激動の戦後史
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創刊日: 2001-04-04………………………………………………………………………………………………
過去を知って明日を考える?激動の戦後史 第218号
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■日本プロレスがギブアップした日
1973年4月14日、力道山の街頭テレビ中継以来、安定した視聴率を確保してき
たテレビソフトとしてお馴染みの「プロレス」にとって歴史的出来事があった。
池上本門寺に、長谷川(芳の里)淳三代表、力道山夫人の百田敬子さん、大木
金太郎以下、9名のレスラー達が集まり記者会見を開いた。日本プロレス興業が、
この日で活動を停止すると発表されたのである。
日本プロレス(以下日プロ)はもともと、力道山、三菱電機、正力松太郎とい
う三者の関係によって、長く日本テレビで独占中継されてきた。それが69年4月、
「ジャイアント馬場と坂口征二、インターナショナル選手権とワールドリーグは
日本テレビのみ放映権を持つ」という条件で、NET(テレビ朝日)とも契約を締
結したと発表。要するに日本プロレスは、テレビ中継で局から得られる放送権利
料が倍増したことになる。
しかし、それによって日プロには、結果的に崩壊につながる2つの問題が発生
した。
ひとつは日本テレビ(ジャイアント馬場)、NET(アントニオ猪木)という2大
スターを並立させなければならなくなったことで、会社自体に目に見えない亀裂
が生じてしまったことである。それまでは「若獅子」の異名でナンバー2だった
猪木は、「馬場と同格」になることをNETに求められる。以降、猪木はその年の
ワールドリーグに優勝。NET主導の興行といわれたNWAタッグリーグでの連覇。さ
らに馬場の保持するインターナショナル選手権に対抗できるタイトルとして、ユ
ナイテッドナショナル選手権者になるなど、急速に実績作りが行われた。それは
社内で「馬場派」「猪木派」の派閥対立を激化させることになり、もともと野心
家だった猪木自身も馬場に対決を迫るなど、トップの座を巡る争いは熾烈になっ
た。もちろん、アスリートとしてナンバーワンを目指すのは間違いではないが、
事はそれほど純粋ではなく、テレビ局のメンツや利益が絡んだ主導権争いという
複雑な側面があったことは否めない。
もうひとつは、金がたくさん入ってきたことで、幹部のルーズな金銭管理が露
呈してしまったことである。役員が金庫から札束を鷲づかみにして夜の町に消え、
ビアノの生演奏を楽しむという話はファンの間では有名である。
その結果、猪木や馬場ら選手の間では「経営を改革しよう」という声も上がっ
たが、正式な税理士でもない自分の子飼いを経理責任者にしようとした猪木は71
年12月、会社乗っ取りの廉で日プロを除名されてしまう。
猪木がいなくなったNETは、今度は馬場を放送させろと日プロに話を持ち込む。
日プロがそれを認めたために日本テレビが激怒。長年にわたって放送されたプロ
レス中継を72年7月に打ち切るが、力道山時代からの信頼関係を裏切られた日テ
レはそれだけではすまずに、何と馬場を日プロから引き抜いて実質子会社の新団
体、全日本プロレスを作らせ、10月にはプロレス中継を再開してしまう。
猪木も馬場もなく、脇役の大木金太郎と当時は未完成だった坂口征二をメイン
とする日プロは、たちまち興行的にも視聴率的にもたちゆかなくなってしまった。
そこでNETは日プロに対し72年11月頃、同年1月に新団体を作った猪木との合流
を勧める。が、かつて猪木を除名した大木ら日プロの選手会はそれを諒とせず、
坂口征二とその付き人らだけが猪木に合流する。それに対してNETは、日プロで
はなく猪木・坂口を選択。73年3月限りで日プロの中継は打ち切り。翌月からは
新たに猪木の新日本プロレスの中継を始めた。
日プロはテレビを打ち切られて会社としての興行機能を失うが、選手会主催に
よって、日本で絶大な人気を誇る“鉄の爪”フリッツ・フォン・エリックらを招
聘してシリーズを開催。しかし、残念ながら大木の壮絶な流血試合の甲斐もなく、
開幕戦の大阪府立体育館(4月13日)は閑古鳥。翌日に冒頭の記者会見となった。
日プロの崩壊については、最近になっても「新証言」が出てくるほど、いろい
ろな意見が出ているし、また肝心な部分は未だに謎に包まれている。
筆者が指摘したいのは2点だ。テレビ局の引き回し、とくにNETの都合が日プロ
の崩壊に深く関与していることは間違いない。当時はプロレス団体に限らず、ス
ポーツ・芸能関係の興行はテレビに対する依存度が高かった。今もそうではない
とはいえないが、少なくともCSやインターネットなど発信者側が量・質とも変わっ
てきたこんにちは、地上波が定期放送しなければ興行が成り立たない、というこ
とはないだろう。
もうひとつは、あれほど隆盛を誇っていた日プロが、馬場が離脱後、たった半
年で興行機能が停止するほど弱体化するという事態だ。当時の生き証人であるユ
セフ・トルコの著書では、日プロがつぶれたのは「幹部が湯水のごとく金を使っ
たからではなく、表沙汰にできない金の支出があったからだ」という当時の経理
課長のインタビューも出ている。
ファンとしては、ちょっとばかり気になる「闇」ではないか。
★参考文献
『平成の芸能裁判大全』(鹿砦社)
http://www.webginza.com/taizen.html
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