ブレードランナー症候群:週刊アカシックレコードmail版010813
発行日時: 2001/8/13■ブレードランナー症候群:週刊アカシックレコードmail版010813■
A級戦犯が靖国神社に合祀されたのは1978年、それを日本のマスコミがを報じたのは79年、中国の「人民日報」が報じたのは80年である。が、このとき中国政府はなんの非難もせず「容認」した。しかるに、1985年、中国共産党政府は突如非難を始めた。中国政府や日本の左翼勢力が、道義の立場から終始一貫してA級戦犯合祀を否定していたと思い込むのは、もっとも典型的な「ブレードランナー症候群」と言えよう。
【おわび】m(_ _)m 技術上の障害により、昨日12日にテスト原稿が配信されてしまいました。誠に申し訳ございませんでした。お手数ですが、そちらを削除し、こちらをお読み頂ければ幸いに存じます。
■ブレードランナー症候群〜参拝か選挙か(4)■
(前回の記事
http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/yasukn.html#trigger
から続く)
●ブレードランナー症候群
いまから予言しておくが、首相の靖国神社参拝は一度、あるいは2年以上連続で強行してしまえば、それ以降は中国、韓国もあきらめて抗議をしなくなることは間違いない。中韓両国との末永い「友好」を考えるなら、この問題を未来永劫外交案件にしないために、小泉首相は参拝を強行したほうがいい。
とくに中国の場合、日本政府への靖国神社参拝中止要求が「本気でない」と思わせるにたる、十分な根拠がある。筆者は、本件の事実関係を客観的に把握し、かつ靖国参拝賛成派のみならず反対派の方々に御納得頂けるよう、複数の情報源によって確認した。
筆者が参照したのは、比較的「右寄り」と思われる政治学者、小島朋之・慶大教授の見解(産経新聞2001年8月9日付朝刊12面「靖国参拝で『熟慮』すべき条件は何か」)と、「左寄り」と思われるジャーナリスト、田中宇(たなか・さかい)の記事(「 米中関係と靖国問題」
http://tanakanews.com/b0807USJP.htm
)、それに、かつて「当事者」であった中曽根康弘元首相の見解(雑誌『正論』2001年9月号p.100「私が靖国神社公式参拝を断念した理由」)の3つである。
これらによると、そもそもA級戦犯が靖国神社に合祀されたのは1978年であり、それを日本のマスコミがを報じて一般に広く知られるようになったのは79年、中国共産党機関紙「人民日報」が報道したのは80年である。が、このとき中・韓両国政府はそれについてなんの非難もしなかったので(とくに、中国共産党の胡耀邦総書記が人民日報の批判的な報道を否定して「日中関係は良好」と主張したために)首相や閣僚の靖国参拝は、A級戦犯合祀公表後6年間にわたって堂々と行われた。が、1985年8月15日の中曽根首相(当時)の参拝の、さらに翌月の9月になって、中国共産党・政府は突如参拝反対を主張しはじめたのである。
A級戦犯は(死後はともかく)生前には大罪を犯したのだから罪人である。百歩譲って、日本はアメリカの陰謀にはめられて仕方なく破滅的な第二次大戦への参戦に駆り出された被害者だと仮定しても、A級戦犯たちには、日本が被害者、敗戦国になるのを防げなかった責任は当然ある。
もちろん、被害は日本の交戦国、つまり中国などにも出たのだから、中国が侵略戦争の被害者の立場から、加害者の中心人物であるA級戦犯を(死後であっても)肯定的に扱うことは罪だと主張していたのなら、(国によって歴史観や死生観が違っても)それなりに理解できる。
