>> 記事トピックス一覧 
トップ > ニュース&情報 > 国際情勢 > 週刊アカシックレコード

『パール・ハーバー』と中国:週刊アカシックレコードmail版010716

発行日時: 2001/7/16

■『パール・ハーバー』と中国(1):週刊アカシックレコードmail版010716■
97年の江沢民訪米を、ハリウッドのチベット・シンパによる「反中国」映画の洪水によって台無しにされた中国政府は、ディズニーランドの中国進出への許認可権をタテにディズニーを恫喝。ついに「親中反日映画」を作らせることに成功した。
●突如出現「反日映画」
最近(2001年6月)の産経新聞の投書欄に「(今夏最大の話題作と言われる)米国製反日映画『パール・ハーバー』への対抗策として、日本人は広島原爆投下の映画を作るべし」という趣旨の投書が載った。確かに、60年も前のことを唐突にハリウッドから持ち出されて、世界中で悪者呼ばわりされそうになったのだから、筆者も日本人として、気持ちはわかる。 
が、このような意見は2つの意味で間違っている。 

まず、そのような「反米映画」は世界最大の映画市場であるアメリカで観客の不評を買うことが目に見えているので、欧米の大資本が投資することはありえず、したがって『パール…』のような世界規模の宣伝配給は不可能で、結局日本映画界が細々と製作して細々と公開する「蟷螂の斧」にしかならない(米国世論になんの影響も与えない)ことがあげられる。 

次に、「敵」を間違えている。この映画はけっして米国内の反日世論の反映などではありえない。これは、中国によるハリウッド(ディズニー)への「親中反日映画を作れ」という恫喝の産物である疑いが濃厚だからである。 

●アクション映画の「しろうと」に論評の資格なし
『パール…』に関する昨今の各メディアの論評で筆者が納得できないのは、ふだんハリウッドの娯楽大作、とくにこの映画の監督マイケル・ベイのアクション映画などまったく見たこともない「しろうと」どもが、いきなり映画通ぶって映画批評に参加し、不正確な情報に基づき「ブーム」「風潮」などと意味不明の言葉を用いて日米関係を論じていることである。 

たとえば『正論』平成13年8月号、森本多喜子・米エルカミーノ大学教授の「映画『パール・ハーバー』の深層を読む」は、p.152で、なんの関係もないスピルバーグ監督の『プライベート・ライアン』と並べて両作品の企画意図を推測しているが、彼女によると、それは、いまのハリウッドでは第二次大戦を描くのが「ブーム」だから、なんだそうである。

いったい、このような表面的な推測の、どこが「深層」なのか。 筆者のように米国製娯楽アクション映画を何百本も見てきた「専門家」にとって、これは看過できない事態だ。

この映画の製作者のジェリー・ブラッカイマーと監督のマイケル・ベイは『アルマゲドン』を作ったとき、米国内では批評家にはまったく評価されず、欧州では観客の嘲笑を買った(ドイツでは、ラストシーンで観客が泣くべきところで爆笑になった、という「伝説」がある)。にもかかわらず、彼らがヒットメーカーとしての名声を保ち、借金を抱えずに済んだ理由は、日本で「泣ける映画」としてリピーター続出の大ヒットとなったからだ(世界中で監督の意図どおり泣いてくれたのは、ほとんど日本の観客だけだった)。この映画の全世界での興行収入の4割は、日本からのものであった(産経新聞2001年6月27〜28日付朝刊3面「世界は日本をどう伝えているか」)。 

これほど日本のファンのありがたみを知っている人々がなぜ、このような反日映画を作らざるをえなかったか…………その理由はどう考えても1つしかない。それは、中国政府とディズニーの関係である。 

●悪者中国vs.金持ち日本
1990年代、アメリカ映画界は増大する製作費をまかなうには、もはや国内の興行収入だけでは無理と判断し、製作前から海外市場、とくに世界第二の巨大映画市場である日本の観客の反応を十分に計算し、マーケティングをするようになった。80年代の最大のヒット作『E.T.』の場合、海外での売り上げは20%にすぎなかった(海外市場は単なる「おまけ」だった)が、90年代最高の『タイタニック』では海外売り上げは50%に達し、そのうちの40%(世界全体の20%)は日本での売り上げだった。これは事前の、周到なマーケティングの成果である。 

