ブラジル・南米の政治経済ニュース。(アナ・ログ翻訳事務所提供)
- 最新号:2008-09-04
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Brazil Today
発行日: 2005/2/25━━■ P R ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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Brazil Today 2005 / 02 / 28 (193号)
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目次:
■金利高、税金高、レアル高の三高主義は政府の基本方針
■地理統計院の資料を発表前に予備検閲
■大サンパウロ圏は人口2千万で世界第5位
■世界貿易機間、鶏肉に関してブラジルに勝利
■米国、貿易機間で敗訴にかかわらず、ダンピング継続
■電力庁、ライト電力救済に料金値上げ承認
■センプトーシバ、中南米向け輸出品種を拡大
■大豆サビ枯れ病、12州へ拡散
■Basf、従業員へ農薬工場を売却
■血を血で洗う土地抗争、殺人事件と暴力農園侵入
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為替(レアル・円)、02月22日現在 R$1=\40.11
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■金利高、税金高、レアル高の三高主義は政府の基本方針
高まる中銀高金利政策への不満
中銀の高金利政策への不満の声は高まる一方である。本年度インフレ抑制目標
5.1%達成のために中銀基本金利の引き上げが必要であるという意見のエコノ
ミストは少数派にて、物価指数を高める最大要因は政府管理価格であり、需要
増加とは無関係とする者が大多数を占める。アルバレスペンチアード基金Faap
のビエレンバッハ理事は「政府は患者に間違った投薬を行っており、インフレ
の問題は需要ではない。債権者側は一律に国家経済を考え、保守主義過剰の政
策を推し進めようとしているが、現在のブラジルのインフレは政府管理価格上
昇、すなわち、サービス提供会社との価格調整契約に基づくもの、従って、イ
ンフレ抑制目標は5.1%ではなく、5.8%から6%へ改めるべきである」と意
見を述べた。
中銀の高金利政策の理由
高金利政策を採用している中銀の意見によると、インフレは通貨基金との合意
である2005年度抑制目標5.1%を超過する。これを防止するためには、1)需
要が高まれば、企業側は価格を引き上げるようとする。2)金利が上昇すれば
消費者は購入を差し控える。3)需要冷却の可能性から企業は投資計画を延期
する。4)雇用水準が低下、失業者が増加、労働者の収入が縮小する。5)公
共債務の原価が上昇、政府の支出が増加し、政府投資が削減される。6)政府
が支出を削減しない場合、公共財政は不均衡となり、悪性インフレが生ずる。
7)従って、政府は租税徴収率を高めねばならない。
引き下げ論者はインフレと金利は無関係
金利引下げ論者側は、現在のブラジルのインフレは需要インフレでなく、政府
管理価格の圧力によるもの、経済は3.5%を上回る成長を示す潜在能力を有し
ているが、高金利政策によって抑制されており、低金利政策への転換により雇
用と労働者の収入は増加する。すなわち、1)金利引下げにより、生産部門の企
業は投資を刺激される。2)失業率は低下し、労働者収入は上昇する。3)雇
用の増加と消費者金融利子負担の軽減から購買力が拡大する。4)需要の増大
が乗数的に作用し、生産部門の雇用を高める。5)公共債務の金融支出、政府
の一般経費支出の何れも減少する。
また、高金利によって企業側は実物に対する投資よりも国債への投資が安全、
有利となり、生産部門への投資誘因は低下する弊害を生ずる。他の問題はレア
ル高、現在はドル相場がR$2.60程度にあり、貿易収支悪化を憂慮されている
が、この一原因は高金利に基づく投機資本の流入にあると指摘される。2月14
日のドル相場はR$2.58、2002年6月以来の安値、輸入と外債には有利である
が、輸出競争力は低下せざるを得ない。
中銀、予想通り高金利、0.5%上げ18.75%
中銀通貨政策委員会Copomは市場の予想通り、基本金利を0.50%引き上げ、年
18.75%とした。インフレ差し引き後の実質金利は12.3%、名目金利ではベネ