ところが、1980年から85年まで、中国政府も、日本のマスコミも革新政党も、靖国神社におけるA級戦犯合祀を知りながら、それを日本国首相が参拝という形で肯定的に扱うことを容認していた。つまり、本件に関しては、85年までは、日本政府も中国政府も日本のマスコミも左翼勢力も「同罪」なのである。しかるに、中国政府も日本の一部マスコミも左翼勢力も、自分たちがかつて靖国神社のA級戦犯合祀を容認していた、という「罪」を隠蔽している。これは歴史の歪曲ではないか。
こんにち、首相の靖国神社参拝に反対を唱える人々の大半はこの「容認」の史実を知らず、中国や左翼勢力が終始一貫して「本気で」A級戦犯を否定していたと思い込んでいる。これは、もっとも典型的な「ブレードランナー症候群」
http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/blade.html
であろう。
したがって、中国の「反靖国」要求が、政治的外交的駆け引きの道具にすぎないことは、明白なのである。
前掲のWeb記事で、田中宇は「中国の靖国批判は対米牽制」の側面があると指摘している。他方、中曽根は、親日派で民主改革派であった胡耀邦総書記を追いつめる目的で、党長老の?小平や保守派の李鵬首相が持ち出してきたとの説を取る。中曽根は親交のあった胡耀邦に同情して86年から公式参拝をやめたが、その甲斐なく、胡耀邦は87年に失脚。89年4月、胡耀邦は中国の改革が経済一辺倒で民主的でないことを怒って演説したあと憤死した。彼の死を悼む北京市民は……改革派の趙紫陽総書記の扇動もあって……天安門広場に集まり、その数は日を追って増え、それは民主化要求運動に発展し、全国に広がる。
それを武力で弾圧した「天安門事件」の首謀者が、?小平と李鵬だった。この意味において、日本の靖国反対派は間接的に、「天安門弾圧派」の支持者であると言える。
胡耀邦、趙紫陽を失脚させて政権を掌握した「天安門弾圧派」が選んだ江沢民・後継総書記とその政権が、繰り返し靖国に参拝するなと日本に要求するのは、単に85〜86年の経験から「日本は脅せば屈する国」と見ているからにすぎない。日本国政府と国民をそういう卑屈な状態にしておくのは、外交交渉上非常に有利であり、日本の領海や排他的経済水域(FEZ)を海軍艦船、海洋調査船や漁船によって不法に侵犯するといったこともやりやすくなる。
したがって、中国や韓国が、日本は脅しても屈しない、と思えば、あきらめて二度とこの問題を持ち出さなくなるはずなのだ。彼らだって無意味なことにエネルギーを浪費するほど愚かではない。
たとえば、2001年4月中旬、台湾の李登輝前総統の訪日ビザ発給をめぐって日本政府内が割れたとき、中国政府は「総統引退後も台湾独立派のリーダーである李登輝の来日を許せば、日中関係に重大な影響がある」と当初は主張していた。そこで、親中国派の橋本龍太郎は、自民党総裁選の選挙運動中、総裁候補者としてこの問題についての見解を問われた際、日中友好の立場を唱え李登輝訪日に否定的な言動をした。が、彼の意に反して李登輝が訪日してしまったあと、結局大したことは起きなかった。日中間の貿易や投資が減ったわけではなく、大使償還などの外交的抗議行動もなかった。彼らは日本を「脅しても屈しない国」と見直し、矛を収めたのである。
(仮に、今回の中国政府の「靖国反対」が本気だったとして、いったい中国に何ができるのだろう。核攻撃だろうか? それとも経済制裁だろうか? 経済制裁をするというのなら一度やらせてみたらいい。貿易や投資を制限すれば、日本が受ける被害より中国が受ける被害のほうが圧倒的に大きいので、「13億の巨大市場」の実力が虚構にすぎないことが、すぐに露見するであろう。
逆に日本は、靖国問題で中国の要求を受け入れれば、彼らはまた「ある日突然」別の罪状を面白半分にほじくり出してきて「日本は侵略戦争の反省が足りない」などと要求するに決まっている。これだと、日本は永遠に「反省」し続けることになるが、その原因が日本側にないのは自明である。)
ところが、そのあと外相に就任した田中真紀子が「李登輝は今後は入国させない」などと中国の唐家セン外相にオベンチャラを言ったため、ふたたび中国は「日本はやはり脅せば屈するぞ」と思い直し、今回の靖国参拝批判になったのである。