こういう背景があるので、最近のアメリカ映画の中には、日本にかかわるセリフや情報が好意的な形で頻繁に出てくるようになった。90年代のハリウッドではセリフの中に「日本」という言葉が出たら、次に何か興味深いことが起きる合図であると言われたほどで、『シークレット・サービス』のウォルフガング・ペターゼン監督や『ジャッキー・ブラウン』のクエンティン・タランティーノ監督、『トゥルーマン・ショー』のピーター・ウィアー監督は明らかにそういう意図で「日本」を使っている。 

これに対して、中国の描き方は悲惨で、ほとんど常に無視、軽視、敵視の対象だった。その原因の1つは、ハリウッドに大勢いる「チベット・サポーター」の中国非難キャンペーンである。俳優のリチャード・ギア、ハリソン・フォード、ジュリア・ロバーツ、メグ・ライアン、シャロン・ストーン、監督のスティーブン・スピルバーグ、マーティン・スコセッシらは作品やロビー活動、議会活動を通じて中国の人権問題、とくにチベット住民への弾圧を訴え続けていた(『SAPIO』2001年4月11日号、p.17)。なかでも、『セブン・イヤーズ・イン・チベット』はブラッド・ピットが主演だったのでヒットしたし、チベット仏教徒のリチャード・ギア(中国政府から中国への入国を禁止されている俳優)の主演した『北京のふたり』(Red Corner)も、中国の裁判のいい加減さを告発したものとして、かなり話題になった(産経新聞Web版97年10月25日。
http://www.sankei.co.jp/mov/review/97b/1025red/
尚、人権問題がなくとも、中国は外国映画の輸入を厳しく規制していたため、当時のハリウッドにとって魅力的な市場ではなかったから、中国を好意的に扱う必要はとくになく、その意味からも日本と比べれば中国は、明らかに否定的な存在だった。たとえば、中国のアクション・スター、ジェット・リーは事実上のハリウッド・デビュー作『リーサル・ウェポン4』で、プロデューサーから悪役、それも主人公の白人と黒人の絆を強めるための「共通の敵」としての悪役を演じることを強いられ、泣いて抵抗したが聞き入れられなかったという)。 

●ダライ・ラマとディズニーランド
こういう90年代のハリウッドの、「親日反中」世論の中、ついに中国が絶対に容認できない映画をディズニーが製作してしまう。それは、マーティン・スコセッシが監督した、チベットの指導者ダライ・ラマの伝記映画『クンドゥン』だった。 

この映画の内容を公開前に知った中国政府は、これを公開するならディズニーランド(DL)の中国(香港)進出は認めない、とディズニーに圧力をかけた。 

(この問題は、当時、米公共放送PBSの『レーラー・ニュースアワー』でも大きく取り上げられた) 

もちろん、そこで圧力に屈したら、ディズニーは言論の自由を放棄した「裏切り者」と軽蔑され、世界中の映画人から孤立しかねない。だから、この映画は結局そのまま中国を除く全世界で公開された。 

しかも、これらの「反中映画」は、あたかも江沢民・中国国家主席(兼共産党主席)の訪米に合わせたかのように、97年に集中的に公開されたうえ、世界中の亡命チベット人組織はこれらの映画を「ワンセット」にして宣伝し、おもに欧米で反中国キャンペーンにさかんに利用した。怒った中国政府は、DLどころかディズニー全体を中国全土から締め出すと脅迫する。 

ディズニーは、ハリウッドの他の映画会社と異なり、思想や言論の自由のない中国でも公開できそうなお子様向け作品を多数抱えているうえ、中国がWTO(世界貿易機構)に加盟すれば映画輸入もかなり開放されると期待していたので、この中国政府の反発を未来の巨大市場の喪失と受け止めた。

そこで、ディズニーは、かつての米中外交の開拓者で中国に太いパイプを持つ、キッシンジャー元国務長官を対中関係コンサルタントとして迎えて、関係修復をはかった(産經新聞Web版98年6月25日。
http://www.sankei.co.jp/mov/review/98/mulan/
)。 

