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官邸 vs.自爆テロ:週刊アカシックレコードmail版011108

発行日時: 2001/11/8

■テロ国家中国の悲哀:週刊アカシックレコードmail版011108■
中国政府は常々「台湾が独立を宣言したら武力で阻止する」と公言している。が、その場合の「武力」とは、実はテロなのだ。2001年9月11日の米中枢同時テロを受け、中国が議長国を努めた2001年10月の上海で開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会合では「反テロ共同声明」が採択されてしまった。もう中国はテロはできない。

【首相 vs.自爆テロ】
いかなる危険が伴おうと、何もしないでいることの危険のほうが、はるかに大きい。
   --ブレア英首相の、反テロ軍事制裁に参戦するにあたっての決意表明

いかなる事件が伴おうと、クビにしたあと恨まれることのほうが、はるかにコワイ。
   --小泉首相の、「自爆」を繰り返す田中真紀子外相 (^^;) を更迭できないことについての本音?
■続・禁じられた「超限戦」〜シリーズ「米中枢同時テロで『損』をしたのは誰だ」(3)・中国編■
前回の記事
http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/dragon/super.html#02
から続く。

●台湾海峡、波高し●
200X年Y月Z日。北京五輪を数年後に控え、中国と台湾の関係は安定していた。
中国、台湾はともにWTO(世界貿易機関)に加盟し「世界同時テロ不況」で日米への輸出が細る中、お互いの貿易、投資を活発化することで不況を乗り切ろうとしていた。

WTO加盟国(地域)は原則的に、経済関係の制限ができない。だから、台湾政府はここ数年、大陸(中国)との三通(直接の通信、通交、通商)を解禁しており、台湾から(香港や日本を経由しない)中国への投資、貿易、民間航空乗り入れは活発化していていた。

が、中国は安い労働力を背景に輸出力はあるものの「13億市場」のうち11億は貧乏で「輸入力」がないため、台湾にとってはあまり利益が出ない状況に陥っていた。最大の輸出市場である日米が不況では、いくら中国の安い労働力を生かして安い製品を造っても売りようがない。また、中国では経済成長に社会的施策が追い付かず、外資や水や土地が不足し、環境破壊も深刻化しつつあり、次第に「成長の限界」が明らかになってきていた。だから、中国の(無限の?)輸出力と「輸入力」に魅せられていた台湾財界の中国熱は次第に冷め、立法院(国会)では、親中国派の議員が何人も台湾独立派の政党に寝返る事態になっていた。

そんなある日、乗客乗員120余名を乗せて上海空港を飛び立った中国民航の旅客機が、目的地、台北郊外の中正国際空港に近づいても高度を下げず、通り過ぎてそのまま台北市上空に向かう、という奇妙な事件が起きた。

中正国際空港の管制官はその旅客機に連絡したが返事はなかった。そうこうするうち、旅客機は通常の空路をはずれ、台北市内の松山空港近くで急降下したが、滑走路には降りず、管制塔に激突、墜落した。

ただちに陳水扁・台湾総統は「状況二」(デフコン2、臨戦態勢)を宣言。台湾島内のすべての空港を閉鎖し、民間機の離発着を禁止。台湾領空全域を飛行禁止区域とし、空軍に警戒態勢を命じた。

台北では、有事の際に軍用空港に転用されるはずの松山空港が管制塔の破壊で使用不能になったため、重慶北路の交通を遮断し、軍用滑走路に転用することを決めた。台湾にはこうした軍事転用を設計段階から想定していた道路がたくさんある。こうして、全体としては「状況二」だが部分的には「状況一」(デフコン1。戦争)と変わらない事態になった。

中国政府は驚き、自ら釈明し台湾当局を非難する声明を発表した、
「わが国には、台湾攻撃の意図などない。中国民航機の墜落は不幸な事故であり、死傷した台湾住民の方々には心から哀悼とお見舞いを申し上げる。が、これは事故であって、攻撃などではない。大勢の民間人が乗った飛行機を墜落させて攻撃することなどありえない」

というような声明は、2001年9月11日以前なら説得力があった。が、米中枢同時テロにより、いまでは旅客機を都市攻撃の武器に使うことはありうる、と世界中が知っている。台湾総統はテレビに生出演し、宣言した、

