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 フランス地方都市に在住の筆者が、普段の生活を通して疑問に思ったことを書いていきます。三面記事から社会面的な内容が中心。ワイン、ファッション、観光だけでは満たされない読者の皆さまにお薦めです。




フランスの片隅から 2004-05-12 「欧州連合:25ヶ国体制、キプロスの事情など」

発行日: 2004/5/12

フランスの片隅から                 2004-05-12
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INDEX
 今月の話題「欧州連合:25ヶ国体制、キプロスの事情など」
  ● EUの拡大
  ● EU加盟の条件
  ● アキ・コミュノテール
  ● EU拡大後の意志決定方法
  ● EU拡大に対する不安
  ● ユーロ
  ● LMD制
  ● キプロス
  ● ニースらしい話 
 サイト紹介「駐日欧州委員会代表部」ほか
 地方選挙関連「ルペンの被選挙権」
 あとがき

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皆さん、こんにちは。Olivierです。

このところ、忘れた頃に届くメールになっています。すみません。
購読を続けてくださっている皆様に感謝いたします。

EUの10ヶ国新規加盟もとっくに済んでしまったことで、今更という感もある
ので、復習がてら読んでみてください。毎度ながら非常に長いので、少しずつ
どうぞ。

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今月の話題「欧州連合:25ヶ国体制、キプロスの事情など」
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5月1日、欧州連合(EU)に10ヶ国が新規加盟して、計25ヶ国となりました。


● EUの拡大 ●

1995年以来、EUの加盟国は15ヶ国でした。
  フランス、ドイツ、イタリア、ベルギー、ルクセンブルグ、オランダ、
  イギリス、アイルランド、デンマーク、ギリシャ、スペイン、ポルトガ
ル、
  オーストリア、フィンランド、スウェーデン

2004年5月1日、次の10ヶ国が加盟(計25ヶ国)。
  ポーランド、エストニア、ハンガリー、チェコ、スロヴァキア、
  スロヴェニア、リトアニア、ラトヴィア、キプロス、マルタ
  これらの国においては、EU加盟の是非を問う国民投票が行われ、いずれも
  賛成多数の結果でした。

2004年6月、25ヶ国体制最初の欧州議会議員選挙が実施されます。
  具体的な日程は国によって異なります。フランスでは6月13日。

2007年、ブルガリアとルーマニアの2ヶ国が加盟予定(計27ヶ国)
  これらの国が加盟基準(下記参照)を満たした場合に加盟が予定されてい
  ます。

この他、トルコとクロアチアがEUへの加盟候補国として名乗りを挙げています
が、具体的なことはまだ決まっていません。


● EU加盟の条件 ●

マーストリヒト条約(1993年発効)では、ヨーロッパにある自由主義、民主主
義、基本的人権を尊重する法治国家が、EUへの加盟を申請できると定めていま
す。

これをさらに具体化したのが「コペンハーゲン基準」です。1993年のコペン
ハーゲン欧州理事会で採択されました。

1.民主主義を保証する諸制度を備えた国家であること。
2.法の支配、人権、少数民族の尊重と保護が保証されていること。
3.安定した市場経済であること。
4.欧州統一市場において、市場競争に耐えられるだけの経済力を持っている
こと。
5.共通政策、経済通貨同盟など、加盟国として果たすべき義務を負うこと。

今回の新規加盟国は上記基準を満たすよう努力し、EUは各国のインフラ整備や
経済発展のための財政支援を行ってきました。

トルコはこれらの基準の中でも、特に基本的人権の尊重と少数民族の保護が十
分でないとして、まだ加盟交渉が具体化していません。2004年末の時点でこの
2点が改善されたと認められれば、交渉が開始されることになっています。

クロアチアも2003年2月にEU加盟を正式に希望しました。欧州委員会にて書類
等の審査が行われている最中で、この国が上記基準を満たしていると判断され
れば、加盟交渉が始まる予定です。


● アキ・コミュノテール ●

新規加盟国が最初に果たす義務は、「アキ・コミュノテール」を受け入れるこ
とです。「アキ・コミュノテール」とは「共同体の獲得物」を意味するフラン
ス語で、日本語でもこのままカタカナ表記で用いられるようです。EUがこれま
でに築いてきた価値観、権利、法体系などすべてを指す概念ですが、具体的に
は現在EU域内で効力のある条約の内容やEU法だと考えればよいでしょう。