ズエラの18.4%、実質金利ではトルコの7.5%を引き離し、名実のいずれにお
いても世界最高の中銀金利を維持することに成功、連邦内債は1月に164億レ
アルの増加を見て、8,267億レアルに達した。ただし「高金利にもかかわら
ず」というよりも中銀高金利とは無関係にインフレは進行、12ヶ月間に7.41%
となった。サンパウロ州工業連盟Fiespのスカッフ会長は「通貨政策委員会の
無感覚には如何ともし難い。高金利と暫定令第232号によって雇用を増加させ
ようとする実業界の努力は空しいものとなり、経済停滞は下半期にも継続す
る」と語った。
景気抑制ほど重要な経済政策なしと超正統経済派
国民の生活向上には無関心であるが、インフレの幻影と戦うために如何に景気
を抑制するかに腐心する政府にとって高金利、高税金、レアル高の三高主義の
中で最も重要な柱は高金利。これによって国際金融市場を徘徊する短期投機資
金を吸収し、レアル高政策を進行させることも可能、高金利による国債金融費
高騰を補填するために更に国民から税金を徴収する理由にも困らなくなる。労
働党政権というのは奇妙な政府で、景気を向上させ、労働者を主とする大衆の
生活を改善する経済基本政策を採用せずに、高金利によって大衆と企業を苦し
め、売上または付加価値に対する間接税の上昇によってインフレ亢進の手助け
を進め、ドル価値下落に対しても何らの手段も講ぜずに放置し、輸出を抑え、
輸入を増加して、折角、改善された貿易収支さえも悪化させようと努力。その
代り、地理統計院IBGEの統計資料の発表に検閲を加え、情報操作を図ろうとす
る。
経済政策局長「ドル安は輸出に影響しない」
リスボア経済政策局長はリオの商業協会のセミナーにおいて「ドル価値が下落
すれば輸出が止まるというが、輸出とドル価格とは関係がない。その証拠にド
ルがR$3.30となれば輸出に影響するといい、次ぎにR$3.00に成れば止まるとい
いながら、昨年は337億ドルの貿易収支の黒字を残した」と述べた。
局長が説明した政府の為替に対する措置は、1)昨年12月以来、手持ち外貨準
備を補強するため、中銀が市場から購入したドルは75億ドルに達する。2)国
庫も外債償却の目的でドルを買い集めており、昨年12月に22億ドル、本年6月
までに更に10億ドルを購入する予定である。3)昨年9月から本年2月までの
期間に中銀基本金利は年16%から18.75%まで引き上げられた。この上昇は高
金利による利得を狙う投資家を誘致し、ドル相場の低下に貢献した。4)2
月、中銀はスワップ契約を売りに出した。スワップによる先物契約は現物契約
と逆の取引であるから、相場を中和させる効果がある。
「ドルR$3.20が適切」とコンサルタント
GRCビゾンコンサルタントの調査によれば、ブラジルのレアルは世界で最も割
高になった4種の通貨の一つであり、少なくとも21.5%の平価切下げが必要と
いう。割高通貨として列挙された通貨はロシアのルーブル、ベネズエラのボリ
ーバル、トルコのリラ、そしてブラジルのレアル。コンサルタントの見積りで
は、ルーブルは54.52%、ボリーバルは44.2%、トルコリラは39.7%の割高。
「レアルとドルとの交換比率はR$2.60程度が適切、現在のままで継続すれば、
輸出市場を失うであろう」との意見であった。なお、サンパウロ州工業連盟
Fiespのバルボーザ通商理事会長は「1月の輸出は前年同期に対して28.3%増
であるが、この契約を占めた当時はドルがR$3.00の相場であり、現在の相場の
影響は5月に現れる」と語った。
三高主義の効果で工業成長鈍化
政府の景気抑制政策、高金利、高税金、レアル高の三高主義の効果は工業面に
現れ、段ボール生産トン数は昨年1月に15.8万トン、3月18.0万トンへ上昇
し、7月は最高の18.9万トン、11月には18.1万トンを維持していたが、12月に
低落を開始、1月には16.2万トンと昨年同期と大差ない水準に落ち込んだ。国
内販売は数量単位で昨年1月に対し12月は66%増、1月は0.7%減。2月前半
の小売り販売、Usecheque問い合わせ件数による現金売り指数は前年同期に対し
3.3%減、SCPC問い合わせ件数による信用販売指数は1.5%減。ただし、サン
パウロ州流通税ICMS1月徴収高は昨年同期より4.9%高という。
増税反対運動に1111団体が参加
ルーラ政府の暫定令第232号による推定利益算定基準の変更に基づく増税に反
対して、弁護士、医師、技師、教師などが参加する1,111団体が立ち上がり、
