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共和党のオリンピック:週刊アカシックレコードmail版020221

発行日時: 2002/2/21

■日の丸飛行隊失速(1)国益と友好〜週刊アカシックレコードmail版020221■
ソルトレーク五輪では、スキーの純ジャンプ、複合競技ともに日本勢は惨敗に終わった。この原因は、欧州諸国が自分たちに有利に、日本に不利になるようルールを変えたからだ、と怒る声が日本にはある。が、欧州人はべつに日本が嫌いなわけではない。
ただ、これだけは言える、「『国際ルール』は人類史上常に『国益』のぶつかり合いの中でしか決まったことはなく、ただの一度も公正や正義のために決められたことはなく、それは今後も永遠に変わるまい」。

【共和党のオリンピック(1)】
1984年のロス五輪の開会式を仕切ったのは民主党(ユダヤ、リベラル、原子力)系のTV局ABCで、イスラエル選手団の入場では場内割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。共和党(石油、親アラブ産油国)系のNBCが仕切った1996年のアトランタ五輪の開会式では、イスラエル選手団の入場にはまったく拍手が起きず、逆にサウジアラビア選手団の入場では観客席にいたサウジの皇太子がアップで映され、メインのパフォーマンスの開始・終了時にはアラブ的な音楽が流れ、聖火の最終点火者はイスラム教徒のモハメド・アリだった。では、2002年ソルトレーク五輪は?……この答えは明日22日(金)に配信します。
■検証・日の丸飛行隊失速(1)国益と友好〜週刊アカシックレコードmail版020221■

●「正義より利益」はあたりまえ●
米エネルギー企業大手のエンロンが破綻し、インサイダー取り引きや不正経理などの疑惑が取り沙汰された2002年1〜2月、いままで米国政府がアジアなどの外国企業に、情報公開やコネ経営の排除、不正経理の防止などを「グローバルスタンダード」として押し付けようとしてきたのが実はタテマエにすぎず、本音では国益(自国企業の利益)のために外国企業をたたいただけではないか、と嘆く声が、筑紫哲也、田中宇ら(元左翼?の)「理想主義者」らから発せられている(
http://tanakanews.com/c0211enron.htm
を参照)。

が、そんなことは97年のアジア通貨危機の頃から、世の中を「現実的に」見る保守良識派からすでに指摘されていたではないか。石原慎太郎(現都知事)は、米国の「投機筋」(通貨危機を引き起こす)も格付け会社(危機の被害国の国債を格下げ)もIMF(国際通貨基金。アジア諸国に危機脱出のためと称して過酷な財政再建策を強要)もみんなグルになって「米国の国益のために」行動していると指摘。日本が得るべき教訓は、その「みごとなまでの国益追求」を見習うこと、と説いた。

が、日本では、昔共産主義の尻馬に乗っていた連中は、「馬」を左翼から保守のハト派(米民主党リベラル親中国派。自民党橋本派、とくに野中広務)に乗り換え、米リベラル派の日本弱体化政策(内需拡大のためと称して日本にバラマキ公共事業と不良債権処理の遅延を促して日本経済を衰退させ、相対的に中国を強くして中国利権で儲ける陰謀)には、ひとことも触れず「野中が、日本の過去の侵略戦争への反省を中国に表明したのは偉い」などと説き続け、日本から中国への円借款が結果的に中国の軍拡につながっていることも非難しなかった。

日本の「理想主義者」は、なんの根拠もなく(人類史上一度も実現したことのない、公正で平和な)「理想主義的な世界」が実現すると信じ込み、それに反する(と見える)動きがあると嘆き、それに少しでも近づいている(と表面上見える)動きがあると、無邪気にはしゃいで陰謀の可能性を忘れ、「国家間の対立も、軍隊も国家そのものもナンセンス」などと能天気なことを言い出す。彼らの最大の欠点は「国益」という概念がないことだ。

しかし、石原慎太郎の指摘を待つまでもなく、国益を追求しない国家などない(否、あってはならない)。環境問題1つとっても、原発反対運動は石油火力発電推進の「利権運動」であり、地球温暖化防止(火力発電抑制)運動は原発推進のそれである。「石油派」の米国保守本流(共和党)と「原子力派」の欧州政財界主流が、それぞれ相手方の非主流派(売国奴?)、すなわち欧州反原発勢力(ドイツの左翼ら)と米民主党をたらしこんで、「環境保護」などと上品な衣を着せて「ばかし合い」をしているにすぎない。

「国益」の話をすると、「第二次大戦でアジアを侵略した日本が国益ばかり追求したら、世界から嫌われる」などと言う者が必ず出てくる。が、好き嫌いは個人間の問題であって、国家間の問題ではない。少なくとも西洋人には国家と個人を峻別する明白な「常識」がある(本誌記事「『同じ日本人として恥ずかしい』は考えもの」
http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/dragon/kyogen.html#shame
を参照)。

「無償の愛」の理想は個人間で、とくに個人への敬意によって追求されるべきであり、国家が国益を放棄して理想に走るのは、故意に国民に不利益をもたらそうとするもので、企業で言えば背任罪にあたる犯罪だ。

