参拝か選挙か(3):週刊アカシックレコードmail版010806
発行日時: 2001/8/6■参拝か選挙か(3):週刊アカシックレコードmail版010806■
小泉の「参拝強行」により、橋本派の大票田である日本遺族会の支持は小泉に移り、橋本元首相は政治生命の危機を迎える。また、宗教団体を母体とする公明党も連立政権離脱を強いられかねない。おそらく、小泉の「参拝」には米共和党政権の支持があるに相違ない。
【お知らせ】(^o^)/ 映画ファンの皆様、8月下旬以降には『チャーリーズ・エンジェル』や常盤貴子、『パトリオット』を政治学的に考察した「美人大国(日本)と巨大市場(中国)」等を予定しておりますので、しばらくお待ち下さいませ。
■参拝か選挙か(3)■
(前回の記事
http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/yasukn.html#fumie
から続く)
●政界再編の起爆剤
親中国派の政治家らが、中国が期待してもいないことにまで「誠実に」応えようとするのは日本の国益にとっては一見嘆かわしいことのようだが、逆に利点もある。つまり、彼らが中国への「過剰忠誠」のあまり歴史問題から外交、防衛まで幅広く政策をリンクさせてくれたので、政界再編が容易になったからである。もしも永田町に、筆者のような「靖国:△、MD:○」の政治家が大勢いれば、首相が靖国に参拝したぐらいでは何も起きない。が、(小泉にとっては)幸いなことに「靖国:×」はほとんど自動的に「MD:×」であり、MDは米現政権の防衛政策の中核だから、結局「靖国:×」は自動的に対米協調、日米防衛協力強化にも「×」になる。すくなくとも、小泉自身は以上の点すべてに「○」であり、自民党橋本派の重鎮、野中広務元幹事長はそのすべてに「×」である。ならば、両者が同じ政党にいる理由はもはやなかろう。
もしこのうえ、経済政策までリンクしてくれるなら、政界再編はもっと容易になる。なぜなら小泉が靖国参拝を予定している8月とは、小泉内閣の来年度予算の概算要求が山場を迎える時期であり、その内容が小泉の言う「構造改革優先」なのか、それとも「景気対策優先」なのかが、そろそろはっきりしてくる時期だからである。
●「日中逆転」を画策する「リベラルな」人々
まさか、いかに「親中国派」の政治家や記者でも、予算編成や経済政策にまで、中国の国益を反映させ、「連勝複式」の範囲を広げることはあるまい……。
と思ったら大間違いである。中国は直接日本の経済政策に口を出しはしないし、影響力を行使できるほどの経済力も市場規模も(いまのところは)ない。が、中国は上記の方法で手なずけた欧米の学者や記者を使って、日本に政策提言をすることができる。
たとえば、米民主党にはMD反対(慎重)派が多く、この民主党の政策を支持するいわゆる「リベラルな」メディアの代表選手はワシントンポスト紙である。このポスト紙は最近、2001年4月に起きた米中軍用機接触事故では中国側の肩を持つ意見を載せた。また、この7月13日には、日本の司法制度や歴史認識問題で、まるで日本のほうが中国より邪悪といわんばかりの、偏見に満ちた事実無根の社説「やっかいな日本」を掲載し、日本の一部メディア(産経新聞7月16日付朝刊2面「主張」)と駐米日本大使館の批判を招き、21日には異例の早さで日本大使館からの反論を載せざるをえない事態になった(産経新聞2001年7月26日付朝刊3面「世界は日本をどう伝えているか」)。
さらに恐ろしいのは、ポスト紙グループの所有する雑誌など他のメディアや、同根のリベラルな英国のメディアに、(筆者が昔著作を読んで感銘を受けたような)知日派文化人を登場させ、日本に向かってしきりに「反構造改革」を説かせているのだ。これは何を意味するのか。
(出版業界のインサイダー情報では、欧米のアジア専門家は最初中国語を学び、中国の専門家たらんとするが、中国に言論の自由がなく統計資料や公文書すら自由に入手できないので、研究をあきらめ、途中で日本研究に転向した人が多いという。著書『ジャパン・アズ・ナンバーワン』で知られるエズラ・ボーゲルもそういう理由で生まれた知日派文化人の1人である。おそらく、ある時点で中国はこの問題に気付き、一部のリベラルなアジア研究者に、中国政府が所有する資料を閲覧できる「特権」を与えて中国研究の「本分」に立ち戻らせ、「特権」と引き換えに「親中反日」的言論を要求したのではあるまいか)