アキ・コミュノテールを書類にすると、A4サイズで8万ページを超えると言わ
れています。これを適用するため、新規加盟国は行政、司法制度を改善し、国
境の警備を強化することが求められています。特に国境警備は、EU域内の人の
自由な往来を保証するために必要な施策です。

今年加盟した10ヶ国との加盟交渉は1998年に始まりました。が、加盟希望国に
対するEUの支援はそれ以前から行われてきました。特に1989年に始まった東欧
各国への支援プログラムは、市場経済への移行と複数政党制に基づく民主主義
の確立を目指して導入されたものです。


● EU拡大後の意志決定方法 ●

EUの意志決定機関は欧州理事会です。これは、全加盟国の代表者(大統領や首
相)で構成されています。また、教育に関しては教育相、農業に関しては農業
相といった具合に、議題に応じて代表者ではなく担当大臣の会合(閣僚理事
会)で決定がなされる場合もあります。決定は、その重要度によって、多数決
でなされる場合と、全加盟国の賛成が必要な場合があります。通常は、72%の
賛成票による決定です。

さて、この欧州評議会においては、全加盟国が等しく1票を持っているわけで
はありません。各国は人口に応じて票の重みが異なります。また、欧州議会の
議員数にも人口による差があります。

欧州評議会における1票の重みと欧州議会の議員数を多い順に並べると次の通
りです。

ドイツ     29 99人
フランス    29 78人
イタリア    29 78人
イギリス    29 78人
スペイン    27 54人
ポーランド   27 54人
オランダ    13 27人
ベルギー    12 24人
ギリシャ    12 24人
チェコ     12 24人
ハンガリー   12 24人
ポルトガル   12 24人
スエーデン   10 19人
オーストリア  10 18人
デンマーク   7 14人
スロヴァキア  7 14人
フィンランド  7 14人
アイルランド  7 13人
リトアニア   7 13人
ラトヴィア   4 9人
スロヴェニア  4 7人
キプロス    4 6人
エストニア   4 6人
ルクセンブルグ 4 6人
マルタ     3 5人
合計      321 732人

この数字が適正なものかどうかという議論は、常にあります。


● EU拡大に対する不安 ●

1951年に6ヶ国のヨーロッパ石炭鉄鋼共同体からスタートした欧州統合は、40
年以上かけて15ヶ国が加盟するEUとなり、その後10年足らずで25ヶ国に拡大
しました。新規加盟国の側にも、それを受け入れる旧加盟国の側にも、それぞ
れ不安があります。

新聞やラジオの報道によると、旧加盟国の国民の間には、新規加盟国から自国
への安い労働力の流入、環境保護に関する法整備が比較的緩やかな国への工場
の移転(結果として雇用が減る)を心配する人が多いようです。新規加盟国の
国民は、自国の経済や農業がEU統一市場の競争原理に耐えられるのかどうか不
安に思う人が多いそうです。

こうした国民の不安を解消するための方策も、加盟交渉の中で話し合われてき
ました。例えば、労働者の自由な往来(旧加盟国側の不安)や特定製品の買い
占め(新規加盟国側の不安)などには、移行期間が設けられています。

今回の10ヶ国の新規加盟は、1989年のベルリンの壁の崩壊に象徴される、社会
主義体制の終焉に端を発しています。新規加盟国の生活レベルを旧加盟国と遜
色ないように底上げすることが、拡大EUの最重要課題の1つに設定されていま
す。

今回の拡大によって、旧加盟国にも新規加盟国にも、経済的に大きな変化が起
こるのは避けられません。これまでEUの総人口は4億人足らずでしたが、25ヶ
国の統一市場には5億人の住民(つまり消費者)がいるのです。新規加盟国の
EU市場への参入は以前から始まっていて、EU域内の輸出入に際しては、障壁
となるおそれのある数量制限や差別的な価格設定は禁じられています。


この他、フランス人にとっての懸念は、地理的条件により、EU内でのドイツ
の発言力が増し、相対的にフランスの影響力が下がるのではないかということ
です。そういう意味では、元フランス大統領のジスカールデスタンが「欧州憲
法」の草案作成グループの中心となのは、フランスに対する政治的な配慮なの
かもしれません。