「今後、中国からわが国に飛来する飛行物体はすべて、わが国への攻撃とみなす。当然『三通』は中止する」

中国政府は猛反発し、たった1つの航空機事故を口実にした交流制限はWTOの規約違反だ、とWTOに訴え出た。が、WTO幹部も当然、WTC(世界貿易センター)への旅客機テロの「前例」を知っているので、台湾当局の主張に理解を示し、台湾の規約違反を責めることはなかった。逆に中国は「日頃『台湾が中国から完全独立するなら武力を使う』と言っていたが、その『武力』とはテロのことか」と非難され、世界中の冷たい視線を浴びることとなった。

9月11日の米中枢同時テロ後の世界では、政治的に対立点のある国に乗り入れた自国航空機の墜落は、意図的なものであろうとなかろうと戦争とみなされるのだ、という事実をノー天気な中国政府首脳(江沢民・共産党総書記ら)は「初めて」思い知らされた。

米国政府高官は「中国政府の関与が証明されれば、中国をテロ支援国家のリストに入れ、経済制裁を発動する」と発言。かつて80年代に日本の巨額な対米貿易黒字に怒って「日本たたき」に励んでいた米国の国会議員たちは2001年以降「中国たたき」に転進して、テロ不況で世界が苦しむ中、日米ほか世界中から貿易黒字を稼ぐ中国の「1人勝ち」を非難していたので、米中関係は急速に悪化。日本経済界も中国に進出した工場を引き上げ、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国に移すことを検討。ASEAN諸国もこの動きを歓迎し、さらに「中国政府は人民元を切り上げて、為替の面からも輸出を抑制すべきだ」「安すぎる人民元は世界同時不況の元凶」とまで言い出した。

あわてた中国政府は、2011年に予定していたASEAN諸国との自由貿易協定(FTA)の締結を前倒しすべくASEANへの大幅な譲歩を打ち出したが、日米がASEAN諸国の「切り崩し」に出て中国のFTAによる東南アジア取り込み構想は挫折。他方、台湾は米国の支援でFTAA(米州自由貿易圏)に「ゲスト」として加盟することが内定した。

台湾総統は、台湾への国際的同情の高まりと中国の孤立を見て取り、国連に加盟を申請した。もちろん、中国は反対したが、米国、日本などが台湾支持にまわり……。

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●テロ国家中国●
筆者は2001年4月、某所で元防衛庁研究員で現在大学教授の中国軍事専門家の研究成果を拝聴する機会を得た。
前回述べたように、中国にとって台湾上陸作戦は「勝つも地獄負けるも地獄」で、結局実行できない。筆者がこの先生から学んだのは、中国が「独立台湾」に対してできることは「テロ、ゲリラ戦などの非正規戦と、海上封鎖ぐらいしかない」という、意外だが説得力のある事実だった。2001年4月現在、台湾は対潜哨戒機も十分な数の潜水艦も持っていなかった(2001年5月、米国は台湾にディーゼル潜水艦と対潜哨戒機の売却を決定)ので、潜水艦を使った海上封鎖で、物資の輸出入を遮断したり、台湾島にサイバーテロによる金融パニックや発電所等への爆弾テロによる大規模停電、あるいは生物化学兵器による小規模な攻撃を行って社会不安を引き起こしたりして、2000万の台湾住民全体をノイローゼに追い込むことは可能だろう、と当時(4月)筆者も思った。

そのうえで中国政府は「台湾政府は軍隊を保持したまま、財政、税制、司法、立法も独立したままで『台湾は中国の一部』と宣言するだけでいい」などと声明を発表すれば(甘言を弄すれば)台湾を「ギブアップ」させて、独立断念に持ち込める……そういう計算を中国政府は立てていたに違いない。

が、2001年5月のブッシュ米政権の台湾への武器売却計画(上記のほかに、台湾のミサイル防衛網の構成要素となりうる最新型パトリオット地対空ミサイル「PAC-3」も売り、中国の弾道ミサイルを一部迎撃できそうになったことの意味は大きい)で、近い将来、中国の台湾に対する海上封鎖は難しくなるだろう。

そして、9月11日の事件で、中国は台湾へのテロ攻撃も、ほぼ不可能になった。

●「超限戦」に隠された本音●
中国は台湾を併合して「祖国統一」を達成するうえで、最大の敵となるのは台湾軍と、台湾を支援する米国と想定している。日本が憲法9条の解釈を変えて集団自衛権を行使し、日米台共同でミサイル防衛(MD)を配備すれば日本も敵となる。そこで、親中国派を自負する日本政界の「ハト派」たちは、集団自衛権行使に反対で、MDにも消極的だ。とくに、日本のMDの重要な構成要素となる(1隻で一度に十数発の弾道ミサイルを迎撃できる)イージス艦を(対アフガン反テロ戦争で米軍後方支援などの)実戦に出動させることに、親中国派の「代表選手」の野中広務・元自民党幹事長が(2001年10月現在)反対していることはよく知られている。