サンパウロにおいて暫定令第232号廃棄、個人所得税10%の調整不足を政府に
対し追求する大会を開催した。直接の槍玉に挙げられた暫定令は弁護士、会計
士、エコノミスト、建築設計士、医師、歯科医師、広告業者、情報技術者など
サービス業の税金査定に関して、現行法は純益率が収入の32%、これに対し所
得税15%、対純益納付金CSLL9%、合計24%を徴収していたのを、純益率40%
と改正、25%の増税を図った政府の措置に対してであるが、その背後には留ま
る処を知らぬ政府の増税政策、世界第一の高金利に対する反感が存在してい
る。
下院議長選挙、野党のカバルカンチ氏の勝利
2月15日、下院において議長選挙第二次投票が行われ、野党のセベリノ・カバ
ルカンチ氏(PP−PE)が与党のグリンアルガ氏(PT−SP)を300票対195票で
破り、議長に当選した。第一次投票では207票を獲得したグリンアルガ氏は第
二次投票で票を確保できず、ビルジリオ・ギマリャンエス氏(PT−MG)の117
票も野党に奪われる始末であった。敗北の原因は政府の三高主義、金利高、税
金高、レアル高に対し、票数の減少を心配する議員の心境の変化によるもの、
この敗北により労働党は下院運営委員会の役席はPP2名、PFL、PMDB、PTB、
PSDB、PLとなり、労働党PTは総ての運営委員会の席を失い、PMDBからは連立に
関して脅かされる状態に陥った。
サンパウロ州、小麦粉とパンの流通税を免除
連邦からは聞こえない「減税、免税」という響きの良い声が聞こえるのはサン
パウロ州である。2月11日、サンパウロ州のアルクミン州知事は「小麦粉およ
びフランスパンに対する流通税ICMS7%を免税にする」と発表。ただし、これ
は州議会の承認を必要とする。個の免税は、昨年末に州知事が提唱した『減税
の春』運動の始まり、サンパウロ州は生産過程に対する間接税徴税強化には反
対、特に連邦政府の意図している流通税々率の全国統一を嫌い、この理念を表
明するために、この数年間に減税措置を実施している。
この方針に基づき12%からゼロになったのは牛肉、豚肉、牛乳、コーヒー、砂
糖、にんにく、チーズ、バターなど、12%から7%に引き下げられたのは米、
マンジョカ粉、フェイジョン、食塩、干し肉、腸詰類。7%に下げられた後に
今回は免税となった小麦粉、フランスパンがある。また、昨年に実施された流
通税減税は衣料品、皮革製品、靴、建築材料、生活必需品など。
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■地理統計院の資料を発表前に予備検閲
政府は地理統計院IBGEの資料を発表前に検閲すると決定した。大統領府のマシ
ャー臨時企画次官により署名された内規によれば、統計院から発表される資料
は少なくとも48時間前に企画省へ送付され、検閲を受けねばならないという。
次官は予備検閲を否定しており、内規は省内の機構上の相違から生ずる歪を最
低に留めるため、一度、篩を通し、整合性を保つための措置が誤って伝えられ
たものと弁解している。
しかし、統計院発表の『飢餓ゼロ』調査に対する大統領の批判、あるいは、新
聞記者登録、映画テレビ監督庁設置の件など、現政府の全体主義的体質を感じ
させている矢先に、臨時企画次官から「地理統計院の資料は48時間前に企画相
の承認を要する」との規定が出されたならば、誰もが統計数字を弄り、操作す
るのではないかと感じるのは当然である。弄られた数字ではないが、財政収支
に金融費を除外した第一次収支の黒字を大きく表し、高金利に基づく金融費を
控除した総合収支赤字(これを名目収支という)を目立たなくする手法だけで
も政府統計に関する歪を感じているのが、検閲済みの資料となれば、操作は更
に容易となり、やがて、国民は往年日本の大本営発表ニュースのような結構
な統計資料のみを手にする事態となるであろう。
サンパウロ州のアルクミン州知事は「統計数字発表の前に検閲する理由が判ら
ない。政府の目的は何なのか。地理統計院の資料は今までの処、最も信頼でき
る資料である」と語り、与党労働党の中にも、検閲という事態を生ずるのを憂
慮する声が挙がっており、ジェノイノ党首は「直ちに企画省内規を取消しすべ
し」と述べた。だが、未だに政府は内規を改正していない。
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■大サンパウロ圏は人口2千万で世界第5位
国連の調査によれば、2005年の世界最大の都市は東京で3,530万人、第二位が
