けた者なら、これで米国(のCIAなど)のメディアを使った世論操作のテクニックに当然気付く。

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●天安門「無血」事件●
じっさい、あれは大した事件ではない。欧米メディアは"Tiananmen Massacre"(天安門虐殺)と呼び、いかにも天安門広場で大虐殺があったかのように言うが、では、殺された人数はというと……定かな数字は存在しない。中国政府は広場で集会を行っていた非武装の一般市民に発砲しておきながら、ぬけぬけと「広場での死者はゼロ」と公言しているが……実は、筆者は中国政府の言い分が正しいと思っている。

あのとき中国政府は何をしようとしていたか? 「神聖なる天安門広場」(?小平)を占拠していた「暴徒」(学生、市民の集会)を追い出し、広場を奪回することであった。

たしかに中国軍は広場の群集に向かって発砲した。が、彼らが「実弾を撃った」という証拠はどこにもない。実弾であれ空砲であれ、撃てば同じように音と火花が出る。両者を肉眼で区別できる者などいない(だから、ハリウッド映画では俳優に空砲を撃たせて銃撃戦のシーンを撮影して観客を「感動」させることができる)。しかも、あの「虐殺」は夜だったから、発砲の瞬間は弾痕の識別も容易でなかったはずだ。軍の目的が広場の奪回、つまり群集を追い散らすことである以上、軍側には実弾を撃つ理由などない。空砲を撃って音でこわがらせて退散させればよいのであり、下手に実弾を撃ってそれが一般市民にあたって何人かが広場に倒れて動けなくなると、その面倒をみる者も含めて広場に多数の市民が留まることになり「追い散らす」という目的に照らして明らかに逆効果ではないか。

「反中国的な」雑誌として知られる『SAPIO』は2002年4月10日号で「李鵬の天安門・流血粛清の全手口」と、いかにも広場での虐殺の実態を明かすぞと言わんばかりの見出しを掲げて特集を組んだが、記事をよく読んでみると、広場での死者はほとんどなかった、と書いてある(さすがに、引っ込みが付かなかったと見えて「ゼロ」とは書いてないが)。

当時、広場での「発砲の瞬間」の火花を写真撮影してスクープ映像として世界に発表した日本人カメラマンがいたが、そういう写真の与える感動は、アクション映画のスチール写真のそれと同種のものであることを忘れてはならない。つまり「感動」をもたらすのは、映像(発砲の瞬間)そのものではなく、その前後の「ストーリー」なのだ(世界中のジャーナリストが発砲の音と火花だけで実弾と思い込んだのは、事前に「市民の民主化要求を弾圧しようとする中国政府」というストーリーを見て「感動」し、冷静な判断ができなくなっていたからだ)。

(筆者は、第二次大戦中の日本軍による「南京大虐殺」事件は「あった」とずっと思っていたし、いまもある程度そうなのだが、この「天安門虐殺」の「経験」を踏まえると「南京大虐殺はすべて反日派のでっち上げ」という可能性もなくはない、と思わずにはいられない)

●総領事館駆け込み事件の背景〜みんながいやがる北朝鮮難民●
2002年5月8日、中国・瀋陽の日本総領事館に北朝鮮脱出者一家5名が駆け込んだ。

北朝鮮は建国以来半世紀、社会主義に基づくばかげた体制を採ってきたため、その経済がまともに機能したことは一度もない。機能していたように見えたのは、80年代まではソ連など社会主義諸国から経済援助などの「えこひいき」を受けていたからであり、80年代以降は、在日朝鮮人のパチンコ業者などからの献金で国家財政を補っていたからだ(日本のパチンコ産業の売上げは年間20兆円以上あり、スウェーデンのGDPに匹敵する。その大半は在日韓国・朝鮮人が経営するので、彼らの売上げの数パーセントが北朝鮮に献金されるだけでその国家財政の相当部分が賄える→ < http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/dragon/kyogen.html > )。が、80年代に日本で任天堂などがテレビゲームを売り出すとパチンコ産業が斜陽になり、そのあと立ち直ったパチンコ業界にもICゲームカード導入による脱税防止や大手資本の参入による競争激化、ゲームカード会社への警察OB(北朝鮮スパイ網の監視要員)の天下りなどが重なって、北朝鮮経済の破綻はもはや覆い隠せない状態になった。

