戦争経済:週刊アカシックレコードmail版010927
発行日時: 2001/9/27■戦争経済:週刊アカシックレコードmail版010927■
工業化社会が終わり、脱工業化社会に生きている先進国の国民には「戦争で建物が破壊されれば復興特需で景気がよくなる」ことはもうありえない。戦争特需景気は過去のものだ。むしろ「軍事技術開発景気」のほうが有望で、20世紀末のIT景気、そして21世紀前半のMD(ミサイル防衛)景気はその典型、と後世の史家は言うだろう。
【ひとこと】(>_<;) "W32/Nimuda"などのコンピュータウイルスが蔓延し、サイバーテロではないかと疑われています。が、悪いのはビンラーディンでなくビル・ゲイツ (^^;) なのです。彼のマイクロソフト社はWindowsで世界のパソコン用OSの9割もの独占的シェアを持ちながらセキュリティを軽視し、シェア維持のための「おまけ」機能の搭載を重視してきたため、Windowsの弱点はマ社より先に悪人に発見され、それを利用したウイルスが「9割」のユーザーをねらって次々に創られてきたのです。「おまけ」を付けず、セキュリティ対策としてソースコードを公開して大勢のボランティアに(悪人より先に)弱点をみつけてもらう方針を取っている他のOS(Linux、UNIX)をねらったウイルスはほとんどないことを考えると、サイバーテロ対策としては、マ社にソースを公開させることが不可欠と思われます。
■戦争と経済〜米中枢同時テロで加速する米軍改革(4)■
(前回の記事
http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/dragon/md.html#03
から続く)
●先進国経済の常識「戦争特需は過去のもの」●
同時テロの翌日、2001年9月12日付の米ワシントンポスト紙は(国家対非国家の非対称戦という意味で)"War"と見出しを掲げ、それを見た日本のビジネスマンのなかには戦時(戦災復興)特需で景気がよくならないか、と考えた人が少なくないようである。筆者はこのテロの1か月前には「第二次朝鮮戦争が起きれば、50年前の朝鮮戦争特需の再現になり(日本の)景気対策になるのではないか」という質問もある人から受けた。
答えはNOだ。
第二次大戦や1950年の(第一次)朝鮮戦争は工業化社会の「対称戦」だった。日・米・西欧主要国はともに工業国であり、この頃は産業別就労人口構成比では、第二次産業(鉱工業、建設業)がいちばん多かったから、戦争で武器、弾薬、兵糧、石油が浪費され、建物や家電製品、備品や工場の生産設備、道路、空港が破壊されれば、それを補い再建するための巨大な「総需要」が発生し、国民の大多数を占める第二次産業就労者とその家庭が潤った。だから戦争は景気対策になりえた。
が、それから約四半世紀で、世界経済の富の大半を生産する日米欧の先進諸国は、そろって脱工業化社会に突入する。鉱工業や建設業の就労者は減り、どこの国でも第三次産業(情報、金融、サービス産業)就労者が全体の3分の2以上に増えた。インテルや富士通のような一見第二次産業に見える企業ですら、ソフトウェア設計や遺伝子情報解析サービス請負のような「サービス産業的な」部門で働く者のほうが、生産ラインなど典型的な第二次産業部門で働く「工員さん」より高い給料を取る時代になり、「工員さん」の仕事は日本より人件費の安い、アジア諸国に移転されていった(80年代以降の自民党政権の最大の失敗は、この産業別就労人口比の変化に気付かず、もはや「少数派」に転落した第二次産業の中の建設業を異様に重視して、そこに公共投資を集中させたことにある。国民の多数派(第三次産業就労者)を無視した景気対策など、元々成功する道理がないのだ)。