● ユーロ ●

ユーロはEUの単一通貨として、2002年1月1日から、旧加盟国のうちイギリ
ス、スウェーデン、デンマークを除く計12ヶ国で用いられています。

新規加盟の10ヶ国は、すぐにユーロを使い始めるわけではありません。現時点
では、ユーロ参加の条件(インフレ率、財政赤字率、公債発行率など)をすべ
てクリアしていないからです。しかしながら、この10ヶ国の中には、イギリス
やデンマークのように、ユーロ使用を保留したいと表明した国はないので、条
件を満たしたら、その時点でユーロ圏に入ることになります。早くても3年後
くらいではないでしょうか。



● LMD制度 ●

旅行者や労働者だけでなく、学生の行き来が活発になるよう、各国の大学の制
度も統一されます。詳細は下記ページでご確認ください。

http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Apricot/7402/MAG2/20040512.html


● キプロス ●

4月末にキプロスで国民投票が行なわれたのは、各国でニュースになったこと
と思います。恥ずかしながら、私はこの国のことをよく知らなかったので、こ
れを機に調べてみました。

***
1960年、キプロス共和国が誕生。
ギリシャ語系住民(全体の約8割)とトルコ語系住民(約2割)が共存する状
態。

1974年、トルコがキプロスに派兵、トルコ語系住民が多く住むキプロス島の北
部(38%)を占拠し、1983年から北キプロス・トルコ共和国と名乗っている。
この国を正式なものと認めているのはトルコのみ。ギリシャ語系住民は島南部
に集まっている。

両地域の間には、首都のニコシアを通過するグリーン・ラインあるいはアッチ
ラ・ラインと呼ばれる緩衝地帯が180kmにわたって設定され、事実上1つの国
とは呼べない状態。

南部の住民は大半がギリシア語系(95%)、北部はトルコのトルコ人による支
配が続いており、ここの住民はほぼ100%がトルコ語系。南北ともに、わずか
ながらもアラビア語系、アルメニア語系の住民が暮らしている。この住み分け
はトルコの派兵に際して、トルコ語系住民が北へ、ギリシア語系住民が南へと
避難したためである。

アッチララインの北側は、トルコ軍が中心となって警備にあたっている。南側
はキプロス軍が、ギリシャの援助を受けて、「国境」を守っている。この他、
キプロスにある英国空軍基地にはイギリス軍が駐屯している。そして、国連平
和維持軍が、緩衝地帯に駐留している。

国連は南北キプロスの再統一を目指した話し合いを1991年から続けている。

***

EUへの正式加盟を前に、4月25日、両キプロスにおいて、国連が提案する南
北統一プログラムを受け入れるかどうかの国民投票が行なわれました。

国連は、キプロスにスイスをモデルにした国家連合の形で統一することを提案
しています。このモデルでは、それぞれの国(統一後は州?)の独立性を維
持、北キプロスの領土を現在よりも縮小、ギリシャ語系住民の流入による混乱
を避けるため、北キプロスでの人口比が制限されることなどが予定されていま
す。この他、1960年当時のキプロス憲法にならい、人口比を反映した政府や司
法機関の構成、国際機関においては両国の代表がともに出席すること、トルコ
とギリシャはそれぞれ島内に軍を駐留させてもよいが、兵士数を現在よりも減
らすことなども盛り込まれています。

さて、国民投票の結果は、南キプロスは受け入れない、北キプロスは受け入れ
る、でした。南北の統一は、両方が賛成となった場合にしかなされないので、
南北統一はされません。その結果、EUに加盟するのは、南キプロスだけ、な
のです。投票結果はどうあれ、南北統一がされない場合は南キプロスのみが加
盟するのは、EUにおいて以前から了承されていたことです。

南キプロスがこれを否決したのは、1960年当時の統一国家に戻ることを望んで
いるからだと言えます。再統一したいが、国連が提案した形では嫌だ、という
ことでしょうか。実際、南キプロスの憲法は、1960年に制定されたものなので
す。経済格差が著しいので「貧しい」北部と一緒になりたくないという理由も
あるでしょう。いかなる理由にせよ、統一を拒否した南キプロスが、EU加盟
という「恩恵」を享受するのが、EUの理念に合致しているとは、私には思え
ないのですが。