メキシコで1,920万人、第三から第五位までは極めて小差で、ニューヨーク
1,850万人。ボンベイ1,830万人、サンパウロ1,830万人の順。これが10年後
の2015年には東京3,620万人、ボンベイ2,260万人、ニューデリー2,090万
人、メキシコ2,060万人、サンパウロ2,000万人になると予想する。
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■世界貿易機間、鶏肉に関してブラジルに勝利
世界貿易機間WTOは2月17日「ヨーロッパ連合はブラジルからの鶏肉輸出に対
して年間3億ドルの損害を与えた」と裁定した。94年の規定では連合は鶏肉輸
入に15.4%の輸入税を課していたが、98年にこれを訂正、トン当り1,024ユー
ロ、75%に相当する輸入税を課し、ブラジルの鶏肉輸出へ損害を与えた。ただ
し、機間からの正式の裁定書は未公開のため、詳細は不明である。
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■米国、貿易機間で敗訴にかかわらず、ダンピング継続
ブラジルは世界貿易機間WTOにおいて「アメリカの綿輸出はダンピングであ
る」との裁定を得たが、アメリカは裁定に従わず、依然として補助金を得て安
売りを続けている。すなわち、ブッシェル当りのアメリカの綿生産原価と輸出
価格を比較すれば、99年に(生産原価US$0.836、輸出価格US$0.523)は2000年
(0.910、0.574)、01年(0.834、0.396)、02年(0.862、0.370)、03
年(0.838、0.562)と推移、その後は資料が発表されていない。しかし、ア
メリカの綿生産量はその後も低下しておらず、今までと同様の状態が継続して
いる。
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■電力庁、ライト電力救済に料金値上げ承認
電力庁Aneelは2月2日、ライト電力の6.13%料金特別引き上げを承認した。
影響を受けるのはリオ市および首都圏の31市の住民340万家族である。特別値
上げの理由は、ライト社の財務状況が悪化、負債を弁済できる状態に無く、こ
のまま推移すれば、通常通りに給電できなくなるという。昨年11月には大口消
費者には12.46%を値上げしたが、住宅には0.6%調整に留められた。
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■センプトーシバ、中南米向け輸出品種を拡大
センプトーシバの情報機器部門は昨年不成功に終わった輸出10万台の目標を達
成するため、中南米向け輸出商品の多角化を図る。今後はパソコンと共に
DVD、オーディオなど製品の幅を広める予定という。
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■大豆サビ枯れ病、12州へ拡散
アジアから伝播した大豆のサビ枯れ病は、南伯、中西伯、東南伯のミナス、サ
ンパウロ、東北伯のバイア、マラニョンと12州へ波及、特に大豆生産の主力で
あるパラナ、ゴヤス、南北マットグロッソへ拡散、1月初めの163市町村から
現在では401市町村にて発生している。
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■Basf、従業員へ農薬工場を売却
化学工業のBasfはリオ州レゼンデの農薬工場の売却先を約2年間、探していた
が、見当たらず、180人の従業員へ売却することに決定した。新会社の名称は
ソル社SoluCia。従業員は勤続保障基金FGTSおよび開発銀行からの融資によっ
て会社購入資金を捻出する。同社は昨年、大豆サビ枯れ病に対する農薬生産設
備に130万ドルの投資を行っており、これを元手に再建する方針である。
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■血を血で洗う土地抗争、殺人事件と暴力農園侵入
パラー州南部にて土地紛争から尼僧殺人事件
アマゾン河下流地帯と呼ばれるマナウス以東、河口から1,700キロの間で南岸
に流れ込む大支流は東からトカンチンス河、シングー河、タパジョス河、マデ
イラ河の4河がある。アマゾン本流の南方、200キロから300キロにトランス
アマゾニカと呼ばれる街道、国道第230号が走っている。
この国道沿い、シングー河から東へ150キロほどの地点にアナプという人口
