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ねらわれたフランス人審判:週刊アカシックレコードmail版020225

発行日時: 2002/2/25

■検証・五輪審判不正事件(1)〜週刊アカシックレコードmail版020225■
2002年ソルトレーク五輪のフィギュアスケート・ペアのフリーの演技において、ミスをしていないカナダ・ペアの演技がミスをしたロシア・ペア(1また位)の演技より下(2位)になったのは、フランス人女性審判の不正によると報じられて決定が覆され、加ペアも露ペアとともに金メダルをもらうこととなった……でも、審判のトラブルはこれが初めてではないのに、なぜ表彰式をやり直すまでの大騒ぎになったのか? 五輪審判への不正工作(買収合戦)はいまに始まったことではなく、もっと巨大な不祥事はほかにあったではないか。

【フィギュアの選曲で「中国ペア、あわや国家分裂罪!?」】
ところで、そのペアのショートプログラム(SP)で、中国ペアは練習のときは映画『セブンイヤーズ・イン・チベット』のテーマをBGMにしていましたが、本番では突然『ゴッドファーザー』のテーマに変えました。なぜでしょう?……『セブン…』はチベットの宗教指導者ダライ・ラマ14世の生涯を感動的に描いた映画で、中国政府は(チベットが元々中国の一部でないことを無視して)ダライ・ラマはチベット分離独立運動をたくらむ「分裂主義者」として非難し、現在インドで亡命中の彼にも会おうとしません。その彼をたたえる映画の音楽をBGMに採用させるとは……中国チームのスタッフにCIAのスパイがいたんでしょう、きっと。採用してたら中国では刑事事件になるところでしたから。
■検証・五輪審判不正事件(1)〜ねらわれたフランス人審判■

2002年ソルトレーク五輪のフィギュアスケート・ペアの優勝争いは、ロシアとカナダの一騎打ち(ペアだから二騎打ち?)となったが、フリーの演技で、ミスをしていないカナダ・ペアの演技がミスをしたロシア・ペアの演技より下とされたのは、仏人女性審判の不正によると大々的に報じられて決定が覆され、加ペアも露ペアとともに金メダルをもらうこととなった……でも、審判のトラブルはこれが初めてではないのに、なぜこれだけの大騒ぎになり、表彰式のやり直しにまで至ったのか? 五輪審判への不正工作(買収合戦)はいまに始まったことではなく、もっと巨大な不祥事がほかにあったではないか(これについては機会と御要望があれば、別途詳しく述べる)。

筆者はこの件にはいささか政治的、あるいはビジネス的な胡散くささを感じている。

フィギュアスケートの順位は9人の審判の順位点によって決められ、その値が小さいものから順に順位が付く。技術点、芸術点の5.9とか6.0というのは(この点数の多寡を覆した順位点をつけるのは事実上不可能ではあるが)あくまで参考にすぎない。その順位の数字の合計の小さいものから順に並べてあらためて順位を付け、その数字(1、2、3……)がSP、フリーの演技それぞれの)「順位点」となる。最終順位は、「(SPの順位点)×0.5+(フリーの順位点)×1.0」の値の小さい順で決まる(同点の場合は、当該2名のうちフリーの順位点の小さいほうの最終順位を上にする。つまり、この採点方法は絶対に「同点優勝」が出ないように「決着をつける」ためのものなのだ)。

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●東西冷戦のフィギュアスケート版!?●
問題の採点では、9人のうちなんと(旧)共産圏(東側)の露、中、ウクライナ、ポーランドの審判全員がロシアを1位、「西側諸国」のうち日独米加の審判がカナダを1位とし、問題のフランスの審判が(西側の一員でありながら?)ロシアを1位にしたためその順位点は「1×5+2×4=13」で13点(カナダは「1×4+2×5=14」で14点)となってフリーの順位点が、露=1、加=2 に決まり、さらにSPの成績も加算して金・銀のメダルの行方が決まった。

