禁じられた「超限戦」:週刊アカシックレコードmail版011101
発行日時: 2001/11/1■禁じられた「超限戦」:週刊アカシックレコードmail版011101■
中国政府は常々「台湾が独立宣言したら武力で阻止する」と公言している。が、その場合の「武力」とは、一般に想像されているものとはかなり違う。しかも、それは2001年9月11日以降、事実上使えなくなった。
【兵糧攻め】米英軍のアフガンにおける反テロ戦争は、戦場が山岳高地であることから当初、極寒の冬を迎えると米英軍の活動は鈍って戦闘は一時中止せざるをえないのではないか、と言われていました。が、冬場の活動が困難なのはタリバンも同じで、もしもアフガン国内のガソリン備蓄が枯渇すれば、戦車もトラックも走れず食糧の輸送もできなくなって、タリバンは戦えないそうです。それをねらってか、米軍は現在、空爆で各地の燃料タンクを破壊し、また赤十字など国際援助機関の食糧倉庫を(意図的に?)誤爆して大量の食糧を灰にしております(2001年10月26日、米軍当局は誤爆と認めて謝罪)。実は、援助食糧は民間人より先にタリバン兵士の手に渡るので、盛んに「誤爆」が為されているのです。私は米軍の行動は「報復」ではなく「手荒な警察活動」と思っていますが、「民間人の犠牲を最小限に」などという米国の主張は明らかに「大本営発表」です。兵糧攻めにするときは結局タリバンも民間人もいっしょですから。
■禁じられた「超限戦」〜シリーズ「米中枢同時テロで『損』をしたのは誰だ」(2)・中国編■
前回の記事
http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/dragon/super.html#01
から続く。
●中国がいやがる「台湾上陸作戦」●
「台湾が中国からの独立を宣言したら(たとえ北京五輪の前であろうと)中国は台湾に武力を行使するだろう」
「中国は、台湾上陸作戦の軍事演習を繰り返しているから、台湾の独立宣言は流血の大惨事になる」
「だから、台湾は軽々しく独立宣言などすべきでない」
と平和主義者(ハト派、親中国派)の政治家はよく発言する。が、彼らは中国政府の「大本営発表」を鵜呑みにするだけで、現実に上陸作戦を行った場合のシミュレーションをしたことなどなく、中国の本音、中国軍人の苦衷をまるで理解していない(中国政府の意向を代弁する「手先」ではあっても、ほんとうの意味での「中国の友人」とは言い難い)。
中国は貧しい。それは軍事予算にも反映されている。兵士や航空機、戦車、艦船の数は多いが、いずれも旧ソ連製のコピーや中古品ばかりで、その性能、整備、訓練のレベルはかなり低い。中国軍戦闘機パイロットの年間(訓練)飛行時間は70〜80時間で、米軍(240時間)の1/3、自衛隊(160時間)の半分以下にすぎず、その技量は「中の下」どころか「下の下」だが、それは軍が貧しくジェット燃料が十分に買えないからだ。このため中国の航空戦力は、潤沢な予算で米国製の高価な最新鋭戦闘機を運用する台湾空軍の敵ではない(AERA 2001年4月30日-5月7日合併号p.83、田岡俊次記者)。
2001年4月1日の米中軍用機接触事故の際、中国軍当局は米軍偵察機のせいで中国海軍の戦闘機が1機墜落し、パイロット1名が死んだと激しく米国を非難した。が、報道されているとおり、墜落機のパイロットは脱出には成功している。彼が死んだのは、パラシュートが整備不良で開かなかった(か、中国海軍の救助能力が低く、救われなかった)からで、米軍機との接触は直接の死因ではない。このとき、中国人民解放軍の機関紙「解放軍報」は、対米外交を穏便に進めたい中国政府外交部(外務省)の意向を無視して、勝手に対米非難の記事を掲載し続け、反米愛国の世論を煽ったが、その目的は自らの装備や救助能力の貧困を隠す「責任逃れ」に相違ない。
ことほど左様に中国軍は貧乏軍である。台湾と戦えば(台湾軍機1機で何機もの中国軍機が撃墜できるので)負ける可能性が高い。だから、いまだに台湾海峡の制海制空権は台湾側にあり、海峡の大陸寄りにある2つの小島、金門島と馬祖島は台湾の支配下にあるのだ。
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●勝っても地獄●
いや、200X年には必ずしもそうでない、という意見は当然、専門家のあいだにもある。
1990年代に中国は、台湾海峡を臨む福建省などに弾道ミサイルを大量に配備したし、米国本土の西海岸を攻撃できる、射程8000キロの長距離弾道ミサイル(ICBM)を開発してアメリカを威嚇できる態勢を整えつつあるし、台湾の海上封鎖に役立つ(静粛性が高く、探知されにくい)ロシア製キロ級潜水艦を導入するなどした。