米国防総省の報告書『Asia 2025』は、5つのシナリオを立ててアジアの未来をシミュレーションしたもので、クリントン米民主党政権にあって唯一共和党員の閣僚だったコーエン前国防長官のもと、1999年7月にひそかに作成された。そのなかの1つのシナリオによると(あくまで想定であり、必ずそうなるという予測ではないとことわったうえではあるが)「ロシアの衰退(人口減少)と日本の怠慢」により、近い将来アジアで中国の影響力が著しく増大し、東南アジアから中央アジアに至る広範な地域が中国の勢力圏と化す恐れがあると指摘する(ただし、ロシアの人口減少は事実であり、とくに極東シベリアの人口減少が著しく、13億の過剰人口を抱え、現在すでに中露国境地帯に大量の不法移民を送り込んでいる中国に将来「乗っ取られる」危険がある)。
ここで言う「日本の怠慢」とは、日本が不良債権処理をずるずると遅らせて経済力を落とし、「二流国」に転落し、また経済小国に成り下がったことを理由に必要な防衛力や有事法制の整備をせず、アメリカの同盟パートナーたりえなくなることを指している。
つまり、リベラルな「仮面親日派」の言うことを真に受けて、不良債権処理を放り出して「当面の景気対策」にうつつをぬかしてバラマキ公共事業などに耽っていると、日本は二流国になってしまう、というのが米国防総省や共和党(軍と国防総省の高官には共和党員が多い)の分析なのだ(そして、彼らは、あとで述べるように、それでは困ると言っている。この意味で、彼らは日本の二流国転落を防いでくれる「親日派」と言える)。
2001年3月、パウエル国務長官(共和党員で退役軍人)は、日本の経済力の衰退(不良債権問題)は日米同盟の根幹にかかわると発言した。そして、6月30日、小泉首相が訪米して、キャンプデービッド山荘でブッシュ大統領(共和党員)と会談して「個人的な信頼関係」を築き、小泉構造改革への「全面的支持」を取り付けた。
一方で、リベラルな米国メディアや英国メディアはしきりに「日本通」を動員して、「日本の不況の原因は構造改革ではないから、そんなことはしなくていい」などと説いていた。『ニューズウィーク日本版』2001年6月13日号p.40の、リチャード・ヴェルナー「小泉の敵は『円の支配者』」や、同誌2001年6月27日号p.11の、スティーブン・ボーゲルの、小泉の郵政民営化論に反対した「民営化だけが改革でない」、英『フィナンシャルタイムズ』紙2001年5月14日付の、ロナルド・P・ドーアの「日本経済の真の問題は『過少需要』であるから構造改革より景気対策が重要」などという主張が、その典型であろう。
こうなると、間違いなく「連勝複式」の範囲は経済政策にまで拡大する。筆者は「靖国:×」「MD:×」の政治家や記者、学者の説く経済政策は、簡単には信用できないと思っている。すくなくとも、アメリカが「リベラルな」民主党のクリントン政権であった間、アメリカは一貫して(上記の「仮面親日派」の主張どおりの)「景気対策」を求める外圧を日本にかけ続け、この間日本の政権中枢を支配していた自民党橋本派の野中広務と族議員たちはそれを大義名分にして、景気対策と称して公共事業のバラマキを続けたが、まったく景気は回復せず、かえって不良債権問題が深刻化しただけだった。これは、事実である。
(日本でもアメリカでも「親中国派」は中国を未来の大国と主張する際、中国が分裂しない、という前提で意見を述べる。が、中国には深刻な、地域間、民族間対立があり、仮に分裂は回避できても、分裂の衝動を抑えるために、軍政などの非常手段を取らざるをえなくなる可能性は高く、その場合は相当に不安定な国になる。そのうえ、一時期過激な「1人っ子政策」を追求した結果、人口の高齢化が進んだため、まもなく経済成長率は鈍化しはじめるはずである。
この点を前掲『Asia 2025』は、日本と比較して「日本は豊かになってから高齢化したが、中国は豊かになる前に高齢化する」と述べ、「中国の限界」を指摘している。このような人口統計学上の事実を踏まえるなら、日本の国益でなく、アメリカの国益という観点から見ても、アメリカのリベラル派の「親中反日」路線は間違いと言える)
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●真紀子と公明党と橋本派
こういう事情があるので、筆者は敢えて、小泉首相には、たとえ憲法上外交上問題があろうとも、8月15日に靖国神社参拝を「強行」してもらいたい、と考えるに至った。これにより、日本の政治家、ジャーナリスト、学者、アメリカの政治家、文化人のうち、だれが親中国派(あるいは「仮面親日派」)で、だれがそうでないのか、自動的に判別できるはずだからだ。