(以下次号に続く)
(本来、次号は来週のはずですが、創刊号と第二号の内容が今週半ば、産経新聞夕刊のコラムで紹介されることになったので、本誌mail版を確実に「本邦初」にするために、急遽繰り上げて明日、7月17日夕方に配信します)
-----------------------------------------------------------------------------------------
●配給会社に抗議メールを
ところで、ディズニーグループ(傘下の配給会社ブエナ・ビスタ)が反日映画『パール・ハーバー』を日本でラブロマンスと偽って公開したことに抗議の意志を表明されたい方は、抗議メールを

info@movies.co.jp

宛に礼儀正しくお願いしたい。 
これは、言論封殺ではない。アメリカ国内ではさまざまなマイノリティーグループが、自分たちの尊厳を傷付けるメディアの言論を是正するために、しょっちゅうやっていることである。映画会社などメディア側にはもちろん言論の自由はあるが、一般市民の側にもそれに反対を表明する自由があるし、ディズニーも抗議されることには慣れているので、こわがることはない。 

但し、絶対に違法なこと、たとえばブエナ・ビスタ社やディズニー社のWebページへの無断リンクなどはすべきでない。 
(敬称略) 

 -- 佐々木 敏(+「週刊アカシックレコード」編集部/サポートスタッフ)

追伸1:
本メールマガジンは筆者(佐々木敏)のサポートスタッフにより運営されており、本号は創刊第一号です。創刊のご挨拶は 
http://plaza12.mbn.or.jp/~SatoshiSasaki/admin/regist.html#greeting 
でお読み頂けます。

追伸2:
本メールマガジンの送信を停止するには、お手数ですが、このメールの最後にあるmelma.comのアドレスをクリックし、そこから「退会」フォームでお手続き下さい。
melma.comのシステム上、誠に申し訳ございませんが、本メールに返信されても「退会」手続きは成立しません。
また、本メールにご意見等を投書されたい方のうち、筆者の個人アドレスをご存じの方はそちらにお送り下さい。
ご存知でない方は本メールに返信する形で投書を下されば、スタッフ(編集部)によるセキュリティ等のチェックを経て、数日後に筆者に転送されます。

Copyright (C) 2001 by Satoshi Sasaki
All rights reserved. 不許複製、禁無断転載 

 
このメルマガの読者になる
規約 
>> メルマ!の会報誌もお届けします
ブックマーク: はてなブックマークに追加del.icio.usに追加Buzzurlにブックマークニフティクリップに追加ライブドアクリップに追加Yahoo!ブックマークに登録My Yahoo!に追加Add to GoogleRSS

このメルマガを読んでいる人はこんなメルマガも読んでいます

Japan on the Globe 国際派日本人養成講座
日本に元気と良識を。歴史・文化・政治・外交など、多方面の教養を毎週一話完結型でお届けします。3万4千部突破!
JOG Wing 国際派日本人のための情報ファイル
政治・経済・外交・社会・文化などの分野において「元気な日本」を作るためのオピニオン誌です。
宮崎正弘の国際ニュース・早読み
 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析
頂門の一針
急所をおさえながら長閑(のどか)な気分になれる電子雑誌。扱う物は政治、経済、社会、放送、出版、医療それに時々はお叱りを受けること必定のネタも。
甦れ美しい日本
日本再生のための政治・経済・文化などの発展・再構築を目的とし、メールマガジンの配信を行う


この記事へのコメント


コメントを書く
コメントはありません。

おすすめキャンペーン

三井住友銀行カードローン
金利 年6.0%〜12.0%。最高500万円までご融資。

最短30分審査、即日カード発行可能。

お申込みはこちら⇒

はじめようメルマガ生活
メルマガを読むには
メルマガを出すには
約64000誌から検索

メルマガデータ

  • メルマガID : 42082
  • 創刊日 : 2001-07-06
  • 最新号 : 2008-06-30
  • 発行周期 : 週刊
  • バックナンバー: 全て公開
  • 発行者サイト: あり
  • 読んでる人 : 20297人
  • コメント数 : 72
  • Score! : 95点
  • >> 月間ランキング

発行者プロフィール

ペンネーム :

  • 小説家。00年『ゲノムの方舟』(徳間書店)でデビューし朝日新聞など17紙誌が絶賛。ほかに産経抄が紹介した『龍の仮面』、NHK-BS『週刊ブックレビュー』で笑賛された『中途採用捜査官@ネット上の密室』など。

このメルマガの読者になる

規約に同意する



このメルマガの最近の記事


このメルマガの最近のコメント


このメルマガのバックナンバー


注目情報


新着記事トピックス