これは、外交という、駆け引きのゲームであるから、靖国神社に参拝することの道義的是非などはタテマエにすぎず、中・韓両国にとってもホンネではどうでもいいことなのである。
たとえば、1982年の教科書検定誤報事件以来しばらくは、中国は日本の過去の侵略戦争の歴史をほじくりだして、それで日本国民に贖罪意識を起こさせて経済援助(円借款)を獲得するという戦略をとって、多額の「外資」を得てきた。が、90年代にはいって日本の左翼勢力が退潮になり、かつ日本の財政悪化もあって円借款が得にくいと判断すると、中国政府はこの路線を放棄。90年代後半から2001年2月、朝日新聞が教科書検定問題を検定終了前にリークして大騒ぎを起こして中国政府が「反発せざるえない」状況に追い込まれるまで、中国政府は「過去の侵略戦争」についてはあまり言及せず、日本国内の左翼を切り捨て、保守政財界に(キックバックで?)利益誘導をして円借款を引き出す方向に戦略を転換していた。
(したがって、朝日新聞の2001年の教科書報道は、実は中国政府にとっても「迷惑」だったのである。案の定、このあと日本の保守勢力内には中国への反感が強まり、日本政府は対中国経済援助の大幅削減を検討しはじめた。中国政府にしてみれば「朝日よ、いい加減にしてくれ」と言いたいところだろう。そもそも、朝日新聞が問題視する教科書の版元、扶桑社の営業マンは教科書を売った経験が皆無なのだから、出版界の常識から見て、ほおっておけばその教科書採択のシェアはぜいぜい数パーセントで終わったはずなのだ。それを朝日新聞などが問題視して報道しすぎたため、逆に「宣伝効果」が生まれて扶桑社の教科書が書店で売り出されてベストセラーになる、というほとんどマンガみたいな
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●あとで「吠え面かく」のはだれか
靖国神社参拝を道徳的に悪いことと確信する人々に忠告する。あなたがたは自分が正しいと信ずるなら、中国・韓国政府の「尻馬」に乗らずに、自力でやったほうがいい。両国政府はべつに道徳的な立場ではなく、もともと「欲得ずく」で動いているのだから、外交上金銭上メリットがない判断すれば、すぐに「いち抜けた」と転向してしまう。とくに韓国の反日世論などは、日本政府が適当にうっちゃっておけば、ワールドカップ開催の数か月前には「自動的に」消滅するので、一切無視し、応援をあてにしないほうがいい。彼らの援軍を期待していると、いずれ「オフサイド・トラップ」にかかることになろう。
筆者が、憲法上の疑義を感じながらも、靖国神社参拝にはっきり反対しない理由は、まさにこれで、「あとで吠え面かく」のがいやだからだ。もし今後、かつて79〜85年のように日本の首相が毎年靖国神社に参拝しつづければ、あと3年もすれば、中韓両国とも、靖国問題で事実上「ハイ、どうぞ」と言うのは、いまから目に見えている。「日本軍国主義の侵略の被害者」が容認するなら、靖国に反対することの(裁判用語でいう)「訴えの利益」は、すくなくとも外国人にはなくなってしまう。一部の日本国民だけが「外国の被害者の代弁者」を演じようとしても「雇い主」がいないので、意味がない。
(そうして、中国や韓国の外圧がなくなったうえで、日本国民だけで、A級戦犯の合祀/分祀の是非や憲法の政教分離原則を、冷静に議論すればよい。現在の外圧がかかった状況では、たとえA級戦犯の遺族や、国から独立した宗教法人である靖国神社に「合祀取り下げ」や分祀の意志があったとしても、落ち着いて考えられる状況ではない。「外圧」はかえってこの問題の解決を、無意味に長引かせると知るべきである。)