1999年7月、中国では反米ナショナリズムを剥き出しにした、米国に勝つための戦術解説書『超限戦』が出版されて話題を集めた。

言論の自由のない、出版業界も未熟な中国における「話題の本」など通常はさして意味はない。たとえば、1997年に出版されてベストセラーになった『ノーと言える中国』などは、反日、反米、反西欧の人種偏見と憎悪を煽る駄本で、日本で言えばさしずめ無教養低知能のいかがわしい連中が書き、オウム真理教の信者が愛読した、下劣な「反ユダヤ本」にあたるものだ。

しかし、『超限戦』の著者は人民解放軍の現役大佐2名で、しかも版元は「人民解放軍文芸出版社」だったので、この本は中国ウォッチャーにとって無視しえないものとなった。内容は、中国は限定戦争を超える戦い(超限戦)をやってでも(台湾防衛を国是とする)米国に勝つべきだというもので、そのためには金融戦(銀行ネットワークへのサイバーテロ)、細菌戦、心理戦などありとあらゆる戦術を駆使せよと訴えている。これは「対米」もさることながら「対台湾」の側面もあり、「独立するならサイバーテロから生物化学兵器まで覚悟せよ」と台湾を恫喝する効果をねらっていることは明白だ。

が、これはウラを返せば、核兵器では米軍に勝てず、通常兵器でも米軍はもちろん台湾にも勝ち難い中国は「ありとあらゆる戦術」と言わざるをえない、つまり正規戦では歯が立たないから、非正規戦(テロ)をせざるをえない(それしかできない)ことを告白したに等しい。たとえば、十分な核戦力、通常戦力を有する米国は「ありとあらゆる戦術」などは研究せず、テロをやる予定もない。

産経新聞の古森義久・元北京支局長(現米国総局長)は、この『超限戦』を「対米宣戦布告」的な本ととらえている(『文芸春秋2001年10月号』p.301)。が、米国攻撃に使える武器、戦術は当然台湾攻撃にも使えるのだから、米国を仮想的とした過激な戦術についての本を解放軍の現役将校が書いたのは、台湾への威嚇(あるいは、「台湾上陸作戦」という正規戦が可能だと「誤解」している中国の党内・軍内の「愛国的世論」への警告)にほかなるまい、と筆者は判断した。

●「最後の手段」を失った中国●
が、9月11日の米中枢同時テロを受け、中国が議長国を努めた10月20〜21日の上海で開催されたAPEC首脳会合では「反テロ共同声明」が採択されてしまった。ここで言う「テロ」には当然サイバーテロ(金融戦)も生物化学兵器テロ(細菌戦)も含まれる。

従来の中国は「独立台湾」に対しては、犯行声明を出さない「無言テロ」で脅すつもりでいた。が、同時テロ後は、たとえ満足な証拠のみつからない(公表されない)無言テロであっても、ひとたび米国政府が「犯人は○○」と言えば、国際社会がこぞって支持し「犯人」を制裁する、という構図ができてしまった。

【中国は同時テロに反する米国の対アフガン戦争に便乗して、中国からの分離独立を求める新疆ウイグル自治区のイスラム過激派の運動をテロと断定し、過酷な弾圧を開始した。この点では中国は得をした形だが、この結果中国は自らテロを「取り締まる側」として役割を固定してしまった形になり、元来台湾に対して取っていた「テロをやる側」としての立場は、かえって難しくなった。】

独立宣言後の台湾で大規模テロがあれば、証拠の有無にかかわらず世界中が中国を疑う。となると、中国は、空爆を含め、あらゆる制裁を米国はじめ世界各国から受けることがありうる、と覚悟しなければならない。

中国は台湾独立を阻止する手段として、元々正規戦(上陸作戦)はできなかった。海上封鎖も2001年5月の米国の台湾への武器売却決定で難しくなるだろう。そして、10月のAPEC以降、非正規戦も不可能になった。

つまり、中国は米中枢同時テロを機に、台湾独立を阻止するための軍事オプションをほぼ失ったのである。

残る問題は、こうした中国の屈辱的な「弱さ」を、中国の国民、軍人、共産党員が理解し受け入れることができるか、ということである。
(敬称略)

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