7,000人余りの小さな町があり、アメリカ人の尼僧、ドロティ・スタング女史
(73才)が2月12日、午前7時半、会議出席に向かう途中、市街地から53キロ
の地点でピストルの弾を近距離から6発打ち込まれ、殺された。女史は『大地
の牧師教会』に属しており、これはカトリック教会でも『土地無し運動』MST
に近い農地改革支持派の片腕といわれる一派である。
しかし、事件はこれだけでなく、同日夜、同地のビダ氏所有の農場に働くレア
ル氏が散弾銃で射撃され、16発が命中、死亡した。彼はドロティ女史殺害の有
力容疑者であった。なお、警察は農場主のビダ氏を含む4人を容疑者として手
配したが、いずれも行方を晦ましている。更に第三の殺人事件が発生、アナプ
市から28キロの地点でこの付近に住むリマ氏が馬で行くところを射殺された。
ただし、ビダ氏とドロティ女史との関係は不明、無関係とも思われる。また、
ドロティ女史殺害は殺人請負人によるもの、価格は5万レアル、すでに国外へ
逃亡したという噂が流れている。
一年前に保護要請を依頼した尼僧
殺されたドロティ・スタング尼僧は事件の約一年前、2004年5月に国会の土地
問題調査委員会に呼ばれ、種々の脅迫を受けていると供述し、保護を要請する
書類を提出していたことが判明した。バストス法務相は「すべての要請を受諾
し、措置を講じた」と語った。ドロティ女史が狙い、土地無し農民を入植させ
ようとする土地は政府のものという噂もあり、一時は入植院が植民地造成に使
用しようとしたが、地主側からも所有権の主張がある土地、しかし、土地無し
側の土地では無いのは確実、面積は6000ヘクタール程度である。
連邦政府はパラー州へ2000人の軍隊を派遣、連邦および州の警察に協力し調査
を手伝い、治安を回復すると決定した。大統領令によって北伯の紛争地、アク
レ州の西部32万ヘクタール、アマゾナス州の南部バラタツファリ80万ヘクター
ル、ロライマ州のアナウアー地区26万ヘクタール、パラー州西南部国道163号
沿いの340万ヘクタール、現在紛争中のパラー州中央部のパルド山44万ヘクタ
ール、メイオ地区337万ヘクタールの総計800万ヘクタールへの出入禁止をし
た。
日本全国の2倍半の土地が不法登記
グリロという言葉がある。本来の意味はコオロギであるが、地権のイカサマ登
記で得た土地を意味する。99年12月に、ジュングマン農地改革相(当時)が
「3065件の不法取得と思われる土地の入植院Incra登記を取り消す」と発表し
たとの記事があった。土地の総面積は9,360万ヘクタール、国土の11%、日本
の面積の2倍半の土地、大きなのはマットグロッソ2,278万ヘクタール、パラ
ー州2,082万ヘクタール、アマゾーナス1,390万ヘクタールである。取消しに
意義ある者は120日以内に正規の土地所有者である旨を証明すること、証明無
き場合は連邦または州の所有地となる。土地の不正取得は主として公共土地か
ら私有地への移転に偽造土地証明書を使用して行われる。
その一年後、土地詐取の大物はファルビ・サライバ・デ・ファリアという人物
が逮捕された。彼は主としてプルース川流域に1,000万ヘクタールを超える土
地を有しており「非難に対しては裁判書で弁明する」と述べた。また、農地改
革相はフェレイラ・ダ・シルバ現裁判所副長官、前アマゾーナス州裁判監視官
を「5ヵ年間、麻薬業者が飛行場として使用した土地に対し、偽造書類とい知
りながら、正式の地検を認めた」と告発した。
土地登記所、裁判所も加わった土地詐欺
また、アマゾーナス州司法府は土地詐欺に関連した容疑で17土地登録所に介
入、所長5人を解任。農地改革相は「不法土地所有の900人がアマゾーナス州
の土地50万平方キロを占有」と述べ、コスタ上級判事も「連邦所有地3.4平方
キロの不法登記を30日以内に取り返させる。また、今後は100平方キロ以上の
土地登記に関しては検察庁・入植院・州上級裁判所の承認を要することに変更
した」と宣言。これらの事情は現在もほとんど改善されていないと思われる。
何故なら、今回の事件に関連して、不法土地使用についてジュングマン元農地
改革相は「不正登記土地面積は国土の約12%」と発言している。
アナプ付近の土地を写した農産物研究公社Embrapa提供の人工衛星写真が新聞
に掲載されている。街道に沿って南北に沢山の黄色の縦線が見えるのは有用材
木の所在確認の調査に業者が密林中に切り開いた調査小道と思われる。この縦
線部分を切り開き、有用材を取り出した後は山焼き、炭酸ガスを放出し、次ぎ
は牧場と変わるであろうと予想される。