● ニースらしい話 ●

私の実感として、フランスではEU拡大どころかEUそのものにあまり関心が
持たれていないというか、自分のこととして認識していない(できない)人が
多いような気がします。その一例として、ニースでの出来事を紹介します。

法学部の住所は、ロベール・シューマン通りでした。これが、4月にルイ・ト
ロタバ通りと名称変更されまして、通りの名を示す標識の付け替えも終わりま
した。ルイ・トロタバとは、ニース大学に法学部ができた当時、学部長を務め
た人で、ニースにとっては重要な人の一人なのでしょう。

翻って、ロベール・シューマンは欧州統合の父と呼ばれる人です。1950年5月
9日に「シューマン宣言」が行なわれたのを記念して、5月9日がヨーロッパ
の日と定められているくらいです。この日の演説において、フランス外相だっ
たシューマンは、平和のためにヨーロッパの国々が一つになることを呼びかけ
ました。具体的には、紛争の種となりやすい石炭と鉄鋼を国際機関の管理下に
おくことを提案し、翌年、ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体が誕生する運びとなりま
す。

拡大EUの誕生を目前に、彼の名を通りから外してしまう・・・フランスらし
いというよりは、いかにもニースらしい出来事だと思いました。


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このジスカールデスタンは、以前にも書きましたが、トルコのEU加盟に反対
だと発言してはばからない人です。表向きの理由は、国土の大半がヨーロッパ
大陸外にあり、ヨーロッパ大陸に住む国民が全体の5%しかいないので、トル
コはヨーロッパに属していない、というものです。そして、ある調査会社によ
ると、フランス人の約6割がこの考え方を支持しているとのことです。

ロベール・シューマンはヨーロッパは連邦国家(federation、例えば米国やド
イツ)を目指すべき、と「連邦国家」という語を使っていますが、現在のEU
はどちらかというと国家連合(confederation、例えばスイス)の形を取って
います。今後、EUが連邦に近づいていくのかどうかは、EU憲法で自身のあ
り方をどう規定するかにかかっていると思います。


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サイト紹介
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http://europa.eu.int/
欧州連合
EU拡大に関する情報を参照するには
トップ>欧州委員会>拡大 と進んでいってください。

http://jpn.cec.eu.int/
駐日欧州委員会代表部(日・英語)
EU拡大に関する情報も充実しています。

http://www.amue.fr/
La Maison des universites(仏語)
フランスの高等教育に関するポータルサイト。
LMD制が特集されています。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B9
ウィキペディア「キプロス」


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地方選挙関連「ルペンの被選挙権」
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3月に実施されたフランスの地方選挙で社会党が圧勝したことは、おそらく日
本でもニュースになっただろうと思います。

前号でPACA(マルセイユ、ニースを含む地方圏)から国民戦線(FN)のルペン
党首が立候補すると書きました。が、彼にはPACAにおける被選挙権がないこと
が判明し、結局、今回の選挙には出馬しませんでした。

被選挙権を得るためには、その地の居住年数が条件の一つですが、彼はPACA圏
内に住所がない、と認定されたのです。ニース市内にある政党事務所の家賃の
領収書がルペンあてに発行されているので、これを住居証明として使おうとし
たようです。

しかしながら、賃貸契約書は政党が名義人になっていること、そして、フラン
スの法律では法人と法人の代表や構成員は同一視されないこと、そもそも事務
所は「住居」ではないこと、などが理由で、裁判まで起こしたにも関わらず、
被選挙権は認められませんでした。



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あとがき
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人遣いの荒い会社に関わったのが運の尽きで、昨年末からずっとばたばたして
ました。心配して、連絡をくださった皆さま、ありがとうございました。

明日からカンヌ映画祭が始まるのですね。ああ、もうそんな時期なのか、と驚
いています。

期末試験が控えているので、来月は休刊します。7月から、従来どおりほぼ月
刊で発行できるよう、がんばります。7月号のテーマは「マリアンヌ」の予定
です。

ではー。


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フランスの片隅から(ほぼ月刊)
発行者 Olivier

転載、引用の際は本誌を出典として明記してくださるよう、お願いいたしま
す。
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メール: olivier_katasumi@yahoo.co.jp
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