このため、北朝鮮では慢性的な物資・食糧不足に陥り、国民の大半が飢餓に苦しむこととなった。
根本的な解決策は、武力で社会主義政権を打倒して北朝鮮国民を解放することだが、周辺各国の「平和主義的な」世論がそれを許さないため、日本や韓国からの食糧・経済援助などの「対症療法」でごまかすほかない。「ごまかす」というのは、援助の大半が北朝鮮の軍部や特権階級に吸い上げられ、いくら援助しても問題の解決にも「人道主義的な」結果にもならないからである。

となると、当然飢えた、あるいは政治的に祖国に絶望した国民は、北朝鮮を脱出し、自由を求めて西側諸国への亡命を企てることになる。北朝鮮が地続きで国境を接する中国との国境は鴨緑江だが、その上流は川幅が狭く歩いて渡れるうえ、韓国との国境(軍事境界線)ほどには厳重には守られていないので多数の亡命者が越境する。

但し中国は社会主義国家で基本的人権を認めない国であるうえ、大量の北朝鮮国民が中国側に流出して自国の国境防衛が脅かされることを、そして何より(かつて東ドイツが大量の難民流出ののち崩壊したように)北朝鮮そのものが国家崩壊して大混乱に巻き込まれることを恐れている。だから、中国政府は北朝鮮政府と協定を結び、北朝鮮脱出者はみつけ次第北朝鮮に送り返す方針で、北朝鮮政府も戻った者は厳罰に処し、収容所や刑務所で虐待するか、処刑するかしている。

80年代末、脱出難民の急増で東ドイツが国家崩壊の危機に直面したとき、西側第三位の経済大国で東ドイツの4倍の人口を持つ西ドイツはこれを支え、東ドイツを吸収合併する道を選んだ。それは実現可能で妥当な策として、世界各国に歓迎された。

が、北朝鮮が国家崩壊の危機に瀕した場合、それを支えるべき「西ドイツ」は存在しない。韓国の経済力は西ドイツよりはるかに劣るうえ、人口比でも北朝鮮の1.5倍しかない。韓国が崩壊した北朝鮮を吸収合併した場合、韓国経済も崩壊し、国民の経済水準は50年前まで戻るとさえ言われている。国家崩壊に伴って流出する数百万?の難民は、ロシア、中国、日本、米国、欧州にも流れ込んで治安を悪化させる恐れがある。

また、中国と国境を接する北朝鮮が米国の同盟国である韓国に吸収されれば、米中両国の軍は鴨緑江をはさんで直接対峙し、軍事的緊張が高まることになる。さらに、満州地方(中国東北部の吉林省、遼寧省など)にはもともと朝鮮系住民(朝鮮族)が中国の「少数民族」として多数住んでいて、中国の多数派の漢民族からばかにされ、貧しく不自由な暮らしを強要されているので、朝鮮(韓)半島の統一で中国内の朝鮮族ナショナリズムが高まると、彼らが「中国からの分離独立」「統一韓国との合併」を主張する恐れがある。そうなれば、同種の民族独立運動が、国境をまたいで中国国内外に分かれて住んでいる他の少数民族(モンゴル人、ウイグル人など)に波及し、中国のほうも内乱から「国家崩壊」に至る恐れが出て来る。

だから、韓国を含めて世界中のいかなる国も、北朝鮮の崩壊を(積極的には)望んではいない。「できれば」対症療法でごまかしながら北朝鮮を生かしておきたい(が、「できない」と判断した時点で、別の解決策を模索する動きは当然出て来る。どうもブッシュ現米共和党政権は「悪の枢軸」発言以来、北朝鮮に対して「最終的な解決策」を検討しているようだが、その問題は別途論じる)。