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●原田の「失敗ジャンプ」の真相●
個人に敬意を表することと国益を追求することがまったく矛盾しないことを示してくれたのが、1994年リレハンメル冬季五輪の開催国ノルウェーである。これは一スポーツ界(ノルディックスキーの純ジャンプと複合競技)の問題ではあるが、国際社会との付き合い方を学ぶには好例と思われるので、紹介する。

1994年五輪のジャンプ団体決勝で、日本は2本目3人目が終わった段階でドイツを押さえて大差で首位に立った。残るは日本の原田雅彦とドイツのバイスクロフというエース対決だが、スコアから見て日本の優位は動かないとだれもが信じた。

が、ここでバイスクロフは原田に「おめでとう」と声をかけた。これにプレッシャーを感じた原田は歴史的な「失速ジャンプ」に終わり、メダルの色は日本が銀、ドイツが金となった。

当時、これは日本では「原田の失敗ジャンプ」として知られ、彼を責める論調が支配的だった。ところが、地元ノルウェーでは選手やマスコミがバイスクロフの行為をスポーツマンシップを踏みにじったとして非難し、「そこまでして金(きん)がほしいのか」と激怒していた。

原田が失敗しなかった場合、日本が優勝、ドイツが2位で、べつにノルウェーの順位は変わらない。が、ノルウェー人たちはノルディックスポーツを愛している。彼らは純ジャンプでも複合の前半のジャンプでもライバル日本に(いまだに)かなわないが、日本人の努力と才能を評価している(とくに、この大会で複合・団体で金メダルを取った日本のエース荻原健司は、日本よりむしろノルウェーなど北欧での知名度のほうが高いぐらいで、大変な英雄として歓迎されていた)。
だから、ノルウェー人も、同じ競技に出ていた他の欧州諸国の選手も、バイスクロフの卑劣な行為に怒ったのだ。

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○共産主義の犠牲者○
ちなみに、バイスクロフは4年後の長野五輪の際に日本のマスコミとのインタビューで「あのひと言には何の他意もなかった」と言っている(
http://www.nikkansports.com/news/nagano/toku/shu0218.html
を参照)。が、筆者はこれはウソだと断定する。理由は彼が東ドイツ出身だからだ。彼は84年のサラエボ五輪では東ドイツの選手として金メダルを取っているが、統一ドイツの、しかも個人ではなく団体(ナショナルチームの一員)としての金メダルは(下劣な共産主義の過去を拭い去って)「真のドイツ人」になるために、命に代えてもほしかったはずだ。この点では彼には同情の余地はある(が、原田はもっとかわいそうだ。彼はプライドが高いから言い訳はしないが、当時五輪のその競技に出ていた日独以外の一流選手がこぞってバイスクロフを非難しているのだから、日本の敗因は明らかで、議論する必要すらない)。

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●「国益」のためのルール変更●
が、ノルウェーにはノルウェーの国益がある。「お家芸」の複合で金を奪われたノルウェーは、大会後日本に惨敗した他の欧州諸国を誘って、ルールの改正を提案。曰く「前半のジャンプで特定の者(日本人)が圧倒してしまうと、後半の距離競技(クロスカントリー)の意味がなくなるから」として、ジャンプの得点差を距離競技のスタート時間の差に換算する「換算率」の変更を提案。それでも、少々のことでは荻原らがへこまないと見るや、換算率の再改訂に加えて、後半の距離の長さや、さらには団体戦の出場人数まで(3人から4人に)変えさせた。

この結果日本はこの種目で、98年の長野五輪ではノルウェーにまったく歯が立たなくなった。が、この間、ノルウェー人たちは荻原「個人」への敬意は表し続けた。

多くの日本人は、ノルウェーなど欧州諸国が「強すぎる日本を嫌って日本に意地悪をして」ルールを変えたと思い込んでいる。が、ノルウェーが国家として追求したのは「好き嫌い」などというくだらない感情ではなく、ノルディックスポーツの母国としてのメンツを守ること、すなわち国益の追求なのだ。

「無償の愛」や「心からの尊敬」の対象は個人であって、国家ではない。ノルウェーのスキー界はべつに(バイスクロフのように?日本人に)意地悪をしたのではなく、国際世論を説得して国際ルールを変えたのだ、ただし国益に沿って。
たまたま国益を同じくする他国と組んだ結果「欧州白人諸国ばかり」勝つようになったにすぎない。

これは人種差別ではない。悔しかったら、日本も「国益を同じくする」他国を誘ってルールの再改正を提案すればいい。

国際社会では国益は自ら主張しない限り、だれも守ってくれない。その現実派は「冷酷非情」と言えるほど厳しい……わけではなく、ただ(大多数の国と同様に)主張すべきことをすればいいだけだ。

が、日本はこのとき、あたりまえのことをしなかった。日本と同様、距離競技よりジャンプが強い国を誘って、ノルウェーとその同調者を少数派に追い込むような多数派工作も、その素振りも見せなかった。こうした「外交努力」をまったくしなかったために、日本はその後ジャンプの国際ルール改正問題で「国益」を同じくする仲間をみつけることもできないまま、(個人ではなく)国家としての孤独を味わうこととなる。

【この続きは、来週ではなく明日2月22日(金)に配信します。】

(敬称略)

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