競技終了後、この判定に米加の競技関係者は異を唱えた(ここまでは、どの競技でもよくあることで、大した事件ではない)。ところが、それを受けて米加のマスコミが

「仏人審判が露・東欧(旧共産圏)の審判たちと談合し、ペアでは露、アイスダンスでは仏が優勝できるよう判定に手心を加える『取り引き』をした」

と報じ、同時にテレビ(米国では共和党系のNBC放送が競技中継のほかニュース映像としての五輪放送権も独占)で露ペアのミスのあるジャンプと加ペアのミスのないジャンプの場面だけを取り出して何度も流した。

かくして、マスコミに煽られて引っ込みの付かなくなったISU(国際スケート連盟)とIOC(国際オリンピック委員会)は問題の仏人審判の判定を無効としたため、フリーの順位点は露ペアと加ペアが「1×4+2×4=12」(×1.0)点で同点となり、SPを加味すると加ペアが上なので加ペアに金メダルを授与すると決め、さらに(事を荒立てないために)露ペアの金メダルはそのままとすると決めた。つまり、必ず「決着をつける」ことを目的に制定されている順位点中心のフィギュアの採点ルールを無視する「超法規的措置」で、強引に「同点優勝者」を作り出して、露・加双方に花を持たせてこの不祥事の幕引きを急いだのである(が、あまりに「拙速」だったために、スケート審判の権威を失墜させ、五輪審判団全体にも疑惑を誘発し、かえってファンの不信感を高めてしまった)。

ほとんどのTV視聴者は(筆者も含めて)フィギュアの素人である。「失敗」の場面だけを繰り返し見せられれば「ロシアがミスをしたのに…」と印象付けられて大騒ぎになるに決まっている。ISU関係者が(元々フィギュアの採点には怪しいのが多いのに?)「(世論は)センセーショナルなマスコミ報道に煽られただけ」(悪いのはNBCだ!)と居直るのもあながち「盗っ人たけだけしい」とは言い切れまい。

たとえば、中国のフィギュアスケート関係者は今回の騒動を「(スポーツをビッグビジネスとする)巨大なメディアを持つ国(米国とカナダ)がその力を背景に、判定を覆したもの」と理解している(TBSテレビ「スポラブ」2002年2月24日深夜放送)。IOCはフィギュアのペアの表彰式のやり直しにはあらためて金・銀・銅…でなくて金・金・銅の3組のメダリストを招く予定だったが、金メダルの露・加ペアは応じたものの、銅メダルの中国ペアは出席を拒否した。中国のこの態度の背景には、北米のマスメディア(米NBC放送)への怒りがあることは想像に難くない。

(筆者の親の世代の)有名なエピソードによると、1972年札幌五輪の女子シングル・フリーでは、米国のジャネット・リンは尻もちをつく大ミスを犯したが(顔がかわいかったうえに?)その後の演技に優れ、芸術点では6.0を出す審判もいて(SPなども含めた)総合で3位、銅メダルに輝いた……でも、もし彼女の「尻もち」映像をライバル国のマスコミが繰り返し放送したら、メダルの行方はどうなっていたか、わかったものではないし、6.0を出した審判にも「談合疑惑」がかけられたかもしれない。

以前、フィギュアの採点は、規定、SP、フリーの3種目の合計点(それぞれの順位点を、フリーを最大にして傾斜配分して合計)に基づいて行っていた時代があった。が、競技初日に行われる「規定」は、観客のいないところで、リンクの上に「8の字」などの決まった図形を描くだけの退屈なものでTV中継がなかった。そこで、観客の目に触れない(目に触れてもよしあしがまったくわからない)この種目で審判は「勝たせたい選手」に不当に高い点を付けておくことで(年齢的にピークを過ぎてあまりジャンプを跳べなくなった「本命」選手の)フリーでの逆転負けを防いでいたという(『ニューズウィーク日本版』2002年2月27日号、p.27ほか)から、今回の報道に「何をいまさら」「なぜいまなんだ」「なぜフランスだけなんだ」と陰謀の匂いを感じたスケート関係者は、中国に限らず少なくあるまい。