第三次産業就労者は、建物や工場、交通インフラが無事な社会で、それらを使って、株取引やビジネスコンサルティング、カルチャーセンターの講義、美容形成手術、ソフトウェアのマーケティングなどを行って所得を得る。こういう働き手のいる世帯が全世帯の3分の2にもなる先進国では、建物や機械の破壊にしかつながらない戦争は、明らかに景気のマイナス要因になる。戦争でインフラが壊されると、第三次産業は仕事ができないからだ(現に、9月11日以降、ウォール街の第三次産業労働者は仕事ができず、アメリカどころか全世界の先進諸国が金融サービスの停滞で困り、日米欧とも株価はテロ前に比べて下がっている)。
現在この種のインフラ破壊で直接的に得をする国があるとすれば、それは先進国ではなく新興工業国、安い人件費で低レベルな工業製品(繊維、セメント、鉄鋼)を量産できる国である。だから、第二次朝鮮戦争が起きた場合、いちばん儲かりそうな国は、中国である(この意味で、現代世界でいちばん好戦的な国は中国なのだ。日本にはもはや戦争を望む理由はない。いまの日本の産業構造こそが「日本軍国主義復活」への最大の抑止力であり、日本の憲法9条はすでに「歯止め」の役割を終えたと言える)。
現代世界の富、カネの流れの大半は、もちろん脱工業化した先進諸国が握っている。だから、90年代の湾岸戦争でも今回のテロでも、株は「売り」だった。
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●軍事「開発」景気はありうる●
が、戦争そのものではなく、戦争に備え(あるいはそれを防ぐ)ための軍事技術開発は、経済にはプラスになる。日米はMD投資で「副産物」のハイテク通信技術を手に入れて儲ければいい。
とくに世界屈指の通信、センサー系技術を持つ(シリコンバレーならぬ)京阪バレー企業、たとえば島津製作所は参加したほうがいい(筆者に言われずとも、この辺の企業は外国人株主比率が異様に高いので、たぶん参加するだろうが)。
軍の予算は一律に無駄ではない。
もちろん兵士の人件費、食費、基地の光熱費、燃料、弾薬などの消耗品への支出は消費的経費であり、福祉予算同様に、エンドユーザーの手元で消えてしまい、景気刺激効果は一過性だ(よく左翼が口にする「軍備を削って福祉にまわせ」というのは実は「消費を削って消費にまわせ」と言っているのと同じで、経済学的にはマンガである)。だから、9月13日(日本時間14日)にブッシュ大統領の提案を受けて議会が可決した、テロ対策、軍事制裁と戦災復興のための緊急予算案の400億ドル(日本円換算で「5兆円の公共事業」に相当)の景気浮揚効果は、そのほとんどが消費的経費に消えるので、長続きはなしない。
たとえば、すでに開発された技術で既存の戦闘機や空母のコピーを軍が量産するのは(産業用ロボットなどの生産設備への投資と違って、まったく新たな富を生まない「消費財」への支出なので)既存の軍需工場の生産ラインが忙しくなり、工員が多めにボーナスをもらって、地元で多めに消費するぐらいしかない(したがって軍需工場のない地域にはメリットがない)。
軍による空母の建造は(個人が乗用車を買うのと同様)純粋な消費であり、経済の循環サイクルにはまったく寄与しない(だから、MD推進をうたった国防総省の内部報告『Asia 2025』がまとめられた99年以降、米軍は新規の空母や戦車を発注していない)。
ところが、MD開発は(個人タクシー業者が「生産財」つまり営業用の車を買うのと同様の)投資であり、めぐりめぐって必ず新たな富、雇用を生み出す。ITバブルがはじけたあと、それに代わって世界先進諸国の経済を牽引する機関車役を「MD特需」が果たす可能性は高い。
ベトナム戦争の頃、アメリカはまだ工業化社会の末期にあり、軍需産業は兵器弾薬の「消費」を促すために戦争を必要とした。いわゆる軍需産業、軍産複合体の「死の商人」イメージはここで確立された。が、いまや彼ら自身が消費より投資のほうが儲かることに気づき、性格を変えつつある。MDは通常兵器、核兵器への消費的支出を減らす「軍縮」とのバーター取引で提案されているので、ベトナム戦争当時の「軍拡」とはまったく違う。