『土地無し』占拠、ユーカリ植林を台無し
これに対抗するのは『土地無し』運動、その一例としてバイアのパルプ工場付
属のユーカリ植林地で発生した事件である。ユーカリを材料とするパルプ製造
では世界第一の規模を誇るアラクルスパルプはスウェーデン/フィンランドの
ストラエンソとの合弁会社、ベラセルパルプが建設したバイア南部のエウナポ
リス工場の開所式を1月22日にルーラ大統領を招待した。新工場への投資は12
億ドル、パルプ生産能力は年間90万トンである。開所式には更に新しい工場建
設を発表する予定、新計画への投資は10億ドル程度、生産能力は100万トン、
5州を候補に選び、立地条件を検討中である。昨年度のアラクルスの販売量は
245億トン、34億レアル、前年度より11%増、純利益は10.7億レアル、前年よ
り23%増の好成績を残した。
この工場開所式にルーラ大統領が招待された。だが、大統領を待ち受けていた
のは『土地無し』MSTのリーダー、アスンソン州会議員(PT)であり、この
『土地無し』850家族3,500人はパルプ会社所有の25ヘクタールのユーカリ植
林へ侵入、ユーカリ苗を引き抜き、トウモロコシ、フェイジョンを植付けた連
中であった。大統領はMSTの赤い帽子を頭に載せ「農村労働者とは昔からのア
ミーゴ関係、MSTはブラジル社会運動の中で最も重要なものである」と語っ
た。開所式の話は全く新聞に出なかった処から察するに恐らく『土地無し』の
ために、会社側は式典を中止せざるを得なかったのではないかと思われる。
殺人容疑者逮捕、暴力対暴力の闘争
尼僧殺人事件の容疑者4人中、3人が逮捕された。フォイオと呼ばれる男は
「尼僧を殺したのは自分であり、依頼者は地主のビダ、請負料金は5万レア
ル、エドワルドが助手を務め、彼も射撃した」と語った。タトはフォイオをビ
ダに紹介した仲介者、他に逮捕されたエドワルドは殺人助手である。殺人依頼
者ビダは未逮捕である。
処がフォイオは請け負った未遂となった他の殺人があった。殺される筈であっ
たのはシッキーニョという連邦警察官である。シッキーニョはアナプ農村労働
者組合長、労働党々員、ドロティ尼僧の友人と称しており、600家族入植計画
もそのような土地を購入する資金が存在する筈はなく、狙ったのはビダの所有
する土地の暴力的な不法占拠であった。
『土地無し』には重火器こそないが、拳銃、猟銃、山刀、棒の先に付ける曲が
った刃のフォイセは原始的な生活を営む開拓者の必需武器である。土地無しの
農園侵入事件は2000年236件、01年158件、02年103件と下火となり、殺人事
件も10件、14件、20件と低下していたが、ルーラ政権になって以来は急増、侵
入事件は03年222件、04年327件、殺人事件は42件、16件となった。
殺人事件の反応、根本的解決は皆無
パラーの尼僧殺人事件に反応して、ルーラ大統領は5ヶ所に環境保全地帯を設
定する政令を公布、出入りを禁止し、特に事件発生地のアナプに軍隊を派遣す
る措置を採った。しかし、800万ヘクタールを占める環境保全地帯にしても、
アマゾンの極めて一部であり、予算と要員は不充分、しかも、一時的なものに
すぎない。アマゾン密林の65%は国有地、残りの35%が州・市の地方公共団
体、あるいは個人の所有地といわれるが、グリレイロと呼ばれ土地不法所有
者、禁止されている材木伐採業者、ポッセイロと呼ばれる無断居住者、『土地
無し』グループなどが入り乱れ、その極一部に環境院Ibama、農地改革院
Incraなどの管理する土地が点在する状態である。
アナプでは亡くなったドロティ尼僧の遺徳を偲び、約70人が7日目のミサに参
列した。ブラジリアでは尼僧の属した『大地の牧師教会』を始め、『土地無し
運動』MST、全国農村労働者連盟Contagが集合、尼僧を偲ぶと同時に、政府に
土地押収、入植地造成の促進を促す決議を行い、『赤い4月』、すなわち、4
月には農園侵入を含む大々的な土地寄越せ運動を行うと宣言した。また、パラ
ー州の東部、ベレン/ブラジリア街道沿い、ベレンから150キロ程のところに
あるマンイ・ド・リオでは約300家族、1,200人の『土地無し』がドロティ尼
僧を追悼し農園に侵入。知らせを聞いて軍警が到着し、数人を逮捕した。
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著者(現地ブラジルで執筆): 大岩國男
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