したがって、小泉の参拝強行後、参拝慎重論、反対論を唱えた政治家たち、とくに橋本龍太郎や橋本派の立場は(たとえ遺族会を含めて各種団体の組織票が離れなかったとしても)相当にみじめなものになろう。中国政府が本気で要求していなかったことにまで応じようとしていたとわかったとき、有権者や橋本派の若手議員が橋本派幹部をどう見るか、は読者の皆様にはもうおわかりだろう。
●連立組み替えか、衆議院解散か
もし、小泉の参拝強行で世論調査の支持率が下がるようなら、それで小泉政権は終わりである。が、逆に、支持率が大きく下がらなかったら、(永田町の人々は無節操だから、おそらく)「参拝賛成派」が自民党内に急増する(たとえば田中真紀子が親中国派をやめて「くらがえ」するか、あるいは閣外に去り、代わりに舛添要一が外相になる!)といった局面も予想される。
そうなったら、小泉は、公明党、保守党を連立からはずし、弱体化した橋本派を「制圧」するか、追放するかして、代わりに民主党の一部と自由党を連立政権に取り込めばいいのである。
その結果、もしも衆参いずれかで過半数に達せず、政権運営がまともにできない事態になったら、衆議院の解散・総選挙に打って出ればいい(だから、小泉は衆参同日選挙をせずに、解散権を温存したのだ)。橋本派が、遺族会の支持を失い、また、公明党と密着しすぎたがゆえに創価学会以外の宗教団体の組織票も失い、道路族や郵政族の集票マシンのみに頼って総選挙を戦わざるをえない、という姿は醜態そのもので、(英米の一部のリベラルなメディアは別として)すくなくとも日本国内では、左右いずれの学者、記者からも支持されまい。
となると、橋本派の若手衆議院議員は(4月の総裁選のときそうであったように)次々に離反するだろうし、場合によっては無派閥になるか、小泉に接近するであろう。
橋本派(平成研究会)の前身は旧竹下派(経世会)であり、さらにそのルーツをさかのぼると旧田中派(木曜倶楽部)である。かつて、この旧田中派に所属していた、鳩山由紀夫、羽田孜、小沢一郎、細川護熙らは自民党におけるいわゆる「田中支配」の族議員政治に愛想をつかし、改革を標榜して離党し、新党さきがけ、新生党、民主党、日本新党、新進党、自由党などを作って抵抗し、一時期は政権を奪って自民党を野党に追い落とすことにすら成功した。が、彼らの政権も政党も永くは続かず、離合集散を繰り返し、現在も彼らの率いる政党には政権を取る展望が見えない。つまり、自民党を飛び出して自民党の組織を敵にまわすと結局選挙で勝てず、自民党を外から変えることはできない……という結論に小泉は到達したのではあるまいか。
小泉はいま、旧田中派(橋本派)の制圧に乗り出しているのだ。これは成功すれば、あの「豪腕」小沢一郎すらなしえなかった快挙となる。筆者はこれをめざす小泉の行動を支持したい。
(が、田中真紀子外相は、小泉の構造改革と無関係なので、支持しない。構造改革とは、つまり田中角栄が育て上げた、道路族、郵政族、建設族らの利権マシンを破壊することだが、田中真紀子は、そうした「父の遺産」の清算にかかわる行革担当相などのポストを小泉から提示されたのに断り、それらと無関係な外務大臣というポストに逃げている。真紀子が主張する外務官僚の汚職追及はいずれやる必要はあるが、いまそれをしなかったからといって「日本が経済大国から二流国に転落する」ほどの真剣な危険はない。筆者は、安全保障上、汚職官僚の追放よりむしろ、中国船の違法調査活動に甘い「親中国派官僚」、すなわちチャイナスクールの代表選手である槙田邦彦アジア大洋州局長の追放のほうが重要だと考えるが、真紀子はそれをやる気はまったくない)
(敬称略)
「田中真紀子外相を更迭しても小泉内閣を支持しつづける」
という意見を小泉内閣(メルマガ編集長)に送りたい方は
mailto:s-abe@cybertron.co.jp
にメールを。
--佐々木敏(+「週刊アカシックレコード」編集部/サポートスタッフ)
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