崩壊を望まないなら、当然、大量の難民流出も望まないはずだ。だから、北京など中国にある日本、韓国を含む西側諸国の在外公館では、外交官のだれもが「できれば、北朝鮮の難民など受け入れたくない」と思っている。北京の日本大使館で2002年5月8日、瀋陽の駆け込み事件の数時間前に開かれた定例会議で、阿南惟茂・駐中国大使は「不審者が館内にはいろうとしたら追い返せ」と指示した。2002年にはいってから北朝鮮脱出者は前年の3倍近いペースで増えており、「不審者」が事実上北朝鮮脱出者を指すことは明らかだが、これはごく常識的な指示にすぎない(産経新聞2002年5月15日付朝刊3面「大使発言は『常識』」。朝日新聞同日付は「入れるな」)。

大使は「はいろうとしたら追い返せ」と言ったのであって「はいった者を押し戻せ」とは言っていない。1996年のペルーの日本大使公邸人質事件は、まさに「不審者」が在外公館にはいったことで起きたのだから、はいろうとする者を追い返して悪いことは何もない。

もちろん、他の西側公館に駆け込んで無事国外に脱出した北朝鮮難民の例は多々ある。現に上記の駆け込み事件の前後、5月8日と9日に、同じ瀋陽の、日本総領事館のすぐ隣にある米国総領事館に、あわせて3人の韓国人男性が駆け込んで身柄の保護を受け、第三国(シンガポール)に国外退去させられる形で無事に出国している。

が、この3人は米国への亡命を希望したが、米国政府に拒否され、仕方なく韓国に行った。つまり、北朝鮮難民を受け入れる国は、同胞愛のタテマエから受け入れざるをえない韓国だけで、西側公館はどこも「駆け込まれたら人道上やむをえず治外法権を主張して亡命者を保護するが、自国への亡命は拒否したい」というのが本音なのだ。

その韓国とて、年間の受け入れ人数が数千、数万のオーダーなら我慢できるだろうが、数十万、数百万になったら、絶対に「いやだ」と言い出す。いや、タテマエに従って受け入れたあと、ソウルや釜山の貧民街にたむろする失業者となった北朝鮮脱出者に対し、罵詈雑言を浴びせ、差別するだろう(年配の脱出者は「日本統治時代が懐かしい」と嘆くだろう。2000年5月の金大中・韓国大統領と金正日総書記の「歴史的な?」首脳会談を報じた英BBCは「韓国民は北朝鮮国民を同胞と思っているようだが、半世紀も違う体制のもとにあった両国の国民には、同胞と呼べるような共通点はほとんどない」と喝破した)。

こうした悲劇を防ぐため、各国在外公館はみな「はいろうとしたら追い返したい」と内心思い、その周辺を警備する中国の警備当局(人民解放軍傘下の人民武装警察。拙著『龍の仮面(ペルソナ)』第五章「天子の宝剣」を参照)も、その意を汲んで、脱出者が勝手に公館にはいらないように厳しく警備しているのだ。

当然、これまでも公館に駆け込もうとした脱出者が「(公館側の)希望どおりに」人民武装警察に取り押さえられた例はいくらもあっただろうし、警備や通行人が少ない場合には公館の入り口付近で、不審者(脱出者)と武装警察がもみ合った(今回のような)かなり「きわどい」場面もあったはずだ。

だから、今回の事件はさほど珍しい事件ではない。

もちろん、公館敷地内は中国の主権がおよばない外国(の治外法権下)なので、人民武装警察は、公館の入り口まで来ても自分たちが捕まえる前に不審者が公館内にはいってしまえば、そこで諦めて追跡をやめるのが常である。では、なぜ今回、武装警察は日本総領事館の敷地内にまではいったのか。中国側は(5月10日以降は)日本総領事館側が同意したからだと言い、日本側は同意なしで侵入し、日本の主権が侵害されたと主張しているので、真相はRashomon-like(黒澤明監督の映画『羅生門』のように、同じ物事でも「真相」はいくつもある、という意味の英語)だ(中国側は5月8〜9日の時点では、人民武装警察は災害救助同様の緊急措置ではいったと主張し「同意を得て」とは言っていない)。

が、人民武装警察が、隣の米国総領事館への駆け込み事件では敷地内に踏み込まなかったのに、日本総領事館の場合には踏み込んだことには「前例」に基づく理由があると考えられる。
(敬称略)
【「前例」については次回。】

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