すでに、田中真紀子外相が事実上「辞任覚悟で」小泉首相の参拝をやめさせるべく説得すると表明した(2001年7月26日のテレビ報道)ことで明らかなように、親中国派あぶり出し、追い出しへの効果は出始めている。不幸にして
(>_<;)田中は8月3日には、矛を収め「反対しない」と表明したため、外相更迭は免れたものの、もはや長くはその地位に留まれないことは自明であろう。
中国との関係からなんとか参拝を思いとどまってほしいと願う橋本派や公明党を尻目に、繰り返し「参拝」を公言する首相の態度は、そもそも両者を困らせるためにやっているのではないか、と筆者は思っている。とくに、公明党は支持母体が宗教団体なので、憲法の政教分離原則には敏感であり、「参拝を許して連立を維持する」のは名分が立たず、連立解消を視野に入れざるをえなくなるのではあるまいか(
http://gendai.net/oyaji/contents.asp?c=021&id=134
に、類似の分析がある)。
が、公明党よりもっと確実に苦境に陥るのは、橋本派だ。自民党を伝統的に支持してきた組織票の提供者として、日本医師会、特定郵便局長会、(創価学会以外の)宗教団体などと並んで強力なものに日本遺族会がある。これは、第二次大戦に従軍した旧軍人軍属とその遺族らの団体で、旧軍人年金(恩給)の支給や首相の靖国神社参拝問題で自民党に圧力をかけてきた強力な「集票マシン」である。そして、橋本派(平成研究会、旧経世会)の橋本龍太郎元首相はその会長を務めたことがあり、この会と橋本派のつながりは強い。
橋本は遺族会の総意を受けて、96年7月、首相として靖国神社に参拝したが、その後中国政府から首相の参拝に抗議が示されると、元遺族会会長でありながら腰が引け、翌97年には参拝を取りやめた。(事実関係は、
http://www.yomiuri.co.jp/minijiten/22960731.htm
http://www.sankei.co.jp/databox/paper/9708/paper/0807/editorial.html
http://www.sankei.co.jp/pr/seiron/koukoku/1997/9710/omo-2.html
で確認できる)
ところが、今年2001年、小泉首相は中国に何度参拝はやめろと言われても屈せず、参拝を強行するという。となると、参拝が実現すれば、遺族会の組織票はなだれを打って橋本派を離れ、小泉に移るはずである。すくなくとも、小泉の参拝実現後は、橋本が遺族会会長として遺族の前で演説することはもう不可能だ。
このことで橋本派が受ける打撃は、単に1つの支持団体の組織票を失うことに留まらない。自民党員を中心とした「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」があることで明らかなように、もともと自民党議員の多数派は、遺族会と同じ考えを持っている。そういう党で、「橋本(龍太郎)は遺族会会長まで務めたのに外圧で参拝を中止し、小泉は外圧に屈せず参拝した」となると、橋本は小泉より「格下」と見られ、信念を貫くべきリーダーあるいは政治家としての資質の差が浮き彫りになり、橋本の「弱腰」イメージは半永久的に確定してしまう。これは、小渕恵三前首相が死去し、額賀福志郎がKSDスキャンダルで経済財政担当相の辞任に追い込まれて以来、めぼしいリーダーを失った橋本派(旧経世会)にとって、最後の切り札の喪失を意味する。
●橋本派が自民党から追い出される!?
だからこそ、小泉は参拝を強行するのである。
どうせ何もせず手をこまぬいていれば、橋本派の「小泉改革」への抵抗が始まるのは必至だ。予算の概算要求策定に際しては「景気対策」を口実に妨害をしかけ、政治的に小泉を追いつめてくる局面も予想される。
だから、小泉は8月15日の靖国参拝にこだわるのだ。参院選における自民党の大勝を受けて、自民党内の世論は「小泉続投」でかたまったが、元来彼の総裁任期は9月までであり、本来なら9月下旬の総裁選でふたたび橋本派と戦う必要があったから、その意味でも小泉は、橋本派の大票田である日本遺族会の支持を奪い取るべく、靖国参拝にこだわっていたのだ。
(敬称略)
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mailto:s-abe@cybertron.co.jp
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--佐々木敏(+「週刊アカシックレコード」編集部/サポートスタッフ)
追伸1:
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