MDの「前任者」のIT革命も元をたどれば、米軍が核戦争時の通信用に開発した技術を起源とする。そこからインターネットが生まれ、それらをうまく活かした企業、たとえばインテルやマイクロソフトが世界的超一流企業に成長し、シリコンバレーの新興企業も繁栄を謳歌した。結局、ITと呼ばれる「軍事技術」開発投資の景気刺激効果は全米どころか全世界を10年も潤したではないか。
今度は、MDや「無人兵器技術」の開発投資で精密誘導、リモートセンシング技術が発達し、島津製作所やキーエンスが超一流企業になり、京阪バレーが栄える番だ。
ああ、これでやっと不況の出口が見えた想いだ。
2001年6月28日、ラムズフェルド米国防長官は、2001会計年度(01年10月-02年9月)の国防予算案修正案を発表した。その額は(テロ事件後の緊急「補正」予算を除いて)約3300億ドル(40兆円)で、その大半はもちろん「まだ」消費的経費だが、MD開発への投資は前年比6割増の83億ドル(1兆円)である。もし、今後空母や戦車の軍縮が進み、それに伴って人件費も削減できれば、この開発投資は2倍、3倍と増やしていける。これは、西側先進ハイテク諸国全体に対する究極の景気浮揚策であって、日本のゼネコン向けの公共事業よりはるかに有益だ。
もちろん、筆者がMDに賛成な理由は「景気対策」などという一時的なものではない。筆者はMDを拙著『ゲノムの方舟』で取り上げたような、文明のあり方、地球環境生態系問題とかかわった奥の深いものととらえている。MDの(技術的)実現性について「証明」するのもさして難しくない。これらはいずれ別の機会に述べる。
●軍事技術に「罪」はあるか●
ところで、日本が「軍事技術」であるMDの開発に参加することに道義的な抵抗を覚える人々(またしても「抵抗勢力」)は、少なくあるまい。が、仏教の世界の話にこんなのがあるそうだ。
僧侶「あなたは殺生(生き物を殺すこと)をしていますか」
庶民「いいえ、してません」
僧侶「ウソです。他人に生き物を殺させて、それを食べているのだから、殺生しているのと同じことです」
日本には「軍事技術と民生技術は違う」とか「軍事技術に頼るのは悪いことだ」などと言う人が少なくないようだ。が、それは、間接的に軍事技術の恩恵を受けながら、その「罪」だけは直接手を下す人(軍人、軍需産業)になすりつけて、自分だけ「いい子になる」という、ただの自己満足ではないのか。
第一、二次大戦では戦闘用のパラシュートからナイロンが生まれ、兵糧から冷凍食品が生まれた。かつては自衛隊のFSX(次期支援戦闘機)開発計画からも「軽くて丈夫な」機体材料アルミサッシが誕生したのだから、トステムの雨戸や「イナバの物置」も軍事技術である。プレステ2の部品だって軍事転用は可能だ……軍事に使えない民生「専用」技術があるとすれば、それは信頼性の低い三流技術だろう。
いま「インターネットで」この記事を読んでいるあなたも軍事技術を利用している。軍事技術が悪ならもちろんあなたも罪人で、筆者は「大罪人」だ。
(^^;)
さあ、日本国民よ、これから徹底的に軍事技術を極め、共産党から公明党まで、みんなにべとべとに手を汚させてやろうではないか。そうすれば、この道義的問題はすぐに「解決」する。
いや、もう解決しているのに、往生際の悪い人が「未解決だ」と言い張っているだけかもしれない。
(敬称略)(2001年)
【10月20日に「テロ第二波」が計画されている、との報道がありますが、これについては、できれば次回に検討してみたいと思います。】
拙著『ゲノムの方舟』(徳間書店)の内容や購入方法については
http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/genome/cntnt.html#toyokeizai
をご覧ください。
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