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●「正当な報酬」を求めた米加のスケート業界●
プロのフィギュアスケートは北米では億単位のカネが平気で動くビッグビジネスである。選手は「五輪で金(きん)を取ってプロ入り」となれば、もらえる金(かね)は一気につり上がるから、その選手のコーチや各国スケート団体幹部も直接間接に、有形無形の大きな利益を得るはずだ。

となると、米加のスケート関係者は、せっかく「同胞」が金(きん)に値する演技をしたのに、「旧東側諸国」が(旧KGBの?)人脈を駆使してスクラム組んで、自分たちの金の卵を「銀の卵」に変えてしまった、などという(冷戦時代から延々と続く)構図は我慢できないに違いない。

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●西側自由世界の万年野党、フランス●
米加から見て、とくに「邪魔」なのはフランスだろう。西側の一員のくせに(米加などアングロサクソン諸国に対抗して独自性を示すため)、この国はフランス語圏(カナダのケベック州、ベルギーや旧仏植民地諸国)のリーダーとして、また欧州ラテン系諸国(スペイン、イタリア)の盟主としての対外的イメージを守るため(はらの底では米国に賛成でも)敢えて反米的に振る舞う「クセ」がある。たとえば、コフィー・アナン現国連事務総長が米英の強い推薦で選ばれた際にも(仏政府はアナンが立派な外交官であることを知っていたくせに)「フランス政府としては、同じアフリカ人のなかでもフランス語を話す(旧植民地国の)人を希望する」などとナショナリズム丸出しの身勝手なイチャモンを付けたほどである。

このようなクセを「矯正」するには、晴れの舞台で「さらし者」にして反省を迫るかしかない、と米保守政財界(共和党やNBC、石油資本)が考えてもおかしくはない。

フランスは、米国を盟主とするNATO(北大西洋条約機構)の政治組織には加盟しているが軍事組織にははいらず、国内に米軍の駐留を認めていないし、米国から独立した独自の核兵器戦略を保っている。エネルギー政策の面でも、フランスは米系石油資本にはまったく頼らず、国内の総発電量の80%を原発でまかなう世界一の原発推進国で、米系石油資本の活動抑制を意図した「京都議定書」の熱心な提唱国の1つでもあり、イラクが大量破壊兵器(核、生物化学兵器、ミサイル)を開発していることを理由に米国がイラク攻撃を計画していることにも(平和主義ではなく、仏系企業のイラク石油への利権維持の立場から)反対している。また、フランスの宇宙飛行士は、日本やドイツと違って、伝統的に(米国のNASAではなく)ロシアの基地で訓練を受けており、ハリウッドのフランスへの映画市場開放要求も「低俗な文化の侵入を防ぐため」として官民挙げて拒絶するなど、精神的物質的に、あらゆる意味で米国に頼らない国であり続けることをめざしている。フランスでは「反米」が事実上の国是なのだ。

こうした政治的背景があるので、仏政府および仏スポーツ界は五輪の持つ政治的意味をよく知っている。1979年末のソ連のアフガニスタン侵攻に抗議して、米、日、西独など西側世界の良識ある国々(ついでに言えば中国も)は1980年のモスクワ五輪をボイコットした。が、フランスは(「対米追従」でない姿勢を国内外に示すため)五輪に参加した。

●「たかがスポーツの問題」ではない●
となると、2008年の北京五輪に向けてフランスが良識ある行動を取るかどうか、甚だ疑問である。
2001年7月に北京五輪の開催が決まってから、2008年8月に開催されるまでの7年間は、台湾にとっては五輪を人質にとって中国からの完全独立を達成できる千載一遇の好機である。台湾住民の80%以上は、大陸中国とはなんの関係もない本省人(台湾島出身者)で、「台湾は中国の一部」と主張する外省人(1949年に大陸から逃げてきた中国人とその子孫)など、2割に満たない。台湾は1980年代に外省人の政党である国民党の独裁が終わり、民主化が始まると、台湾独立を唱える民主進歩党(民進党)や国民党内部の独立派(李登輝前総統派)が台頭して、2000年には陳水扁総統の民進党政権が実現している。
(敬称略)

【以下、次回に続く。】

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