そこで数年後の「上陸作戦」では、中国軍はまず弾道ミサイルで奇襲して台湾の航空戦力、管制塔、空港を吹き飛ばし、核兵器で米国を牽制しつつ台湾住民を威嚇して、台湾周辺海域を海上封鎖し、強襲揚陸艦で地上軍を台湾島に上陸させるか、または、空挺部隊で台北や高雄市を空から奇襲して、総統府や放送局を占拠するか……これなら勝てるかもしれない。米陸軍には、中国は福建省沖の小島(東山島)を台湾に見立てて行っている上陸演習とは別に、秘密裏に訓練された上陸用部隊が別にあるのではないかと疑う意見もある。90年代はともかく、2001年現在の中国軍には少なくとも金門島を侵攻する能力は十分にある。
しかし、それでも、中国政府はそう簡単には台湾侵攻には踏み切れない。たとえ勝っても、敵味方合わせて、軍人民間人取り混ぜ数十万、数百万の犠牲を出すことは必至だからである。
中国は北朝鮮と違って国を閉ざしているわけではなく、西側のビジネスマン、観光客は多数出入りしている。社会主義国家だからマスコミは政府の統制下にあるものの、ラジオの国際放送やインターネットを通じて、中国が台湾で行った「残虐行為」の実態が中国国内に知れ渡ることは避けられない。そうなれば、北京の共産党政府の権威はガタ落ちになる。
新中国建国後、毛沢東率いる共産党は「大躍進」という無謀な経済政策によって2000万の国民を餓死させ、その失態を取り繕うため1966〜76年の「文化大革命」という一種の内戦(紅衛兵によるリンチの奨励)で政敵と国民1000万をなぶり殺しにした。が、中国共産党は中国国民になんの謝罪もしない。自分たちを正義と位置付けるために「南京大虐殺」など日本軍国主義の悪(と戦った共産党)を頻繁に宣伝してごまかしてきた……が、CNNのカラー画像で「台湾大虐殺」が世界中に放送される事態になれば、もうそんな小細工は通用しない。
台湾には中国を武力侵攻して再び大陸の支配者になるつもりはない。台湾独立宣言とは「中国大陸を領土とはしない。大陸には攻め込まない」と不戦の誓いをするに等しい。しかも台湾は実質的にはすでに独立している。独立宣言とは、国名を中華民国から台湾共和国に変えるという、ただそれだけのことで、中国が失うものは直接的には何もない。
この「単なる改名手続き」が許せない、という中国政府の言い分はまさに単なるメンツの問題であって、べつに国防上の問題ではない。もちろん、大海軍を建設して南シナ海を支配するのが国是なら、まず台湾を橋頭堡として獲得すべきなのは言うまでもないが、それは国防上不可欠な「防衛的措置」ではなく、明らかな「拡張」だ。世界の世論には数十万の民間人を犠牲にしてまで中国が拡張するのを支持する理由はない。
●モスクワと北京の間●
したがって、中国共産党政権は、国内で権威を喪失し、全世界の経済制裁を受け破滅することを覚悟しない限り、台湾侵攻などできない。2008年の北京五輪があるから、それまでは(核)弾道ミサイルも、偽装難民(凶悪犯や破壊工作員やホームレスや伝染病患者)を大量に台湾に向けてほうり出す「人間爆弾」(棄民政策。かつてソ連は、西独が東独からの亡命者を無条件で受け入れていたことを悪用し、アフリカなどから「棄民」を集めて東独国籍を取らせて西独に大量に「亡命」させたことがある)も使えない(ブッシュ米共和党政権が2001年7月、中国での五輪に反対しない、つまり北京五輪を「やらせる」と決めたのは、台湾の独立を促すための計略であり、べつに米中友好の証しではない)。
1980年のソ連は、モスクワ五輪の開催直前であっても敢えてアフガン侵攻に踏み切ったが、これは参考にならない。当時のソ連は現在の中国と異なり、経済的に西側に解放などされていなかったし、インターネットもなく、外部からの情報を遮断するのは容易だったから、たとえアフガン戦争が悲惨なものになっても、それをソ連国民が知って反戦世論が生まれる心配はないと思っていた。何よりソ連の場合は(結果的には誤算だったが)近代兵器を持たないアフガニスタンに超大国ソ連が負けるわけないと信じていた……が、現在の中国軍幹部は、台湾戦闘機の性能が中国のそれよりはるかに上であることを知っている。
ある意味で、21世紀の台湾海峡は、1980年のアフガンに似ている。ただし、中国軍は「貧乏軍」だから、ソ連軍ではなくアフガンゲリラに相当する。
こうした中国軍のみじめさをよく表しているのが「超限戦」という概念だ。なんと中国軍は対台湾戦争では、ゲリラのごとき「非正規戦」をやるほかないのだ。(敬称略)
【次回に続く。】
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